Reviewer:21st. 66-70 名無しのエリー2009.03.06.
1.touch Me! ★★★★☆
良メロと安っぽくもよく練られた打ち込みアレンジの質がいい曲。
「私のこと何にも知らないくせに!」と聞き手にぶつけるようなテーマが彼女らしくなくて新鮮。
言葉選びからしても彼女らしくないので、逆にリアルな思いが伝わってくるようで緊迫感がある。
だがそれ以上にサビ最後の「catch me hear me feel me touch me touch Me!」の部分のメロディへのおさまりが壮絶に悪く、
聞き流していてもそこだけは凝縮されたメッセージとして結果的にやけに耳に残ってしまう。
何やら必死さは伝わってくる・・・ていうかそんなに切羽詰まってんの!?
「わかるよ わかる!」で小池徹平を思い出したのは自分だけじゃないはず。
2.一秒ごとに Love for you ★★★
前の曲のメッセージが何でもなかったのようにいつもの麻衣ちゃんの世界。布石にすらなってないのがどうも・・・まあいいか。
古めかしくもさわやかな夏向けロックチューンだが節々のエレキギターのもっさり感がマイラバの『ANIMAL LIFE』を思い出させる。
あれは曲自体が生クリームのごとくもったりしていたからギターもあれで良かったわけで、スピード感あるこの曲との整合性は微妙。
サビメロは陳腐だが、バンジョーのような音は面白い。段階的に下がっていくAメロや、ラップ調のブリッジも面白い。
「オーエーオ!」や「ナーナナ」などもダサ過ぎて逆に結構楽しめる。あっさり終わるのもヨシ。
3.Break the Tone ★★☆
無駄に派手じゃないサビいいね。最初は良質なAメロかと思ったくらい。力抜き気味な歌も気持ちいい。極上。
でも頻繁に入る英語の合いの手はどう考えてもいらない。せめて半分くらいに抑えてくれれば・・・。
そんなに英語使いたいんだったらタイトルコールの部分ぐらい「ぶれいくぅ~」なんて発音するのもやめた方が。エドはるみか。
4.夢が咲く春 ★★★★★
徳永暁人による、ベースやエレピ、愚直なシンセストリングスのイントロで始まる曲。
アレンジもメロディも全般的に盛り上げ過ぎず、まあ聞いていて楽しいポップス。そこだけに注目していれば。
問題はサビで「夢が咲く春ぅ♪」と何回も何回も連呼してくることで、1曲目のように強制的にそのフレーズだけが頭を回ってしまう。
締めの詞も「夢だきしめて」とか「夢の途中」とかなので、夢という単語が脳内でうっかりゲシュタルト崩壊を起こしそうな事態に。
「夢ってなんだっけ?」と考えたくなること請け合い。偶然なんだろうけどある意味で洗脳的な危険性を持つ曲。
しかもアウトロにいきなり今まで出てこなかった展開を持ってくるので、そこでハッと正気に戻るという仕組み。なんつー親切設計。
でも終わり際に謎の民族系パーカッション音が響いてて余計に不気味。何やってんだ徳永。
イメージとしてはキラキラ鱗粉を撒いていた蝶の倉木麻衣が、いつの間にやら謎の粉を撒き散らす妖魔になってた、みたいな感じ。
聞いた感触は軽いので聞きつかれず、何回でも聞いてしまう。恐ろしい中毒性。いや間違いなく考え過ぎなだけなんだけど。
5.I can't believe you!! ★☆
ブラックなR&Bっぽい曲。怪しげなイントロは良いがメロディが求心力に欠ける。アレンジも普通。
歌唱力で引き揚げて聴かせるべき歌だが、本格的歌唱力を持つわけでもない彼女にそれを求めるのは少々無茶かも。
ついでに他の曲よりブラックなのに詞世界が学校生活ってのも随分と無理なような。
6.Secret Lover ★★★★
と思ったら彼女の歌で成り立ってる曲が来た。
初期の彼女らしい、というか彼女の1stアルバムのとある曲をピンポイントで狙ったようなR&Bミディアムバラード。
3曲目と同じく、力を抜いて歌う彼女の声がとても心地いい。
特に、おそらくこの曲は元々の歌を拡張して、耳元で歌ってる感じに聞こえるよう録音してると思うので殊更。
そしてこの曲はメロディも良い。1つのサビ中には同じメロディを出さないなどと結構凝っている。
休符の取り方もうまく、いわば空気を楽しめる曲。「行間読まなきゃね」という詞が出てくるが、その通り。
7.Hello! ★☆
優等生なミディアムバラード。メロディはそれだけ見ればアルバムの中でもかなり良い部類だが、アレンジが普通すぎ。
NHKの子供向け自然ドキュメンタリーのタイアップとは言っても、これは・・・。
詞もなんだかちょっと。ABメロでは自然に感謝しているが、サビでいきなり「あなた」登場。
私をずっと見ていてねと言うものの、それ以降「あなた」の出番はゼロ。サビ丸一個費やした割にエッセンス程度!?
最後の「はろー!明日へ」も謎。なぜ平仮名?正直いろいろ説は考えられるけどその上で疑問。
ていうかなんかビックリマークのある題名の曲多いな。この曲もそうだけど、5曲目とか必要だったか・・・?
8.24 Xmas time ★★★☆
軽快なR&Bに男性ラッパーを交えた流行スタイルの曲。やると思った。
特別凝った曲ではないが、倉木麻衣が「クリスマス前に服装や何やで浮かれる女性」を過不足なく描写したことがもう驚き。
何時間も服や髪が決まらないなど、女性にとっては結構リアリティあるのでは。当方男なんで知りようないけども。
彼女がこういうことを歌うと毎年クリスマスを恋人と楽しむ余裕ある女性、というよりは
今年初めてクリスマスを恋人と過ごす予定なので必要以上に舞い上がる初々しい女の子、という人物像が浮かぶ。
別に悪かないが彼女の実年齢と比較したらちょっと疑問かも。言っちゃダメ?
かといってテルマや倖田、ミリヤやLil'Bあたりが歌っていたら間違いなく「リア充乙」の一言で斬り捨てられること間違いなし。
ラップの後ろでさりげなくジングルベルのメロディが出てきたり、実際結構楽しい曲ではある。
9.Catch ★★★★
雰囲気もアレンジもメロディも1曲目をリプレイしたような曲。おまけにタイトルまで似てるという・・・。
音的にはさらりと聞き流されるが、詞は思ったより冒頭から衝撃的。いわく「16、17と何もかもが輝いて見えた」。リアリティありすぎて嫌だ。
キャッチーな入口を作り、低音部の早口や格好よく決めたオチなど、サビはかなり贅沢な作り。
10.You and Music and Dream ★★★☆
事実上本編ラスト。大野愛果のペンによる、出来のいい正統派バラード。
他の歌手が出していたならいきなり萎えさせるタイトルだが、彼女はこれを平然と受け取らせる。特性だと思う。
「『あなた』をタイトルにしたいな、もちろん音楽も大事だから入れよう、あ、夢も忘れちゃダメだよね!」という風に
次々詰め込んでいったある意味優柔不断な製作過程がリアルにこちらに伝わってくるよう。実際は知らないけど。
ストリングスも使っているがそんな大仰でもなく凝った絡みでもなく、実にスタンダード。
まさに良メロを歌う彼女の歌に焦点を当てた歌。
11.TOP OF THE WORLD ☆
カーペンターズのかの名曲のカバー。
個人的にはオリジナルアルバムにカバー曲を盛り込むこと自体は別に良いとは思うが(まあ中島美嘉の4thみたいなのはアレだけども)、
この曲はただ原曲を忠実にトレースしただけのような・・・。
ほとんど遊びの余地がないので、わざわざこれを聴き込むくらいなら原曲を聴きたい。
12.夢が咲く春 -remix- ★
原曲の作編曲をした徳永氏によるリミックス。基本的にサビメロは単調な曲なので、そこ抽出して長々聞かされても苦痛。
一応テクノぽい雰囲気で、聴後感はスッキリしてて良いけどこの曲の価値はそこだけ。
逆に言えば、前の曲で終わらなくて良かった、とも。
総評.★★★☆
倉木麻衣の7枚目。スマートで良質なJ-洋ポップスが多くを占め、今までと同じく作業用BGMとして最適。
ただどういう心境の変化なのか、歌詞にリアリティというか訴求力が増し、今までと比べるとただ単にBGMで終わらせるのは少々もったいないかもという出来に。
とはいえこれはあくまで今までの彼女と比べてという被験者内の話なので、
今まで散々他のアーティスト(特にロキノン系)の難解で中身のある歌詞やストーリー仕立ての歌詞に付き合ってきた人には無用のことかも。
aikoとかその辺が好きな人ならばまだ聴きようがある気がする。たぶん。
サウンド的にも今更という感じで最近はテルマあたりがやってたりするので、それも期待しない方が吉。ていうか求める方が間違い。
ただやはり、昔から一貫して彼女の声は聴き疲れない。
本格的歌唱力でもなく飛びぬけて下手でもなく、なおかつ透明感のある声質はJ-洋ポップスのサウンドとよく合う。
たとえばザッハトルテを食べる際にはあまりに濃い味に途中で飽きないようにと脇に生クリームが添えられるが、倉木麻衣もまあそんな感じで、
ロキノンだろうがメタルだろうがロック音楽を聴いている時に合間に軽く挟むとロックに馴染んだ耳を思ったよりスッキリ、
手っとり早くほぐしてくれるので良いかも、という感じ。
そういう用途は全然アリだと思うし、個人的にも好意的に見たい。実際そういう存在の歌手は実はあんまりいない気もする。
特にこの一枚はポップとR&Bの中間点を探ったような適度な出来なので、誰にも聞きやすいんじゃないかと。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)