桐野 夏生

 

OUT
98年日本推理作家協会賞受賞作。
弁当工場の夜勤のパート仲間の主婦4人。その中の一人が夫を殺した。そして仲間は様々な葛藤の末、死体をバラバラにして捨てる…というあまりにも衝撃的な巻頭部分。テレビドラマ化され、今秋には映画も公開されるので、どういう内容かご存知の人も多いでしょう。
正直言って、怖かったです。何が怖いって死体をバラバラにするところではなく、この主人公をはじめとする主婦4人と同じような状況にいつ自分がなるかもしれない…と、思ったらもう怖くて怖くて、震えてしまった。満たされない毎日の繰り返しから「OUT」したい…。そう思うのは同じ主婦として少しはわかるだけに怖さが倍増しました。
死体損壊のシーンが衝撃的な作品だけれど、「心の闇」を確実に描写しきっている作者の力量にも畏れを感じました。たぶん雅子が佐竹を恐れる以上に…。希望があるのかないのかわからない結末に、「人は見えない何かによって生かされているんだ」ということを感じました。でもやっぱり自分の足で立っていたい、自分の意志で生きていたい…というのが、ぴょんの切実な思いです。