新堂  冬樹

 

銀行籠城
あさがお銀行中野支店に一人の男が行員と客、男女合わせて30人以上もの人質をとって籠城した。男の名は五十嵐。彼は人質を全裸にし、人としての尊厳を奪い、また命をも奪っていく。金の要求をするわけでもない、五十嵐の真の目的とは、そして事件を現場で指揮する警視庁捜査一課鷲尾警視はこの事件をどのようにして解決に導くのか…。
うーん、人質全員を全裸にし、次々と命を奪っていく…この冷酷さにある意味、ドキドキ。本を持つ手にじっとりと汗をかいてしまった。しかし言い換えれば、この部分だけがこの話のおもしろいところ、なのかもしれない。そしてあたし自身はこのドキドキ感は嫌いではない。…つまりそこそこ楽しませてもらったのだけれど、ストーリー的には途中で先が見えてしまったので、どのように登場人物のバックグラウンドや葛藤が書かれるのか、楽しみに読んでたのだけれど意外とあっさり書かれていて、
少し拍子抜けしまったのだった。警察内部の縄張り争い(?)も含めてもう少し丁寧に、重厚に書かれていれば、もっと面白かっただろうにな、と思わせるところが残念。
しかし、この本には別の楽しみ(?)がある。…実際に起こった銀行立てこもり事件と比較するシーンが出てくるのだが、この事件、わたし覚えてます。わたしと同年代〜上の人は結構、覚えてる人が多いのではないかしら?。あの事件は本当に衝撃的だったな…。あの事件がついこの前起こったことのように思い出させてくれる本です。