小川 勝己

 

葬 列
第二十回横溝正史賞正賞受賞の犯罪小説。
障害者の夫を世話しながら、ラブホテルの従業員として昼夜逆転の生活を送る中年女、明日美。明日美につきまとう整形女、しのぶ。中途半端なヤクザ、史郎。つかみどころのない、渚。女3人と男1人が「今」を打破するために起こした「戦争」とは…。
渚以外の3人は普通に生きようと思えば出来たはずなのに、ここに至るまでの「負け犬人生」が受け入れられず、読んでいて気持ちいいとは思わなかった。その中で渚の「キレ」ぶりが際立っていて普通はこっちの方が気持ち悪く思えるものだろうけれど、ここまで徹底されると却って気持ちよく感じられる。
ストーリーは手に汗を握り、衝撃的ではあるけれど、素人の中年女が「お荷物」にならず、せいぜい「小荷物」程度で済むところがリアリティに欠けてるような気がした。隣の芝生がとっくに枯れてることに気づかないでいられることは幸せなことなのかもしれないな…ということに、池上範子の件で気づかされる。誰も似たり寄ったり、なのかな。渚以外。