* アーティスト名 : たこ

25th.494-499 : 名無しのエリー2011.09.08.

1.免疫

いきなり聞こえてくるのは山崎春美の喘ぎ、叫び、呻き。
ハウリングは鳴るが一切バックトラックなし。ただひたすら呻いて叫んでるだけ。
その後「ヤメテヤメテスリキレルスリキレルクスリキレルヤメテヨイヤアァァァァァァ」とか言ってる。
この時点で一般的な音楽しか聴いてない人はドン引きだろう。というかアングラ耐性あると思ってた俺ですらドン引きだよなんだこれ。

2.仏の顔は今日も三度までだった★★★

いきなりいかにも80年代っぽいロック調のポップチューンが流れてくるのでずっこける。
なんか普通に聴くとちょっと音がしょぼい普通の80年代のJ-POPって感じ。
あと演奏陣が異様に演奏上手い。演奏は「ジラーフ・エンタープライズ」なるバンドらしいが…
しかし特筆すべきは歌詞。もう一行目からすでにアウト。「ミッキーマウスに逃げ場は無いぞ」
その他にも商標キャラクターが大量に出てくる。あとLSDやシャブも出てくる。
なのに単なる過激な歌詞にはなっていず、ひたすら残酷な詩情が漂っている。怖い。

3.きらら★★★☆

お次は工藤冬里作曲(!)による、町田町蔵がボーカル(!!)を取るフリージャズナンバー。
これはまあカッコいい。雰囲気はかなり異様だけど。聴いてて胃が痛くなってきそうな曲なんて久々だ。
町田のボーカルは搾り出すような強烈なものになっており、途中声を絞りすぎて咽ているw
歌詞は差別用語てんこ盛りで、これにクレームが付いていろいろあったらしい。
昔発売された無許可盤ではピー音付きだったらしいが、今回はそれは外されている。
歌詞カードのへの記載は割合されているが、実はブックレットの表紙にオリジナル盤の歌詞カードが転載されているので
当然この歌詞も載ってて、虫眼鏡を使えば普通に読める。

4.赤い旅団★★★★☆

「すいませんでした」のひとことで始まる謎多き小品。「イターリン」によるプロデュース。
ユニット名でピンと来た人もいると思うが、遠藤みちろう+宮沢章一によるスターリンの別名義ユニットです。
アヴァンギャルドなインプロをバックに女声ボーカルがイタリア語で民謡風の曲を歌う。
と思いきや、唐突にスターリン色全開のパンクナンバーに。で、また元に戻る。このセットを数回繰り返して終了。
テープを継ぎ接いでまったく異なる曲を無理やり一つにつなげたような感じで、短いながら面白い。
さて、最後に書いておきますがタイトルの「赤い旅団」とはイタリアの極左テロ組織の名前です。

5.人捨て節★★★☆

ここから2曲は同メンバーによるバックバンドとロリータ順子がボーカルを取る。
バックバンドのメンバーが地味に豪華。じゃがたらの篠田昌巳によるサックスがとにかく強烈。
で、こちらはタイトル通り、民謡を真似たくらーい曲。これも歌詞がものすごい。
聴いてると精神を病みそう。というかこれ作ったロリータ順子は絶対病んでる。
というかロリータ順子って名前は有名なのにググってもどういう人物なのかいまいちよくわからない。怖い。

6.嘔吐中枢は世界の源★★★★

で、こちらはニューウェイブ色が強い退廃的な空気が漂うロック(?)チューン。
これは前曲に比べると圧倒的にわかりやすいし、普通にカッコいい。
歌詞は過食症についてのものだと思われる。前曲に続き強烈。
曲の最後の方で急に「花いちもんめ」が挿入される。なんかこれが普通に入って来るんで逆に違和感を感じる。
「俺最初からこの曲にいたんだぜ」みたいな感じで。いやお前さっきいなかっただろみたいな。
このアルバムはこんな感じの面白いアイデアが随所にある。

7.エニグラム

なんじゃこりゃ。グルジェフなる作曲家のピアノ曲にナレーションが被さるだけ。
どうやらこの曲の作曲家であるグルジェフの生い立ちの神秘主義者が云々…の部分に大きな意味があるらしい。
wikiってみたけど正直に白状すると難しすぎてよくわからなかったです。

8.Intro At 日比谷野音 1981.8.15

山崎春美主催の伝説のインディーズイベント(第一回)から、タコの挨拶の抜粋が26秒。
ロリータ順子「こんにちは、皆様にいつも愛されたいと願っているタコです…」
何でこのタイミングでイントロなのかというとLP版ではここからB面だから。

9.な・い・し・ょのエンペラーマジック★★★★★

やっちまったよ。坂本龍一”教授”作曲編曲(!!!!!)によるテクノポップナンバー。
バックトラックの演奏もほとんどが教授の手によるもの。これは曲に関してはほぼ教授のソロだな。
バッキングヴォイスでもどこかで参加しているらしい。YMOに詳しい人が聴けばわかるかも。
ひたすら不気味で重々しい曲なのだがメロディに妙な中毒性があり、アレンジの質もかなり高い。
間奏の不穏なピアノなんかはさすが教授、と言いたくなる素晴らしいもの。不気味な女声ボーカルも素晴らしい。
しかしこれはもう曲以外の全てがヤバい。ヤバすぎる。というかよく見るとタイトルの時点で既にヤバい。
昭和天皇陛下、そして第二次世界大戦に直接言及する即死モノの内容。しかもメロでは「あの」放送が…
そんな内容でも歌詞には冷徹で妙な詩情が漂っている。ただそれを楽しむ余裕があるかは微妙w
いやーよく再発したなこれ。さっきからレビューの所々で「怖い」と発しているが、これはまた別の意味で怖い。
実は曲の最後に流れるナレーションも地味に危ないこと言ってる。というか陛下の名前出しちゃってる。

10.鵺(ぬえ)★★☆

歌謡曲というか…演歌?フォーク?イントロでずっこけること必至。
曲の雰囲気にそぐわないエレキギターがずーっと鳴ってて、聴いてると頭がおかしくなりそうになる。
更に後半ではムチャクチャでフリーなクラリネットも加勢し、曲の印象をすっかり変えてしまう。
歌詞はナレーションによると赤穂浪士についてのものらしいが、全く意味がわからん! 辛うじて赤穂浪士っぽいのは冒頭だけ。
この歌詞の意味するものがわかる人は教えてください。

11.人質ファンク(リハビリ・バージョン)★★★☆

いきなり逆回転で始まる。EP-4の佐藤薫によるドラッギーなフリージャズ寸前のファンクチューン。とにかくアヴァンギャルド。
歌詞は英詩みたいだが、正直曲を聴いてても全く聞き取れない。かっこいいとは思うのだが、これは本当にコメントに困る。
ピアノを弾いてるのはゲルニカの上野さんです。
最後の方で鳴り出すループが…聴いてる方のリズム感がおかしくなりそうになる。

12.非情の生殺し★★★

犬の鳴き声がしばらく続く。
犬の鳴き声はここから曲中として流れる、いきなり「太陽にほえろ!」のテーマソングとか、特撮のテーマソングみたいなファンクが流れ出す。
語りが流れる。動物を研究の名目の下に殺し続ける科学者について。
ちなみにこれを喋ってるのはマジで大学で動物研究をしていた人らしい。ヤバくねえかそれ?
実はとても短い曲。あっという間に終わる。

13.小さなチベット人

グルジェフ第2弾。これはさっきと違ってかなり暗い曲。
女声ボーカルのコーラスも入ってる。そこにロシア語でナレーションが入るが、その内容はこれまたかなり難解。
これはなんとなく怖い、とか雰囲気が怖い、じゃなくてホラー映画のバックに流れてる曲みたいで普通に怖い。
特に無表情な女声コーラスがムチャクチャ怖い。
ちなみにこの女声ボーカルは4曲目「赤い旅団」と同じ人で、クレジット欄には「香山リカ」とあって、
山崎春美と親交が深かったあの精神科医か、と思いきや実は別人らしい。

14.宇宙人の春★★★☆

ラストを飾るは、山崎春美本人のバンド「ガセネタ」によるハードコアパンクナンバー。
これがいかにも80年代なハードコアパンクとなっていて、素直にカッコいい曲になっている。
普通だったらこれを聴いていて安心するなんてありえないのだが、散々奇妙奇天烈な曲が続いた後なんで普通にカッコよくてなんか安心する。
でも、何故かこれだけ異様に音質が悪い。ライナーによると意図的なものらしい。
歌詞は散文詩的で難解だが、なんかこころもち深い気がする。

総評.

山崎春美が率いる不定形団体「タコ」が1983年にリリースしたアルバム。
最近までプレミア付きのレア盤だったのだが、今年になって山崎春美本人監修の完璧な再発盤が出た。
参加陣がとにかく豪華。坂本教授やスターリンをはじめ、その他もアングラマニアにはたまらない布陣…らしい。
ジャケットも実はさりげなく漫画家の花輪和一によるもの。山崎さんの人脈総動員なんだろうか…。
これまでそれなりにレビューをこなしてきたつもりだけど、初めて総評に星を付けあぐねる一枚になった。
というのも、これは非常に難解なアルバムで、例えば各レビューの中でもさり気なく触れたけど
曲間にはラジオを意識したであろう世界各国の言語によるナレーションが入っている。
しかしそれが何故「世界各国の言葉」でなくてはいけなかったのか?
更に、「非情の生殺し」のあとに入る唯一の日本語ナレーションもわざわざ「鹿児島弁」なのである。何故だろう?
想い出波止場の「水中JOE」も意味不明なアルバムだが、あちらは「理解が及ばない」だけで、理解の必要はないと思う。
一方、こちらは「理解出来ないと意味がわからない」。
ナレーションにしろ、グルジェフの件にしろ、天皇陛下にしろ、
どれもこれも難解なうえ理解しないとアルバムの全体像が掴めなさそうなものばかりなのだ。
しかもそれは思想や政治的な部分に密接に繋がっていそうな要素ばかり。無学な自分にはちょっとハードル高かった。
実はこのアルバムの参加者が後に大学教授になっている率が高いという類を見ないアルバムだったりする。
まあ、音楽的にはかなりカッコいい事は確かです。そりゃこれだけの参加陣が揃っていれば出来も良くなるってもんです。
でも前述の要素を無視したとしてもかなり意味がわからない音楽なんで安易にお勧めは出来ません。

(★:2点,☆:1点の計10点満点。総評は星評価なし。)