Reviewer:13th. 360-362 名無しのエリー2006.11.01.
1.Golden Harvest ★★★★☆
クラビネット風シンセのイントロが新生キリンジを印象付けるロックナンバー。
転調を多用したテクニカルな曲。曲を支えるMoog Bassのフレーズが非常に格好よい。
キリンジ、特に兄である高樹の作品にしては珍しく詞が極めてポジティブ。
2.自棄っぱちオプティミスト ★★★★
エレクトロニカで味付けされたミディアムテンポのAOR。コーラスワークが美しい。
一聴ではメロとサビの区別が付きにくいが、曲最後での転調サビのリフレインは非常に盛り上がる。
この曲もシニカルではあるが割とポジティブな詞。
3.柳のように揺れるネクタイの ★★★
シンプルなソウルナンバー。
分かりやすいメロディー、英語のリフレインで構成されたサビなどある意味でキリンジらしくない曲。
しかし詞はかなり苦い。上司に頭を下げるストレスを若者にぶつける勤め人の歌。
4.アメリカン・クラッカー ★★
アコギ+電子音のダウンテンポの曲。音数が少なく曲の起伏も少ない環境音楽一歩手前な感じ。
アルバムの流れでは聞けるが歌モノポップスとしてこの曲だけを取り上げて聞くのは少々辛い。
5.鼻紙 ★★★★
タイトルは「クリネックス」と読む。変なタイトルとは裏腹に曲はキリンジお得意の美メロなスローバラード。
アコーディオンの音色がヨーロッパな雰囲気を感じさせるが、要所要所で入ってくるシタールの不穏な響きが面白い。
6.ロープウェイから今日は ★★★☆
妙なテンション感のピコピコイントロから始まる牧歌的な曲。詞もそのものズバリピクニックの歌。
単調なシンセのリフレインが徒歩のリズムを象徴しているようで小気味よい。合唱で歌いたくなる一曲。
7.CHANT!!!! ★★★★★
まるでファミコンのようなシンセのリフが全編に渡って流れるゴスペルチックな曲。
曲が進むに連れハンドクラップやコーラスがどんどん重ねられそれが電子音と絡まる様は壮大かつチープ。
実験的な曲であることは間違いないが同時に他に類を見ない曲。
8.ロマンティック街道(Album Ver.) ★★★★
4つ打ちのアンニュイなサゲサゲ(?)ディスコナンバー。タイトルも詞も少々狙いすぎの感がある。
Kraftwerkを思わせるテクノビーツにストリングスが上手く調和して中毒性が高い。
弟・泰行の鬱っぽい歌い方が雰囲気を出している。アルバムバージョンはアウトロが長くなっている。
9.愛しのルーティーン ★★★★
カントリー風味のブレイクビーツ。今までにない起伏をつけたボーカルが楽しい。
変テコな曲展開、唐突に入ってくる管楽器など聴いていて飽きない一曲。
10.Lullaby ★★★☆
ゆったりとしたスタンダードなメロウバラード。音数が少ないが個々の音のテンションが高く楽曲に緊張感を持たせている。
詞・曲ともに硬派な世界観の佳曲。
11.Love is on line ★★★★★
アルバム中、今までのキリンジのパブリックイメージである「'70年代風生楽器アンサンブル+美メロバラード」を最も体現している曲。
This is AOR なアレンジ、さり気ない転調などまさに王道のキリンジ節。
ネット恋愛をモチーフにした詞は出色。メロディ・詞・歌唱・演奏が高次元で溶け合った名曲。
12.ブルーバード(Album Ver.) ★★★
浮遊感溢れるミディアムテンポのポップナンバー。
2拍子の均一のリズムの上にエレクトロニカやスティールギター、ピアノ等様々な音色が絡まる音色豊かな曲。
シングルと比べて音の強弱がはっきりしてメリハリが出ている。
Sec.影の唄 ★★
配信限定でリリースされた(後にシングルのカップリングとして収録された)ビッグバンドジャズアレンジの渋いスローナンバー。
曲自体の出来は非常に良いがアルバム全体のサウンドとはあまりにかけ離れた曲のためボーナストラックと言えど蛇足の印象。
今まで聴いたことがない人には単純に有り難いだろう。
この曲のみで評価すれば★★★☆。
総評.★★★★
売り上げ的にはパッとしないが同業者や音楽マニアからの評価が割と良い堀込兄弟によるポップスデュオの6thアルバム。
デビュー以降ずっとタッグを組んできたプロデューサー、冨田恵一から離れて初のセルフプロデュースとなった。
サウンド的には前作までの生楽器を主体とした時に過剰とも思えるアレンジから一変、
シンセサイザーや打ち込みを多用したエレクトロニカ方面に大きくシフトチェンジしている。
その音自体は本職のテクノ系アーティストに比べチープな印象があることは事実だが、
あくまでも歌モノポップスの一要素という位置づけなのでこれを中庸と取るか半端と取るかは聞く人の耳に大きく委ねられる。
曲自体が持つメロディーの良さやコード進行の面白さなどは相変わらず高品質。
個人的には音に以前より隙が出来たことで通して聞いても疲れを感じないバランスの取れた一枚という感じ。
しかし実験色が強いため旧来のキリンジファンにとって踏み絵的な作品にもなってしまっている。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)