アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : おだにみさこ。

Reviewer:11th. 541-542 名無しのエリー2006.02.13.

1.眠りの歌(Single edit) ★★★
8thシングル。アコギの綺麗なしっとりとした、子守唄のような優しい曲。歌詞の世界観がかなり独創的で、深く考えさせられる。
「眠りの歌」なんてタイトルとは裏腹にこれ寝る前に聞くと眠れなくなる。
2.39.5℃ ★★
アコギメインのバンドしてるアップテンポなナンバー。
英詩曲。夏の汗ばむ熱気が伝わってくるみたいだ。この頃はそれほど英詩上手いと思わなかった。
3.雨は涙 ★★☆
曲の構成的には2.と似た感じで、明るめ。逆にタイトルや歌詞は後ろ向きで、そのせいか不思議な印象を与える一曲。
4.光の穴 ★★★
ピアノ弾き語りっていうイメージの強い小谷美紗子だが、この曲もアコギメインのバンド曲。
メロで盛り上がり、歌詞がだんだんと切なくなってくる構成が秀逸。幻想的な世界観も良い。
5.他人 ★★☆
ようやくピアノメインのナンバーに。しっとりとして暗い曲。
残酷で現実的な負の感情を、ストレートな感情をそのまま言葉へぶつける、そんな小谷節が活きている。
6.魚 ★★★★
アコギとハープで彩られる綺麗な曲。タイトルどおり、涙や海など、水を上手く使った歌詞の比喩表現が光る。この曲大好き。
7.四季 ★★☆
ベストに収録された人気曲。それもそのはず、サビの表現(比喩含む)が尋常じゃない。
四季がどうのこうのというか、もうここまでいったらエグいくらいの表現力が目に突く。
8.カラカラのブルース ★★★
珍しく前向きな歌詞の曲。独特のネガティヴさがそれほどない、珍しいナンバーかな。
決意表明みたいな感じで、強くも寂しい曲。
9.edelweiss ★★
9thシングル。童謡「エーデルワイス」のカバー曲なんだけれど。かなりクオリティ高し。
本気で自分の歌にしているあたりは、流石だと思う。
10.鼓動 ★★★☆
アコギの音が妙に重く響くナンバー。冗談じゃなく、引き裂かれるって陳腐な表現を使いたくなるくらい切なくなる。
サビの感情をそのままぶつける言葉や、2番Bメロの煙草の下り。これぞ小谷節。
11.紫式部 ★★★★★
問答無用の名曲。この人が「死」をテーマにすると、凄い曲が出来るんだよな。『母の日』とか。
死別した愛する人に捧げる鎮魂歌。歌詞の骨格に、死者が眠る土とその上で咲く花を持ってくる。
この表現力と発想には脱帽の一言。また、アルヘジオで奏でられる音の一つ一つも切な過ぎる。サビの高音にも魂が入っているのが解る。
しつこいようだが、この曲は本当に凄い。
12.眠りの歌 ★★☆
まあ曲自体は1と同じなんだけど、スローテンポで曲の重みが増し、全く違う表情を見せる。
シングル版と違い豪壮で、この曲の雰囲気とめちゃくちゃ合っているアレンジなんだけど既に1曲目で掛かってる曲なので、感動が薄れるのが痛い。
総評.★★★★★★★★★☆(9点/10)
捨て曲無し。名盤。
ピアノソロ中心だったアーティストだが、今回からアコギ中心のバンド形態が増えた。進歩しているのが良く解る。
ドストレートな歌詞を多様していた彼女だが、今回から比喩表現を多用している事にも注目。
だが、ただの比喩では終わらないのが小谷美紗子であり、その比喩も絶妙の一言である。
10つけたいんだけど、頭とトリに同じ曲を持ってきてるのがちょっと連続再生に向かないって事で。
(楽曲は★:2点,☆:1点、総評は★:1点,☆:0点の計10点満点)

Reviewer:11th. 878 名無しのエリー2006.03.19.

1.まだ赤い ★★★★★
小谷美紗子の味が全て出ているといっても過言ではない傑作ナンバー。
『night』で進化した歯切れの良い英詩・曲自体の聞きやすさと、初期に見られた思いをそのままぶつける故に感情移入の質が半端じゃない歌詞。
その2つが見事にマッチ。特に大サビの「大好きだった~」のくだりからテンションが一気に上がる。
2.照れるような光 ★★☆
ミディアムテンポののんびりした曲。
ちょっと皮肉ってるような歌詞だが、サビの高音が耳に入りやすいので、思わず口ずさみたくなるほどキャッチー。
3.アイシテルノニ ★★★
「コンナニアイシテルニ…」と呟く、初期に多く見られた切ない恋愛の歌。
Aメロでピアノの音色で胸を突いて、Bメロ→サビの歌で盛り上げる構成が秀逸。
4.雨音呟く ★★★★
力強く、しんみりさせられるイントロのピアノが染みる。アルバム唯一のラブソング以外の曲。
サビの歌詞の比喩表現を、独特の歌い方で昇華させている。素晴らしい!
5.割れる笑顔 ★★★☆
無機質で暗い感じのする曲。大サビの盛り上がりが格好いい。
『Then』に収録された『Nowadays』とメロディーが似通っているのは何故。
6.春、遅し ★★★
全体的に切なく寂しい曲だが、AメロとBメロで曲の表情を変える。
曲の盛り上がりには欠けるが、呟くようにして締める曲の展開が良い。
7.儚い紫陽花 ★★★★
報われぬ恋心を紫陽花に被らせたラブソング、こう書くと陳腐だが。歌詞・メロディーともに文句なしの逸品。特にサビの歌い方は凄い。
魂を揺するくらいの高音で盛り上げて、呟きで締める。最高。
総評.★★★★★
伴奏陣が凄い。100sの玉田豊夢や山口寛雄、元ナンバーガールの田渕ひさ子参加。
小谷美紗子本人も格段な進化を見せた、物凄いクオリティを持つミニアルバム。ベタ褒めだが、欠点らしい欠点はラブソングに偏りすぎている、くらいだ。
『night』には見られなかったストレートな小谷節の復活、上達した英詩、豪華な伴奏陣。
全てが融合し、傑作を生み出した。小谷美紗子を知らない人にでも胸張ってお勧めできる、素晴らしい一枚。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:19th. 498-502 名無しのエリー2008.10.01.

1.Out ★★★★
ピアノトリオらしからぬ重いベースが鳴るリフでスタート。そこにベン・フォールズ・ファイブのような軽やかなロックドラムが絡む。
ベースの弾き込み度合も凄い。ミドルテンポだが濃い曲。メロディも良い。なんか上手いと思ったら、リズム体は100sの山口と玉田。
こりゃいいバンドだ。
2.How ★★★★
引き続きピアノリフが印象的なロックナンバー。演奏にライブ性があり、サビのキメでのプレイも色々合わせ方を試した結果良いものを残した印象。
とにかく実力があるのでその辺は自在なのだろう。要所で絡ませる、欲張り過ぎないストリングスも良い。儚いような怖いような小谷の声もインパクトがある。
油断してるといきなり弾き込んでくるベースも凄い。ホントにいいバンドだコレ。
3.Who-08- ★★★★
ウェットなギターで始まる、今作中でもかなりポップな曲。
シンバルの音が心地良いシンプルな8ビートに、やはりシンプルな電子音が乗るすっきりした作り。印象としてはクラムボンに近いか。
ひたすらシンプルなリズムを繰り返すピアノと、リズム体の表情の変化の対比も良い。敢えて途切れ途切れに歌ったようなサビも切ない。
4.雪でもいい ★★★★★
王道ピアノポップ。
小谷の日本語は何だか発声が鳥居みゆきのようにたどたどしくて怖いのだが、英語を歌わせるとハマっているので、本来英語で歌うべきシンガーのように思えてくる。
Aメロでの引きつけたプレイからBメロでボーカルと一緒に歌うよなラインへ移行するベースといい、
絶妙にシャッフルがかったビートルライクなフィルを叩くドラムといい、バンドはやはり良い。
さらにこの曲はメロディも抜群に良い。スウェディッシュ・ポップのような普遍的な美メロとレノンのような憂いの美メロを組み合わせた2段構えのサビは非常に贅沢。
曲名の使いどころも何やら凄い。食べるんだ…。
5.照れるような光 ★★★★
他曲に比べ歌を前面に出した印象の、今作中では割とシンプルな曲。
サビで少し奥まって鳴る田渕の歪んだギターが、心に後ろ暗いものを抱えたような詞世界にマッチしている。
「悲しみをさげすみを 裏切りをありがとう 私を歌わせてくれて 生かしてくれてありがとう」
歌い方も相俟って鬼気迫る感倍増の詞も強烈。
終盤ではいきなり死という言葉を持ち出してくる。詞曲どっちも濃いなこの人。
6.春遅し ★★★★
みんなのうた等にたまに混ざる、怖い童謡のような曲。「冷たい風や うろうろするなよ」という言い回しからして童謡っぽい。
歌い方ももちろん怖い。一応揺れる恋心の歌だが、中島みゆきのようなメロディラインとの相乗効果で普通のラブソングと一線を画した出来に。
なんか何やってもそれぞれ面白くて外さないな…。気持ちに白黒つかないまま混沌としたアウトロへ突入して終了。
7.楽 ★★★★
ここでグッと渋いソウルナンバー。アルバムのなかで静の役割を担う部分か。
ロック色の強い曲が多い今作だが、ブラックな曲でも自在のアドリブ性で演奏を組み立てていて聴き応えがある。
ライブの度に異なるアレンジを聞かせてくれそうな曲。
8.mad ★★★★
軽快なドラムとキャッチーなメロディが印象的なポップな曲。
そのままで1曲貫徹しても充分いい曲だったと思うが、途中でテンポアップして更に突き抜けたポップさを演出してくる。
曲を書いているのは小谷だが演奏面では3人が対等の立場という印象で、
上手い人が集まってしかも束縛が無い状態での演奏の魅力を存分に発揮している感じ。
9.YOU ★★★★
他曲に比べピアノが強く、ある意味最もピアニストの曲っぽいマイナー調ラブソング。AメロからBメロへの仕切り直すような繋ぎが面白い。
Bメロでは、ラブ・サイケデリコがよくやるような、メロディの最後の音程が曖昧な感じの歌い放ちを披露しており、これもいい感じ。
しかし音としては英詩のほうが聴き心地が良いが、ここまで聴いた感じ小谷は詞が強いので日本語で歌わないと勿体無いようにも思えてくる。
10.Rum&Ginger ★★★★★
キンクスで言えば「Situation Vacant」のようなUKマイナー調ピアノロック。全英詩だが、浮気男を直情的に問い詰める内容だとは思わなかった。
切れのある歌メロが格好良く、Cメロも含めてメロディはバッチリ。シンバルをガンガン入れるパンキッシュで思い切りのいいドラムも絶妙。
これだけメロディが強い曲でここまで印象的なプレイが出来るベースもさすが。
山口寛雄というとavexの売れてる人達に楽曲提供してる人、という印象が強かったが、こんなにベース上手いとは。
11.消えろ ★★★★★
ジャズ・メッセンジャーズの「チュニジアの夜」のような派手なドラムソロで入り、各パートとも今作中最高級のテンションで疾走するアッパーな曲。
ピアノは分からないがリズム体はベン・フォールズ・ファイブより上手いのでは。
ベースは大暴れしているが、弾き易い手癖フレーズばかり弾いている印象は無く、いちいちラインが格好良い。
小谷の歌も今作中最も情熱的。曲名もカッコイイ。まあ「痛いの消えろ」という歌だが。
いきなり「どうせいつか必ず死ねる」といった具合に生死を引き合いに出してくる、途中をまるっと省略した感じも彼女らしさが出ている。
12.雨音呟く ★★★★
ラストは真摯なメッセージのバラード。出だしから田渕の激情ギターが鳴る。
今作中では曲自体は普通な部類だが、その分詞の強さが印象的。
「今日も学校や会社で負けてきたよ でも明日も行ってくるよ」といった真っ直ぐなメッセージがこんだけテクニカルなバンドから出てくるのは意外。
作曲や演奏に長けてくると大抵詞に意味を求めなくなってくるものだと思ってたが。
もしかしたらそもそもがメッセンジャーで、現状でもかなりメッセージ性が薄まってしまった後なのかも。
昔の曲を知らないが、取り敢えず今の音だけ聴くと今まさに非常にバランスが良いように感じる。
心の内のわだかまりを泣きながら少しずつ吐露して清算していくような、ネガティブの向こう側のポジティブを思わせる曲でアルバムは静かに幕を閉じる。
総評.★★★★★
小谷美紗子が山口寛雄、玉田豊夢とのピアノトリオ編成で発表した3枚のアルバムから選曲し、新曲を追加したベスト盤。
オリアルを1枚も聴いた事がないが、ベストにありがちなとっ散らかった感が無く、
それでいてバンド演奏を追及する限りでのバリエーションには富んでいるため、オリジナルアルバムのように違和感なく聴ける。
数曲で田渕ひさ子等のゲストを迎えている以外はシンプルなトリオスタイルだが、非常にプレイの密度が濃い、ライブ映えしそうな曲がズラリと並ぶ。
裏を返せば、聴いていると本人達の演奏姿が浮かんできてしまうので、映画やドラマの主題歌として別の主人公のバックで流すのには向かない気も。
作曲面では極端に奇をてらった要素があるわけではないが、和洋とりどり高いレベルでこなしており隙が無い。
作詞では回りくどい言い方をせずに短絡的に生き死にの話になるのが特徴的で、性を扱う時のジャングルスマイルのようにいきなり間合いを詰めてくる印象。
省略された過程が怖いが、そこに想像を膨らませる余地があるという意味ではエッセイスト的な簡略文の美学といえるかも。
歌では体力的な面よりも表現力に秀でており、折々で原田郁子風だったり中島みゆき風だったりするが、総じて何だか怖い。
個人的にはこの怖さを他との差別化の重要ポイントとしてプラス評価しているので全体に高得点だが、
可愛い声を第一に音楽を聴く人にとってはまるで選択肢にない存在かも。この声こそ可愛いという人も勿論いると思うが。
何にしろ実力で正面突破の正統派なので、ある程度の好みの壁は超えるのでは。
海の向こうでも当たり前に鳴るような普遍的な価値を備えた1枚。
(★5個が満点。)