アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : たしか。

Reviewer:24th. 202-209 名無しのエリー2010.10.29.

1.ヌーの休日 ★★
ボーカルとドラムだけで始まり、半分キメみたいなギターとベースが加わってくるオープニング曲。
コードにこだわりがあるのか、単なるメジャー、マイナーでなくM7とかadd9とか使ってくる。
同じ音を曲中ほぼ鳴らしっぱなしにする感じとか、なんか考えて作曲してるような気がする。
取り敢えずこの曲は単なるパンクもどきなのでそういう響きはいらないように思うが、ハーモニーにこだわりがあるならどこかで結果を出してくれるだろう。
あとはそういうちょっと色気を出したオサレコード使うなら、人並みの演奏技術は欲しいところか。歌詞も曲名から期待した感じとは若干違った。
自分はヌーの生態など大移動しか知らないので、そもそも出勤日のないヌーの休日をどう定義してるんだろう、
おやすみ=死でヌーの壮絶死の話にでもなぞらえて何かのメッセージを発する詞なんだろうか、とか色々考えたが、
結果ヌーが登場しないどころか意図的に分かりにくく仕上げた詞でガックリ。
語彙としては普通だけど文章の流れをわざと不自然にした感じの詞。
歌聴いて何言ってるか分からなかったから詞を見たのに、テキストでみても意味不明。
でもなんか深く考えてはいるんだろうし、別の曲で成果を出してくれるだろう。と、この時点では思ってました。
2.ゼンマイ ★
1曲目を受けて連続スタート。
前曲のキーを引き継ぎG#add9で始まり、9度を鳴らしたまま途中で5度の音が半音上がる。G#augadd9とでも呼ぶのだろうか。
正直気持ち悪い響き。しかもそこまでやっといて歌メロもベースもノーマルのG#メジャーで構わないようなごく普通のライン。
なんか腹立つ作曲。何のためにコードひねったんだろう。
結局ここでのadd9にあたるA#の音は前曲同様曲中ずっとテンションとして鳴らしているが、単に奇をてらったオマケという印象で、全く必然性がない。
出来上がった曲が普通だったから付け焼き刃でそれっぽい鳴りにしてみた感じ。腹立つ…。
別に背伸びしなくても、パワーコードだけで済むようなメロだと思うが。
歌詞がかなり具体性を廃して読み込みを誘ってる感じなので色々推測して楽しもうかとも思ったが、
曲がこうなら詞もどうせ虚勢だろと思えてきてやる気を無くす。
ギターもわざわざ高めと低めに役割分担してコードストロークを重ね録らんでいいのでは。6本ある弦を同時に弾けばそこそこ音が埋まると思うが。
ここまで分けるならもう1人ギター要るだろ。
ベースも弦の上っ面をペチペチはじいた音をムリヤリ大音量にしたような、芯のないピッキング。
ドラムは序盤のシンバルワークは雰囲気があって良いが、普通にバスドラとスネアで構成するパターンに移行すると、途端に迫力がなくなる。
スネアも弱いが、キックが弱すぎるのが致命的。歌も高音出なさ過ぎでは。
3.人間1/2 ★
シンコペーション連発のイントロで一気にV系みたいな印象になる、アッパーな曲。Aメロのベースの、特に低音時のプレイがヒドイ。
今までも色んな人をレビューで下手下手書いてきたが、それらは一応「プロとしては下手」というつもりで書いてきた。
しかしここのベースはアマに混じってもヤバイのでは。音粒が悪すぎる。
しかもキメっぽいフレーズになる2番Aメロでは、ダウンとアップの1往復で楽に弾けるせいか、逆に音量が大きくなりすぎている。
抑揚の意識についても無頓着で雑。
ソロっぽく8分弾きを前面に出すパートもあるが、やはり小節の頭の1音目以外はどこがアクセントなのかハッキリしない、だらしないプレイ。
ギターも例によって無意味な小細工コードを繰り出す。
別にメロはマイナーペンタ一発だろコレ。キックが弱いのが気がかりだが演奏はドラムが一番まとも。と、この時点では思ってました。
4.HERO ★
シンプルな演奏では基礎技術の脆さが露呈してしまうことを知ってか知らずか、
出来るだけキメとか挟みながら変化に富んだアレンジにしようと努力した跡がみえるビート系の曲。
でもメロディ楽器的な動きをしてるうちはまだしも、普通に8分を刻むとベースは本当に下手。かなり危険。
でもオカズとかは積極的に入れてるあたり、ベースの華はそこだという美学の持ち主なのだろう。個人的にはそう思わないので小西の印象は悪いが。
ギターも歯切れが悪くて音汚いし、ソロもとてもソロと呼べる代物ではない。1小節に1音ずつチョーキングしてるだけ。キメも揃ってない。
全体的にドラムが前めで、ベースが遅れ気味。
内訳をみるとバラバラなリズムなのに全体のテンポは走りもモタリもしないあたり、ほぼ間違いなくクリックを聞きながらレコーディングをしてると思われるが、
小西は自分でリズム取ってるというより、クリックが鳴ったのを確認してから合わせて弾こうとしてるのでは。
体験上、聞こえてから合わせようとするとピッキングのモーションの分だけ遅れる。
歌詞もこだわりはあるんだろうけど、サビとか全然詞が聞き取れないのに最後に「そうだろう?」って言ってるのだけはっきり聞こえたりしてイラつく。何がだ…。
自己完結に徹するならそれはそれでキャラだと思うが、同意を求めるならもうちょい歩み寄って、伝わる作詞をすべきでは。
テキストだけで見てもどこからどこまでが一文のつもりなのか分かりにくいので、歌い方で区切りがわかる仕組みなのかと思ったんだが、
歌聴いてもまるっきり一緒くたでなおのこと分からない。深く踏み入って欲しくないというメッセージを発してるようにすら感じる。そうだろう?
5.黄色いカラス ★
曲名を知らないがバンプの曲みたいなイントロで入る。
なんか八ツ目イカだか娘イカだかが押しかけてきて、追い返そうとするけど最終的に和解するやつ。調べたらイカじゃなかったけど。
それにしてもバンプのフォロワーというのが出てくる事自体は別に不思議ではないが、詞じゃなくて曲のほうに影響を受けるもんなんだろうか。
あれってメッセージ重視すぎて図らずもエレキフォークみたいになっちゃった、という生い立ちの曲調かと思ってたが。
でも歌詞がすごい長いことから察するに、もしや作詞も影響受けてるのかも。かなり印象違うけど。
バンプの場合は装飾的な部分はともかくメインの筋は説明的過ぎるくらい分かりやすく書いてたが、tacicaは不自然な文章を連発しすぎて共感の足掛かりもない。
散ったメッセージ性の破片を聴き手が能動的に拾って無理に感動するしかない。
ボーカルも問題が山積み。プロペラみたいな声質はいいと思うが、どうにもブレスを入れすぎで聴き心地が悪いし、意味が切れる。
「物」を「モ」と「ノ」に切る人とか初めて聴いた。リズムへの乗り方も重くてもっさりしてる。
ドラムもイントロのハイハット16分で明らかに遅れが聞いて取れるが、出来るようになってからやりゃいいのでは。
6.サカナヒコウ ☆
もうリズムが汚すぎて詞を聴くどころでなくなるスローテンポ曲。予想はしたが、速い曲なら誤魔化せても遅い曲ではリズムの不安定さが露骨。
ベースは調子こいて和音弾きとかしてるけど、そんな場合じゃないのでは。
クリックに頼りすぎていて、自分がクリックより前に来てしまったらその後の音符を後ろにずらして帳尻を合わせたりしているため、
もはやクリックなしでレコーディングしてるバンドより気持ち悪いリズムになってる。
プロに対して何様のつもりだ、言うほど狂ってねえよという意見も当然あると思うが、
スネアのタイミングとか結構分かりやすく前後にズレてるのでテクノとか好きな人ならすぐに違和感を感じると思う。
普通のバンドならリズムのガイド的な役割になるはずのハイハットもかなりボロボロ。
せめてキメを揃えたいところだが、みんなクリックに対するノリ方が違うので縦のラインもろくに揃わない。ここまで一体感がないとは。
7.ウソツキズナミダ ★
クリーントーンのギターで爽やかに始まるミドルテンポの曲。
他曲に比べリズムの粗が目立たず、背伸びギミックも少ないので、自然と詞に耳が行くが、いちいち繋ぎが不自然で本当にイライラする。
「メロの塊ごとに、前半は意味ありげな文脈でヒキを作るが後半は意味不明にする」というルールでもあるかのように感じる。
何かあると思わせたいだけの作詞という感じで、直球で深みの無い詞よりよっぽどタチが悪い。
最初のサビとか「僕を守る為に今夜 創った明日分の嘘が」という前半部分までは、久々に共感できる詞を予感させるのだが、
続きは「迷い出した人の頭上に 飛び回ってもいいのにな」となってしまう。無理にこじつければ筋が通らないこともないが…。
自分の都合でついた自己正当化の為の嘘でも、自分に自信の無い迷える人に聞かせればそれこそが真理のような印象を与えることもある、とかか。
でも「飛び回ってもいい」の部分の上から目線っぽい要素が消化できなかったな。
何にしろ思わせぶりだけの詞を作る才能という意味では猪狩は凡人と違うものを持ってるかも。
8.バク ★
またもバンプの何かの曲を思わせるAメロが来る、アップテンポ曲。ていうかこれを聴くとバンプのほうがどんなメロだったか思い出せなくなる。
サビメロはサビメロで今作の別の曲と区別がつかない感じだし、
キー音に対して9度(というより2度)の音を延々鳴らしっぱなしにするアレンジも別の曲であった気がするし、色々混乱してくる曲。
Aメロの締めのキメとかBメロの途中のキメとか、ビチビチ合わせようとしすぎてカッコ悪いし流れが止まりすぎる。
歌もブチブチ途切れすぎるしリズムも雑すぎる。もう歌も演奏もダメすぎる。
これでこの長ったらしい詞を全部歌い切るまで聴き手をひき止めようというのは虫がよすぎるのでは。
他のプロの演奏聴いてどう思ってんだろう。もしや「バンプも下手だから俺らも下手でいい」では…。
それでもドラムはともかくベースはもっと何とかなるんでは。歌しか聴いてないフォロワーなんだろうか。
9.Silent Frog ☆
まんまフォークみたいな、コードを全音符でジャーンと鳴らすアコギで始まるフォーキーな曲。それでも変なブレイクを入れるアレンジは変わらず。
単なる下手に留まらず、アレンジの幅のなさも致命的。何にもしない曲。普段何聴いてんだろう。バンプのみってことは無いと思うが…。
詞も相変わらず、いくら真面目に聴こうとしてもすぐに何の話してたのか分からなくなる。
ある文が終わらないうちに全く違う文を割り込ませ、その繰り返しでうやむやなうちに曲を終わらせようとしてる印象。
歌詞そのものは長いので意味ありげにも思えるが、むしろそこが「歌詞が長いのに意味が無いなんて有り得ない」という人間の心理につけ入った罠に思える。
そこまで込み入ったことをわざわざ考えないようにも思えるが、何しろ技術的なことをナメ切ってるバンドなので、否定的な見方にならざるを得ない。
10.アースコード(ver.118STG) ★
車のバッテリーとかに繋ぐアース線のことかと思ったら「地球全体が奏でる和音」的な意味の「アースコード」だった。
最後だから壮大な感じにふっかけたかったんだろう。メロ的には今作中ではいい方に入る気がするが、どっちにしろ演奏がヒドイ。
ベースはついに今作中ずっと、長7度と9度とオクターブを行き来するような、ミスチルの中川みたいなオカズばかりを貫き通す。
別にブラックミュージックみたいなフレーズを期待する訳でもないが、二十代半ばの奏者としてはあまりに引出し無さ過ぎでは。
ドラムも特にサビで大荒れ。タムをドコドコ入れるタイミングがまちまち過ぎる。
スネアのタイミングもバラバラで、小節の頭すらも突っ込んだりタメすぎたりで不揃い。
クリック聞いてんだからそのくらい合うだろ普通。音符間の間隔がバラバラでオフビートが全く出てない。
強弱表現とかがまともな分ドラムが主戦力っぽくはあるんだが、弱点が多すぎでは。しかも地味な練習で補える種類の。
総評.☆
ギターボーカルの猪狩を中心とする3ピース、tacicaのメジャー1st。
まず演奏が全パート下手。味気ない打ち込みでもこれよりはビート感がある。練習音源。
こういう風に自分達の演奏を録音して、ああここでズレるんだなと皆で話し合って、
さあここから上手くなっていずれはプロを目指そうという、そのスタートのための音源。本来は。
プロに入ってからこんな事されちゃ他の人達はたまらんだろうなあとは思うが、
やってしまった以上はこれを反省に繋げて技術を向上していくのが本人達の務めか。
二十代半ばのtacicaがこんなもんなら、同年代かそれ以下でもっと弾けてる他のバンドは実は修正しまくりなんじゃないかとか、
スタジオミュージシャンがわざと初々しい感じに弾いて代役を務めてるんじゃないかとか、色々と負の想像をしてしまう。
勿論確証はないが、そんな気にさせる程このバンドのリズムの気持ち悪さには真実味がある。
下手なのは本当に彼らだけなのだろうか。どっちにしろ彼らが下手なのは揺るがないけど。
楽曲の傾向については、だいたいバンプみたいな感じとしか言いようがない。
二者が同じようなもんだと言いたい訳ではなく、tacicaの曲種が少なすぎて引き合いに出せるアーティストがほとんどいない。
ACIDMANっぽさもちょっとある気がするが、間接的な影響に思える。
歌詞は意味が通じにくくなる細工を施してる上にパッと見のセンテンスでも惹かれるものが少なく、そのまま放っとかれがちな詞という印象。
意味が無いと断定は出来ないが、少なくとも猪狩くんも「この詞が分からない奴はアホ」と言い放てるような立場には無いと思う。
このバンドを楽しむのなら詞が最後の砦となるかとは思うが、猪狩くん本人がキレイに歌いこなす意欲に欠けるため、そこに付き合うのも苦しい。
総じて見せ場のない作品。
「演奏の上手い下手は手数の多さや速さで決まるもので、リズムキープは大体みんな同レベルで出来る」
と思ってる人が試しに聴いてみるというのが最も薦められるパターンか。
いやそれ以前にプロが下手な訳が無いと思ってる人が聴いたら結構面白いかもしれない一枚。
(★5個が満点。☆は0.5点評価?。)