本多 孝好

 

FINE DAYS
「FINE DAYS」「イエスタデイズ」「眠りのための静かな場所」「シェード」の4作からなる短編集。装丁からして清涼感が漂ってきて「これは瑞々しい青春恋愛小説か?」なんて思って読み始めたら、なんか違う。
清涼感というよりは人肌のぬくもりを感じ、恋愛小説とは言い切れない、不思議な世界を構築している。
若さが持つ残酷さとか、大人になると忘れがちになってしまう人を思いやる気持ち、恋する切なさなどが流れるような文章で表されている。
初読みの作家さんなのだけれど、元々ミステリーを書かれてたとは思えない「純文学」的な文章表現力で本当に「書くこと」が好きな作家さんなのだな…というのが窺える。ミステリーなどエンタメ系が好きなあたしにはどちらかといえば苦手なジャンルではあるけれど、たまには謎解きやハラハラ・ドキドキから頭を解放してこういう作品を読むのも「砂漠の中のオアシス」という感じで(ちょっと違うか?・笑)、いいものだなという気にさせられた1冊でした。
4作とも秀作だけど個人的には「眠りのための静かな場所」「シェード」が特に気に入りました。