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Explorer Spirit   <ギアナ高地 エンジェル・フォール左壁初登攀>

 

 


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エンジェルフォール左壁初登攀(5.10、A5+ 標高差1000m) 1984年 木本哲、倉岡裕之、小林春好。ランナーも確保支点も不安を抱えた登攀は凄まじい。技術的にも精神的にも厳しい登攀だったけれど面白い登攀だった。いまだかつてこれほど難しいエイドクライミングはしたことがない。それでもけっこうフリーでも登れたので楽しかった。毎日グラフの写真と文章がその苦闘を伝えているが、登攀終了時直後の写真はとてもいい。僕の大好きな写真の一つだ。


未踏の岩壁に挑む=
Angel Fall with TV
南米ベネズエラ ギアナ高地・エンジェルフォール左壁初登攀(1984年)

落差およそ1000m、世界一の落差を持つ滝の左壁に挑む
テレビ東京・土曜スペシャル
「驚異!失われた世界 エンジェルフォール初登攀」


木本君 エンジェルフォールを登りに行く気はない? 話は唐突に始まった。
エンジェルフォールがどこにあるかも知らず、
世界一の滝という言葉を 手がかりにギネスブックを紐解く。
そこには確かにエンジェルフォールという名の滝の写真があった。

一枚の写真に描き出された岩壁は絶望的なほど垂直だ。
それどころかオーバーハングしているように見える。

 

説明書きには1000メートルに少し欠ける世界一の落差を誇る滝とある。
こんなものがあるなんてまったく知らなかった。
一体全体のこ滝の水源は何なのだろう。
どうなっているのだろう。
疑問は矢継ぎ早に湧いてくる。

 

だが写真を見る目はすでにどこを登ろうという目になっている。
ほかにも写真がないか探してみる。
しかし、ギネスブック二冊ではどうしようもない。
 

*

垂直1000メートルの岩壁は登れないだって?
僕は決してそうは思わない。
僕はこれまで未知の岩壁を登るために努力を重ねてきたのだ。

登れなくても登ったことにするという屈辱的な声をかけられながらも、
僕たちは自分たちの力を、そして信念を証明するために登り続けた。

 

*

滝の水源は、実は毎日訪れるスコールだ。
ところが変われば、そこにある困難も環境に応じて必然的に変わる。
硬い岩、脆い岩――。
両極端な性質の岩が出てきて四苦八苦だ。
エクスバンションクラックはあるし、ロープを降ればカムが外れてしまうようなクラックもある。
岩をだまし、自分自身をだましながら高度を稼ぐ。
ただただ唯一の聖域である確保支点が墜落時に崩壊しないように祈ったあとは大胆な賭けをしながら攀じ登っていく。


未知ということ――。未踏ということ――。
登山においても、冒険においても、これほど面白い要素はないだろう。
だが、ちょっとよけいなところが険しくないか?

 

*

エンジェルフォールを登ったころは「ギアナ高地」という名前はあまり知られていなかった。
僕自身世界一の落差を持つ滝がエンジェルフォールという名前でベネズエラにあるだなんてまったく知らなかった。
だけど、子どものころから熱帯樹林の中に深く大きな穴がぽっかり開いている事は知っていた。
それがサリサリマーニャという名前であることも――。

大地を粒えぐる不思議な穴ぼこをいつかこの目で見てみたいと思ってはいたのだが、
ギアナ高地とはきっとそのころから縁があったのだろう。



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自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
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しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと

 

 

 

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