島本 理生

 

ナラタージュ ★★★★
結婚直前の泉は高校時代の教師、葉山先生のことが今でも忘れられない。彼女は報われないけれど、激しい恋…おそらく一生一度の恋をしていたのだ。
…と、端的に言ってしまえばこれだけの話なのだけれど、人が人を好きになるって楽しいことばかりじゃない。むしろ苦しいんだよ、痛いんだよ…それでも好きでいられるってすごいことなんだ…と、この作品は教えてくれる。作者自身が泉と同年代だから、書けた作品だと思う。泉の心の描写は細やかで泉の痛みが針で刺されてるかのようにこちら側にも伝わってくる。けれど、わたしにはどうしても葉山先生にそれほどの魅力を感じることが出来なかった。「そんなのアリ?。ズルいよ」と思ってしまった。若くしてこういう男性を描いてしまう作者に末恐ろしさを感じた反面、若いうちにこんな恋を知ってしまった泉は不幸なんじゃないか…と、思ったら無性に悲しくさびしくなった。思い出にするにはまだ生々しすぎる…そんな「ナラタージュ(回想)」だった。
(bonさんにお借りしました。ありがとう♪)