Reviewer:19th. 565-569 名無しのエリー2008.10.22.
1.DO ME MORE ★★★★
今作を象徴するような「まるでお伽話のようにフィクショナルな」官能の歌。
Nao'ymtらしい、黒くて、細切れなようで耳あたりの妙に滑らかな詞の(メロディへの)乗せ方。
聴いてると楽しいけれど、踊りながら歌うことを考えるとそれだけで酸欠。
2.Wishing On The Same Star ★★
ここからこのベスト盤でいう12曲目あたりまで、出す曲出す曲何かしらの試みが見られる。
この曲は小室離れして4枚目、SUITE CHIC始動直前の感動路線バラード。
曲自体に新味はないが、安室ちゃんの「脱コドモ」への試み(背伸び?)が見られる。
3.shine more ★★★☆
SUITE CHIC後の初シングル。試みは「本格R&B路線に舵をきる」。
力みすぎなところは随所にあるものの、思い切りのよい、勢いのある歌唱ぶり。既存の「アムロちゃん」色もほどよく残し、曲の展開もわかりやすく叫びどころも多数。
と、(ほぼ)最後の「アップテンポ且つカラオケユーザーフレンドリー」なシングル。
4.Put 'Em Up ★★☆
もう洋楽。アメリカ人。世界観から何からまるまる「向こうの音楽」を持ってきた曲。
そこが試みでもある。即ち安室ちゃんの「ゴリゴリに本気です」宣言。
わかりやすい可愛げやカラオケ親和性を削る挑戦は評価したいものの、この曲や次曲あたりは「そのまんま過ぎて、聴いてて照れちゃう」みたいな未消化感も。
5.SO CRAZY ★★
これ、このアルバムでいちばん好きじゃないな…おそらく声と曲の相性が悪いせいだと思う。
彼女の「攻めていきたい」という勢いと、曲の可愛さ(初々しさや少女性を求めるような)がちょっと食い合わせ良くなかった気がする。
なんかどっちつかずな耳あたり。試みとしては全曲同様「本格化の推進」というあたりか。
6.ALARM ★★★★
最初に聞いたときびっくりした。安室ちゃん本気だな!と。
音少ない、メロもコードも動かない。単調っていわれても文句言えない。尚且つかっこ良く歌うのはクソ難しい。
チャート争いに身を置きながらこれをシングルにする心意気。その試みはセールス的には結実しなかったが、私は全面的に支持したい。
7.ALL FOR YOU ★★
日本の歌姫さんがバラードを歌うと、楽曲のイタコか奴隷のような様相となる場合が多い。
ドMっぽいような我が強いような、湿っぽく押し付けがましい「あの感じ」はもう食傷だ。
この曲では歌唱はよく制御され、ゆとりがあって風通しがいい。安室ちゃんの成長を感じる。
凡庸なラブバラードが上記「あの感じ」に陥らないのは流石、だが曲は退屈。
試みは「今の一山越えたモードでバラードいっとく?」といったところか。
8.GIRL TALK ★★★★★
さあここから安室ちゃん無敵期スタート。とにかくボーカルがよくてよくて。
囁くような始まりから伸び伸びと声を飛翔させるように歌い上げる終盤までバッチリ。
試みは「背伸びをやめること」。曲に挑戦するのではなく、安室ちゃんにぴったりな曲を歌う。
とても寛いだ空気を湛えた曲だが、それを支える自信や確信はちょっと感動的ですらある。
9.WANT ME, WANT ME ★★★☆
これもM6同様、シングルで出したことそのものが試みみたいな曲。エキゾチックな曲調の、即物的といっていいくらい露骨な性愛の歌。
親とまともに聴いたらちょっと気まずくなるレベル。歌って格好がつくのは安室ちゃんくらいでは。
ちなみにシングルで切ったのは安室ちゃん本人の強い意向だそうで。
10.White Light ★★★
丁寧に作られた、可愛く趣味の良い、いい意味でふつうのクリスマスソング。
ど直球なシチュエーションを平易なことばと優しいメロディで、というところに余裕を感じるような。
何気に「フツーの女の子を可愛く歌う」という大きな試みもあり。
強さとか自立とかカッコよさとかいいや、クリスマスくらい甘えちゃえ、というのもまた余裕か。
11.CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK ★★★★★
試みは「フェミニンさの開放」。もう全開。可愛い可愛い。前曲に続き、恋する女の子を楽しく歌う。
しかし前曲が普遍的な、そしてステレオタイプな女性像を歌っていたのに対し、こちらは「安室ちゃんならでは」なお惚気ラブソングになっている。
可愛くて我がままで厄介で大人なような子供みたいな、そんな多面的な女性像がチャーミング。
12.Baby Don't Cry ★★★★★
恋に敗れ悲しむ女の子を慰め元気付ける曲。柔らかく包容力抜群。
かつて女子のカリスマと呼ばれていた頃、安室ちゃんの曲は女子を鼓舞するメッセージに満ちていた。
そして私たちはみんな、そのメッセージの発信者が彼女ではなく小室哲哉だと知っていた。
この曲の試みは「再び/今度は安室奈美恵として、愛する女の子たちを鼓舞する」ことだと思う。
軽やかで説教臭さのない、泣く子をあやす母のような歌唱がとても自然で優しい。
13.FUNKY TOWN ★★★☆
このころにはもう磐石。上機嫌な夜遊びアンセム。M8以降笑顔モードだった(M9は例外)が、この曲は久々の「笑わない安室ちゃん」。
しかし、ハードならハード、クールならクール一辺倒になりがちだった以前と違い、
ストイックどころかむしろゴージャスで遊び心あり、そしてフェミニンさもしっかり漂う仕上がり。
ちなみに、ダンス甲子園でおなじみLLブラザーズが参加。
14.NEW LOOK ★★★★
60年代、パステルカラー、ガーリー。などなど、ここに来て!なキーワードてんこ盛り。
固まりつつあったカラーを覆すような、何気なくとても意欲的な曲。
黒い音を全然聴かない、星条旗よりトリコロールなお嬢さんたちも思わず萌えたのでは?
低音に偏った平板なメロ、しかもブレスが難しく、カラオケにはたいへん不向きな佳作。
15.ROCK STEADY ★★★☆
アグレッシブな曲調に、余裕綽々のちょっとルーズなボーカルがマッチ。
色っぽく女っぷり上々。でも「60s 70s 80s」の中ではいちばん印象が薄いかも。
プロモで見ると、スーパーロングの髪を揺らして歌う安室ちゃんの画のBGMみたいに感じる。
かっこいい曲なんですけどね。
16.WHAT A FEELING ★★★★☆
初顔合わせの大沢伸一を迎えた、力強さの中に遊び心も満載なダンスチューン。
皆に「dancin' queen」と称えられるヒロインは踊る喜びだけでなく、スターの業も感じさせる。
心奮い立つような曲だが、「Mama said 踊りなさい/いつでも最後のステージかのように」の件は、聴くたびちょっとほろりとさせられる。
17.Sexy Girl ★★★
久しぶりに直球でクールな曲。上手く自己表現できない女の子の背中を押す曲。というとウェットな歌を想起しがちだがさにあらず。
アンチ・クライマックス的な構成のメロディにエフェクト多用のボーカルが乗り、挑みかかるようにハッパをかける。
ちょっと気後れしてしまうような応援歌。
総評.★★★★
小室の手を離れた後の安室ちゃんの歌は、ヒロインがどんどんいい女になっていく。
そしてそれは安室ちゃん自身に自然と重なる。曲と安室ちゃんの間に距離感がない。
その上、それらがセルフプロデュースの産物であり、しかも成功を収めていると。
まあ普通は「これ!これが本当の私なの!」という話になりがちなものである。それを「最高の虚構」の名の下にパッケージしてしまえるのが安室ちゃんの凄み。
彼女の辿った数奇な歴史や奇跡のような再生に思いを馳せて落涙するもよし、もちろん面倒なことなんか考えずただ楽しむもよし。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)