Reviewer:22nd. 90-95 名無しのエリー2009.08.16.
1.青空スケッチ ★★★
1曲目にしては地味なドラムフィルから入る、ゆったりしたポップな曲。
予想よりピアノが脇役っぽい印象だが、メロディは破綻なく丁寧にまとめている。少しずつ歩みを速めるように音数を増やしたサビの作りも手堅い。
詞もテーマはありきたりだが、変な横道にそれたり大風呂敷になったりせず、きっちりテーマに沿って仕上げている。真面目だね~。
歌い方は以前のような元気いっぱいな感じではなく、随分しっとりとした印象になったが、それに合う曲を作ってるのでは。
2.瞬間、ストロボ。 ★★★
曲名から感覚的な詞を連想したが、内容的には妥当な乙女心の範疇に収まったポップな曲。
アレンジ的にJ-POPの丁度真ん中という感じで、どのパートを聴かせるでもなく、ちょっと癖がないが、曲自体は丁寧だし、普通にメロディアスと言える部類なのでは。
なんか声に迫力がなく、地声なのかミックスボイスなのか判らないふわっとした歌い方なのが特徴的。歌自体は上手い方だと思うけど。
3.ヒカリ ★★★★
いきなり仰々しいアレンジになる、シライシ紗トリとの共作曲。割とベタに演歌チックなメロディ展開はいかにもドラマタイアップ。
「裸足のピアノガール」と呼ばれる割にピアノがまともに聞こえる箇所が少ないが、自分の個性よりドラマへの適性を優先したのだろうか。
Aメロはかなり音符短めで歌っており、歌詞のうえでの意味の切れ目も極力合わせて区切りを作っている。真面目だね~。この辺が大塚愛との違いか。
ティンパニの連打で煽って突入するサビはストリングスが行き交う豪華絢爛な感じだが、
裏声でかなり声量が落ちるので肝心なところで盛上げきれてない印象。
4.The Best of My Life ★★★
M1同様マイペース系のポップス。これもシライシとの共作だが、アレンジ的には何かレミオ×コバタケみたいな印象。
しかし曲はバレバレすぎる展開を避けて作り込んでる感じがする。派手なアレンジではないので1聴目の印象は地味だが、一番長く聴けるのはコレかも。
詞も背伸びがなく、自分のお気に入りのキュートなフレーズとかを猛プッシュして話の軸がブレるような一人よがり感もない。
真面目に作詞してるのは伝わるが、独特のセンスとかはあんまり見えてこないかも。
5.Popping ★★★
ピアニストがアップテンポのハネ曲を作ると大抵こんな感じになるといった印象の、aikoの「花火」とかそんな系統の曲。
ベースラインが半音ずつ下ってくるBメロとかもaikoっぽい。
軽快なドラムとそつのない曲展開で流れるように各メロが紡がれ、ここが勝負どころといった仕掛けもなくサラッと終わる。
メロディは正直ベタだが、最初っから他人を模倣してるというより、自分は自分でイチから作ったけど結果ありがちな感じになったという印象。
6.桜日和 ★★★
音が全体にエ段に寄ってくるような歌い方に違和感があるが、丁寧に作り込んだポップス。
松たか子とかが歌ってそうな、王道な歌謡メロディをポップスっぽいアレンジで囲ったノスタルジックな曲。言わばまさにJ-POP。
サビメロと同じフレーズを他の楽器で弾いたりする感じがお腹いっぱいなベタさ。
「この位でいいか」という妥協の匂いがするというより、「こんな感じがいいのかな?」と反応を窺ううちにベタになってる印象。なんか職業作曲家みたい。
「君と僕と桜日和」というサビのフレーズが、なんか桜日和という焼酎のCMのよう。
7.ゆびきり ★★★
またもやまったりポップス。Aメロの思いつめた感じの歌い方が今までと雰囲気が違う。
歌メロの音符が全体的に長くなり、アレンジも今までよりスッキリしている。
メロディだけ聴くと随分ベタに聞こえるが、その気になればもっとコード減らしてお手軽にできる部分にもちゃんと手を加えてる気はする。
しかしいかんせん地味。決してレベルが低くはないんだが。
なんか音数が多すぎも少なすぎもしないってのが一番地味かもしれない。
8.Crash! ★★★
変化を持たせる為か、ここでマイナー調のアップテンポ曲登場。また丁度よくありがちな感じに仕上がってるけど…。
本人のピアノもちょっとコテコテな感じ。それでもどうせならギター入れずにピアノをガンガン前面に出した方が方向性がハッキリしたかも。
ていうか昔はそういう作風だった気がする。
裏拍に小気味良く音を配したベースが格好いい。目立たないけどずっといい動きしてんすよね。
「ああもう訳わかんない」と歌ったサビは、本当にやりたい音楽とウケる音楽との板ばさみ状態ゆえの生々しい苦悩の表れか。
9.regret ★★
ドラムの刻みを細かくしたせいか、何となくちぐはぐな印象のマイナー調ポップス。
歌は今作でもかなり力強いほうだが、曲になんら特徴はない。ピアノの出番が減ってアコギとストリングスが増えたため、近年のYUIみたいなアレンジになっている。
自己嫌悪を歌った詞もステレオタイプで、結局自分を美化するような鼻につくオチになる訳でも、聴き手がドン引きするほど自虐的になる訳でもない。
自分を出しすぎないように周到にセルフコントロールしてる感じ。
理性的ではあるけど、あんまり自分のことを不特定多数に喋りたくないタイプなのかも。チームメイトとか仕事の同僚としてならやりやすそうだけど。
10.Flower ★
ドラムが打ち込みになり、今作の既聴感のピークを迎える、超ありがちな90年代ポップス。
詞曲含め、岡本真夜とかのアルバムにいっぱい入ってそうな曲。
別に変な曲ではないが、この人でなくても書ける曲だし、何というかアルバム曲すぎるのでは。
流行りに流されない硬派な人なのかもしれないが、結果こうなっちゃうならもう少し自分に無茶ぶりして色々試してよかったのでは。
11.かけがえのない人へ ★★★
Bメロへのつなぎが格好いい、お馴染みまったりポップス。
アレンジはどうしても似たり寄ったりになってしまうようだが、無理なく次の展開を引っ張ってきたり、自然にイントロへ戻したりするのは巧みな印象で、
派手で強引なキメに頼らずに違和感無く曲の流れを作れている。
作曲は上手いけど、やはり本当はまだやれそうというか、自分出しすぎをセーブしてる印象。
12.そっと、さよなら ★★★★
ラストは大塚愛のバラードといった印象の昭和チックな曲。
ここまでと変わらず手堅くまとめた優等生な出来で、さほど奇抜な要素は無いが、急に感情が昂ぶったようなサビの転調はいいかも。
サビが終わり何事もなかったようにイントロのフレーズへ戻る時の、急に素のテンションに戻った感が寂しい。
この人の低音はいつも地声のようなミックスのような感じであんまり迫力はないかと思ってたが、この曲のサビでは普通に芯のある低音が出てる。
実は高度な歌い分けをしてるのかも。
総評.★★★
「裸足のピアノガール」という売り文句で活動するシンガーソングライター、星村麻衣の3rd。
曲は90年代のJ-POPをベースにしているが雑食性は無く、曲調の幅は狭め。
しかしレゲエ風とかR&B風とかラテン風とかのバッタもん要素がないため、印象としては正統派。
初期のエネルギッシュさは薄れ、年齢相応の落ち着きが出てきた印象で、
特に音楽に興味のない人も引き込む間口の広さがあるが、独自の星村ワールドを展開する気配は無い。
20代後半でしっとりした歌い方の歌手に合わせて、職業作曲家が曲を提供して成立しているような印象の作品。
まだ若い割に、作詞でも作曲でも、自分のセンスに酔って周りが見えなくなるようなワガママ自己満足な面がほとんど無い。
自分のピアノをもっと入れたいとかのこだわりも無い。
大学でピアノと声楽学んだだけあって、自分の感性よりも理論を重んじてるのかもしれないが、ここまで客観視が徹底してる人も珍しい。
今作はタイアップが5曲もあるし、事務所からプッシュされる事を事前に伝えられていたために、
彼女が空気を読んで、意図的に「変なラップもどきへのカウンター的な王道J-POP」という売れ線の作品を作ったのかも。
結果オリコン20位以内に入ってるし、まずまず狙い通りとは思うが、空気読みすぎて個性がおざなりになってる気が。どちらかというと職業作曲家が天職では。
とにかく特に個性は無いが大きな欠点も無い。ていうか詞とかで自分独自の色を出した時に、思ってもない形でいじられたりするのを嫌ってるのかも。
勝手に曲げて解釈しようのない、隙のない作風で固められた、客観的セルフプロデュースな作品。
ただ、一見単に曲調に変化をつけるために挟んだようなM8が、実は彼女がこっそり忍ばせた本気の悲鳴だったとすれば奥深いかも。
ジャングルスマイルの「抱きしめたい」に登場する、隙がないようで本当は負の感情をため込んでる女の子みたいな。
色々あってこうなった作品だとは思うが、出来としては要はすんごい普通のJ-POPな1枚。
(★5個が満点。)