Reviewer:避1st. 104-108 名無しさん2010.01.04.
1.ハジマリノウタ ~遠い空澄んで~ ★★
オープニングはいつもの通り何の変哲もないミドルテンポのJ-POP。
どこかで聞いたようなメロディの繋ぎ合わせという感じだが、このレベルならわざわざパクるより自分で作ったほうが圧倒的に早いので完全な自作だろう。
ありきたりすぎるので、他人の過去作と被ってないかを検証し切るのが無理なだけ。
歌は安定しているが、表情が以前より減って、元気一杯の一辺倒になったように感じる。
歌詞もただそれっぽいだけで何だか良く分からない形容が多用されており、過去の直球な詞よりも突っ込み所が増えた。
どこが主題なのかも曖昧で、何とでも曲名を後付けできそうな曲。
最後のサビでいきなり「僕が生きた証を残そう それをいつの日か夢と名づけよう」とか出てくるが、そんな話が出てくる流れだったろうか。>
しかも取り敢えず生きてから後付けで「これが僕の夢だったんだ」とか言い張ったらもう夢でも何でもないのでは。
2.夢見台 ★★
2曲目も全くひねりの無いアップテンポなJ-POP。しかも最初から速いテンポを想定して作曲してる感じがしない。ミドルテンポと同じような曲。
それをアレンジャーやスタジオミュージシャンの手腕で何とか元気でアッパーな出来に仕上げてる感じ。自前と思われるギターは正直ベタ。
今作全般でそうだが、いっつもメロの区切りで小節の最後のほうを余らしてる印象で、歌メロの連続感がない。
Bメロからサビへ繋ぐ時とか常に充分な間隔をとってキメで処理してるし、そこでサビが他曲とシャッフル可能になるので、1曲通して覚えられる曲が全然無い。
逆にこれで演奏中に曲を間違えない本人達が凄く思える。
3.じょいふる ★★★
hideの「ROCKET DIVE」みたいなイントロで入る派手な曲。Aメロは民生の「マシマロ」をギター以外手数多くした感じ。
詞は無意味だが、別に電波でもシュールでもない微妙なセンを突いている。実はこっそり痛烈な皮肉を込めてたりという仕掛けも無さそう。
曲自体は作曲というほどのことをしておらず、アレンジ依存度がかなり高い。
メインのギターリフがベタで地味なので、リズム体が頑張っており、ブイブイうねるベースがほぼギターの役割も食う感じで感情の高揚を表現する。
スタジオマンありきの曲。
4.YELL ★
合唱コンクールの課題曲として書き下ろされた、ベタ以下な歌謡バラード。
やはり歌に違和感が。前ならAメロとかもっと柔らかく歌ってたような。
メロは楽器未経験者が充分書けるレベルで、コードもギターかピアノを何となく触ってて基本的なコードを知ってる人なら誰でもつけそうなレベル。
歌謡曲をやるならやるで特化すればいいと思うんだが、こうもインスタントだと何がしたいんだか分からん。
彼らの作品は基本的にスタジオミュージシャンの見本市なので、真っ向から楽曲勝負はキツイ。
歌謡曲スタイルなのに詞とメロの親和性が薄いのも痛い。
サビで急に「サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐYELL」とか出てくるが、
その前に「サヨナラを言うのが悲しいよ」的な前フリがなく、ここでいきなり定義してるので唐突な印象。
恐らくそのサビの上手いこと言った風フレーズが先に出来て、後から前後を書き足したのだと思うが、
多分本人が思ってるほど上手く繋がってないので、そのサビのフレーズを諦めるべきだったんじゃないかと思う。
ていうか自分が最も言いたいことを表現し切れてないというのはどうなんだろう。
もしや本人も言葉の響きに酔ってるだけで、自分でもよく分かってないのでは。他にも詞の突っ込み所が尋常でなく多い。
好き嫌いはキッパリ分かれるものの、主張は明確だったアンジェラの「手紙」と対照的な曲。
5.なくもんか ★★
やはりベタベタな歌謡バラード。
構成もいつも通りで、全く凝る気がない。よほど時間がなくて、三日くらいで全曲書き上げたんだろうか。
たまにはBメロからサビまで一気につながるようなメロを書くとか、Bメロをすごい短くしてみるとか、なんか手を加えたほうが。
「涙のかずだけ 笑顔があるんだ そう わかってるはずなのに」とかサビで言い出すが、わかってないので説明してほしい。
どうも彼らには自作の格言みたいなのを詞に盛り込む傾向があるが、
それをサビで歌うなら聴き手が「なるほど」と納得できるように、そのオリジナル格言についてこそA・Bメロで例を挙げて分かりやすく解説して欲しい。
多分ちゃんと根拠があるんだろうが、今の状態の詞からはなりきり勘違い詩人みたいな印象を受けてしまう。
いや俺がおかしいのかも。涙の数だけ笑顔ってあるの?
涙を流した分を取り返すくらい笑顔になりたい、という心理的な願望ならあると思うが。
6.真昼の月 ★★
歌詞を古めかしくし、露骨に歌謡曲っぽく仕上げた曲。
と言っても仕上げたのはアレンジャー他周囲の取り巻きで、曲そのものについては別段この曲だけ歌謡曲っぽく作ってる訳ではない。
彼らの短調の曲はどれもこんな感じ。詞がそういう感じだから周りが気を利かせてそうプロデュースしただけ。スタッフは有能。
さらっと聴いた印象では最もアレンジのハマリが良いし、良曲かと思ったが、詞が雰囲気だけで内容が雑なので、いよいよもって勘違い詩人という印象。
いきものってこんな訳分からん詞だったっけ。
「巡る四季の中誰を恋ふて 一人夕凪に指を這わす」とか歌われるとパッと聴いた印象では何だか凄そうに思えるんだが、
夕凪って要は波風が止んでる状態のことなのでは。どこに指を這わすんだろう。巡る四季とは言っても夕凪は夏の季語だし。
7.ホタルノヒカリ ★★
とことんベタな歌謡ポップス。
正直作曲に関しては引出しはもう無さそう。多分やりたい事をやり尽くした状態でこのベタさなのだろう。
新しいことに挑戦する意欲も感じない。色々やってみないと幅が無くなってダメになる、という危機感もないのだろう。今売れてるから。
あとはスタジオマン達が頑張ってハイハットの裏を強調したり色々試して差別化を計ってるし、
歌も雰囲気に逃げない丁寧な発声だし、そういうところを聴くべきか。
ところで他曲でもチョイチョイ出てきてたが、そろそろ歌詞のオリジナリティ溢れる当て字がウザくなってくる。
「火傷(きず)つく」とか「意志(おもむ)くまま」とか。そういう小細工より主題に沿って詞を書く努力が先では。
8.秋桜(コスモス) ★★★
ハープが哀愁を誘うアッパー歌謡曲。冒頭からかなりクサイコード進行。
しかし弾みをつけてリズミカルに反復するメロは今作中ではかなり出来が良く、ベタではあるものの割とアリな部類と思われる曲。
山下はまだ何とかなるかも。と思ったらインディーズ時代の曲のリメイク。過去作だったか…。
インディーズのものと聞き比べると、やっぱりプロのスタジオミュージシャンは一味違うなと思わされる。
9.ふたり ★★
歌唱力はそれなりで、演奏はしっかりしているベタな歌謡ポップス。
ここまで聴いた印象では、今作を最も好意的に聴くコツは詞をあんまりジロジロ見ないことかも。
この曲もそれっぽい詞なので、さらっと聞き流せば違和感を感じずに済む。
あまり詞について考えると、普通に詞に意味を求める行為のつもりが、いやらしい揚げ足取りをしてるような気分になってくる。
この曲も、「抱きしめても届かない想い」を受け止めるために「僕」が具体的に何をするのかよく分からないがいいやもう。
なんか今作全般で、漠然とした問いに対して漠然とした答えを返してる感じなのでキリがない。
10.てのひらの音 ★★
曲は今までと何ら変わらないが、他の男性メンバーもボーカルに参加した意欲曲。予想以上に歌唱力がある。ゆずみたい。
詞についてはもうあまり触れたくないが、普通にポジティブなことを歌ってるっぽいし、多分大丈夫。
でもギターはベタ過ぎてもはや邪魔。
11.How to make it ★★
基本的には普通の8ビートだが、少しだけハネを加えたリズムが独特な曲。かなり歌詞を詰め込んで英詞的なリズムを出そうとしている。
よかった。ちょっとだけ作曲の幅が出た。もうこれは歌詞に意味なんか無くっていいんじゃないだろうか。もう疲れた。
でも「気張った人生に意味などありゃしない それでも報われたいと願うならむしろ無欲だ」は何でむしろ無欲なのか分からないけど。
12.未来惑星 ★★★★
今作で最もいきものがかりらしくない、歌謡曲要素薄めのポップス。
メロのリズムに規則性があるので、Aメロからベースがメロの隙間を埋めたり、
ドラムがスネアの位置をずらしてメロに当てに行ったりと、全体が有機的に絡んでいる。
Aメロ終盤でBメロへ向けて弾みをつけるようなメロが登場したかと思うと、Bメロの冒頭はそのメロのリズムを受ける形になっていたり、
今までに比べ次の展開を引っ張って来れるメロディになっている。
思い切って長い音符を歌ったサビも新鮮。これはメロの特性がきちんと分かれてて、アレンジもし易そう。
普通だけどいい曲。まだ何とかなるな山下。それとも水野か。
だが吉岡作曲。そうですか。なら現実的には曲は全部吉岡が書くのが彼らのためなのでは。
13.明日へ向かう帰り道 ★
ラストもベタベタなバラード。
ただの帰り道ではなく「明日へ向かう」とひねって題した割に、
その関連付けの部分の説明がないのでいつものように意味ありげな響きのある言葉を並べただけの雰囲気作詞という印象。
アッパーな曲ならスタジオ勢の派手な仕事で埋め立てできるが、バラードはつまるところ歌を聴かせるので、あまり共感しようのない詞だとキツイ。
総評.★★
水野と山下、2人のギタリストがほぼ半々で詞曲を手掛け、ボーカル吉岡が歌う3ピース、いきものがかりの4th。
吉岡の歌唱力の伸びが頭打ちになった印象なので、2人の作曲家の出来次第というのが今の彼らの現状だと思うが、
二人とも歌謡曲以外にバリエーションがないうえ、実は歌謡曲もこなせないという印象。
別に歌謡曲が好きでもないし、それほど深く探求する気もないのかも。
オリジナリティも全くないが、「自分にしか作れない曲を作りたい」という意欲自体ないのだろう。
2人の作風がダダ被りなのも気にしてないようだし。とにかく作曲能力に関してはあまり下がいないように思える。
GReeeeNよりは上だと思うが、flumpoolより上だと断言してしまうのは何だかflumpoolに申し訳ない気持ちになる。
作詞も何だか雰囲気だけで主題が曖昧だったり、メロが変わるタイミングで急に話が変わったり、そこで別の大きい主題が出てきちゃったり、
全体的に作詞者の主張を伝えたい感じがしない。オリジナル格言についても、投げるだけ投げて説明しない。
察するに彼らは別に言いたいことも無く、ただサビ用にメモしておいた格好良いフレーズに肉付けして詞を組み立ててる印象。
詞のテーマが散るのは、別の曲で使おうとしたサビフレーズを1曲の中で使っちゃってるからでは。
それでもどの曲をとってみても言ってることは似通ってるから、大体意味が通ってるっぽく見えるし。とにかく作詞もかなり厳しい。
言葉遣いがバカっぽかったり、世間の声と逆行するようなネガティブな主張だったりする人達でも、
何となくノルマで作詞する人よりは表現者として筋が通ってるのでは。
総じて今作は、敷かれたレールの上を嬉々として駆ける、勝ち組公務員ポップスという印象。
歌は悪くないのでそれなりに聴けるが、何も生み出さない感じなので、実験的な音楽が好きな人にとってはつらい1枚。
スタジオミュージシャンを目指してる人がベタ曲のアレンジ方法の参考に聴いたりするのがいいのでは。
(★5個が満点。)