アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : のあのわ。

Reviewer:22nd. 186-190 名無しのエリー2009.09.19.

1.夜明け ★★★★
ピアノのコード弾きで静かに入り、大きなメリハリをつけて展開する賛美歌風の曲。
サビでキュピキュピ鳴るキーボードがSotte Bosseっぽくてキュート。
1番のマーチングドラムを2番でロックドラムに差し替えることで低音が厚くなるが、チェロ登場のタイミングに合わせたものか。
普通バイオリン使いそうなとこで何故チェロなのかと思ったらボーカル兼任とは。
ボーカルは大まかに言えば安藤裕子系で、完全オリジナルという感じではないものの、表現力は充分持ち合わせており、
何だかんだでこの歌い手ありきで魅力を発揮してるバンドに思える。
詞はテーマがデカく、ちょっと自ら浸ってる感じ。
2.SPECTACLE ★★★★★
一転、普通のポップスっぽく始まる曲。
ドラムが2拍目のスネアの裏に入れてるバスドラがタイミング早すぎて、リズムがヨレてるような。
つっこんだ分の帳尻を合わせるように4拍目のスネアを遅らせてるので、変な間延びが発生して余計に収集がつかなくなってる。
正直下手に感じるが、ベースもそっちに合わせてるので意図的な演出かも。でもフィルとかもカッコ悪いしなあ。どうなんだろ。
ギターのキメっぽいフレーズもしょっぱい。とか思ってるとサビでまたもミュージカル的な、希望に満ち満ちた感じの曲に変貌。
なんか冒頭から2曲連続でアルバムのクライマックスみたいな曲だが、どんなテンションの作品なんだろう。
この手の音楽をやるバンドにしては演奏技術が高くなく、いっぱいいっぱいな感じだが、
むしろその必死な感じが聴き手に演奏を最後まで見守りたい、応援したいという気持ちを湧き起こさせるのかも。
完全無欠な可愛げのないバンドの曲とはまた違った、危うさを内包するが故のドラマ性を有する曲。ライブ観たくなる。
これで本人達が演奏上手いと思ってたらイヤだが。
3.カエルのうた ★★
普通の3拍子ロックに北欧の民族音楽っぽさを足したような曲。ちょっとエレキが浮いてる感じ。
ギターあんまりいい仕事してないが、メインコンポーザーとしてバンドに貢献してるのでイーブンか。
例の大袈裟な感じを取り払うと、ちょっと編成の珍しいパンクバンドといった感じの面白味の無い音になってしまってる気がする。
カエル君の冒険的な詞は低年層向けの絵本っぽい感じを狙ったものか。
しかし「これは誰のせーい」とか「いらなーい いらなーい」とか、伸ばして歌ってるところをそのまま表記してるのが不思議系狙いすぎでウザイ。
4.ループ、ループ ★★★
キャッチーなサビを有する、普通のポップス寄りの曲。
キュピキュピのキーボードは気持ちいいが、技術もアイデアも半端なエレキギターとの相性は良くない。
運指の練習フレーズみたいなチェロのフレーズもやや退屈。チェロのことなど何も知らないが、これってあまり上手くないのでは。
詞は直情的で、自分の気持ちと相手への願望だけを並べ立てている印象。
二人の恋はそうまるで何たらかんたらみたいな詩人ノリがなくサッパリしているが、いろいろ過程を省略しすぎてて説明不足というか、自己完結的な印象。
なんか本人のパーソナルな部分も知らないと行間読みにくそう。
5.Melt ★★★
APOGEEとかがやりそうな、5拍子のポストロック風の曲。いい感じに掴み所の無いメロディが雰囲気出してる。
序盤の、いい意味で青臭いメロディからは想像しにくい振れ幅。いきなり普通の曲やったり、いい感じに訳の分からない多才さ。
こんな曲チェロどうすんだろと思ったら、おどろおどろしいカオスなソロがハマッててちょっとびっくり。
ただ、演奏陣が割と決まりきったことを黙々と繰り返す感じがいわゆるポストロックの奔放なイメージにそぐわず肩透かしな気が。
ある程度ライブ性があっていいのでは。ドラムとか複雑なパターン叩くことに気を取られすぎてハイハットの抑揚なくなってるが。
ほとんどの彼らの曲同様、未来に繋がる未完の曲として楽しむのが正しいか。上手くなってからのライブに期待したい曲。
6.グリュー ★★★
丁寧な歌メロの普遍的ポップス。
特に奇をてらった要素は無く、Yukkoの歌をじっくり堪能させる目的の曲に思えるが、ギターは歪ませる必要あったんだろうか。
エレアコも含めアコギが全く出てこないのがどうも違和感がある。他バンドより使い所多そうなのに。
ここまでの曲で最も歌とチェロが被るパートが多く、ライブで大変そうな曲。まあ弾いてないときは弾いてないときで弓がすごい邪魔そうだけど。
構成自体がダイナミックな曲以外はどうも演奏が淡白に聞こえるが、この曲は無機質な感じが狙いなのかも。
7.lastday ★
30秒弱の民族音楽的なインタールード。
8.星が見える日は ★★★★★
いきなりキラキラの80'sサウンドになるパンキッシュな曲。
スゲエ振れ幅。ジャンルを散らした効果か、曲自体の出来もやたら良く感じる。筒美がC-C-Bに提供しそうな曲。
Yukkoもドスを和らげた戸川純といった感じのハツラツとした歌い方で曲を牽引する。
アップテンポ苦手なタイプかと思ったらむしろ凄い適性。高音がうわずる感じが甘酸っぱい。
適度に荒いギターソロも、曲の中心を一本貫くリフを奏で倒すキーボードもナイス。海外の若手みたいな演奏センス。
曲調的には今のメジャーどころならカエラ辺りの領分だが、この1発だけで出し抜いた感のある曲。
9.Your Song ★★
一気にただのポップス。なぜだ…。これだけドラムの人が作曲してるからか。
耳馴染みの良いメロディではあるが、アレンジ面ではチェロの珍しさに慣れた耳を改めて感動させるような細工は無い。
むしろ昭和っぽいキメとか、例によって棒っぽいドラムが気になる。
10.Line ★★★★
大まかに言えばクラムボンの「サラウンド」とかの系統の曲。ベースの音作りも近い気がする。フレーズ的にはもっとシンプルだけど。
メロディも綺麗。ゴウの書くメロディは、よくある4小節目の最後が余ってしまう感じではなく、
4小節目の4拍目くらいから次のメロディの塊が頭を出すような作りが多く、連続性がある。
Aメロの歌を流用したようなピアノのリフも全編で顔を覗かせる活躍ぶり。歌も上手い。
しかしやっぱり終盤でドラムが単調になりすぎるか。なんかバスドラやシンバルの音量が均一すぎて盛り上がりきらない印象。
11.ゆめの在りか ★★★★
最後はやはり出た、馬鹿みたいに分かり易くダイナミックなミュージカル風の曲。Aメロではゴウの、小節を滑らかにまたぐメロディセンスが発揮されている。
Yukkoがタイプ的に、肺活量を見せつけるように何でもかんでも音符を繋げるタイプでないことがゴウのメロディの良さをさらに引き出してるのかも。
そして最後の最後にドラムが今までになく堂々としたプレイで大活躍。最後は締めた。なんかティンパニ重ねてるようにも聞こえるけど。
しかしバンドの持ち味とはいえ、やたらに感動を煽ろうとして大袈裟にタメたり、構成をくどくしすぎたりで、
ここまで食いついてた聴き手をも引かせる隙を作ってしまったような気も。サビだけ聴くと普通にポップなだけに、通して聴いたときに戸惑うかも。
合唱コンクール的な歓びの歌が潜在的に実は好きな人ならアリだが、その手の歌が嘘寒く感じる人に無理に薦めるのは酷な曲。
まあ最初っから飛ばしてたから、大トリはこのくらい仰々しくやらないと収まんなかったんだろうけど。
総評.★★★★
チェロを兼任するという珍しいシンガーを有する5人組、のあのわの2nd。
キャラで売る人と思いきや、Yukkoの歌唱力が意外に高く、賛美歌もポストロックも一本調子にならずにきちんと歌い分けている。
チェロの存在も面白いが、兼任の限界が来て歌とチェロどちらを取るかの決断を迫られたとき、チェロは絶対ないなという印象。
むしろ話題性のために後付けしたように思われがちで損してるのでは。無理せんでも専業シンガーとして充分力があると思うけど。
曲は大半をギターのゴウが手掛けており、中には平凡な曲もあるが駄作は無く、さらにいくつか突き抜けた曲がある印象。
他にもキーボードとドラムも作曲しているため、青臭いコテコテのメロディから浮遊感のあるクールなメロディまで意外と手広い。
あんまり同時に持ち得ない曲調を共存させてるとは思う。それらの全部が全部チェロを有効に使ってるとも言えないが、概ね活かしてるし格好はついてる印象。
作曲家としては一仕事してるゴウだがギターはパッとせず、音の面ではキーボードの荒山とベースのnakameが主戦力に感じる。
全体的に個人技よりも曲を構成するフレーズを鳴らすことに重点があり、派手なプレイは無いが、至極まっとうな判断だろう。
ドラムはやろうとしてることの水準が高いせいか他バンドより危なっかしく聞こえるが、この壊れそうになっては持ち直し、
感動のフィナーレまで辿りつくドラマ性こそがこのバンドの求めるラストピースという気もする。
マラソン選手を応援する気持ちになる。本人にとっては不本意な言われ様だろうけど。
詞はおっとりもドロドロもなく、ピュアで嬉々としてるので、ダメな人はどうしてもダメだろう。
端的な感情を放ってくるフレーズが多く、ハキハキしていて、本人の躍動感のある歌い方にはマッチしている。
ていうか曲調がこうなら詞もこうならざるを得ない気がする。
総じて自らのセンスに体のほうがまだついていかない印象の作品。将来に期待できるし、今は今で面白いバランスになってるのでは。
結局の所ボーカルが大きいので、安藤裕子系という形容で既に気構える人には不向き。打ち込みの端正なビートが好きな人にも。
(★5個が満点。)