柴田  よしき

 

少女達がいた街
1975年、ロック好きなノンノの前に自分に似たナッキーがあらわれる。親友チアキにさびしさと物足りなさをおぼえはじめていたノンノはナッキーに心惹かれていく。そんな時、ノンノの家が火事で消失。そこから焼け焦げた男女の死体と記憶喪失の少女が発見されるが、事件は時効を過ぎ、真相は闇に葬られたかに見えた。しかし1996年、休職中の刑事が自分の青春時代にケリをつけるためにこの事件の真相を解明していく…という話。
1975年と1996年の物語の二部構成になっている。しかし、1975年の部は読んでいてとても退屈だった。その当時の時代背景や流行、風俗(?)はとても興味深く読めたのだが、ノンノという女の子がどうしても好きになれず、感情移入が出来なかったからだ。しかし1996年の部になるとストーリーは急展開。一気に読ませてくれる。記憶を失ったまま大人になった少女が一体、何者なのか、二転三転させられたうえに、1人の女性を悲しい死に追いやってしまう。それでも自らの青春にケリをつけたかった刑事と記憶を失っていたい元少女の思いは伝わってきた。
…結局、青春ってほろ苦いものなのでしょうか???。個人的には北浦のことをもう少し詳しく読みたかった。

 

 

ラスト・レース -1986冬物語-
OL秋穂は社内恋愛に破れ、何もかもがうまくいかない鬱々とした日を過ごしていた。ある日、立ち寄った宝石店で別の客が置き忘れていった指輪を持ち帰った夜、秋穂は二人組にレイプされてしまう。翌日、自分の住むアパートと一字違いのマンションに住む女が殺されたことを知り、自分は人違いで襲われたのではないかと、悩む秋穂の前にレイプ犯が姿を現し、「誰かに嵌められた」と話すが…。
自分をレイプした男たちと手を組み、事件の真相を追う秋穂は恋愛というより、時代そのものに疲れていたのだろう。そしてそれはレイプ犯の男たちも同じだった。1986年と言えば、世の中がちょうどバブルに向かって動き出した頃。OLも株に手を出し、高級レストランで食事して、ブランドバッグを競い合うように買いあさり…なんて時代。そんなバブリーな頃のOLの趣味のひとつに競馬が上げられるだろう。この物語に、ある競馬のレースが取り上げられているためにこのタイトルなのだろうが、これは秋穂の疲れた今の生活を打破するきっかけになるこの事件そのものを表しているのだろう。結果はガチガチの本命・対抗か大穴万馬券か…本を読んでのお楽しみ。
柴田よしきという人は↑の「少女達がいた街」でもわかるが、時代をほろ苦く切る取るのが上手な人だな…と思う。