Reviewer:15th. 17-19 名無しのエリー2007.06.03.
1.敗者の刑 ★★★★★
重厚なムードながら、音を絞るところは絞りきったメリハリのある展開。
初っ端からベースの和音が重い。フレーズはハードだが音は硬質すぎないギターが独特の湿り気を出している。
技術的には高いとはいえないボーカルは、曲の芯というより最後に味付けとして乗る存在といった印象。
抜群の構成力と技術で聴かせる曲。
2.ハロー ★★★★★
メロディがあっさりしているのが逆に演奏の注目度を引き上げる効果になっているような。
導入のベースはラインとしてはありきたりだが、音符の長さへの意識の高さに他のベーシストとの差を感じる。
間奏のベースもコード感がある気持ち良いプレイ。
サビのドラムは、基本パターンではスネアのタイミングを引きつけ気味にしたドッシリしたプレイだが、
フィルでは全般的に前のめり気味なので、そこで押し出されるような加速感がある。
アイデアに目新しさはないが、演奏の質は高い。
3.美しい名前 ★★★★
音数を絞るところはキッパリ絞る潔さはこのバンドの武器。静寂を必要な音符(というか休符)として認識させてくれるイントロは見事。
サビ前のギターのフレーズでの、痛みの伝わる音作りもナイス。
演奏の描写力が高いので、詞に依存しすぎずに色々な感じ方を楽しめる曲。
4.舞姫 ★★★★
へヴィなギターリフから、サビ前のキメを合図に3拍子へ。
静まり返るDメロでは拍子木も登場し、曇った心理を描写した和音ベースをバックに感傷的なギターソロへ。
ラストのサビはマンドリンのトレモロも登場し、アウトロは北欧メタルなギターソロで締め。歌は結構どうでもいい存在かも。
5.フリージア ★★★★★
悲壮なアルペジオと6/8を4小節ごとに織り込んだ変則的な拍子が重苦しいムードを醸し出している曲。
サビの「君を探してた」の部分でベースが時折聴かせる裏メロのラインが秀逸。一定の周期で波のように押し寄せるスネア連打も効果的。
しかも全般的には前のめり気味の連打だが、ラストのサビ前の「生きながら腐るだろう」のフレーズの部分では
やや後ろに構えた連打も聴かせるという叩き分けっぷり。上手い。
6.航海 ★★★★★
ハイトーンの歯切れの良いベースと、バスドラとスネアの音の配置を逆にしたような独特のリズムパターンのドラムが印象的なイントロ。
そこから正統派HRな堂々としたギターが派手に入る大きな展開へ。
さらに錆びついて軋みをあげているような独特の音使いが想像を膨らませるギターソロ。
メロディは平凡だが、ロックなアイデアで埋め尽くされた演奏に聴き応えのある曲。
7.虹の彼方へ ★★★
歌謡曲チックなマイナー調ロック。何とも古臭いメロディとギターのカッティングには妙な味がある。
ベースもコテコテながらキッチリ上手いリズミカルなプレイ。
何より美メロだろ、という人にはウケなさそう。フラワーカンパニーズ好きなら。
8.シアター ★★★★
爽やかな曲調に乗せて「世界のどこかで戦争が起こってても僕は知らないよ」といった内容を歌う異色曲。
反戦歌を歌えるほどキレイな人間じゃないけど、全く触れずにスルーは出来ない、だからありのままの汚れた自分を歌おう、という自然な自己表現をした曲か。
自虐的に反面教師を演じている?後ろめたさを表すように、少しだけ濁らせたギターの音が印象的。
終盤のサビの「想像の羽根を広げて」の部分でのリズム体のリアクションもバッチリ。
9.負うべき傷 ★★★
アルバム全体を覆うイメージにもれず、重苦しいイントロで入る。
アルペジオとスラップの相性は意外に良く、ドラムも両者をうまく繋いでいる。スケール内を幅広く動き回る終盤のベースがナイス。
ボーカルが軽く、メロディもどうでもいい出来なので、歌の聴き所は歌詞が曲に与えるイメージくらいか。
10.声 ★★★
ダサカッコイイ路線の歌謡ロック。余すところなく今更感が漂う男臭い曲。
ベースも上手いんだが、似たプレイが多いのでそろそろ飽きが。メロディに魅力がないとやはり厳しいか。
11.理想 ★★
一昔前のv系(というかアインスフィア)ノリの歌謡ロック。
演奏面で構成に凝っている訳ではなく、歌を芯にしている曲なので、
いくら演奏技術が高くてもやはりメロディとボーカルの貧相さが際立ってしまう。
12.枝 ★★★
軽やかなリズム体とアルペジオがスピッツ的なAメロから、徐々にラルク的な重苦しいロックに変貌していく曲。
Aメロ全般で鳴っているテンション音が曲に統一感を与えている。
ストレートなメッセージが込められた曲だが、その中で「枝」という言葉を曲名に選んだセンスは良いのでは。
総評.★★★★
彼らのアルバムを聴くのは初めてなので、彼ら本来の魅力がそうなのかは知らないが、
個人的な印象としては今作はリズム体の高い演奏技術とギターの優れた音作りのセンスが様々なイメージを与えてくれる作品。
センスの目新しさはないが(特にメロディ)、センス頼みの一部の洋バンドよりずっと技術が高いので、個人的には楽しんで聴けた。
ボーカルが蚊帳の外気味に感じたが、メロディ重視の自分でも引き込まれるほど演奏に魅力があるのでロック好きなら手堅く聴けるのでは。
しかし歌単体での描写力は知れているので、曲=歌を基本に音楽を聴く人にとっては水準以下の出来かも。
歌を聴きすぎないほうが楽しめる、というのが正直な感想。
メロディだけ良い、というアーティストが好きな人にとっては用なし。
(★5個が満点。)