小松 左京

 

日本沈没 ★★★★
19××年、伊豆諸島・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。地球物理学者、田所博士とともに日本海溝で起こっている異変を発見した潜水艇のパイロット小野寺。やがて日本の各地で地震や火山の噴火が相次ぐ中、日本列島が重大な危機に瀕していることを知った小野寺は極秘プロジェクトに参加する。
30年ぶりにリメイク映画が作られ話題となっている本作。実は昔、深夜の再放送枠でドラマ版を途中まで見たことがあった。深夜という時間柄、結局最後まで見ることが出来なかったので映画のリメイクを機に原作を読んでみた。
日本が沈むというこの理論が正しいとか間違ってるとか言う前に言っていることがまったく理解できなかった。それに30年という時間の経過が「〜したまえ」という言葉遣いや省庁の名前を現在に置き換えて読むという煩雑な作業を与えてくれたために、最初はなかなか読み進められなかった。が、いよいよ日本列島が悲鳴を上げ始めるともう構っていられない。ここ10年の間に、阪神や中越の震災を目の当たりにしたひとりの日本人として、呼吸をするのも憚られるような思いで読んだ。自らを生み、はぐくんでくれた大地が沈んでいく…という極限状態に置かれた中、それでも他人のために自らを犠牲にして懸命に奔走する人々の姿に息を飲み、胸を打たれる。一方、日本政界のフィクサー・渡老人と田所博士が語り合う場面は苦しみのたうつ日本列島とは対照的に静かに書かれていて、そこに涙を誘われる。…生き残った日本人はどこへ行き、何をするんだろう…いや、何をしなくてはいけないのか、一人ひとりが自ら考え答えを見つけなければならない。