アンソロジー

 

乱歩賞作家 白の謎
江戸川乱歩賞50回記念の過去受賞者によるアンソロジーの第2回配本。
元々、私は短編やアンソロジーはあまり好きではない。どうしても読み応えに劣る…というのがその理由。あまり長いのもどうかとは思うけれど…。
それに私は本は人さまからたまにお借りすることはあるけれど、基本的には購入派である。だから「読み応え」という点は私にとって非常に重要な
購入ポイントになる。それが今回、その「読み応え」を無視して購入したのは、どうしても福井晴敏氏の新作が読みたかったから(笑)。
まぁ、前置き(?)はここまでにして、それでは個々の感想へ…。
<死霊の手・鳥羽亮>
旗本の三男・早川波乃介は釣りの最中、女の土左衛門を発見する。女の首筋に薄い痣を見つけた波乃介はただの水死ではない…と、同心の小野と
ともに真相を探っているところ、今度は大店「嶋田屋」の主人の水死体が発見される…。宮部さんの時代物を読まれる方、お好きな方はすんなりと入っていける作品。トリック(?)に特に凝ったところもないけれど、波乃介本人とまわりの人物の人柄と江戸の町の雰囲気が読んでいて心地よかった。
<検察捜査 特別篇・中嶋博行>
2年の刑期満了を3週間残して仮出獄した加藤晃の前に、横浜地検の女検事・岩崎が現れた。封印していたはずの記憶が加藤の頭によみがえってくる…。二年前、警察内部も関わる大掛かりな麻薬組織を摘発・壊滅させるために岩崎は奔走し、加藤にたどり着く。加藤はこの事件のカギを握る人物なのだが、そのカギは堅牢・強固で「真相」という扉をあけることはなかったのだった…という2年前の事件のあらましを振り返っているのだが、「特別篇」ということはこの事件の「本編」があるということよね?。思わずそっちの方を読みたい!…と、思ってしまった。いつか読んでやる(笑)。短いながらも緊張感があって、面白かった。…基本的に警察・検察・自衛隊…自分の知らない世界を描いたモノは好きなのだ(笑)。
<920を待ちながら・福井晴敏>
「市ヶ谷」のAP・須賀とSAP・木村は「対象者
(サブジェクト)・A」の直近防衛のバックアップ任務についていたが、突然通信途絶状態になる。須賀と木村は任務続行のために「対象者・A」の自宅へ駆けつけるが、そこには須賀の10年来の因縁者である、松宮がいた。松宮を狙うのは「市ヶ谷」伝説の人物、
「920」らしいとの情報が入り、戦慄と驚愕、逆転の連続の一夜が始まる…。
福井さんお得意?の「おっさんと若者@市ヶ谷」のお話(笑)。まず「920」という言葉にピンときた人、相当、福井作品を読み込んでますね?(笑)。人物の書き込み方は短編といえど、丁寧。ストーリーもいつも通り細部にこだわった書き方で手に汗握る。でもね、こんな感想よりも「えぇーーっ?!、ヤラレタ!」というのが正直な第一声なのだ。「920」にヤラレタのではない。き、木村にヤラレターーーーっ!(爆)。「あの作品」を読んだ人は是非とも読んで!。そして一緒にヤラレテ〜(笑)。あんまり書くとネタバレしちゃうのでここが限界。「あの作品」とこれを読んだ人のみ↓↓↓クリックして読んでね。
ぎゃーーーーっ!。行ーーーーっ!。こんなところでまた行に出会えるとは…!しかも、仙石のおっさん(失礼・笑)と出会う前から、おっさんとコンビを組んでたのね!(笑)。…あ、そういう話じゃないわ。失礼…。不覚にも「そう言えば途中でいろいろ伏線が張ってあったな」って、読了後にやっと気づきました。「協調精神」がないとか、アイドルともいえない顔とか、服役する代わりに「市ヶ谷」に入ったとか…。でも、でも。ここで「イージス」以前の行に出会えるとは!!。もう嬉し涙にくれました、およよ…(笑)。
とにかく、木村のおかげで「この本、買ってよかった!」と思えたし、思わず涙が出てきてしまったほどです!(爆)。
<放蕩息子の亀鑑・首藤瓜於>
童子女(うない)総合病院の院長の息子、年男は幼い頃から奇行を繰り返すことで、「高揚感」を得ていた。しかしあることをきっかけに、奇行が収まり、医師国家試験にも合格し、無事に院長職を継いでいた。しかしそこへ父の旧知の「市貝」という男が現れたことで忘れていた「高揚感」を思い出す…。正直言ってこの話はあんまり好きじゃない。ストーリー自体、感想を書くのが難しいし…。というわけで、これでカンベンしてください(苦笑)。

全体的にはそこそこ面白かったのだけれど、やはり読み応えには欠けるように思う。アンソロジーって、いろんな作家さんの作品が読める楽しみはあるけれど、どうしても自分に合わない作品も中にはある…というリスクもあるんだな…と、改めて思った。首藤さん、ごめんなさい(苦笑)。