アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : ふゅー。

Reviewer:18th. 81-85 名無しのエリー2008.05.18.

1.CLOSED ★★★★★
透明感のある、さわやかな一曲。「名曲」にカテゴライズされる一曲だと思う。
明るさでは多分このアルバムの中で一番。Phewの歌声も伸びやかで、聞いていて心地よい。
ただし歌詞は「心ある人に 鞭 打ち 宙ぶらりんの空中ブランコ 一心不乱の 離れ ワザ」という暗めのもの。
しかもそれを繰り返すだけなので、やや不安定な気持ちにはなる。
「えー、余裕で暗いじゃん」とか思ったそこの人、これからこのアルバムはもっと暗くなるよ…
2.SIGNAL ★★★★
いきなりでかい音が鳴るんでびっくり。民族音楽風の暗いメロディ。
でも音がたくさん入っていて賑やかなのでそこまで暗さは感じられない。ギターの音も入っているし聴きやすい。
だがそこにPhewの歌声と言葉が入ってくると一気にやばい雰囲気になってくる。
「渋滞の渋滞の渋滞の渋滞/逆立ちの人、人、人、人…」
3.DOZE ★★★☆
前曲の明るさから一気に静かな薄暗い場所に来てしまった…。
もそもそとした低音、遠くで響くドラムの低い音、そしてPhewの歌声…胸に不安感がたまっていく…
聴くものを脅かすように電子音やタンバリンを揺らしたような音が時折入る。
聴いていてなんか泣きたくなってくる。夜、廃屋に一人取り残されたみたいな…
4.DREAM ★★★★☆
さあピアノ弾き語りですよ。暗いのは相変わらず。遠くで信号音のようなものが鳴り響く。
ベースの音のようなものやギターの哀愁ある響き、ブランコが軋むような音が入り、悪夢の色を濃くしていく。
「きっと悪い夢のつづき なんとかなると高括り 精こめて ゼロを重ね今日も 明日と変わるはずはない」
など聴いてて嫌になってくる歌詞ももちろん炸裂している。
5.MAPPING ★★★★
いきなり鉄板を叩いたような音が大きく響き、民族音楽風のリズムが響く。
リヴァーブがやばい塩梅にかかり、生理的な不安をあおる。「なんでこんなもん聴いてるんだろう」みたいな。
管楽器の音色もいつもの明るいそれではなくお化け屋敷のセンサー式の仕掛けのようなおどろおどろしさをもって響く。
その他電子音とかすべての音色が聴くもの不安感を煽る。「入口の中、出口の外…」
6.AQUA ★★★
形容しがたい音が鳴る。
そして遠くからPhewの「らーらーらーらーらーらーらー…」という映画「風の谷のナウシカ」のあれ並にやばい歌声が響いてくる
…が前曲に比べれば余裕で明るく聞こえる。
「ガラスは割れても透けている」とか「足元で立つ霜柱 瓦礫のガラス」など透明感をテーマにしたと思しき作詞。
このアルバムの中ではやや地味な出来かな。
7.P-ADIC ★★★★★
ここにきて疾走感抜群のナンバー。久々に聴いててノれる曲。というより「ノる」という感覚すら忘れていた。
しかしそこに明るさはない。テンポが速いだけで明るさはない。ノリながら死にたくなってくる。
「行ってしまえ 消えてしまえ 見えなくなってしまえ」と攻撃的な歌。時々イヤーな電子音が鳴る。
ただここまで鬱屈していた感情がやや解放されるのは確か。個人的に大好きな曲なので採点はやや甘め。
でもそれを差し引いても良曲。前の曲からこの曲への流れはアルバム中でも明るい部分だと思う。
8.FRAGMENT ★★★☆
また暗い世界に来てしまいました。しかし前2曲のおかげでやや楽に聴ける。
ドラムの音とベース音が曲中通してなっている。Phewの歌声もエフェクトは弱めで普通に聞こえる。
と思いきやいきなり遠くで歌っているような深いエコーがかかったり。
曲の中盤で何度か入ってくるバイオリンの音色はこれ以上ないほどに不安感を煽る。
9.CIRCUIT ★★
エピローグ。聞き覚えのあるメロディー。そう、これは一曲目「CLOSED」の電子音。
聴いてて安心する。やっと悪夢から抜け出れた、見たいな…
でも、曲名は「CIRCUIT」、そう、「一周」ということ。抜け出れたつもりでいるだけでここは実はまだ悪夢の中なのかも…
10.DREAM(alternate version) ★★★★
ここからの二曲はボーナストラック。
まず説明。このアルバムは全曲西ドイツ・ケルン郊外のコニー・プランク・スタジオでレコーディングされた。
で、エンジニアはホルガー・シューカイとコニー・プランクだった。もちろんミックスはその二人によって行われた。
しかし、収録曲中2曲のみ、ミックスが日本で田中信一さんによって行われ、アルバムにはそれが収録された。
その2曲というのが「DREAM」と「AQUA」。しかしこの2曲、実はドイツですでにミックスが行われていた。
で、ここにボーナストラックとして収められた2曲はドイツでミックスが行われたバージョンということである。
話が長くなった。レビューに戻ります。
日本でミックスされたバージョンでは前面に出されていたピアノが後ろに追いやられたり前面に出てきたりと不安定。
またPhewの歌声はエフェクトの類がほとんどかけられていない。まるで部屋の中で歌っているような。
その他の音も日本でミックスされたバージョンに比べると幻想的な色が薄く、やや現実的な音に聞こえる。
ギターの音色の不安定さは日本でミックスされたバージョンにはない感じ。どっちがどう、ということではなく単純に面白い。
でも自分は日本バージョンのほうが好きかな…。
11.AQUA(alternate version) ★★★★
まず演出が全然違う。形容しがたい音で始まるのは一緒だが、響いてくるのは歌声ではなく不穏な音色。
そしてドラムの音がフェイドインしてくる。Phewの歌声もどこか脅かすように響いてくる。
機械が動いているような不穏な音。ぐにゃぐにゃした質感の低い何かの音。バイオリンの軋み。金属音。
日本バージョンよりもクオリティは上だと思う。不穏さが段違い。
ちなみに日本バージョンに入っていた映画「風の谷のナウシカ」のあれ並にやばい歌声は一切登場しません。
総評.★★★★★
名盤。その漢字2文字がここまでふさわしい盤もそうそうないんじゃないかってくらい名盤。
80年代というとアイドルポップとかBOOWYとかそういうのが世間的印象かもしれないが、その裏ではこんなにもやばい盤ができていたんですね。
伝説のバンド「Aunt Sally」が解散した後にPhewとホルガー・シューカイが生み出した狂気の1枚。
精神に何か患ってる人に聴かせたらマジでヤバい事態になるんじゃないかって位暗い。
なのに中毒性とある程度のキャッチーさがあり、でも聴くとやばい状態にトリップできるアルバム。
このアルバムの不安感はお化け屋敷に似ている。
しかもお化け屋敷に入っている時の恐怖感ではなく、お化け屋敷に入る前、順番待ちで待たされていて、
もう料金も払ってしまったので後戻りもできない、あの瞬間の異常なまでの緊張/恐怖/不安とこのアルバムを聴いた時の感情はものすごく似ている。
暗いもの好きからニューウェイヴ好きまで様々な人に聴かれるべき、そしてもっと評価されるべき1枚。
今の知名度はあまりにも低いと思う…(まあここ最近ほとんど活動してないってのもあると思うけど…)。

(後述レス)
ちなみに歌詞カードは付いてません。なので心の準備ができず言葉が聞き取れると過剰なまでに不安になります。
あと不安感が高まる要因として殆どの曲がフェイドアウトで終わるというのもあるとオモ
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)