アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : さかもとりゅういち。

Reviewer:16th. 524 名無しのエリー2008.02.03.

1.Thousand Knives ★★★★★
ボコーダーによる毛沢東の詩の朗読から始まる。お経と宣誓のようなものものしい雰囲気。
そこからフュージョン~レゲエの間を行き来するレトロな神々しいインストゥルメンタル・テクノポップが展開される。
パイプオルガンを模したCメロ(Dメロか?)の荘厳なこと!
水泡のような音色のリズムの上をすべるテクニカルなギターはもはやサイケ。
2.Island Of Woods ★★☆
シンセサイザーで構築された自然音の再現。ある意味アンビエント?
試みとしては新しかったのだろうか。
3.Grasshoppers ★★★★
打って変わってポップな曲。高橋裕治との連弾。
シンプルで軽快なピアノが大変楽しく、タイトル通り、跳ねるような可愛らしいメロディが印象的。
4.Das Neue Japanische Elektronische Volkslied -新日本電子民謡- ★★★
なんと、山下達郎が登場。それも歌でなく、カスタネットで。
ひょうひょうとしたつかみ所のないメロディが尺八~横笛風で紡がれ、その真横でカチカチと鳴ってるカスタネットは思わず笑ってしまいそうにすらなる。
5.Plastic Bamboo ★★★
さらにつかみ所のない曲。いかにも70~80'sのテクノポップのSEが随所でピョコピョコと跳ね回る。
メロディとSEがとろけあっているかのように、等価に流れている様子がとてもユーモラス。
6.The End Of Asia ★★★☆
全体的にアジアンテイストな今作の中でも、特にそれを感じるラストナンバー。メロディが印象的。
ラストの威圧的な"ニセ東方紅(中国の国家)"のメロディが、よく聞くと曲の中盤から霧のようにひそかに登場していることに気付くとたいへん楽しい。
総評.★★★★☆
今でこそ「癒し系」なんて言われている坂本龍一のデビュー作。
戦メリ~Energy Flow(リゲインのCM)などのようなとっつき易さは無いが、ハマれば心地よい世界が見える。
メロディーラインのキャッチーさはこの段階で既に出来上がっているようだ。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:18th. 481-483 名無しのエリー2008.07.28.

1.Broadway Boogie Woogie ★★★★
1曲目からかなり賑やかな曲で始まる。60年代の人が想像した21世紀の世界にて行われるミュージカルのOP曲という感じ。
坂本さんの作る華やかなSF世界にパール兄弟の窪田さんの変態ギター、吉田美奈子さんのコーラス、鈴木賢司さんの時空を切るギターソロ、
これに、ソウルの帝王JAMES BROWNのバックバンドJB'Sの主要人物、メイシオ・パーカーの華麗なサックスも絡み素晴らしい。
映画「ブレードランナー」のセリフを切り貼りした効果もあり近未来というイメ-ジがうまく表現されている。
2.黄土高原 ★★★★
ここで、しっとりとした上品な世界も披露される。80年代の機器だからこそ表現できたのであろう綺麗な世界。
無理矢理展開するのではなく自然と盛り上がっていき、気がついた時には広大な音世界に入り込んでしまう…。
しかも、これを一人で作ったのだから当時の坂本さんはどれだけ凄かったのだろうか…。
最近の癒し系見たいにべったりとした感じではなくあっさりとしつつもしっかりと世界を感じさせてくれる。…そんな曲。
3.Ballet Mecanique ★★★★☆
当時の坂本作品の中でもかなり典型的な展開を見せてくれるので
初めてに人でも難なく聞くことができていつのまにか坂本龍一さんの音楽に興味を持ってしまう。
この曲は大きく二つのパートに分かれていて、
自分の中では前半はブリキロボが復活するまでの道のりで、後半はそのロボが最新の機器を装着して暴れまくるという感じで思ってる。
このいきなり変わる所が素晴らしくかなり計算されて作られてるだろう…。やはりここでも鈴木&窪田コンビがうまい具合に暴れてます。
後半の広大なメトロポリタンな景色を見せてくれる所で矢野顕子さんの印象的な歌詞が歌われさらに印象的な思いを持つ。
4.G.T.II" ★★★★☆
名前の通り疾走感あふれるナンバー。
とはいっても、テンポを無駄に速くして無理やり出しているのではなく、
音数を減らして隙間を作ることによって軽やかな印象を出して聞き手に心地いい感覚を感じさせる仕組み。かなりかっこいい曲。
車の効果音を上手い具合に組み合わせて、楽器もうまく合わせて、これに軽やかな歌声が交わると本当に爽やかで近未来…。
この前半の4曲でもかなりいろんな景色を見せられてて非常に気持ち良い。
5.Milan、1909 ★★★
ここで小休憩てな感じで静かな曲が流れる。ボコーダーによるコーラスが時代を感じさせるが逆に今の音でやるよりはいい。
綺麗なストリングスっぽい音色でリズムを形成してそこにキーボードが流れるとこれは…神秘的な…。
6.Variety Show ★★★☆
シンプルな打ち込み音によるリズムに恐怖を感じる音となにかの演説(結構どなり声)と掛声が組み合わさってシリアスな雰囲気。
非常に硬派な音作りでありながら決してアングラな感じでもなく非常に聴きやすくそこのバランス感覚はさすが…。
セリフも掛声の部分もリズムにうまく合わさってて言葉が楽譜の流れに合わさってて気持ち良い。
7.大航海 Verso lo schermo ★★★★
これまた刺激的な音作りでありながらポップになっている。
スクラッチ、サンプリングもうまく取り入れていて音を反復させることによってグルーヴが出来上がってくというか…
そこにオペラボイスが入ってきて広大な風景見せてくれる。
タイトルに負けない非常に力強いトラックでありながら時間も長くなくいいところで終わる。
8.Water is Life ★★★
このアルバムの中では一番過激な曲で混沌とした世界を展開している。
ピッチを遅らせた不気味な声、ぶっちぎりな音楽。聴いてて不安になってくる…悪夢を見せられた感じ。
これは後期YMOの世界観に通ずるものがある。とにかく怖い。そして、いきなり終わってしまい不安なままで次曲を迎える…。
9.Parolibre ★★★★☆
いきなり神秘的で静かでありながら暗いピアノインストが入ってくる。前曲の不安な気持はどこへやら解放された気分になる。
坂本さんの綺麗なピアノを聴きながら一つの映画のエンドロールを見ている感じ…。非常に素晴らしく綺麗。
退廃的な雰囲気で朝の明け方の複雑な気分が似合う。寂しくもありながらわずかな希望があるような…。
10.G.T. ★★★★
4のリプライスてな感じで終わりにちょうどいいアレンジがされている。
ちょっとアダルティな音色に変更されていて、音もさらに削られていてアルバムの最後を飾るにちょうどいい聴き心地を与えてくれる。
総評.★★★★☆
86年作品で自分の中では坂本龍一の作品の中では最高傑作と思う素晴らしい作品。
刺激的でアンクラな感覚と大衆的てポップな要素が絶妙なバランスで成立されていてそこが良い。
アルバムの流れも無駄に長い曲もなく、一つの編曲としてアルバムをとらえることもできるし、単曲で聴いても良い曲ばかり。
80年代的な音色もあるが、逆にそこが想像上の近未来世界を作り出していて時代と才能がうまい具合に融合されている稀な作品。
「坂本龍一?癒し系の人っしょ 」、「ああ、タケダのピアノ?」なって思ってる人に一番聞かせたい。幅広い世界にビビると思う。
ロックが好きな人、テクノな人にもお勧めできる。まぁ、幅広い人にお勧めできる作品ということです。

ちなみに、田中宗一郎流(笑)に言うと…
アルバム『未来派野郎』のレビューを書こうとして、いきなりその後の2日間、スカイダイビングで落ちているのような状態がずっと続いて、
すべての意識が高速で ぐるぐる回り続けて、ずっと痙攣しているか、ずっと走っていることしかできなくなった。
結局、自分と誰かを傷つけることにしかならないセックスとヴァイオレンスに逃避して、どこまでもきどってる奴に徹することで、どうにか凌いだ。
50時間以上かけて、僕が書けたのは一言だけ。「うひょう」。
そして、気が付けば、スタッフの何人かが 同じような状態に陥っていた。どういうことだ?
でも、坂本龍一は、こんな苦しみにずっとひとりで耐え続けてきたのだ。なのに、俺は何をしていたんだろう?
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)