Reviewer:16th. 561-565, 581 名無しのエリー2008.02.10.
1.Introduction For Kingdom ★★★
ちょっと意外なハイトーン・ボイスで入る短めの導入曲。
倖田を自由に遊ばせているというよりはインストとしての完成度のほうを重視しており、エレピやシンセが心地良く散りばめられた上品な曲。
2.LAST ANGEL(feat.東方神起) ★★
ダサめのシンセでのストリングス音が耳に残る曲。
Aメロとサビのコード進行は同じにしてあり、全体に起伏の無いメロディに仕上げている。Bメロでは意図的に歌のラインとシンセのラインを被らせてある。
東方神起は思ったより上手かったが、有機的に絡んでいるというよりは1人ずつ交代でメインのラインを歌っただけという印象で、
シンガーを引き立てる為に曲をシンプルにした意図が活かされず、単にくどくなった感のある曲。
3.甘い罠 ★★★
安室の路線に近い、オリエンタルなR&B。
微妙にハスキーがかったウィスパーボイスは独特の味があるが、透き通ってはいないので好みの分かれ所。
低音の歌い出しの発声がEXILE並にわざとらしいのも好みの分かれ所。
ア行やヤ行等、丸い音を発生する際、アタックのインパクトを稼ぐ為かハ行の音を混ぜ込んであり、「ゆれて」を「ヒュれて」と発音したりするのも好みの分かれ所。
4.秘密 ★★
微妙に舌足らず気味の甘えた囁き口調で歌うミドルテンポのポップス。
技術的に難しいことを要求している訳でもないので、基本的には声質そのものを武器にしているシンガーに向く曲。
R&B系でハスキーボイスの持ち主は少ないので、意義があると言えなくもないか。
踊りにくそうな気もするが、そもそも彼女はシングル曲数が異常に多いので、ライブで披露しない(振り付けが必要ない)と割り切っている曲なのかも。
5.愛のうた ★★★
ダンスより歌を重視したと思われる、今作中でもテンポのゆったりした部類に入る曲。
感情を押し殺すように歌うAメロから、サビに近付くにつれて情感が溢れ出してくるように歌い上げているが、
意外にもサビのタイトル部分はビブラート無しでストレートに歌っているのが面白い。
しかし意図して使っている部分でもあまり振幅の大きいビブラートは聴けず、やはりアッパーな曲の方が得意なのかと思わせる部分も。
バラードは歌詞の意味が通じるに越したことは無いと思うが、相変わらず「ヒュメ」とか「ヒョ空」とか歌っている。
メッセージ性は二の次?
6.anytime ★★
かなりありがちなポップス。硬派なR&B路線を減らした方が若い女性にウケるという意図か。
今作は安室や浜崎路線の曲が適度に散りばめられており、avexが主力の世代交代を進める意図を感じるが、
誰でも歌える庶民派ミヒマル路線も倖田に任せるのだろうか。
ちなみに本人的に無意識とは思うが、やたら一途で粘着質な恋愛詞は大塚に近い気が。
7.Under ★★★
ここでR&Bに戻る。芯の太いトラックが繰り返される王道な曲。
以前のようなバスドラ4つ打ちの縦ノリダンスビート路線の曲は減り、セクシー囁き系が増えたが、声質的にもそういうセクシーさは安室に分がある気が。
ねっちこい想いを繰り返し告げる詞世界だが、R&B自体繰り返しのフレーズが多く、
物語調に話が展開する詞が合わないため、これはこれでバランスが良いかも。
8.BUT ★★★
やたら恋愛を歌う流れをついに脱し、前向きな生き様を歌った曲。と思ったがこれもラブソングなのかも。
「躊躇しないで前だけを見て」「止められない」といった猪突猛進な詞が、インリンのように加速してきた彼女のたくましい人生を思わせる。
過度の露出とエロいパフォーマンスを武器にする彼女は、自分以上にエロい美人(綾瀬や長澤?)に同じ格好・同じダンスで歌われたらひとたまりもない訳だが、
誰も追従できないほど過激なパフォーマンスで振り切るという割り切ったスタンスでついにここまで戦い抜いてきた。
それ自体は凄まじい。綾瀬も長澤もそこまでせんでも望む道に進めただけなのかもしれんが。
9.恋の魔法 ★★★★
ポップス寄りの爽やかR&B。
ここまでの癖のある仰々しい歌い方から一転、ハッキリ丁寧に発音している。
歌い回しも力押しではなく、意識的に音符を短めに調節して歯切れ良く歌っている。意外に器用。
曲調が似通いがちな作中の流れの中で、歌の表情で変化を持たせたのは正解では。
10.愛証 ★★★★
もの悲しいギターのアルペジオから入る、浜崎系のロックテイストの曲。
発声のクセ的にも声質的にもセクシー系よりよほど合っている印象。
全体に本職のロック系ほどのパワフルさは無いがファルセットは力強く、ロック路線でもそつなくこなせる器用さを発揮した曲。
11.あなたがしてくれたこと ★★★
イントロもアウトロもあっさりしており、通り抜けるようにさらっと流れるR&B。
爽やかだ…と思ったらなんか詞が後ろ向きで重い。
特にサビの詞が未練がましく、これが呪文のように繰り返される妙に粘着質な曲。
12.wonderland ★★
ピチカートストリングっぽい音やキュートなシンセベース、メルヘンチックな歌詞で仕上げたロリポップな曲。拒絶反応注意。
一応可愛らしく歌おうとしている様子だが、あどけない表情を出すのはやはり無理が。水樹奈々路線?
13.FREAKY ★★★
M10以上に露骨に浜崎路線な、ロック色の強いダンスナンバー。そしてどうやら倖田の方が上手い。
小綺麗にまとめようとせず声を荒げるワイルドな歌い口調が印象的。
今作は全般的にEXILEよりR&B色が強く、同じバッキングの繰り返しが多いので、実はEXILEファンにピッタリ向くわけでもないかも。
個人的には似たようなものかと思ってたが。
14.MORE ★★★★
R&Bからややさかのぼってゴスペル要素が強くなった曲。
細かい指示が出てるのか本人に任されてるのか分からないが、リズムに遊びを持たせてブルージーに歌い上げている。
特に2週目のAメロの歌の乗せ方は面白い。
avexの稼ぎ頭の歌姫衆の中で、渋い曲が最も得意なのは倖田かも。
15.Black Cherry ★★★
再び硬派なR&Bへ。サビではどことなく虚ろで掴み所のない歌い口調を披露。
英詩が増えるとどうしても海外のシンガーと比較してしまうが…。
曲の終盤でテンポが下がったりもするが、アルバムの締めに相応しい曲という感じはあまりしない。
総評.★★★
リアーナ辺りのようなポップで取っ付き易いR&Bを軸に、幾らかのバリエーションを見せて仕上げた倖田来未の6th。
シンガーとして他から突出した強みを持っている訳ではないが、器用でそつがなく、技術的に全くの苦手とするジャンルは無い印象。
早くから才能の片鱗を見せていた割に下の世代の絢香と比べても大差ない歌唱力な気がするが、パフォーマーとしての伸びで補っていると考えるべきか。
元々モー娘。のオーディションを受けていた程だし、歌う事が何より大好きというより、アイドル(的存在)になる事が本命で、
歌唱力はその為の手段の1つと割り切っているのかも。
詞世界は執拗なまでに恋愛づくし。ホントにそれしか頭にない感じ。
夢を追う人を励ましたい、世界平和の為に歌いたい、今の世の中のおかしい所を指摘してやりたい、といった類のメッセージ性が無い。老い先のことも考えない。
色々なテーマを扱う意欲に乏しいのは問題だが、口先だけご大層なことを言うあざとさがない、とも言える。
まさに20代半ばの、目先の恋で頭が一杯の女性像そのまま。リアルで等身大。
「歌は私にとって特別なもの」系の主張が無いのも個人的には非常に納得がいった。多分ホントにそうは思ってないんだろう。
かつての安室と比べるとファンから距離を置かれている
(若い女性から支持されている割に、本人さながらのエロい格好で街を出歩く人や、カラオケでエロい振り付けを真似るコにはまず遭遇しない)
印象があり、どこか引いた目で見られている(凄いとは思うが同じ事やるのはキツイと思われている)あたりは、R&B界の峯田和伸といえるかも。
取り敢えず今作は彼女の裏表のない性格が表れており、そこそこ曲にも恵まれた手堅い1枚。
(★5個が満点。)