アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : きみどり。

Reviewer:23rd. 370-372 名無しのエリー2010.05.24.

1.カネデカワレタカゴノトリ ★★★☆
いきなりホラー映画のSEみたいな音のループで始まる。
昭和らしい硬さを感じる無機質で怖い女性ナレーションがタイトルを延々と朗読する。そこで語られるのは憤り。
トラックとリリックの二つともが他の曲と比べてかなりカオティック。いきなりこれを初っ端にもってくるかと…
MCが二人とも癖のある声なので慣れるまでが大変かもしれない。
というかこの曲の時点で雰囲気が合わなかったらこのアルバムには乗り切れないかもしれない。
2.白いヤミの中 ★★★★
シャカゾンビにもカバーされた曲。そちらは未聴。
民族音楽を思わせるトライバルなトラックに乗せて欲望に愚弄される人間の姿を風刺する。
というかこの曲はもう「白いヤミの中」というフレーズを思いついた時点で一人勝ち状態だと思う。
3.サソリに刺されたキミドリ ★★
単なるスキットなんだけれど、前半と後半での雰囲気の違いとか宇宙っぽい電子音の中に鐘の音が混ざってたりとか結構凝った事をしていて面白い。
ちゃんとインストとして成立してる。
4.自己嫌悪 ★★★★★
日本のヒップホップ史に残るであろう、名曲中の名曲。
優しく美しくメロディアスなトラック、日本人なら誰もが抱えるであろう心理的な不安をリアルに描いたリリック、
中盤での雰囲気の崩壊、そしてそれを超えてまた優しく鳴り響くフック、
唐突な展開を加えることで聴き手に夢から覚めたような感覚をもたらすアウトロ…完全無欠としか言い様が無い。
個人的な感想を言わせて貰うと音楽でも絵でも小説でも何でもいいから何かを作る人には是非聴いてほしい。
5.つるみの塔 ★★★★☆
おセンチモードの次はいきなり攻撃性剥き出し。
1曲目と同じような路線のカオティックなトラックも良いけれど、人とつるまないと何も出来ない人間を攻撃し、
そして同時に集団の恐怖を描いたリリックが特に秀逸。
終盤の、どんどん集団が大きなものになりそこから抜け出せなくなってしまう様子を
「目が増えていく」という比喩を使って描写するくだり(壺井栄ネタ?)は曲と合わせて聴いていると正直かなり怖い。
6.無視されてるキミドリ ★
スキットその2。わずか43秒の間にカオスな音世界が繰り広げられる。
7.大きなお世話(SAY WHAT) ★★★☆
ECDや四街道ネイチャー、果てはパンクバンドな筈のU.G MANまで入り乱れてのお祭り騒ぎ。
いろんな人が「大きなお世話」というテーマのもとやりたい放題。MCが変わるたびにどんどん異なる方向に転がるトラックが中々面白い。
散々な大騒ぎを広げておいてこれかよと思わせる、なんだか人を食ったような幕の引き方が印象的。
いつもと変わらない調子で魅せるECDと、真面目なみんなの中で一人だけ臭いネタな四街道ネイチャーが個人的にお気に入り。
8.つるみの塔 ELECTRIC BOOGALOO MIX ★★★
川辺ヒロシによるリミックス(何故かいつもの表記ではなく「かわなべひろし」名義)。
原曲とは大きく異なる、80年代テクノ風味なリミックス。原曲とはまた違った方向でカオティック。
そこかしこに聴き手を惑わせる仕掛けが施されていて最後まで飽きずに聴ける。
アウトロがなんだか不気味。
総評.★★★★★
90年代日本ヒップホップ髄一の異能集団、キミドリによる唯一のミニアルバム。
他のヒップホップユニットには無いアナーキズムとアヴァンギャルドさが最大の魅力。日本でしか生まれなかったワン&オンリーとしか言いようがない才能。
なのになんでこれが最初で最後のアルバム。この後はシングルを一枚だけ出して、自然消滅状態に。
いつ聴いても古びない、という言葉が発売から17年経った今でも通用し、そしてこれからの10年も通用するであろう一枚。
幸い廃盤になっていないので、是非。ヒップホップが嫌いな人にこそ強く勧めたい。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)