貴志 祐介

 

青の炎
高校2年生の櫛森秀一は母と妹の3人暮らし。そこへ母が10年前に再婚し、すぐに別れた男、曾根が闖入し、穏やかな3人の生活を踏み荒らす。母と妹を守るため、秀一は曾根を「強制終了」させようと、完全犯罪を企てるのだが…。
全編通して、とにかく切ない。胸が苦しくなる。
秀一の内に秘めた怒りと憎しみの「青の炎」は結果的に自分をも燃やすことになってしまう。彼の怒りと憎しみは果たして曾根に対してだけのものだったのか…?。ラストで彼の脳裏に浮かぶ「青の炎」は穏やかな家族3人での暮らしを誰も守ってくれなかった、そして自分も守りきることが出来なかった。それに対する、自分への怒りと悲しみの炎だったのではないだろうか…。
余談ですが…作中、国語の教科書に中島敦の『山月記』が出てくるが、ぴょん自身、これ授業でやって、すごく印象に残っていたのだけれど、改めて読む機会がなく、そのままになっていたのだが、この『青の炎』で久しぶりに再会することが出来て、懐かしくうれしかった。