大学院修了制作の為に描かれた大きな作品。
ギャラリートークで主にこの作品を中心に説明をしていましたが、
この『野望』というタイトルは、画との関連性はなく、
現在東雲には野望があると言うだけの話らしい。
そもそも、東雲の場合、題名が画の解説をしている訳ではなくて、実はあんまり関係ないみたい。
右下の「HITOMI」のサインは、実は良く観るとサインではない。
「作品に自らの名前を入れるのは、何だかおこがましいと感じていた」と言う東雲。
それはつまり、「自らの作品に自信がない為」という事ではないだろうか。
しかし、大学院で絵画の基本であるデッサン力強化に専念した東雲は、
そろそろサインをしてみようかなという気になったらしい。
真ん中から真っ二つに世界が分かれているのは、「たまたま偶然」だそうだ。
始めキャンバス全体に下地を描いていた東雲。
他の生徒がそれを見て、「下地の感じが良い」と言った。
しかし東雲は下地の上に、他に描きたいものがあったので、
右半分に下地を残し、左側に描きたいものを描いていった。
すると、右半分に、あるイメージが浮かんできたので、その通りに描いていった。
そしたらこの作品ができあがった、という事らしい。
また、東雲の作品には色々と細かい描き込みが多い。
主人公が真ん中に居て、周りで脇役達が好き勝手やってるみたいな印象だ。
この、東雲の「遊び心」のように感じる描き込みは、
福山で個展を開いた2005年頃から見られるようになってきた。
東雲の作品を観ていた小さな男の子が、思わず白線をはみ出して作品に近づいた。
お母さんが慌てて止めたが、後で東雲にその事を話すと、
「白線から中に入って観てほしい。私も自分の作品を沢山触っているし・・・」と言っていた。
ギャラリートークでも、
「私は全体を見ながら描くって事をしなくて、画を描く時はこのぐらい(近く)で描いてるから、
観る時もこのぐらい近寄って観てほしい」と語っていた。