金城 一紀

 

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僕…杉原は「在日韓国人」だ。しかしちょっと前までは「在日朝鮮人」だった。日本に生まれ、日本で育った。中学までは民族学校に通っていたが、高校は日本の高校に入学し、今3年生…。毎日、ケンカして勉強して、やっぱり女の子のことも気になる年頃。そして僕にとってはやはり、国籍って何?、人はどこから来たの?それがいちばん知りたいことなんだ…。
そんな杉原くんの日常と同級生の女の子との恋愛を通して、人は何者なんだ?、人としてのルーツはどこにあるのか?…を、全編を通して訴えてくる作品。
軽いタッチなのに、軽く読んではいけない。杉原くんの時には淡々と時には熱く語る声が耳から離れない。
この作品を読むと、改めて日本人の「島国根性」を突きつけられたような気がする。結局は狭い世界しか見えてないんだなぁ…と。
杉原くんのお父さんが夕暮れの砂浜で息子に向かって「広い世界を見ろ」と言うシーンがあるのだが、そのセリフがズシンと胸に響いたのは杉原くんだけではない。ただ、桜井のお父さんのような人が今の日本の社会にはまだまだ多い…悲しいことだ。
枝分かれした細い枝を何千万年か溯ると人は必ず太い幹1本にたどり着くはず…。DNAの配列なんて細かいこと言ってないでどっしりと地に根を張って生きていけばいいんだよ…みんな。

それにしてもこの作品には「カッコいい人」がたくさん出てくる。やはり地に根を張った強さがそうさせるんだろうなぁ…。素敵な作品でした。