アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : とるねーど・たつまき。

Reviewer:21st. 96-99 名無しのエリー2009.03.10.

1.低空飛行 ★★★☆
頭拍がわかりづらいリズムと不安なコードで始まり、最後までそのまま。
ギターもペースもキーボードも何をやってるのかつかみにくく、ドラムはライドシンバルを打ち続ける中にフィルインを割り込ませまくる。
全体的なカオス状態が1:40あたりで整理されるが、これがさらに気持ち悪い。メロディ以外、動きが不自然すぎる。
唯一ちゃんとした旋律を歌うボーカルだが、後半に入るとエコーがかかったりしてさらなる混沌に入っていく。
地に足の着かない4分間はフェードアウトで終わる。
慣れない人はいささか面食らう幕開けだと思うが、これがトルネード竜巻である。
2.ブレイド ★★★★☆
前曲でびっくりした人はここで安心できるはず。とてもわかりやすいポップなシングル曲。
メロディはきれいで覚えやすいし、歌詞は聞き取りやすいし意味もしっかり通っている。
それでも、Bメロのコード進行や、サビの最後に現れる何かが崩れるようなギターは変。
これがいけるかどうかで、このバンドに対する適性がわかるかもしれない。
3.ラジオ ★★★
2曲のキラーチューン的シングルに挟まれた、しっとりと落ち着いた曲。
冒頭のピアノ和音がとても美しく、このハーモニーに合わせて曲が進んでいく。
サビではコードが変わって音響的な盛り上がりを見せるが、マイナーコードで終わるせいかメロより暗い感じ。
4.恋にことば ★★★★★
明るく開放的、かつ特徴的なリズムで始まるシングル曲。
全体的に和音よりもリズムを聞かせる演奏になっているが、それでもメロのコードとメロディにはまぎれもない変態性が刻まれている。
サビの1小節前からぱあっと明るくなって、キャッチーな旋律が堪能できる。
人によっては変拍子っぽく聞こえるらしいが、5+4+3+4=16でそんなに変なものではない。
他にも2番Aメロに入る謎のドラムなど解せない点はあるかもしれないが、それが魅力だと感じられれば、このバンドはいける。
5.Mega Bite ★☆
2分弱のネタ曲。変としかいいようがない。最後の方は崩壊寸前。
6.春風吹いて ★★★★☆
疾走系のテンポかと思いきや、ゆっくり。長3度×3で上がっていく音階がミステリアスである。
Bメロでは、ベースがボーカルがハモってるのか否かよくわからない独立ぶりを見せ、展開が読めない。
しかしこの曲はtr.3と違って、サビに入ると春を感じさせる幸せな音楽になる。安心されたい。
サビに続く気だるい部分がなんとも言えない素敵さ。
7.アトム ★★
またもゆったり曲。表拍と裏拍がとらえにくく、tr.1と同じような不安感にかられる。
一応ドラムがまともな拍子を取ってるのだが、ボーカルが裏打ちばっかりなので実に乗りにくい。
Bメロは気分が変わっていい感じ。しかしサビがメロの再来程度にしか聞こえないのが残念。
あと鳥の鳴き声っぽい音が随所に聞こえる。こういう実験的音響もしっかりはまってるから、にくい。
8.Wombats ★☆
50秒のインスト。ボンゴが入るリズミカルな曲で、短いながらも展開がある。
tr.9とのつなぎが見事で、これがなかったら「またこういう感じか」となったに違いない。
9.クエリー ★★★☆
またしてもゆったり。3+5のリズムを守り続けながら、コードを聞かせていくタイプの曲。
ゆるくだるい聞こえだが、響きがふわふわしていて、リズム的な不安がないのも相まってとても心地よい。
サビではボーカルが高音を歌い、少し盛り上がる。導音を単独で響かすギターがかっこいい。
10.ユウグレデスカ ★★★
ここにきてやっとアップテンポ。唯一の踊れる曲だろう。
音はこれまでにないポップな感じで、変な転調もなく、親しみやすい。
「なんだ普通か、つまらん」という人は、サビのややアブノーマルな進行(特に最後)に注目。
11.Snowflake ★★★
同じコードの上をキーボードがいろいろやる、ミニマルっぽい曲。うきうきするような明るさがある。
ボーカルは主に「タララララン♪」、ときどき「タンタータン♪」。ときどき何かをバーナーで燃やすような音。
最後の方はちょっと変化が表れて、いっそう楽しげになる。
12.Road To Montreux ★★★★☆
前曲からつながるようにすべりこむが、雰囲気は一転。歌詞も音楽もはっちゃける。
アルバム中最も盛り上がる曲で、終始若々しい空気を保つ。ボーカルの声もそれに合わせてちょっと若返ってる気がする。
独特の転調をめまぐるしく繰り返すサビが、最高にかっこいい。
13.さあゆこう ~サンクトペテルブルグの赤い風~ ★★☆
跳ねるリズムの楽しげな曲。少しびっくりする始まりかただが、すぐテンポがはっきりするので安心。
「さあーゆこうゆこう」を繰り返すサビも含め、マイナーでもメジャーでもない不思議な突き進みかたをする。
そのためか、メロディが宙ぶらりんな感じで、つかみどころがない。リズムだけが浮かれてるような、ちょっと妙な印象を受ける。
14.ローカルメトロ ★★★★☆
一気に落ち着く。テンポはゆっくりだが、ビートが刻まれているので前進感があるし、和音も明るいので希望を感じる。
ところがこの曲、聴けばわかる通り、変拍子の嵐。7拍子のメロと9拍子(しかも4+3+2)のサビで、混乱すること請け合いである。
サビの終わりも変なしっぽがくっつくし、やはり一筋縄ではいかない。
はっとさせられるのは最後のサビで、不自然に多かった1拍がとれてすっきりする。絶妙だと思う。
15.スタートです ★★☆
曲調はtr.13から明るさを除いたような感じで、決して明るくない。けだるい路線にもどった感じ。
はじめは音が少なくて気味悪いし、音が増えれば変なコード、減れば怪しげなベースとの二重唱、とおよそスタートらしくない。
だが、なんとなく「そうだよなあ」と思わせる歌詞を聞いてると、現実にもどらなければ…… という気持ちになる。
総評.★★★★★
2009年2月7日に活動休止を発表した、Vo・Key・Gt・Drの4人組バンド「トルネード竜巻」の1stフルアルバム。
おもにKey曽我淳一の手による作曲はプログレの影響下にあると言われ、とても凝っている。王道コードなんか絶対出てこない。
そうでありながら、「ポップ」と呼べる楽曲を提供しているところが彼らの強みであり、最大の特徴である。
初めてのフルアルバムであるこのCDでも、15曲すべてが個性を発散していて、聞き飽きることがない。
個人的にはtr.6~9に少しアクセントがほしいかなあと思ったが、それを計算に入れても、自信を持って「すばらしい構成」と言えるアルバムである。
曲が「変」というのは良し悪しであり、人によっては受け付けないこともあると思う。
バラエティに富んでいるのは確かなので、どれか一曲ぐらいはいけるかもしれないが…… 総体的に好める人がどのくらいいるかは疑問。
歌詞はこういうバンドにしては人間的で、メッセージ性がある。ボーカル名嘉真祈子の声もそれを支えるだけの力があると思う。
いろいろわけわからんことしてる音楽をしっかり聞かせるバンドだから、演奏力は並み以上であろう。
そういう点も含めて、興味を持った人にはぜひ聞いてみてほしいアルバムである。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)