アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : たむらゆかり。

Reviewer:17th. 549-553 名無しのエリー2008.05.03.

1.Overture -Secret new moon-
インスト。 田村ゆかりのコーラスをベースに楽器やSEが入っている。
思った以上に綺麗にコーラスがまとまっていて驚いた記憶がある。
2.Swing Heart ★★
まるでミュージカルの始まりを予感させるような、華やかな曲。
生音が多く使われたスウィンギングなジャズ風味の楽曲だが、意外と本人の持つやわらかい声質と合っているようだ。
しかしリズムが複雑でテンポが速いせいか歌唱が不安定に感じられる。特に高音が厳しい。か細い裏声が気になってしまう。
3.片想いルーレット ★★★★
「トゥットゥットゥルットゥー」というコーラスから入る、おしゃれなポップス。
アコースティックギターをベースにストリングスが絡んでくる構成だが、こちらは2曲目と違いいくらか安定した歌唱を聴くことができる。
メロディーもこのアルバムの中ではどちらかというとキャッチーな部類に入るのではないだろうか。
「再生専用の幸せをください」という歌詞のフレーズが好み。 どこかで聴いたようなフレーズな気もするが…。
4.Non-Stopping Train ★★
R&B的なリズム、音の使い方をしている曲。
ミックスのせいなのか、ヴォーカルが他の楽器に埋もれてしまっている印象を受ける。
こちらも健闘はしているが、高音を出すのがキツいのかあまり声の伸びは感じられないのが及第点。
5.星空のSpica ★★★★
シングル曲。 スパニッシュなギター、サビ前のキメのフレーズが印象的な曲。
同じ声優では水樹奈々に代表されるようなアッパーなアニメソングだが、ストリングスやギターの音色がまるっきり違う。
どちらかというと低めのメロディラインが中心で、淡々と丁寧に歌っている。どうやら低めの音の方が得意のようだ。
正直シングルで出たときは今までの路線と違いすぎて驚いてしまったのだが、アルバムで通して聴くと自然に聴こえる。
ましてこの曲順だとシングルとして発表された時以上に良い印象を受けた。
6.Sand Mark ★★☆
ダウナー系のロックナンバー。アルバムには必ず1曲は入っている恒例路線。
前述したように低めの音の方が得意なようで、大人っぽさを持たせたようなしっとりと、それで芯の強いような歌い方をする。
しかしこの曲に関しては低めの音の割合が多いためか、逆に苦しそうに歌ってるような印象も受ける。
そしてそのメロディラインのため淡々としてしまっていて、割と地味。
7.Petite lumiere ★★★★
ジャズテイストのワルツ。
これもアルバムには毎回入っているような路線ではあるのだが、今回のアルバムは全体的に生音をメインに据えているせいか、本格的に聴こえる。
(本物のジャズは数える程度しか聴いたことないので語弊があるかもしれない)
こちらも低めの音が中心だが、サビで高音がメインになるため抑揚があって歌唱も苦しさは感じられない。
韻を踏んだ歌詞が印象的で、「空を見てた石ころは愛に拾われたの」というフレーズが個人的にヒット。
8.Beautiful Amulet ★★★★★
こちらもシングル曲。 5曲目をさらに大人っぽいテイストで仕上げたような楽曲。
間奏のギターソロ、そこから入るストリングスが非常にかっこよく、最後のサビを盛り上げている。
今まで丁寧な歌い方がメインだったのが、ここにきていきなり攻撃的な歌い方をしている。
6曲目、7曲目と大人っぽい路線の流れが功を奏していて、シングルの時よりもかなり好印象。
9.Interlude -moonlight flower-
インスト。 丁度8曲目までの一連の流れに一区切りをつける意味で良い位置におかれている。
10.お気に召すまま ★★★
ビックバンド風で、今までには無い新しい路線の曲。ライブでやったら盛り上がりそう。
「心焦がすキャラメリゼ」「私の恋するレシピ」というようなお菓子と恋を絡めた歌詞は純粋にかわいらしい。
しかしやっぱり高音が厳しいように感じる。 まあ歌うには難しいメロディのような気もするが…。
個人的に随所に置かれた「ヘーイ」という掛け声はどうも脱力してしまった。
11.チェルシーガール ★★★
最早お約束のライブで盛り上がりそうな、ブラスやシンセが効いた王道アイドルロック。
このアルバムのリードナンバーでPVまで作られているが、こういう曲を期待して買うと後悔するかもしれない。
それくらいアルバムの中では浮いた存在だが、インストで区切ったおかげであまりそう感じられないのは構成の勝ちだろう。
今までのどの曲よりもロリロリした歌い方をしていて、ある意味この路線の頂点。
独特な声の出し方に拒絶反応を起こす人にはまるっきり向かないのは言うまでもないだろう。
12.恋は波のように ★★☆
ミディアムテンポのポップス。メインの楽器のせいで少し大陸的な印象も受けた。
アップテンポな前の曲と、バラードである次の曲の繋ぎには適していると言える。
シンプルな構成のため、やわらかい声質を堪能することができるが、特に印象には残らなかった。
13.上弦の月 ★★★
ピアノをメインとした優しく暖かなバラードナンバー。こちらもシンプルな構成のため、ヴォーカルが目立っている。
完全に安定しているとは言い難いが、しっとりとした歌唱を聴くことができる。間奏のギターが個人的に雰囲気あって好み。
14.Happy Life ★★★★
11曲目を更に音数を増やして武装したようなロックナンバー。アンコール的な位置づけだろうか。
ミックスのせいか、シンセの音が少々キンキンして聴こえてしまっているのが残念。
「弱気な恋はもういらない」「無難な恋じゃしょうがない」といった、
前向きな、割と大人っぽい女の子像を描く歌詞を元気よく歌い上げるのは田村としては珍しいのでは。
15.Finale -Sweet full moon-
インスト。 タイトルの通りフィナーレを感じさせる終わり方になっている。
総評.★★★
今やすっかりオリコン上位ランクインの常連にもなった声優田村ゆかりの6thアルバム。
シングル曲に引っ張られるような形で、前作までのピコピコとしたシンセ、打ち込みメインの楽曲から一転、
生音メインの大人っぽい仕上がりのアルバムになっている。
本人が歌いたい曲、今の自分に合う曲を毎回セレクトしているというが、シングル曲を上手く取り入れた曲順はお見事。
なお、音質、音圧ともに向上しており、音にもこだわって作られたアルバムであるようだ。
(プロデューサーのブログではそのこだわりについての記事が書かれていたりもする)
ライブでもCDに近いレベルで歌える安定した歌唱力を持ってはいるが、
今回のような路線、歌唱がメインだと細かい部分の歌唱の荒さ、不安定さが目立ってしまう。
確かに歌うには難しい曲も今回は多いのだが、もう少し確かな実力をつけてからでもよかったのでは。
そして本人のもつ柔らかくてかわいらしい声質に相当助けられている面もある。
特にそれは声を重ねるコーラス部分で多用されており、インスト等での雰囲気作りに一役買っている。

(後述レス)
「アイドル声優」と分類されることの多い田村ゆかりであるが、このアルバムはアイドルのそれとはかけ離れているため、驚く人もいるかもしれない。
そして新しいジャンルの音楽を取り入れようとしているのは個人的には好印象。
本人はあまり音楽活動に対して前向きではないようだが、(あくまで本職は声優、と割り切っている)
やる時には予算なども気にするほど(本人のラジオ番組ではよくその話が出る。高い弁当取ると生音取る予算が無くなる、だとか)
しっかりやっているようなので、今度どのような活動をしていくか非常に楽しみになった。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。tr.1,9,15は星評価なし。)