Reviewer:20th. 77-82 名無しのエリー2008.11.18.
1.翼 ★★★
ポジティヴかつアッパー、いかにもなオープニングナンバー。ある意味新生レミオロメンの決意表明か。
勇気を翼にして一歩踏み込むよ、というくすぐったいほど真っ直ぐな詞に違和感が。そういうバンドだったっけ。
メロディも何だかベタで間延びしてる気が。サビ前のキメもお約束的で、神宮司のフィルもしょっぱい。
しかしサビでの前田の、妙に音粒の良い、ビリビリと感電しそうなベースが非常に気持ちいい。
型通りながら盛り上げ・盛り下げを丁寧に作り込んだ王道なアレンジで、大きく展開するDメロを印象的に聴かせる作りになっている。
2.オーケストラ ★★
ソロシンガーの曲のような安全イントロで入る、ミドルテンポのポップな曲。前曲に引き続き、レミオロメンの普通宣言ともいえる癖のない曲。
コバタケのアレンジはレベルが低い訳ではないが、やはりマンネリはあると思う。
節々で「あるある」と思ってしまうアレンジいっぱいの、今年イチオシの普通曲。
ちなみにサビだけ聴くと「ほしのパラダイスオーケストラ」というバンドのテーマ曲のように聞こえる。
数々のコラボをこなしたスカパラがついにオッパイとセッション!もはや楽器じゃないが、スカパラが不可能を可能に…!意外と面白そう。
3.ランデブータンデム ★★
まだまだ続く普通路線。この迷いのなさは一体…。70分超の今作だが、この先ずっとこの調子だったらどうしようかと早くも不安になってくる。
キャッチーなサビメロと、ありがちな韻踏み遊びが普通感を醸し出すポップな曲。出来に不具合は無いが、これといった特徴も無い。
レミオでなくてもいいのでは、という気が。
むしろ自ら「僕らはもはや何者でもない」と言い放って古くからのファンに背を向け、人ごみに消えていく彼らの姿が浮かんできそうな曲。
4.リズム ★★★
職業作曲家が特徴の無いタレントシンガーに提供する曲のような、無難でポップな前田曲。
前作ではクレジットを見なくても藤巻曲と前田曲の区別が何となくついたが、今回は二人の曲の区別がつきにくい。
元々前田は3ピースにこだわらない感じだったのが藤巻との違いだったのだが、今作では藤巻曲もバンドっぽくないせいか。
メロディは定番だが、序盤からコバタケアレンジを活かし、全体を通してもピアノやシンセを華やかに鳴らして表情豊かで重厚な曲に仕上げている。
前田はもう3ピースのスタイルに未練なさそう。神宮司も要求通りなのか本望なのか、普通なプレイ。
5.透明 ★★★★
サウスロック調のまったりとしたバンドサウンドにメロディアスな歌メロ、きらびやかなアレンジという組み合わせの曲。
1st時のコステロのレミオ版といった感じで、かなり新鮮。こういう曲を書くとは予想外。
DメロやEメロが登場する複雑な曲が多い今作中では作りがシンプルで、何度も巡る堂々としたサビが雄大で気持ちいい。
3人で再現しても面白いかもと思える数少ない曲のひとつ。
6.蛍 ★★★★
アコーステッィクな出だしから、予想通りサビでアレンジが壮大になるバラード。
「七月の雨に打たれて」と始まり、蝉にお囃子、蛍と夏目白押し。
詞世界の季節感がしっかりしていることが彼らの特徴とはいえ、ここまで来ると自らを客観視してパロディ化してるように思えてくる。
サビの「今、逢いに行けたら」が七夕に掛けてあることが2番まで聴かないと分からないのが勿体無いが、
描写のAメロと直情的なサビという作りも含めて何だかんだで詞はいい感じ。
3人で再現するのは完全に無理な曲だが、自分の曲が壮大になりすぎてバンドのキャパを超える部分で上手くコバタケを利用しているといえるのでは。
ミスチル同様、自分達でアレンジをこなしきれないのでコバタケにつけいる隙を与えてるともいえるが。
力強さを増した、女々しくもぶっきらぼうなボーカルも魅力。ボーカリストとして伸びしろがあるとは思わなかった。
コバタケの目の付け所は良かったかも。
7.青春の光 ★★
バンドサウンドを前面に出した、暑苦しいギターと手数多めのドラムが印象的な曲。
「ここは何処で俺は誰だ」というサビは迷走心理の表れだろうか。
個人的には彼らは迷走どころかすっかり腹を決めたような印象を受けたが、半端にバンドっぽいこの曲に限っては確かに迷いが出てるかも。
歌メロの音数に対してドラム等の音数が多すぎるサビはメロディが間延びして聞こえる。
8.RUN ★★
全てのJ-POPの丁度平均点を割り出そうとしたかのようなノーマルポップ。詞も曲も普通。
詞や曲が悪いという訳ではないし、ベースなどは非常に理性的なプレイなのだが、普通のメッセージを少しひねってこそのレミオロメンだったような。
バンド名の「レ」の字はレディオヘッドから取ったということらしいが、既にその時からいつかこういうポップな曲をやろうと思っていたんだろうか。
最初からこうだったらデビューしてたんだろうか。
9.星取り ★★★
アコギとピアノ、パーカッションをメインに始まり、途中からバンドの音が加わる歌謡曲チックな曲。
女性視点で描かれた、今更な感じの演歌的な詞世界だが、藤巻の声との相性が良く、味わいがある。
歌い尻とか結構余韻なくブツリと切ってるのだが、それがまた独特で良い。
自分の歌唱スタイルを肯定して、上手く歌うよりも自分らしく歌おうとしている感じがする。
10.もっと遠くへ ★★★
非常にストレートなメッセージとコバタケらしいストリングスアレンジが印象的な曲。大元の曲自体は普通で、かなりアレンジに依存している。
こういうバンドで出来ない曲を書きたいからコバタケと組んだのか、昔のようなバンド然とした曲が書けなくなったからこうせざるを得ないのか。
前田はむしろこの手の曲の方が力を発揮している気がするが、ドラムは別に神宮司でなくてもいいような。
というかもっと引出しが多くてアレンジ負けしない人に代わるならそっちの方がいい。今の路線なら。
曲自体は藤巻の歌が上手くなった、というか色濃くなったので意外と聴ける。
彼はゆっくりした曲の方が向いてる印象。実際今作はゆっくり曲だらけだが、それでも問題なしという感じ。
11.Merry go round ★★★
必然的にギターでなくピアノにメインリフを弾かせるため、よりバンドっぽくなくなる印象の前田曲。
前田は作曲をそつなくこなすが、それ以上でもそれ以下でもない感じ。作りが典型的すぎるというか、今までになかったものを作ろうという意欲が薄い印象。
彼がメインの作曲者だったらレミオはここまで来れてないと思う。
1月の雪も6月の雨もひっくるめて四季を登場させ、世界が続く限り君の笑顔を照らすと歌った藤巻の詞は、
別に珍しくもないようで実は彼らならではの面白さが出てる気がする。
彼らが季節の歌を多く作ってるおかげで、藤巻が3月の花とか8月の空とか歌うたびにその時期に合った彼らの代表曲が浮かび、レミオ走馬灯状態になる。
さすがバンド界のカレンダー職人。
12.茜空 ★★★★★
誰もが秋の夕暮れを連想する曲名で、春の桜並木の夕焼けを描いた意外性が面白い曲。
いいこと言ったかと思うと「そう 春だから」とか「もう来ないから」といった愛想のない簡潔な言葉でピシャリと締めるサビも面白い。
詞だけ見ても結構面白いが、歌が乗るとなお面白い。
Aメロの優しい歌い口調には表現の幅の広がりを感じるし、サビでは得意の女々しくもぶっきらぼうな歌唱が炸裂。
ピッチの怪しさも手伝い、不穏なものが渦巻くような正体不明の迫力を醸し出している。
大外からフジファブリックの世界に繋がってしまったようなこの物の怪感。
暑苦しいゴッホのタッチで桜並木の夕暮れを描いたような、荒々しくも不気味な存在感のある曲。
聴いてると落ち着かない気分になるが常習性がある。
13.Wonderful&Beautiful ★★★
不完全なものを愛して欲しいと歌う詞世界が前曲と相性抜群の曲。テーマとしてはありふれているが、この流れだと説得力がある。
巻き舌気味に男臭く歌ったかと思うと、声がひるがえりそうな不安定さを見せたりと、不器用なりに自分の歌唱スタイルを作り上げた藤巻らしい詞。
曲もまた絶妙に不完全な感じで終わる。
メッセージがストレートだから曲も自然とそうなるのかもしれないが、やはり曲自体はもう少しひねりが欲しいか。
14.幸せのカタチ ★★
リズミカルな歌メロと軽快なドラム、ホーンアレンジが絡む、爽やかな曲。
盛り上げ、盛り下げの構成もいつものコバタケといった感じで、ミスチルの時と区別なし。
ジャムセッションをしながらアイデアを出し合ってアレンジを決めているというより、おおよそのことを最初に決めてその通りに演奏してる感じ。
曲ラストで急に「出会ったから」「奇跡だから」といった感動系の言葉を連発してたたみかけてくる。やりすぎでは。
15.花火 ★★
どれだけ花火が好きなのか、曲中に花火が登場する今作中3曲目の曲にしてついに曲名になった曲。
サビメロは綺麗だが裏声が声量不足で軽く、ラストまで来て藤巻のボーカリストとしての実力に再度疑問符を付けたくなる。
これはさすがに「味がある」とはいかない気が。
サビの繰り返しのところやラスサビ前の転調時等、ベタにも程があるアレンジが何度か登場するため、割とうんざりする。
この曲に入る前までですでに70分を超えてるし、ラストでベタ曲はきつい。やっぱりアルバムが長すぎたのでは。
総評.★★★
いつになく小林武史のプロデュース色が強い印象の、ナムコのゲームみたいなタイトルのレミオ4th。
身も蓋もないことを言ってしまうと、そもそも作曲の時点で3ピースでやるような曲じゃないといった感じの曲がズラリと並んでおり、
印象としてはバンドからソロになったソングライターが30代後半くらいで出したような落ち着いた作品。
3人でもそこそこ再現できそうな曲はほぼ無く、3ピースという形にこだわらない幅広いアレンジを取り入れている。
藤巻の曲はDメロやEメロが登場するものが多いので、段階的にカラフルなアレンジを施すために色々な音を欲しがる考え方はもっともだと思うし、
確かに3人の音だけでは曲がもっとマンネリしてただろうとは思うが、困ったことに結局コバタケがマンネリしている。どうなんだろうコレ。
コバタケがバンドサウンドを抑えるように指示してるんだとしたらもっといいアレンジしてやるべきだし、
普通な曲しか書けなくなった藤巻がコバタケのアレンジをあてにしすぎてるんだとすれば、
もっと3人でやれることをやって、たまにはギターソロくらい入れるべき、といった所だが、どっちがどうなのかは分からない。
とりあえず両者が歌ものポップスを作ることで一致した作品ではあると思う。
昔のファンからするともうレミオロメンじゃないとか、仮にレミオロメンだとしてもレミオロメンという名のソロだとか言われそうな出来だが、
これはこれで良い曲もあるので、バンド路線もポップス路線もこなせる器用さがあったと言えるのでは。
そつのない前田に比べると神宮司はポップス路線向きとは言えないが、彼らが初期の音に回帰することがあるとしたら多分神宮司が働きかける時だけだろう。
藤巻のボーカルは個性が強くなり、個人的にはそれだけでも聴く価値があると思うほど面白くなったと思うが、
一層キモくなったとか癖が無い方が良かったとかいう意見も多そう。
あらゆる面でもう戻れない分岐点を通過し、これで良かったような、もう取り返しがつかないようなグレーな気持ちになる、心が揺れる1枚。
1聴目が薄いので我慢して繰り返し聴ける人向け。
(★5個が満点。)