アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : ぱらだいす・がらーじ(とよたみちのり)。

Reviewer:24th. 119-123 名無しのエリー2010.09.30.

1.beauty ★★☆
サンプルのループに合わせてギターを弾いて歌う。
まあ、一曲目らしくそこそこの出来でちょっと地味な曲。
2.blue3 ★★★☆
サンプルのループの上で豊田さんが投げやりに歌っている。
不気味な女性コーラスと荒い音質がイイ!
3.invention of solitude ★☆
インスト。いろんなものがグチャグチャに混ざってる。
4.チョコパ ★★★
ぼんやりとした、美しいメロディ。豊田さんの友達が「いけるで」と言ったというのも納得の出来。
でも正直単調だし、印象が薄いのです…。
5.五体満足 ★★★★★
猛烈な勢いで迫ってくる低音に物凄い気迫と切迫感を感じる曲。聴いてるだけで頭がおかしくなりそう。
歌詞も凄い。「障害者」というデリケートな言葉をここまでナチュラルに使えるのはこの人ぐらいのものでしょう。
6.移動遊園地 ★★★★★
名盤である次作「奇跡の夜遊び」への布石のような弾き語りトラックがこのアルバムには幾つか収録されている。
これもそのうちの一つ。そして紛れもない名曲。最後の大サビでの声の裏返りにも神懸り的なものを感じる。
7.Electric Kiss ★★★
一瞬凄いグチャグチャな曲に聴こえるし、実際そうだけどなかなか良いメロディしてるんです。
後半では一転、ギターとボーカルが全然噛み合わない凄い気持ち悪い曲に変貌する。
8.隣人Bossa ★★
ボサノバ。前田くん。
9.LOVE on the beach ★
サンプルのループと尾崎さんの喚き声に乗せて、
弓場さんが「インポにだってセックスする権利があるんだ、でももう僕はダメ」と訴え続ける2分24秒間。
10.家族旅行 ★★★★☆
暖かい感じのする綺麗なメロディ、繊細で叙情的な歌詞、たまに入る不安感を煽るSE。
凄い形容しがたいけれどこれも確実に名曲です。でも少し単調かもしれない…アウトロのハーモニカが凄く良い。
11.Telephone Candy ☆
なんぞこれ?
12.デート・クラブ ★★★☆
音処理が無茶苦茶なリズムトラックや能天気なメロディなど特筆すべき点は幾らでもあるんですが、
松本亀吉氏による玉砕ラップとアウトロの生々しい語りが全て持っていってしまう。
13.サマー・ソフト ★★★★
弾き語り。宅録音源とライブ音源がミックスされている。後半の雄叫びがとてもカッコいい。
凄い良い曲だし、ライブ音源へのつなぎが絶妙で鳥肌が立つのだけれど、元が良い曲なので加工無しで普通に聴いてみたかった気もする。
14.海を知らない小鳥 ★★★★★
これも弾き語り。(但しコンビニの袋付き)そして紛れもない名曲。「コアファンからはリクエスト多い」らしい。
9分ある上、派手な展開は無いけれどとにかく曲と歌詞に引き込まれるので全く飽きずに聴き通せる。
15.ザ・ケンバン ☆
なにかの鍵盤をがんがん押して「ケンバン」って叫ぶだけ。
16.コニカのユミカ ★★★
スリーコードでアップテンポでポップな曲。歌詞もかわいらしい。
しかし間奏でいきなり不気味なテープノイズやら叫び声やら呟きが鳴り出す。変な曲。
17.夢の渚 ★★
長い上あんまり印象に残らない。悪い曲ではないけど…
18.Kiss in the TAXI ★★★★
気だるいサンプルに乗せて豊田さんがぼそぼそと言葉を吐き出す。
豊田さんなりのヒップホップ?ノイズを効果的に使っている。不気味なコーラスが激しく印象に残る。
19.通天閣, 1994 ☆
こっから再発盤ボーナストラック。通天閣のエレベーターに乗り、展望台へと向かうまで。
20.Blue Valentine's Day ★★★★
大滝詠一のカバー。
轟音。その中にキャッチーなメロディが存在する違和感。よく出来たカバーだと思います。
総評.★★★★★
関西生まれの天才、パラダイス・ガラージこと豊田道倫が1995年に出したファーストアルバム(の、再発盤)。
過去に出したカセット作品から良い曲をより抜いて集めた作品、とのこと。
再発盤では価格が2000円になってしまったが、オリジナル盤は価格が本当に1500円だった。
一言で言えば、とにかくグチャグチャで、でも芯が一本通った…はっきり言ってしまえば言葉では形容しがたいレビュアー泣かせの一枚。
フォークもあればタイトル通りロックもあるし、果てはボサノバもあったりして、ジャンル的には一貫性が全然無い。
更に楽器を持たずにサンプルをループさせただけの曲もあったり挙句自分で演奏してない曲があったりするし、
もうちょっとで個性とかが無くなりそうなギリギリのラインにある。
でもどれもがちゃんと「パラダイス・ガラージの曲」として成立している。何故かはわからないけど。
あまりにも特徴的過ぎる作詞とか、妙な音処理とか、ヘタウマな歌声とかがうまく作用しているのだと思う。
そこに彼独自のポップセンスがちょい足しされて、他に何処にも無い一枚、素晴らしいけど気持ち悪い一枚として仕上がっている。
少なくとも「他にもこんなことやってる奴いるわ!」とはそう簡単に言えない、変な空気が充満している。
というわけで、かなり癖の強い一枚ですが、あぶらだこやボアダムスなんかよりかは全然ポップなので意外と聴けちゃうかも。
あと、曲数も多くてライナーも充実していて(本人の手による各曲解説は必読)、歌詞カードも付いている再発盤を買うことを強くお勧めしたい。
余談ですが、もし「移動遊園地」「海を知らない小鳥」あたりが気に入ったなら、セカンド「奇跡の夜遊び」も是非聴きましょう。
ここら辺の曲で示された世界観が更なる広がりを見せる、素晴らしい作品です。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:24th. 559-562 名無しのエリー2011.02.20.

1.ベッドルームから愛をこめて ★
松本亀吉氏の「まあ、本当のことを書いちゃいけないのかなーとおもって、ちょっと、残念でしたね」という呟きが何度も何度も繰り返され、
そこにリズムマシンのチープな音が重なり、最初数十秒はエレクトロニカっぽく始まる。
が、歪んだ金属音のサンプルが入ってきたあたりで状況が一変。リズムマシンは暴力的に乱打され、やがてノイズが入ってきてムチャクチャな状態になる。
終盤は落ち着きを見せ、レコードの早回しと思われる音も入りやっと曲として展開しそうになる…
という所で豊田さんが「真心を掴める/そのときまで」ど怒鳴るように吐き捨てて曲が唐突に終了する。これが1曲目…
2.バーガー・ベイビー ★★★
80年代にアメリカで流行ってたディスコチューンを宅録のチープな機材で再現したような曲調。
何故か全カタカナの歌詞はなんかえらい気持ち悪い内容。何故か豊田さんはここではへんてこな裏声で歌っている。
へんてこな歌唱と気持ち悪い歌詞とチープながらポップな曲が全く噛み合っていなくて非常に気持ち悪い曲。
ずーっとギターの音が薄いまま展開していくので、アウトロのノイジーな展開は結構アガる。
3.ボールペン(in the U.S.A.) ☆
気持ち悪いアルペジオと豊田さんのちょっとした芝居と共にボールペンがテーブルに何度も転がされる音。
しばらくするといきなりノイズまみれの高速ロックナンバーがフェイドインしてきてあっという間に終わる。
この曲は上記の一連の流れを2回繰り返して最後に豊田さんが「USA!」と絶叫して終わる。約一分。
4.初恋のひとは近所に住んでいる ★★★★
イントロの気持ち悪い多重録音コーラスで面食らうが、全体としては初期パラガの匂いが強い良質な歌モノナンバー。
アレンジもイントロ以外はアバンギャルドなポップといった感じで気持ち悪さを感じるようなものではない。
歌詞の中にある「米買うときはみな同じ顔」というフレーズはたまに話題に上がる。
フェイドアウト間際にちょっとしたブレイクビーツが。
5.カーネーションならこんな毎日をどんな風に唄うだろう ★★★★☆
ドラムのサンプルループにあわせて豊田さんらしい綺麗なメロディと日常的な歌詞を紡ぐ曲。
この曲のメロはちょっとフォークっぽいので、結構いろんな年齢の人に受けがよさそう。コーラスもさっきと違って綺麗だし。
しかし後半で曲調が一変、なんだか日常の気だるさを思わせる重いメロディに。不気味な電子音と静かなノイズ。
歌唱ももはや呟きのような形になり、タイトルを2回連呼して「いつも寂しい…」「いつも嬉しい…」などという風に感情を列挙する、
というのを何回も繰り返すというなんとも重々しいものになる。前半と後半のギャップを楽しむ曲。多分。
6.待ちぶせ ★☆
怪しげなメロディをノイジーなギターで延々と紡ぐインスト曲。スライドギターの歪んだノイズが不穏な空気を演出している。
曲を聴いた後にタイトルを見ると、なんだか「待ちぶせ」という言葉が妙にリアルに感じられてちょっと怖い。
7.中学生 ★★★★★
この曲はベーシックな弾き語り。平常運転。いつもの豊田さん。
タイトル通り、自分の中学生時代を回想し、あの頃の僕は今の僕の中にいる、と歌う。
これは本当に良い曲。サビで思いっきり「マスカキ」という言葉が入っているけれど自然に聴こえるので気にならない。
曲中通して街の音が流れていて(野外録音?)、それがまた曲のメロディを良く引き立てている。
ラストは蛇足かなと思うのだけれど、この部分をカットせずに入れるのが豊田さんらしくて良いです。
8.中学生(reverse-1987) ☆
前の曲を逆回転したものに不気味な電子音がたくさん入ってるという…もう曲ですらない。
もうこれはただひたすら不気味。たまに右チャンネルだけ音が途切れたりするのがまた不気味。
9.あなただけに僕,愛されたいのです ★
洋楽のサンプル(元ネタ失念、2ヶ月ぐらい考えてるけど思い出せないこれ曲名なんだっけ…)に合わせて
豊田さんがひたすら「あなただけには僕,愛されたいのです」と繰り返すだけ。後半はノイズも入ってくる。
豊田さんのサンプリング曲が個人的に大好きなので本当は★5つぐらいの気持ちですが世間的には多分こんなもん。
パラガスレの過去ログで名指しで「悪い意味で忘れられん」と言われてたので、世間的には多分そんなもん。
10.二月生まれ
何の展開も無い爪弾きが9分半。閉口。
11.人間 ★★☆
最後の最後に最強に気持ち悪い曲。
とにかく気持ち悪いエフェクトがかかったボーカル、か細いギターによる不気味なメロディ、
小さな音で鳴り続ける電子ノイズ、不気味なようで少し孤独で日常的な歌詞と、とにかく気持ち悪い。
後半はブレイクビーツが小さな音で挿入され、気持ち悪さが少しだけ軽減される。
ラストは豊田さんの生声で、「人間って、何?」
総評.★★★
40分ぐらい入ってて11曲入りなのにアルバムではなく「Special EP」という扱いな時点で内容を察して欲しい怪盤。
しかし、実はこれがEMI傘下のレーベルでの第一作目なのだ。冒険しすぎ。スカムな豊田さんが好きな人は是非…
とりあえず初心者は聴くな!後悔するぞ!
(★:2点,☆:1点の計10点満点。tr.10は0点評価。)

Reviewer:24th. 485-490 名無しのエリー2011.01.07.

1.やっぱりあいつは駄目だった ★★★☆
重々しい電子音楽にノイズギターが重なり、やがて「やっぱりあいつは駄目だった…」という呟きが繰り返される。
一曲目からいきなり暗い。耳に悪そうな打ち込みの音が心地よい。
2.朝から晩まで ★☆
正直印象薄い。メロディーは良いんだけど。
後半で曲の後ろで打ち鳴らされるでたらめなドラムは結構インパクトある。
しかしあとでこの曲を思い出そうとするとそれしか思い出せない…
3.ボートに乗って ★★★
前半はチープな打ち込みに乗せて軽妙なロックナンバーが奏でられる。
しかし歌詞はなんというか…生死観?右チャンネルで聴こえる低音が禍々しい。
そして急に大音量で轟音ギターがはいり、残り1分ほどはその一音のフィードバックノイズが延々と続く。何も知らずに聴くとかなりビビる。
4.町の男 ★★★★
弾き語り。当時本人が「最高傑作」と綴っていたというエピソードもある佳曲。
なんせ、歌いだしからして「職安で見つけた仕事は 障害者の手摺を作る仕事」。
とにかく職場の町工場から逃げたことを生々しく綴る歌詞が強烈。
メロディは案外普通かもしれないけれど、震える歌声とよく合っていてとても良い。
5.友達のように ★★★★☆
これも弾き語り。ここで豊田さんの必殺メロディが炸裂する。
もし歌い手が豊田さんじゃなかったら滅茶苦茶売れてたんだろうなあこの曲。
「君」との微妙な距離を語る歌詞も素晴らしい。間奏でのギターの重なりが美しい。
間奏でボーカルが微妙にミスってるんだけど、そこをそのまま収録するところに好感が持てる。
6.高円寺 ★★★
弾き語り+ノイズギターや謎パーカッションといった感じの曲。メロディはかなりキャッチー。
歌詞がおもしろい。高円寺での日常のスケッチ。
7.キス  ★★★☆
なんか歌詞がいつになく生々しい。薄味なようで狂っているバックトラックが聴き所。
アウトロで鳴らされる不協和音がやけに耳に残る。
8.仕事 ★★★★★
出ました、超名曲。豊田道倫といえばこれ、という人も多いのではないか。
今にも立ち消えそうなボーカル、ギターの静かな響き、あくまで脇役に徹する打ち込み、単純なベースとすべてが完璧。
後半に出てくるキーボードのスタンダードな音や、たまーに入るきらめく様な電子音もナイスアシスト。
そしてアウトロで延々と鳴るハーモニカはもう感涙モノ。
歌詞はもはや何も言うことが無い。水上バス、という言葉に含まれた詩情を最大限に引き出した傑作。
これを聴かないで死ぬのはあり得ない。
9.東京湾 ★★
そして前曲の歌詞に出てきた水上バスが辿りついた東京湾…のはずなのだが、これはロマンの欠片も何も無いかなり気持ち悪い電子音楽。
東京湾にはいろんな粗大ゴミとか酔っ払いが吐いたゲロとか女の水死体とかが浮かんでるんじゃないでしょうか。そんな曲。
前曲が作り出した余韻を見事なまでに寸断している。
10.ラヴソング ★★☆
正直印象薄いなあ。結構良いメロディしているのだが…前2曲のインパクトが強いせいか。
「どーしてこーしてーあーしてみんなして」の連呼がなんかおもしろい。
11.ファッションヘルス、ガールフレンド、携帯電話 ★
ポエトリーリーディング…というか無秩序な単語を読み上げているだけ。街の光景のスケッチか?
バックトラックは前衛過ぎて何がなんだか。インパクトはかなり強いが。
アウトロでタイトル通り携帯電話が鳴る。
12.長い一日 ★★★★☆
単純なフレーズを延々と繰り返すだけのメロディがとても心地よい。
前半2分は歌入りなのだがそこから長いアウトロが始まる半インストナンバー。
おもちゃから録音したと思しき効果音や耳障りなノイズが美しいギターの音色と併走する様が面白く、
曲構成的にはとても単純なのだけれど、飽きずに聴ける。
13.見られたもんじゃないのよ ★★★
ここから数曲小品が続きます。
打ち込みに乗せてグループサウンズ風のメロディを奏でる。
しかし間奏で思いっきり打ち込みがズレる。その違和感が面白い。
14.逃げる男 ★★
ピッチを変えられたコロ助風のボーカルで綴られる謎多き小品。
サビでは気持ち悪いコーラスが大音量で鳴る。メロディは凄いポップなのに…。
15.知らない権利 ★★
メロディが凄い綺麗。しかし歌いだし以外印象には全く残らない。
後半は前曲に近い気持ち悪さを感じる展開になる。
16.ありがとう ☆
21秒間打ち込みと何かが転がるような電子音が鳴るだけ。タイトルが意味深。
17.約束 ★★★
全体的にはいろんなお遊び要素がある弾き語りソング。
もし君/僕が死んだら猫になってどうのこうのという歌詞もまあそこらへんにありそうでまあいい。
問題はアウトロ数秒。豊田さんの猫の鳴き真似が凄く気持ち悪いw
にゃーにゃにゃにゃあとか26歳男が真剣に言うのをあなたは聴いたことがありますか。この曲で聞けます。
18.髪型 ★☆
正直かなり印象が薄い。メロディもそんな良くない。
19.天神橋筋六丁目 ★★★
どことなくビートルズを思い出すイントロからして異彩を放っている久しぶりに長めの曲。
歌詞は「高円寺」と同じような日常スケッチだが、こちらの方が生活の描写が生々しく感じた。
ラスト2分の轟音展開は圧倒的。リズム感がぐでんぐでんな生ドラムもギターノイズに合っていて良い。
そしてラストのフレーズがこの上なくシュール。
20.早朝、女子アナの乳房に触れて眠る夢を見る ★★★★★
タイトルからしてインパクト大。一瞬ネタ曲に思われそうだが、内容はこの上なく重い。
独身男が見た夢を生々しく描写した歌詞を静かなメロディに乗せて荒い音質で綴る一大孤独絵巻。
「君の名前呼びながら声を出して泣いたんだ」という部分で何度聴いても気が滅入るが、これは名曲。
ちなみにタイトルのフレーズは曲中ではサビに使われているのだが、その歌声は医療機器の動作音を思わせるボコーダーを掛けられている。
夢からの目覚めを表現したかのようなアウトロが秀逸。
21.君とやるまで ★★☆
何故最後がこれなんだw
音割れした打ち込みに乗せて「君とやるまでは生きていかなきゃね」と言うことを伝えるだけの曲。
いや、いろんなことは言っているが基本的には本当にそれだけ。
アウトロで打ち込みがぶっ壊れてそれが大音量になってカットアウトでアルバムが終わります。
総評.★★★★
豊田道倫がパラダイス・ガラージ名義で1996年にドロップした、サードアルバム。
実はこの前にもう一枚「Bedroom Popsinger」という11曲入りのCDがあるのだが、
そちらは「Special EP」という扱いになっているため、これがサードということになるらしい。
で、内容はまあまあ素晴らしいのだが、問題はそのボリューム。前21曲、再生時間64分10秒。
この人の初期作品はとにかく詰め込み癖があり、コンパクトにまとまるのは「ROCK DREAM」以降からか。
まあ疲れる。とてつもなく疲れる。特に小曲が集まっているゾーンは精神的に辛い。
もっと印象に残らない曲を省けばかなり良い盤になったのではないか…とまあ、普通のアルバムでならそう書いて終わるのだが、
このアルバムの場合一概にそうとはいえないのが困る。
というのも曲の統一感だけはやけにしっかりしていて、アルバムとしては相当まとまっているのでどれかがかけたら完成度が劣りそうなのだ。
それに何よりこの過剰さを評価して自分は★4つという評価を下した訳だし、
でももっとすっきりしていれば、うーん といった感じでなんか冷静なレビューを書こうとすればするほど頭が痛くなってくる一枚。
とにかく「仕事」だけでも聴く価値あり。ベスト盤だとちょっと短くなってるくさいので、是非この盤で。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:24th. 308-311 名無しのエリー2010.11.13.

1.新宿 ★★★★☆
フォーク、あるいはグループサウンズスレスレのメロディなのだけれど、
アレンジのおかげで一切の泥臭さはなく、普通のポップソングとして聴くことが出来る。
ヤマジカズヒデによるエレキギターが素晴らしい。そして豊田さんはやっぱり良い声をしている。
歌詞もきっと多くの人が共感できる内容だと思う。
ちなみに曲中で聴こえるカメラのシャッター音は佐内正史によるもの。贅沢だ。
2.うなぎデート ★★★
軽快なロックナンバーに乗せて土用の丑の日にうなぎデートしよう、というコミカルな歌詞をさらっと歌い上げる曲。
それでも「おいしさ」についてドキッとするようなフレーズが唐突に飛び出してる、油断も隙もない曲。
曲中通して聴こえる軽やかなアコギは曽我部恵一によるもの。
曽我部恵一の無駄遣い…というフレーズが思い浮かんでしまったが、決して無駄遣いではない…はず…
3.いい湯~YOU~だな ★★
じんわり、ねっとりとしたフォークナンバー。
女の子と銭湯に行くという内容だが、「神田川」のそれとはかなり距離があるw
そして全男子なら共感すること必至のフレーズあり。途中の展開にちょっとついていけない…
4.恋ヶ窪 ★★★★
豊田さんお得意の弾き語りナンバー。この人は相変わらずストレートにぐっと来るメロディを書くなあ。
歌詞も素晴らしい。何気ない過去の恋愛をこんなに美しく昇華できるのが凄い。
アウトロのフェイドアウトも良い。恋ヶ窪、行ってみたいです
5.RIVER ★★★★★
ゆったりとしたテンポに乗せて夜の川の光景を紡ぎだす曲。
これはどんなジャンルになるのかなあ…ちょっとよくわからない。唯一つ言える事は、とにかく素晴らしいメロディーです。
4分ぐらいで終わっちゃうんだけど、ちょっと短く感じる。この雰囲気なら6分ぐらい出来たはず。
でもそれをあえて4分にまとめるところが素晴らしい。フィッシュマンズ好きな人とか聴いてみて欲しい。
6.長い手紙 ★★★
弾き語り。「恋ヶ窪」とは対照的に、こっちはノイズまみれのギターやアレンジによってかなり粗暴な印象を受ける。
イントロで聴こえるうめき声とも歌声とも取れない豊田さんの声、ピッチをいじった不気味なコーラス、間奏でのあまりに急な音加工、
長い手紙を読みたいとずっと言っておきながら最後にやってきた長い手紙を破って燃やしてしまう歌詞展開、
そして左チャンネルから流れ出す手紙を破り丸める音。とにかく強烈。
7.グッバイ・メロディー ★★★☆
これも「RIVER」と同じような、ジャンル分けに困るタイプの曲。一応バラードになるのかな。
とにかく受ける感想としては、ひたすらに悲痛。聴いていて途中で躓いてスキップボタンを押しそうになるほどに切ない。
メロディーはとても優しく、ピアノが弾く旋律もひたすら優しいのが却って居た堪れない。
あと、途中どう聴いてもドラムが失敗してるようにしか聞こえない箇所があるのだけれど、あれはいいのだろうか…?
そして歌詞カードで言えば最後の2行、このフレーズは凄すぎる。これはあなたの耳と目で是非確認してほしい。
8.35の夜 ★★★★
これもかなり悲痛な感じ。しかしアレンジがポップなので前曲に比べればかなり楽に聴ける。
あからさまに暗いメロディーも逆に安心して聴ける感じ。
Bメロ(になるのか?)のノイズまみれのアレンジが凄くカッコいい。アウトロもベタで良い。
9.東京の恋人 ★★★★★
邦楽史上にいつまでも残るであろうし、是非語り継がれてほしいとも思う素晴らしいポップソング。
メロディ、歌詞、アレンジ、全てにおいて素晴らしい。孤独も希望もある、中年ならではの視点で書かれた美しい歌詞。
アレンジはメロディの良さを最大限に引き出している。特に最後のサビでベースとピアノが一気に入ってくるところは何度聴いても鳥肌が立つ。
ラストでさり気なく入る川本真琴のコーラスなんかもう最高。そしてこの曲は豊田さんの声じゃないと駄目。
前2曲があまりにも悲痛だったため、この流れで聴くとこの曲の纏っている希望がより一層強く感じられる。
とにかく最高。盲目な感じですが、嘘は書いてないつもりなので是非聴いてほしい。
総評.★★★★★
豪華なゲストとサポート陣を駆使して作られた、豊田道倫、歌手家業10年目にして14枚目の傑作。
上でちょっとサポーターについての意見を書いた(>>295)ので、個人的なサポーター、ゲストについての感想をここで書いてみる。
よくあるアルバムとして、「豪華ゲスト陣参加!」という煽りでありながらふたを開けてみたら普通のアルバムというパターン。
サポーター/ゲストにはできること、出来ないことがあり、その点を見極めなければ呼んでも意味がない。
例えばミスチルの桜井にはやはりヴォーカリストとしての才能があるわけで、彼にドラムを叩かせてもあまり意味がない。
(え!?このドラム桜井なの!?的な驚きはあったとしても、それが音楽的な完成度に昇華できるかというのは少し疑問)
しかし、残念ながらそこらへんを見極めれていない盤というのが、この世には結構ある気がする…。
そこに来てこのアルバム。
一番いやな比較型の褒め方になってしまったけれど、それぐらいこのアルバムはサポーター、ゲスト陣の使い方を心得ている。
ソロ歌手ではなくバンドのアルバムを聴いている錯覚に陥るほど。
特筆すべきは久下惠生氏の素晴らしいドラミング。彼のドラムにより、このアルバムは名盤になったといっても過言ではない。
メロディはやはり完成度が高い。細かいことはしてないと思うし、むしろベタかもしれない。でもベタで何が悪い。ぐっと来るものはぐっと来るのだ。
また編曲にも静かに目を向けてほしい。ポップなようで若干前衛的。その配分がとにかく絶妙で、何度聴いても飽きない。
9曲収録で35分を切るスマートな構成も魅力的。長尺で見せるのも良いけどやっぱりコンパクトに纏まっているというのは良いことだと思う。
今回のレビュー、「あなたの目と耳で確認」「聴いてほしい」というレビューにあるまじきぼんやりとしたフレーズが頻出しましたが、
それは何よりもこんなクソなレビューでこのアルバムの魅力的な部分をネタバレしてしまうなんて下らない事はしたくなかったからです。
いろんなディスクガイド本に載らないのが不思議な2000年代屈指の傑作、聴いてみなイカ?
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)