チリ年表 その3 人民連合躍進の時代
1970年
1.22 人民連合,統一候補にアジェンデ(社会党中間派)擁立.キリ民党は前駐米大使のラドミロ・トミッチ(キリ民党左派)を指名するが,国民党はこれに同調せず前大統領アレサンドリを指名.
2 南部のヌプレ州を中心に農民の土地占拠闘争.2百カ所におよぶ.政府,非常事態を発令.
3.25 40人委員会,CIAの「アジェンデ当選阻止計画」を承認.特定の候補を支援することはせず,人民連合に対するネガティブ・キャンペーンに集中することとする.
3.25 ビオー派のカンポア将軍による現役軍人を巻き込んだクーデター計画発覚.
5.7 陸軍総司令官シュナイダー,「エルメルクリオ」紙の質問に答え,「選挙が適法的に実施されること,(適法的に選ばれた候補が)大統領に就任することを保障する」と言明.軍の憲法尊重と政治的中立を宣言.シュナイダー・ドクトリンとよばれる.
5 農民組合,土地改革法の実施促進を要求し,全国スト.
6 事務労働者のスト.数週間にわたる対決のあと,支援の学生デモに対し国家警察軍(カラビネロス)が発砲,二人の学生が殺される.非常事態宣言が発令されスト収束.
6.27 40人委員会,チリ情勢について検討.決選投票に持込まれた時の作戦として「トラックⅠ」作戦を承認.キッシンジャーは「ある国が共産主義へと移行するのを傍観するのは,わが国の人民にとって無責任である」と述べ,アジェンデ当選阻止の取り組みを促す.会議はアジェンデ追い落とし作戦に対し30万ドルを追加することを決定.
7.8 クーデター陰謀に対して労働者のゼネストが決行される.
7.16 CIAサンチアゴ支局,ITTに対し,アレッサンドリへの財政支援を要請.ITT取締役会は監査役のマッコーン元CIA長官を通じて内部調整.CIA西半球部長ウィリアム・ブローと会談したジニーン取締役会長は百万ドルの資金提供を申し出る.ブローは,資金を直接受け取ることはできないが,資金の使用法についてアドバイスことは出来ると対応.ITTは「アドバイス」に従い,アレサンドリ陣営に35万ドルを引き渡す.
8.07 40人委員会,アレサンドリとトミッチのいずれをとるかで結論が出せないまま散会.反アジェンデ攻撃をさらに強めることで一致.
8.11 カトリック教会,どの候補も支援しないことを声明.
8.18 国家安全保障研究メモに基づき,米政府各機関代表が協議.アジェンデと友好関係を保つ案から,政権打倒にいたるオプションまでが取り上げられる.
8.31 MIR,UP支持を声明.
70年9月
9.04 大統領選挙.アジェンデが107万票(36%),アレッサンドリが103万票(35%),トミッチが82万票(28%)を獲得.2位のアレサンドリとの差は4万票たらずで過半数に達していないため,決定は議会での表決に持越される.同日,米国が大統領選挙に介入するため軍人の派遣計画をおこなったことが暴露される.人民連合委員会はこの時までに全国で約1万2千組織される.
9.08 アジェンデの一位獲得を受けて,40人委員会が開催される.10月24日の議会開催前に緊急にとるべき行動について協議.
9.9 アレサンドリ,敗北を認め「指名されても辞退」と表明.水面下ではともだおれによるフレイの再選を画策.
9.09 ITT取締役会.CEOのジニーンはマコーンに対し,アジェンデ政権成立阻止のため百万ドルを拠出する準備があると述べる.これを受けたマコーンは,キッシンジャー,ヘルムズと会見するが,物別れに終わる.
9.11 人民連合転覆を目的とするファシスト組織「祖国と自由」結成.結成にあたってCIAから3万8千5百ドルの援助.指導者パブロ・ロドリゲスは「内戦の準備が出来ている」と公言.当初の活動家は2百名で,政権末期にも数千名規模にとどまる.ほかに反共産主義集団(GA),NECH(われわれはチリを売り渡さない)などの反共団体が結成.
9.11 一部金融独占は故意に銀行活動をマヒさせ,アジェンデ政権が誕生すれば貯金はすべて没収されるなどのデマを流す.冶金,繊維,建設などの各産業で労働者の解雇や操業停止,賃金不払いなどが続発.
9.14 米政府の秘密活動を統轄する「40人委員会(議長キッシンジャー補佐官)」,ルーブ・ゴールドバーグの提案した「捨てゴマ作戦」を検討.議会がアレッサンドリを大統領に指名し,その直後アレッサンドリが辞任,フレイを暫定大統領とした上で再選挙を実施するというもの.この作戦(トラック1)のため,コリー大使管轄の下に25万ドルの資金を追加供与することを承認.
9.15 ニクソン大統領は,キッシンジャー,ヘルムズCIA長官,ミッチェル司法長官と会談.アジェンデ就任阻止のためあらゆる可能な行動をとるよう指示.
ニクソンは,議員への買収資金の増額を否定.チリの軍隊にクーデターを行わせる努力に集中するよう指示.これを受けたCIAは,クーデターの提案を受け入れたチリ軍将校数人との協議を開始(トラック2作戦).
ヘルムズの手書きのメモによれば,ニクソンは「アジェンデの暗殺も歓迎できないわけではない」と示唆.「確率は10にひとつだが,チリを救わなくてはならない.リスクは気にするな.1千万ドル,あるいはもっと,経済に悲鳴を上げさせるためなら使ってよい」と述べた.
9.16 キッシンジャー,ホワイトハウス報道関係者への非公式説明会.アジェンデの勝利はもはや覆すことはできない.それは近隣諸国に影響を及ぼし,ラテンアメリカにとって大きな問題となるだろう,と述べる.9.21 コリー大使,チリ国防相を通じフレイ大統領に,シュナイダー将軍の左遷を要求.「アジェンデ政府になれば,われわれは釘1本,ナット1個といえどもチリに入るのを許さない.ただちにあらゆる手段を尽くしてチリ国民を欠乏や貧困に追い込んでいくつもりだ」と脅迫.
9.24 キリ民党,アジェンデに対する公開質問状.支持の条件として,軍と警察の現状維持を内容とする「民主制度保障条項」を提起する.
9.27 極右団体,一連のテロ活動.警察はいちはやくこれを鎮圧.
9.29 アジェンデ,キリ民党への回答を発表.「民主制度保障条項」の受け入れを表明.
9.29 CIAとITTが秘密会談.CIAは経済混乱作戦を提案するが,ITTはこれを拒否.
9.29 「40人委員会」第二回会議.軍事的手段によるアジェンデ就任阻止の可能性を断念.経済上の圧力を強める作戦に切り替える.CIAの進めていたクーデター作戦は,意識的に無視される.
9月 CIAは,ニクソンの提案した「トラックⅡ」作戦を策定.5万ドルの成功報酬と引き換えに,ロベルト・ビオー将軍にクーデターを企画させる.ビオーがフィクサーとなり,クーデターの陰謀進む.ビオーの腹心でサンチアゴ守備隊長のカミロ・バレンスエラ将軍,海軍のチラード・バリス提督,空軍のガルシア,警察軍のビセンテ・ウェルタ長官,米大使館付陸軍武官ポール・ウィマート大佐が参加.シュナイダー暗殺について意志統一.MIRのクルースとも接触.
9 MIR全国書記局,声明「選挙の結果と革命左翼にとってのその意味」を発表.おそかれはやかれ武装衝突になるだろう.その時人民連合は二者択一を迫られるだろうと予告.
70年10月
10.1 アジェンデ,三軍司令官と会見.軍内問題への不干渉と,将校・兵士の生活改善を言明する.また米国との軍事協定存続と,将校の自主的任命権を認める.
10.4 キリスト教民主党臨時大会開催.トミッチら左派は「民主制度保障条項」をUPが認めたことからアジェンデ承認を打ちだす.採決では5百人の代議員中273人がアジェンデ支持に回る.
10.7 ワシントンからCIAサンチアゴ支部に指令.反乱支持派将校の情報を収集し,デマ,テロ活動により左翼にクーデターの口実を与えるよう雰囲気作りを進めさせる.チャーチ報告によれば,CIAは2週間で4軍幹部と21回にわたり接触したという.
10.13 CIA支部,「ビオー将軍が48時間以内にシュナイダー,プラッツ両将軍を拉致しクーデターを起こす計画である」とワシントンに報告.陰謀はバレンスエラ将軍が担当しマーシャル少佐が立案.
10.14 アレサンドリ,候補者としての資格を辞退.国民党に対しアジェンデの就任を認めるようにと要請.
10.14 コリー大使,放送局の購入を40人委員会に提案.40人委員会はこれを了承し,6万ドルの支出を決定.実際には購入はされなかった.
10.14 CIA,軍部の反乱支持派と接触しあらゆる支持を与える用意があることを伝える.
10.15 下院,「民主的制度保障」に関する憲法改正案を可決.キリ民党,アジェンデ支持を正式決定.国有化対象からマスコミ関係企業を除外する協力協定締結.
10.15 チャーチ委員会報告では,15日頃,CIAはクーデターへの支持を取りやめたとある.
10.19 第一回目のシュナイダー誘拐作戦,失敗に終わる.翌日行われた第二回目の作戦も失敗.
10.22 出勤途上のシュナイダーを拉致することに成功.CIAサンチアゴ機関の本部あて電文によれば,CIAが「殺菌された」3丁の軽機関銃と手投げの催涙弾を渡したという.
10.22 フレイはただちに24時間の戒厳令を公布.4軍のクーデター派は動かず.警察軍はビオーに対する逮捕状を請求.謀議に加わった国民党のラウル・モラレス上院議員は,軍法会議の不逮捕特権剥奪申請を最高裁が拒否したため逮捕を免れる.
10.22 チリ労働者統一組織は右翼のあいつぐテロ活動に対して,翌日二時間のゼネストで対抗することを決定.
10.23 米軍は人民連合政府成立を見越して三カ所の施設撤去を開始.
10.24 議会における大統領表決.シュナイダー将軍誘拐を受け,フレイ派もアジェンデ支持に回る.アジェンデの大統領就任を153対35の圧倒的多数で承認.アジェンデの共和国大統領が正式に宣言された.
10.25 アジェンデは社会主義国との国交樹立.独占企業の国有化,土地改革,所得再配分などを骨子とする新政府の対外・対内政策を発表.
10.26 シュナイダー将軍,誘拐に対して抵抗したため銃撃を受け負傷,傷の悪化により死亡.
10.30 第一次アジェンデ内閣の発表.共産党から3閣僚,社会4,急進3,社会民主党2,MAPU1など.内相にホセ・トア(社),外相にクルドミロ・アルメイダ(社),蔵相にアメリコ・ソリジャ(共),労相にホセ・オジャルセ(共),国防相にアレハンドロ・リオス(急),農相にチョンチョル(M),経済相にペドロ・ブスコビッチ(無)など
10 MIR,スラム地区の不法居住者を革命住民運動(MPR)に組織.ビクトル・トロが指導.強引な土地占拠闘争を展開.
70年11月
11.03 アジェンデ,大統領就任.同時に4軍総司令官の更迭を発表.陸軍プラッツ,海軍モンテロ,空軍ルイス,警察軍セプルベダがあらたに発令される.
11.3 CUT,銅山労働者連合は「人民連合の基本綱領実現のため政府支援」を表明.
11.4 戒厳令解除.憲法裁判所設立.
11.5 MAPU第一回全国大会.中間派,右派の指導者は一掃され一挙に急進化.
11.6 中国の国連加盟支持声明.
11.6 米国,国家安全保障会議開催.アジェンデ政権打倒のための中期的戦略を討議,「見えざる封鎖」路線を採用.3年をメドに,経済封鎖をもとに国内のサボタージュ路線と合せ経済混乱を引き起こし,軍事クーデター発生の雰囲気を作り出すというもの.
11.10 ルイス・フィゲロアCUT議長(共産党員)「人民連合が組織された労働者階級にその基盤をもっていることは事実であっても,CUTは労働組合運動として組織的独立と主体性を維持するであろう.」と発言.
11.11 トア内相,民衆弾圧を主要な任務とする国家警察軍の「機動隊」(3万人)を解散し「特別奉仕隊」を組織すると言明.
11.12 キューバと国交回復
11.12 アジェンデ,シュナイダー暗殺関係を除く政治犯を釈放.
11.13 40人委員会,キリ民党指導者に対し2万5千ドルを贈ることを決定.
11.14 朝鮮人民共和国と文化・貿易関係確立.銅山国有化特別委員会設置.
11.14 銅山国有化特別委員会設置.
11.19 40人委員会,マスコミ買収や反人民連合候補の活動資金として70万ドルの拠出を承認.
11.19 フレイ前政府のたてた電話,電気料金値上げ計画中止.
11.21 米国系資本のアリメントス・プリナとニブサの2社の経営権を政府が接収する.「この二つの会社が不正行為をはたらいているので,その経営権を接収する.これは会社そのものの国有化ではなく経営権の接収である.」
11・30 人民連合政府は新経済計画を発表.それによればすべての銅山と銀行が71年度中に国有化されることとなる.
11 ITTを中心とする多国籍企業も特別委員会を結成.フォード,アナコンダ,ケネコット,ダウ・ケミカル,ファイアストン,バンク・オブ・アメリカなどが参加,
11 サンチアゴ大学学生連合の選挙で,MIRはUPの候補を支持.
70年12月
12 コンセプシオン大学で自治会選挙をめぐり,共産党とMIRの支持学生のあいだに乱闘.MIRメンバーひとりが射殺される.共産党は自己批判.
12.01 中国との国交交渉が始まる.
12.01 チリ最大の繊維会社ベジャミスタ・トメが,税金の滞納と従業員への給与不払いによって政府に接収される.接収にあたっては社会主義共和国時代の政令第520号を援用,議会の議決を経ず企業接収を進める道をひらく.
12.2 ソ連と文化協定締結.
12.3 政府,コムーナ,州,全国単位で農民評議会を組織する方針を決定.改革セクターばかりでなく改革の対象外の農民もふくめた参加組織.MIRの指導する土地占拠の農民運動が強まる.共産党幹部のティテルボイム上院議員,農民の土地占拠闘争を批判.「われわれは人民に対して出かけていって自分自身で場所をとってしまうよううながすのはやめた」と発言.
12.7 人民連合政府とCUTの協力協定調印.「変革のプログラム作成およびその実施に対する労働者の積極的かつ直接的な参加は,その達成を迅速で効果的なものとする最良の保障となる.したがってあらゆる部門に対する労働者の参加を可能にするメカニズムを作ることが肝要である」とし,社会保険審議会,国家開発審議会,給与問題中央審議会などへの参加が保障される.
12.14 ベジャミスタ・トメに続きチリ鉄鋼生産を独占するパシフィック・スティール製鉄会社を政府管理にうつす.
12.17 政府,全商品の物価凍結,地代凍結,賃金の一律35%引き上げ,最低賃金の66%引き上げなど一連の経済改革を実施.
12.21 アジェンデはすべての銅鉱山国有化のための憲法修正案に署名.議会に上程される.政府はこの国有化にともない年利3%,30年で補償をおこなうと発表.
12.22 MIRのミゲル・エンリケス書記長、“Punto Final”紙に寄稿。「MIRの政策は変わらないが、イデオロギーの違いは将来の議論にゆだねる」とし、「新しい理解」をもとにUPへの加盟をもとめる。共産党はこれを拒否。
12.30 アジェンデ,炭鉱および石炭会社国有化の方針を発表する.
12月 共産党のコルバラン書記長、エンリケス論文について見解を発表。「現在12派におよぶ極左グループのうち、革命的共産党(親中国分派)を除く一定のグループとは何らかの理解がある」と語る。
12月 社会党急進派を代表してアルタミラノが書記長に立候補。アルタミラは9月の大統領選挙を公然と批判していたが、大会を前にUPに対する「批判的・建設的」な支持の立場を表明。武装闘争はラテンアメリカにおける解放運動の基本であるとしつつも、チリは武装闘争のテーゼに関する例外であることを承認。「非暴力方式の重要性を認め」つつも暴力革命論に固執.
1971年 71年1月
1.04 15才以下の幼児・児童に無料で一日半リットルのミルクを支給すると発表.
ナシオン紙の記述: 医療・教育の分野でプロジェクトを展開。成果はほとんど上がらなかったが、学童へのミルク支給、靴の無料配布などで大衆的人気は上がる。物価凍結と賃上げという政策は、投資分野における不確実性を増す。一方、土地の即時収用をもとめる土地なし農民の占拠行動は混乱に拍車をかける。
1.05 中国と国交樹立.
1.06 ラ・セレーナで第23回社会党大会が開催される.大会にはソ連、中国、キューバ、北ヴェトナム、北朝鮮、東ドイツ、ルーマニア、ユーゴスラヴィアから党代表が出席。キューバ代表団のエミリオ・アラゴネス中央委員は、「UPの勝利がラテンアメリカの革命運動を助け成長させるだろう」と挨拶する。
1.06 アジェンデ大統領が社会党大会で挨拶。「チリは人民連合を輸出しない。そのような運動が他の国で出てくるかもしれないが、それは、革命家が彼ら自身の革命スタイルを選ぶ権利に由来するものだ」と述べる。また誘拐、ハイジャックなどの行動を非難する。
1.06 コルバランが社会党大会にメッセージを送る。①チリでの革命的なプロセスは「不可逆性」を獲得しなければならない、②UPのプログラムを実行するためには、共産党と社会党が主な責任を負う。
1.07 中央委員選挙。ELNの流れを汲む武闘派が中央委員の1/3をしめる.この大会から書記長の選出方法が変わり、45人の中央委員による間接選挙となったため、アルタミラノの勝利が確実となる。穏健派のアニセト・ロドリゲス書記長は、「アルタミラノは9月の大統領選挙のために何もしなかった」と批判。同時に「党の単一の指導という組織原則に従う」と声明。
1.08 アルタミラーノが書記長に就任.「この大会には勝者も敗者もいない」と述べ、新指導部の下に全党員が結集するよう呼びかける。大会はブラジル・ウルグアイの革命戦士に対する連帯決議を採択。ボリビアのELNに加わり亡くなったチリ人活動家への追悼決議を採択して閉幕。
1.08 MAPUの設立総会。ロドリゴ・アンブロジオ書記長は、UPと極左グループとのあいだに相互理解の条件が存在すると述べる。
1.8 在チリ米軍基地協定の期限切れ.政府は更新をせず.三つの米軍基地が撤去される.
1.11 銀行の国有化が始まる.
1.16 右翼によるアジェンデ暗殺計画が発覚する.
1.18 アジェンデ大統領、バルパライソの集会での演説。土地乗っ取りに対する懸念を表明。その後、ジャック・チョンチョル農相をCautin県に派遣。
1.27 ラネラ・アウストラル社接収.
1.28 40人委員会,放送局や新聞社の買収,地方選でのキリ民党,国民党の選挙資金などに124万ドルを贈ることを決定.
1月 農地改革計画への農民参加を促すため全国農民会議が創設される。Cautin県ではMIRに指導されたマプーチェ先住民が、土地の実力奪還闘争を展開。
71年2月
2.07 社会党のカルロス・アルタミラノ書記長、La Nacionとのインタビューにおいて、MIRとの関係についてポジティブに考えていると述べる。
2.08 アジェンデがル・モンド紙とインタビュー。「我々は、ブルジョワ民主主義政府とブルジョワ議会の法的フレームワークの範囲内で活動している。我々はそれに専念している。目下の課題は持続的なインフレーションと、とくに建設業界で増加しつつある失業である」と述べる。
2.13 ホセ・トア内相、農地改革のスピードを上げ、80ヘクタール以上の農場を全て収用すると声明。同時に中小農民の土地は保全することを保障。さらに政府から技術的・財政的な援助を受けることになると明らかにする。
2.14 カウティンの県都テムコで「革命農民運動」の創立会議。政府の提案した農業改革法が不十分だとして非難。力ずくで土地を占領し続けるとし、アジェンデ大統領が補償なしで即時の大衆収用を実施するよう要求。多くの農場は、将来の不確実性から放棄される。
2.19 フレイ時代に制定された農地改革法の完全実施をめざす計画発表.アジェンデ,全国農園主協会代表と会談.このあと法律にもとづく農地改革を強調し、農村地域での武装占拠闘争を非難.土地侵犯の扇動者を処罰する特別法を提案.
2.25 ニクソン,外交教書で「チリの国交回復措置は米州秩序に対する重大な挑戦であり,今後のチリ外交を注意深く見守る」と表明.
2.25 CUT第9回全国協議会開催.銅山国有化を支持する決議採択.組合員数は合法化後70万人から百万人に増加.
2 キッシンジャーの指示で,軍民両機関を含むあらゆる関係機関の代表を集めたチリ問題特別委員会を結成.
71年3月
3.01 幼児,児童へのミルク無料支給を実施.無料の医薬品と医師をのせた「人民健康列車」が農村地域に向け出発.
3.01 最高裁、ラウル・モラレス・アドリアソラ上院議員の免責特権を取り消す控訴裁判所(高裁)判決を覆す。アドリアソラはシュナイダー将軍暗殺未遂事件で、共犯者として起訴されていた。
3.04 政府、人民裁判所法の審議促進に関する議会への要請を取り下げる。PDCとPNは「反社会的立場」に関する判断が全国で行われれば、政治的権力の濫用に導かれ、中国のように「反革命的な」活動に対する処罰が広がると宣伝。
3.11 下院,銅山国有化に関する憲法修正案を可決.外資系企業フィアット・トメ社接収.
3.15 チリのセメント生産の45%を占めるポルパイコ・セメント会社,人民連合に反対しロックアウト開始.政府は国有化でこれにこたえる.これを第1号として反政府策動をおこなう民間企業の接収始まる.
3.18 米国の銅生産多国籍企業,チリ経済の撹乱を目的として銅国際価格の操作を開始.チリ下院は調査委員会を設置し調査開始.
3.22 40人委員会,キリ民党に対する20万ドルの追加供与を決定.
3.26 ファブリラナ社接収.
3.31 オジャルセ労働相,経営者のサボタージュ,労働者の解雇,労働協約違反などの企業に政府から監督官を派遣する政令に署名.国民党はこの政令を憲法違反として不信任動議を提出するが否決される.CUTはこの国民党の攻撃に対して各地で抗議行動を起こす.
71年4月
4.04 人民連合政府の成立後初の選挙となる地方選挙が行われる。18歳以上の文盲を含むすべての国民に投票権が与えられる最初の選挙となる。280の自治体で投票が行われ、人民連合は50.1%(48.6?)の得票率を獲得し大躍進.国民党の得票率は40%減少.人民連合内でも社会党の6割増加に対し急進党が激減し,連合内での社会党左派の発言権が高まる.
4.6 ドイツ民主共和国と国交樹立.
4.8 下院は政府の米系銅山国有化を認める憲法修正案を可決,上院に送付する.
4.17 米州機構総会席上,チリ政府代表は米州安全保障特別諮問委員会と米州防衛委員会の廃止を要求.
4.21 アルタミラーノ,無制限で機会主義的な要求,非公式の土地占拠や工場占拠をやめるよう声明.
4.22 上院,銅国有化に関する憲法修正案を可決.キリ民党は「反対票を投じない」という形で、法案成立に手を貸す。一方、銀行国有化については、信用の国家独占を恐れるキリ民党の反対により廃案となる。
4 急進党,地方選挙惨敗の総括をめぐり混乱.28名の議員のうちバルトラら12名が独立急進運動(MRI)を結成する.
4 アジェンデ,銅山労働者に対し山猫ストの中止と自覚的労働の強化を訴える.
4 アジェンデ,サンチアゴ守備隊代表2千名と集会をもち交流.
71年5月
5.10 40人委員会,キリ民党機関紙発行のために8万ドルを支出.
5.12 上院,憲法修正案にもとづく巨大米系銅山および鉱物資源の国有化法案を可決.
5.16 「自発的勤労日」設定.労働争議の抑制と自覚的労働の強化を訴える.
5.18 MIR,はじめて「政府の改良主義」を批判.
5.20 40人委員会,財政危機に陥ったキリ民党を救うため,10万ドルを支出.短期負債の償還にあてられる.26日には同様の目的で,さらに15万ドルが追加支出される.
5.21 世界最大のエルテニエンテ鉱山を政府の統制下にうつす.
5.27 操業停止と労働者4百人の解雇をおこなったフォード・チリ工場を政府の直接監督下にうつす.このころより人民連合とキリスト教民主党との間に亀裂広がる.
5.29 硝石産業の完全国有化開始.
5.30 MIRのネルソン・グティエレス,農地占拠をさらにつづけ,さらに工場占拠にもひろげる必要性を強調.アジェンデ,コンセプシオン大学で極左の行動を批判.
71年6月
6.8 「人民の前衛(VOP)」,キリスト教民主党右派幹部のエドムンド・ペレス・ズホビッチ前蔵相を暗殺.組織の実体は70年末,恩赦により出獄したMIRくずれの極左集団でCIAの謀略組織.アイルウィン上院議長を先頭とするキリ民党保守派はただちに強力な反UPキャンペーンを開始.アジェンデはただちにサンチアゴ地区に非常事態を布告,軍を出動させデモを禁止.
6.15 キリ民党と国民党,議会で政府非難決議を通過させる.
6.15 警察軍,銃撃戦の末ズホビッチ暗殺犯集団を逮捕.
6.16 非常事態解除.政府を支持する5万人集会がモネダ政庁前で開催.
6.19 外遊中のフレイ前大統領,「暴力の根絶に寄与するため」突然帰国,党内保守派がために乗り出す.
6.25 五大繊維会社の国有化完了.この時点で企業の国有化は270社に及ぶ.また農地改革は350の大土地所有に対して実施され,総面積130万ヘクタールにおよぶ.またインフレにともない労働者の賃金は平均35%引上げられる.国民所得は8.5%増加.
6.28 帰国したフレイはズホビッチ暗殺に関し人民連合の統治能力の欠如を激しく攻撃.これを機に人民連合との折衝は暗礁に乗り上げ,キリ民党内部でフレイ派の影響力つよまる.
6.29 キリ民党と国民党が反政府デモ.
6.29 ニクソン,チリの軍需品購入に対し5百万ドルを信用供与すると声明.
6 社会民主党,急進党と合同.
6 キューバ航空,チリとのあいだに定期航路開設.
71年7月
7.06 40人委員会,バルパライソの下院補選に向け15万ドルを選挙費用として支出.
7.11 上下両院合同本会議は反対なし(国民党は棄権)で銅山国有化の憲法改正案を可決.アナコンダ社(チュキカマタ,エクソティカ,エルサルバドル銅山),ケネコット社(エルテニエンテ銅山),セーロ社(アンディーナ銅山)の五大銅山が国有化.アンディーナ銅山以外は無償接収.
反人民連合反撃の時代 7.18 バルパライソで下院補選,国民党はキリスト教民主党候補に相乗りし,社会党候補を破る.フレイは国民党の支持を受入れると声明.キリ民党は左右の対立を深める.この選挙に40人委員会から15万ドルの秘密援助.
7.20 下院,議長にキリ民党のフェルナンド・サンチェスを選出.
7.22 アジェンデ,ラヌッセ・アルゼンチン大統領と会談.
7.26 社会主義労働組合連合総会.アルタミラーノはバルパライソ補選での人民連合の敗北を回顧しつつ「大衆動員の強力な過程を推進する」ことをよびかける.
7.27 キリ民党全国委員会,バルパライソでの国民党との共闘の総括をめぐり紛糾.キリ民党内におけるトミッチ,フエンテアルパら対話派の影響力は減少し,フレイ派が主導権を掌握.
7.30 下院議員8名を含むキリ民党左派は脱党し,「キリスト教精神に立った社会主義の建設に貢献することを目的とする」キリスト教左派(IC)を結成すると声明.青年部指導者のボスコ・パラ,青年部議長ルイス・バディージャらが指導部となる.
71年8月
8.1 急進党25回大会開催.社会主義派,革命派と自己規定.「労働者階級の立場に立ち,史的唯物論と階級闘争の理論を採用し社会主義社会建設をめざす」と宣言.労働者,農民,学生に入党を訴えるなどさらに左傾化することにより生き残りをはかる.独立急進運動(MRI)のバルトラら右派は離党し,”左翼”急進党(PIR)を結成するが人民連合には残留.
8.3 エルサルバドル銅山で下級職制を中心とする労働者の賃上げスト.エル・テニエンテでも同情スト開始.技術者の一部は職場放棄し国外脱出.
8.13 米国は3億1千万ドルの対チリ借款を打切る.ブスコビッチ経済相,資本家の投機的動きと物資隠匿に対し,手に入りにくい生活必需品を公定価格で供給することを目的とした供給物価委員会(JAP)の設置を提案.JAP加盟の小売店が国営流通会社から品物の供給を受け,公定価格で販売することとなる.あわせて生産監視委員会の設置を提案.
8.13 チリ政府,国営航空LANのジェット旅客機三機購入のため,2千万ドルの対チリ信用供与を要請.米輸出入銀行はこれを拒否.
8.13 文盲一掃全国運動開始.
8.14 エルサルバドル銅山スト収拾.
8.15 米国輸出入銀行は,銅山国有化の報復措置として,チリ国営航空に対する航空機買い入れのための信用供与を拒否.
8.23 アジェンデ大統領はエクアドル,ペルー,コロンビアを歴訪.
8 MIR,人民連合のキリ民党との妥協政策を非難.人民連合を「のりこえる」路線を提起.事故死したMIR指導者ルシアノ・クルスの葬儀デモに3万人を動員.
8 政府,キリ民党時代のアセンタミエントにかわる農地改革の受け皿として協同組合形態をとる農地改革センター(CERA)の設立を決定.国営農場への過渡形態として位置付ける.アセンタミエントもひきつづき黙認.社会党左派やMIRはソフォーズ方式の生産センター(CEPRO)を推進するが少数にとどまる.
71年9月
9.09 政府,反共キャンペーンを展開するエル・メルクリオ紙にたいし,新聞用紙の割り当て削減,政府広告の取り止めなど圧力をかける.CIAの要請を受けた40人委員会,エル・メルクリオ紙に70万ドルの資金を渡すことを決定.
9.15 共和国行政調査・会計監査局(コントラロリア),先に国有化された五大線維会社の返還を命令.政府は命令受け入れを拒否.
9.16 キリ民党青年部の組織した,農地接収と国営化に反対する農民のデモ,国警軍に阻止され乱闘騒ぎとなる.
9.23 チリ政府,チリ電話会社 (CHITELCO)を接収,国営化.チテルコは米国国際電話電信会社(ITT)が資本の70%を所有する,事実上の子会社.
9.28 7月決議に基づき米国系5大鉱山が国有化される.政府,接収米国銅山会社への補償金は,採掘開始以来の「超過利益」を越えることなしとし,実質的無償国有化発表.さらに7億7千万ドルの対米賠償請求.
9.29 エドワート・コリーに代わり,ナサニエル・デービスがサンチアゴ駐在大使に任命される.
9月 CIAは「祖国と自由」に70万ドルの資金を提供.
9 キリ民党議長に中間派のフエンテアルバ上院議員が就任.企業国有化に議会の承認を必要とすると規制することで,私企業のこれ以上の接収を事実上禁止する憲法修正案(アミルトン・フエンテアルパ修正)を発表.同時に「クーデターの際には,われわれは政府に与みするであろう」と声明.
9 共産党全国協議会開催.ミジャスが「人民連合政府の擁護のために…当面の情勢と共産党員の貢献」と題する報告.工場占拠や土地占拠をやめ,自覚的労働をうながすとともに,キリ民党など中間派の獲得を戦略として打ちだす.
71年10月
10.2 「祖国と自由」,街頭で人民連合支持者を襲撃,乱闘となる.CIA,騒ぎを大きくするよう秘密指示.
10.11 米系銅山会社による国有化の補償要求.政府はこれを拒否.保守派の牙城コントラロリア(会計監査院)もチュキカマタ,エルサルバドル,エルテニエンテ銅山国有化に対米補償は不必要と決定.
10.14 キリ民党,アミルトン・フエンテアルパ修正を議会に提出.政府はこれに対抗して,240社の国有化法案を国会上程.
10.16 チリ共産青年同盟は銅山会社による補償要求を拒否したアジェンデを支持する,全国的規模の街頭行進をよびかける.
10.19 政府,経済三部門への分割と労働者参加に関する法案を提出.
10.23 米ロジャース国務長官は米系産銅会社国有化の報復処置として,チリ産銅鉱の輸入を制限すると発表.チリに経済制裁を加えることもありうると言明.銅山会社は本格的な銅国際価格の操作に乗り出す.この結果,銅価格は年末にはポンドあたり70から45セントへ低下.
10 共産党全国協議会.「数カ月以内に深刻な困難に直面するだろう」と指摘,自己犠牲と英雄主義の発揮をよびかける.
10 MAPUのチョンチョル農相を中心とするグループ,「人道主義的でキリスト教的な価値」を維持するため,MAPUを離脱しキリスト教左翼(IC)に参加.MAPUはヒューバーマン,スウィージーら米国の独立社会主義者の影響を受けたマルクス主義政党へと変化.
10月 ITT,「アジェンデ政権を6ヶ月以内に崩壊させる」ための18項目からなる作戦計画をホワイトハウスあてに提出.この提案は拒絶される.
71年11月
11.5 人民連合政府樹立一周年記念集会.アジェンデ大統領は「政府をにぎるということは,権力を獲得することとは別である」と述べ,企業の国有化について「だからこそいま……経済綱領の基礎であり,人民のための権力の土台である社会的部門で前進したことを指摘しているのだ」とのべる.この一年間で市中銀行の90%と大独占企業の70%が政府の手にうつる.
11.5 40人委員会,野党への支援,およびUP内の分裂策動のため80万ドル供与を決定.
11.10 インフレ,加速を始める.ソ連はチリ人民連合政府が経済困難を克服するため4200万ルーブルにのぼる借款をあたえると発表.またアジェンデ大統領がラジオ放送で語ったところによれば,他の社会主義国から総額4億ドルにのぼる借款が特別に有利な条件であたえられたという.
11.10 国会開会.政府は一院制法案を議会に提出.アレサンドリ~フレイ時代の債務返済についてモラトリアムを宣言.さらに240社の国有化法案を議会に提出.キリ民党はこれに対抗して国有化を事実上禁止するアミルトン・フエンテアルパ法案を提出.
11.10 カストロ大統領,サンチアゴに到着.サンチアゴでは百万人がフィデルを迎える.カストロはチリに25日の長期にわたり滞在.毎日4,5回の大衆集会で演説.「チリに革命的情勢が生まれつつあるが,それは革命的情勢であって革命そのものではない」と極左的傾向に対し警告.「国有化や農地改革後の生産継続こそが最重要課題だ.経済運営を維持できるよう可能なかぎり現実的になれ」と説得を続ける.
11.15 銅山国有化を規定する憲法改正公布.
11月 右翼学生と職員,チリ大学法学部などを占拠,人民連合との衝突続く.同月末には,カトリック大学にも波及.
71年12月
12.01 「食糧不足に抗議する」主婦5千名による「鍋たたき」デモ.実体は人民連合に反対する富裕層の婦人連.プロビデンシア街に座りこみ,周囲を武装した青年が取り囲み放火,交通遮断などを繰り返し争乱事件に発展.トア内相は二日間にわたりサンチアゴ市内に非常事態宣言,警察により実力排除.
12.2 カストロ,歓送集会で発言.「私は革命過程にはファシズムが付き物であることを再確認した.ファシズムが姿をみせたら,われわれの革命精神を武装しよう」「精神が武装されたときには人民は強い」.アジェンデ「わたしがモネダ宮を去るのは,かれらが私を弾丸で蜂の巣にしたときだけである」と発言.
12.2 左翼革命運動がキリ民党系の反政府デモに挑発をおこない,衝突が起こる.
12.3 衝突事件の責任を追及し,国民党とキリ民党の共同でホセ・トア内相の弾劾決議を提出.
12.4 カストロ,チリを離れる.アジェンデとの共同声明で「LAは団結のため共通の道を探らなくてはならない」とする共同声明を発表.
12.5 ピノチェト将軍,社会混乱をあおる国民党機関紙「トリブナ」に停刊命令.
12.9 通貨の妥換と外貨操作停止.71年度の経済成長率は8.5%と,過去十年間最高.失業率は8%から4%に低下,あらたに20万人が就労.物価上昇率は35%から22%に低下.しかし,外貨準備は1年で3億から3千万ドルに減少.
12.11 労働者,学生の数万人による人民連合擁護デモ.
12.12 IMF,チリにクレジット供与.
12.15 ワシントンで債務返還繰り延べ交渉開始.
12.15 40人委員会,来年1月の補欠選挙に向け,2人の候補に16万ドルを支出.
12.17 アジェンデ=トミッチ会談.
12.21 アルゼンチン,チリに2千万ドルを供与.
12.22 政府,国有化の対象を91社に削減した修正案を提出.議会はアミルトン・フエンテアルパ修正を採択.政府は今後,「議会の審議および賛成を得られない限り」企業の国営化を実施することができなくなる.
12.23 左翼急進党(PRI)と人民独立行動の連合成立.アジェンデの合併推進論を背景とする.
12.24 銅山労働者の賃金問題再燃.
12 政府,パシフィック・スチール社を買収.
12.30 政府,ケネコット社の手形支払を停止.
12.30 日本共産党代表団(西沢富夫団長)チリ訪問.
12 CUT第6回全国大会.ルイス・フィゲロア議長,加盟単産64,労働者数90万人に達したと報告.すべての国有企業と混合企業において労働者の参加を確立する方針を決定.また私企業においても生産監視委員会の結成をめざす.大会までの1年間に21万人の農民を,あらたに全国農民インディオ連盟に組織.反アジェンデの立場をとる農民中央統一組織(CUC)からMAPU系の労働者農民同盟が分裂し旧組織の約半数を結集,人民連合支持に回る.
矛盾表面化の時代
1972年
72年1月
1.1 ゼネラル・モータースのチリ工場を接収.
1.6 下院はトア内相に対し街頭争乱鎮圧を違憲とする弾劾動議を可決,上院に送付.
1.8 共産党創立50周年記念集会に8万人が参加.
1.14 政府,240社のうち「戦略的に重要な」製造業を中心に,電話会社,銅線製造会社など,民間企業53社の国有化と38社の半官半民化計画を発表.議会はこれを否決するが,政府は,ロタ・シュワーゲル社(石炭生産の8割を支配),RCA・ビクターなどあいついで接収.
1.16 サンチアゴ南方の保守地盤,オヒギンス,コルチャグア州とリナレス州で上院議員補選.人民連合は,キリ民党と国民党の統一候補に敗れる.国民党,すべての非マルクス主義勢力の統一戦線を提起.そのために,地方選でのキリ民党支援を示唆.キリ民党も反政府キャンペーンを強化.左派議員はつぎつぎに脱党.MIR派は妥協路線の破産と宣言,左翼急進党(PRI)は合法性の逸脱が敗因と非難.
1.19 ニクソン米大統領,諸外国における米系企業の接収に言及.「迅速,十分,かつ有効な」補償をもとめる.そしてこれが実現されない限り,米国は相互的な経済援助を停止し,さまざまな金融協力を保留せざるを得なくなると警告.
1.22 上院においてトア内相弾劾決議採択.以後クーデターまでに7名の閣僚が罷免される.
1.28 UP,補選敗北とトア罷免後の体制たてなおしのため,第二次内閣組閣.トアを国防相に任命.内相にCUT書記長のデルカント(社会党員),ほか社会4,共産3,左翼急進2,急進2,MAPU1,キリスト教左翼1など.アジェンデ,UPを8党から5党に整理するよう提案.MAPUとIC,左翼急進党と人民独立行動,急進党と社会民主党の合同をうながす.
1 士官学校長アルベルト・ラベ大佐,反逆のかどで退役処分となる.ピノチェト,陸軍参謀総長(ナンバー2)に昇格.以後参謀部を中心にクーデター準備ひそかに進む.
1月 米政府内に,対チリ反革命のための秘密司令部「各機関特別連絡調整グループ」が設置される.
72年2月
2.1 パン,砂糖の値上げ実施.製パン業者はさらに値上げを求め,業者スト.
2.2 エル・アラヤンで人民連合各党幹部と経済閣僚の合同会議,上院補選敗北を機に政権獲得後14ヵ月間の活動を総点検する.人民連合の内部統一と生産闘争の強化の課題がぎろんの中心となる.米国との断絶,社会主義諸国との関係深化などさらに政策の急進化を主張する社会党左派系のブスコビッチ経済相と,生産促進のため改革を凍結し,キリ民党との妥協の上に政策の手直しを求める共産党幹部エコノミストのオルランド・ミジャスの間で農業,経済路線をめぐり論争.ブスコビッチの背後には社会党左派,IC,MAPUがつき,ミジャスの背後には共産党,社会党アジェンデ派,急進党がつく.共産党の主張が基本となり「チリ人民連合政府と人民の新課題」発表.
2.3 アナコンダ銅山会社は,接収への対抗処置としてチリ銅公社,チリ中央銀行などのの在米資産を差し押え.ケネコット社は米国内にストックした戦略備蓄銅を一斉放出し国際銅価格を操作.チリにとって2億ドルの損失となる.
2.10 パリの債務返還繰り延べ交渉決裂.資本主義諸国は「パリ債権者クラブ」を組織,チリに融資の返却を要求.総額38億ドルに達する.
2.20 上下院合同本会議で,キリ民党のアミルトン・フエンテアルパ修正を可決.さらに農地改革のこれ以上の進行を押しとどめるため,80ヘクタール以下の農地の接収を禁止する法案も可決.
72年3月
3.2 野党「すべての国会議員が署名している以上,この改正を公布しなければ流血の惨事が生じるだろう」と声明.
3.3 アジェンデ暗殺計画発覚.
3.6 CUTはアミルトン・フエンテアルパ修正に対し,人民連合政府を支持するため一週間にわたるデモをよびかける.また国有化された企業の労働者は「たとえ憲法が改訂されても逆もどりは絶対受入れない」という決意を表明.
3.15 共産党中央委員会総会.ミジャスが超緊縮計画を提唱し承認される.共産党はエル・アラヤンで採択された「人民の新課題」を支持し,反動の陰謀粉砕のために全党が戦闘体制につくことをよびかける.
3.21 ジャック・アンダーソン記者,アジェンデ就任を妨害する米政府の陰謀(ITT文書)を暴露.フレイの陰謀への連座もあきらかとなる.
3.24 アジェンデは憲法修正法への署名を拒否.
3.27 タクナソ関与により退役となったあと「祖国と自由」のメンバーとなったアルフレド・マルシャル少佐を中心とするクーデター計画が発覚する.政府捜査局と軍情報局の調査により,事件の黒幕としてアルフレド・カナレス将軍の関与があきらかとなる.
3.29 デュポン・チリ工場接収.
3 物価凍結解除,食料品を中心に約30%の値上げ.インフレ,もの不足と商品隠匿,ヤミ市場に拍車.
3 内務次官ダニエル・ベンガラは土地占拠を防ぐため,実力行使する可能性もあると警告.ジャンキウエ州農民連盟議長フアン・ルビリアルを一時逮捕.
72年4月
4.6 左翼急進党,大統領の憲法改訂署名拒否を機に2人の大臣を含め12人の議員が人民連合を離脱し反アジェンデ連合に合流.背景にCIAの金銭攻勢.
4.6 アジェンデ,議会の妨害行動に対し,国民投票で対抗する用意があると表明.
4.8 人民独立行動,左翼急進党との連合を破棄しUPにとどまることを表明.
4.11 40人委員会,昨年9月に引き続き,エル・メルクリオ紙に100万ドルの援助を与える.
4.13 第3回国連貿易開発会議(UNCTAD)総会,サンチアゴにて40日間にわたり開催
4.13 ピノチェトによればこの日「陸軍参謀本部においてさまざまな可能性について分析した結果,行政権力と司法権力の紛争は,憲法によっては解決しえないという結論に」達する.クーデター計画「国内秩序」の本格的研究を開始.
4.14 ITTとCIAの陰謀を調査するための下院委員会設置.
4.17 アジェンデ,エチェベリアと会談.米国の内政干渉を非難する共同声明.
4.18 アジェンデ,CIAの策動の中心であったITT資産の接収計画発表.サンチアゴで人民連合政府防衛のデモに数十万人が参加.
4.18 週刊「祖国と自由」発刊.
4.26 40人委員会,人民連合を分裂させるための工作資金として,5万ドルの支出を承認.多くが左翼急進党に回ったものと見られる.
4.27 チリ大学総長にキリ民党右派のエドガルト・ボエニンゲル再選.
4.28 アジェンデ大統領は,私有大農場の収用が5月中に終了すると発表.
72年5月
5.4 チュキカマタ銅山で物価値上げに抗議する48時間スト.
5.12 アジェンデ大統領,チリ電話会社のITTの持株を収用するための憲法改正を,議会に提出.
5.12 共産党幹部ティテルボイム,上院で演説.極右とならんで極左の武力挑発を非難.コンセプシオンのキリ民党支部,政府反対勢力集会の申請を提出.共産党を除く人民連合諸党とMIRは,これに対抗する目的で同日のデモを申請するが,共産党中央委員でコンセプシオン州知事のウラジミル・チャベスにより却下.
5.14 コンセプシオンでキリ民党デモ隊に紛れこんだ「祖国と自由」党員と,MIRの扇動する人民連合デモ隊が衝突.この衝突で学生ひとりが死亡,負傷者50人.チャベス知事,MIRの挑発デモ強行に対し警察に妨害排除を指令.共産党政治局は極左の挑発行動を非難.社会党政治局も現地社会党の態度に不賛成の意志を表明.
5.31 モンテエロ海軍司令官,ソ連を訪問.
5月 CIAエージェントが,情報収集のためチリ大使館に侵入.実行犯は翌月ウォーターゲート侵入を行った連中と同じといわれる.
5 軍部,米国から輸送機,装甲車等の供与を受ける.
72年6月
6.1 ベトナム共和国,朝鮮人民共和国と国交樹立.アジェンデ,キリ民党のフエンテアルバと会談.
6.6 CUT役員選挙.得票率は共産党31%,社会党26%,キリ民党26%,MAPU5%,急進党4%.MIRは2%弱にとどまり役員をおくりだせずに終る.議長に共産党のフィゲロア,事務局長には社会党最左派のロランド・カルデロンが就任.カルデロンはその後もっとも熱烈な政府支持派となり,アルタミラーノ派に対抗する.MIRはその後社会党やMAPUへの潜入をはかる一方独自の大衆組織の強化に乗り出す.ほかに市内のポブラシオン(スラム)を中心にヌエバ・ハバナ,ホーチミンなどの自治組織を結成し革命的住民運動(MPR)を組織.土地や建物の実力占拠行動を展開.革命的農民運動(MCR)は,カウチン地方のマプチェ・インディオの中で活発に取り組まれ,土地占拠闘争(トマス)を繰り返す.一方,アジェンデ大統領の個人的ボディーガード集団グルポ・デ・アミゴス・ペルソナレスをMIRからおくりだすなど,影響力を行使.
6.8 中国と経済援助協定締結.
6.9 シュナイダー将軍暗殺事件の首謀者ビオー将軍に懲役30年の判決.
9.10 内閣総辞職.UP,キリ民党との協議の本格的再開をめざす.
6.12 大統領の拒否権発動で宙に浮いたフエンテアルパ修正のあつかいについて人民連合とキリ民党の会談開かれる.
6.16 40人委員会,補欠選挙に向け5万ドルの選挙資金支出を承認.
6.17 人民連合ロクーロ会議を開催.社会党アルタミラーノ派,MAPU急進派はさらに国有化を進めるよう主張するが,議論の結果,性急な国有化をストップし中間層との和解を図るミジャスの路線をとること.
6.17 内閣改造.ブスコビッチ経済相は閣外に去り,社会党のカルロス・マトゥスが後任となる.ミジャスは蔵相に就任する.JAPは経済省の下部機関商工庁(DIRINCO)の管轄下に入る.
6.21 キリ民党,独自の国有化案発表.①UPの90社案からカルトネス・イ・パペレラス製紙会社をはじめ14社を国有化リストからはずすこと②160社にのぼる介入企業の民間への返還を要求.
6.27 トアの後任エルナン・デル・カントゥ内相,議会により罷免.
6.29 キリ民党との会談,社会党左派とキリ民党右派の反対によりものわかれに終る.
6.30 私有銀行の国有化が完了.
6 サンチアゴ郊外の大工業ベルト地帯のひとつセリージョス・マイプーにあるベレルク缶詰会社ほか三社で生産監視委員会の指導による工場占拠.政府は警察軍を派遣するなど強硬な態度でのぞむ.弾圧に抗議して地区労働者が支援行動を展開するなかでコムンド・コムナル(地区調整委員会)を結成.社会党左派,はこれを人民権力の萌芽としておおいに評価.MIRは数少ない労働者出身のビクトル・トロやエルナン・アキロが指導して革命的労働者戦線(FTR)を組織.コムンド・コムナル内に影響力を広げる.
72年7月
7.2 国立工科大学総長にUP支持派のエンリケ・キルベルグ選出.
7.6 上院,フエンテアルパ修正に対するアジェンデの拒否権を否決.左翼急進党と民主急進党統一.
7.8 CUTのサンチアゴ州幹部会選挙.キリ民党が過半数を掌握するが,キリ民党主流派とは一線を画し,UP支持を打ちだす.サンチアゴ地方本部書記長にはキリ民党のマヌエル・ロドリゲスが就任.
7.16 コキンボ州の下院補欠選挙で人民連合は53.8%の得票をえて勝利.
7.21 下院,キリ民党提案による武器統制法可決.
7.24 アジェンデ,国際的経済封鎖を非難.ミジャスらの策定にもとづく新経済政策を発表.国民に耐乏を訴える.
7.27 コンセプシオンの人民連合諸党支部は,政府の耐乏政策とキリ民党への妥協的な態度に反発.共産党を排除しMIRをくわえ反政府的な「人民議会」を創設する.MIR,直接民主制による「全国人民議会」の創設をよびかける.アジェンデは「人民権力は,現実からまったく切り離された人民議会とよばれるところの,叙情的妄想を創出する政治的ロマンチシズムのような,分裂主義的マヌーバーから生まれるのではない」とし,この挑発を拒否.
72年8月
8.1 ハイメ・スアレスが内相に,エルナン・デル・カントが官房長官に就任.
8.5 エスクード,50%切り下げ.
8.6 警察官によるモンカダ野営地襲撃事件.警察長官解任.
8.6 IC,「自己の利益をまもりブルジョア国家機構の変革を求めてたたかっている,大衆自身のダイナミズムを理解しなければならない」とし人民議会に同情的な立場を表明.
本格的反動攻勢開始の時代 8 政府,農地改革法にもとづく農地の接収完了を宣言.潅漑地基準面積80ヘクタールを越える農場の45%にあたる3340の農場,535万ヘクタールが接収され,大土地所有制に終止符.依然土地なし農民17万人,失業・臨時労働者14万人,5ヘクタール以下の零細農36万人が取り残されたため,摂取基準面積を40ヘクタールに切り下げる検討がはじめられる.農地改革と並行して農民の組織化進む.UP系の「ランキル」が組織農民の46%,キリ民党系の「トリウンフォ・カンペシーノ」が21%,「リベルタ」16%,MAPU系の「労農同盟」が16%を獲得.
8 共産党土地改革委員会特別会議.コルバランは演説の中で極左派による無原則的な接収と生産規律の乱れ,非効率的な官僚主義を厳しく批判.
8.18 UP,反投機闘争宣言.
8.19 キリスト教民主党,左翼急進党と国民党,民主同盟(CODE)を結成.翌年3月の国会選挙でUPを打倒するため,各選挙区ごとに統一候補を擁立することで合意.民主同盟,選挙登録.
チリ年表 その4
1972年
72年8月(続き)
8.21 サンチアゴで反UP派の全国商店主連合15万人が参加する24時間商店スト.ストの影響により,2週間のうちに綿製品は90%,タバコは110%,鳥肉,砂糖は100%,ミルクは90%値上がりした.牛肉は市場から姿をけす.9月16日をクーデター決行予定日とする「9月計画」開始.トラック輸送の休業,各所でのテロや暴動を背景に,軍の引出しを狙うもの.国民党,キリ民党,祖国と自由の幹部が関与.政府,サンチアゴ市に非常事態宣言.マガジャーネス州プンタ・アレナスでは市民の大規模な大衆行動により,商業会議所のスト策動を打ち破る.
8.24 パブロ・ロドリゲス,軍部にクーデター決行をよびかけ.農村部を中心に活動家の暗殺など右翼によるテロ頻発.警察はテロを事実上黙認.
8.25 人民連合,反テロル,政府防衛の緊急行動への動員をよびかける.
8.30 キリ民党,アジェンデ辞任を要求.エルメルクリオ紙は軍事クーデターをあおるキャンペーン開始.
8.30 右翼テロに対して自衛委員会設置される.
72年9月
9.1 CUTとUP全国委員会,闘争体制の強化をよびかけ.CUT議長フィゲロアは「もし反動のエスカレートがやまないのなら,労働者は工場・公共機関の占拠をともなう全国ストを決定する」と述べる.人民連合全国委員会は9月4日の2周年記念集会に全国動員をよびかける.
9.2 社共,論争を一時停止.政府防衛を訴える共同声明.
9.4 大統領選勝利2周年を期し,政府防衛の大デモ.サンチアゴで80万人,全国で220万人が参加.その後警察は右翼の街頭暴動に対し強硬な立場に転換.
9.5 チリ共産主義青年同盟第7回大会.グラディス・マリン書記長,自発的労働の重要性を訴える.「われわれは,自発的労働の努力がますます具体的な作業に対して向けられなければならないことを理解した.青年が冒険を好み,新しい場所へでかけて行くことを望むということを忘れはしないが,自発的労働がいっそう労働の場所でおこなわれなければならないことを理解したのである」
9,6 右翼デモ,中心街での暴動に発展.警察の催涙弾により学生1人が死亡.654人が逮捕.
9.8 南ベトナム共和国臨時革命政府と外交関係樹立.
9.10 アジェンデ,内戦の危機を警告.キリ民党に内戦回避のための会談を要請.
9.12 国民党ロランド・マトゥス突撃隊,ファシスト組織「祖国と自由」,キリ民党右派の連合軍事部隊,地区防衛隊(プロテコ)を組織.武装蜂起計画の秘密文書「行動教範」,ラモナ紙により暴露.
9.15 トラック業者と政府,運送料引き上げをめぐり紛争.120%引き上げで合意に達する.政府は私企業と並行しあらたな公的運送業の設立の方針を提起,業者は一斉に反発.
9.15 UP側マスコミ,「明朝を期したクーデター計画」を一斉に公表.交通通信の途絶,経済のマヒ,混乱の醸成,軍隊に対する攻撃からなる大規模なもの.
9.16 右翼クーデター計画,流産に終わる.軍情報部は首謀者の摘発に乗り出す.
9.16 政府,インフレ対策発表.
9.20 キリ民党,電気料金値上げ法案を採択.アジェンデは拒否権行使.
9.21 プラッツ総司令官,クーデターの首謀者アルフレード・カナレス陸軍教務局長,イリアルト将軍の他将校数人が退役させられる.
9.21 40人委員会,反アジェンデの財界組織を支援するため2万4千ドルの支出を決定.
9・26 政府,生活必需品の価格凍結発表.チリ海軍,米国海軍と合同演習.
9.29 共産党中央委員会総会「勝利の秘訣は質素な労働者,主婦,地味な住民の自覚的,自発的,英雄的な日常活動(土曜日も活用)にあるということを確信すべきである.こうすることではじめて,われわれは人民政府を真に人民のためにできるであろう」(ホセ・カルドマトリ政治局員)
9.30 ケネコット社,フランス向け銅を差し押さえ.フランスの港湾労働者は,差し押さえられた銅の荷役を拒否する行動にたちあがる.
9月 40人委員会,工業振興協会の闘争資金として,2.4万ドルを緊急支出.
9 全国繊維労働者同盟大会.企業管理委員会が二ケ月毎に企業の活動報告を労働者に提出すること,「計画的欠勤をしたり,職務を怠けたり,遅刻したり,早退することといった,資本主義から受け継いだ悪習の除去に必要な努力をする」ことを決定.セリジョス,ビクーニャ・マッケンナなどのコルドンをにぎったMIR派は,これをCUTに対抗して企業の国有化を迫る「人民権力」として位置づけ,母親センター,隣人委員会も巻き込みコマンド・コムナルの結成をはかる.
72年10月
10.4 政府,賃金調整法案を上院に提出.金準備を米国からフランスへ移す.
10.6 南部アイセン州にCORFOの出資による合弁輸送会社設立する計画を発表.同州のトラック業者は計画撤回を求めスト突入.
10.7 砂糖と肉の配給制が始まる.
10.8 全国トラック業者連盟のビラリン議長,国営運送会社構想に反対しスト突入を宣言.
10.9 ケネコット社,フランス法廷にたいしチリの銅販売代金支払分の差し押えを求める.これによりチリの銅輸出はストップ.CUTは米独占ケネコット銅会社の対仏輸出銅の差し押えに抗議し,6万人の集会を開く.
10.10 トラック所有者組合,無期限ストにはいる.27日間にわたり全土がマヒ状態に.政府派業者のトラック,ハイウェイで相次ぐ襲撃を受ける.
10.11 トラック・ストを皮切りに資本家スト拡大.連帯ストとして全国商店主連合による商店ストが起こる.
10.12 10月17日をクーデター予定日とする工業振興協会(経団連)による資本家スト開始.靴職人組合,学生,小農なども,続々と支援スト入り.13州で非常事態宣言.米国は5千万ドルを拠出し,CIA職員2千名を派遣.アジェンデ大統領は全国放送で祖国防衛をよびかける.運輸業者のストに対して指導者の逮捕とトラックの徴発をおこなう.
10.13 CUT,生産監視委員会を組織し,主要工場のすべてを占拠,確保し,操業維持に成功.労働者は政府,CUT,人民連合のよびかけに応え,整然と工場,職場に出勤し生産を続行する.
10.15 キリ民党「警戒の状態から,政府反対の総動員」への移行を宣言,ストへの動員を指令する.キリ民党第三派,党を離れUPに加盟.
10.16 政府,全国25州のうち24州で非常事態宣言.トラック所有者連盟はいっさいの妥協を拒否.
10.17 キリ民党,銀行,官庁などにストよびかけ.さらに医師,歯科医師,国内航空パイロットがストいり.
10.17 サンチアゴ軍管区のエクトル・ブラボ将軍,クーデター予定日にあたり夜間外出禁止例を発動.南部2州に非常事態宣言,バス会社の国有化を中止する.各地で職場委員会や地域人民委員会が生まれ,自主操業,隠匿物資の摘発などを進める.
10.18 アジェンデ大統領はバス運輸業者の要求を入れ,乗客貨物運輸サービス業の国有化をしない協定をおこない事態の収拾につとめる.アジェンデ,キリ民党に危機克服のための政治協定締結交渉をふたたび要請.
10.20 私バススト開始.CUTは自動車動員運動によりストに対抗.
10.20 ダウ・ケミカル社接収.
10.21 エルサルバドル虐殺の当事者カルモナ上院議員の提案になる「武器統制法」議会で採択される.これにより軍にすべての武器の管理権限を賦与することとなる.「祖国と自由」に対しては一度も適用されず.
10.22 商業および運輸事業再開.
10.23 小売商のスト再開.
10.24 右翼勢力はこの日「仕事も学校も買物もやめて家に閉じこもれ」とよびかけたが失敗.
10.26 40人委員会,現状でのクーデター実行は危険とみて,3月選挙に焦点を据える.野党と反アジェンデ民間組織支援のため,あらたに150万ドルの援助を承認.
10.27 資本家ストは,労働者の管理による生産継続によって事実上失敗する.
勢力桔抗の時代 10.28 政府,トラック所有者同盟の解散を決定.
10.29 野党,4大臣に対する憲法違反弾劾決議案を議会に提出.
10.31 4閣僚に対する弾劾決議案成立,内閣総辞職.
72年11月
11.02 組閣方針発表.新内閣は資本家ゼネストに対抗してはじめて陸,海,空の三軍司令官をふくめて組織される.
11.2 MIRが主導権をにぎるビクーニャ・マッケンナのコマンド・コムナル,軍人入閣を拒否し,労働者の要求を発表.人民連合政府とCUTの打倒,社会主義権力の獲得をうたう.
11.05 第2次アジェンデ内閣発足.CUTのフィゲロア議長(共)が労相に,カルデロン書記長(社)が農相に就任.3人の現職軍人が入閣.イマニエル・ウェルタ提督が公共事業・運輸相,クラウディオ・セプルベダ空将が鉱業相に就任.陸軍総司令官プラッツは内務大臣(首相はなし,閣僚の最高ポスト)としてストの鎮静化に成功.内相に任命されたプラッツにかわり,ピノチェト参謀総長が陸軍総司令官代行に就任.実力占拠した160工場のうち3分の2の返還を決めた「ミジャス法」を制定.返還に反対する労働者は各地にコムンド・コムナルを結成し政府に対抗.
11.13 DIRINCO長官に就任したバチェレト将軍,JAPへの介入強化,コムンド・コムナル(地区調整委員会)やコルドン・インドゥストリアル(産業労働者防衛組織)などを通じてJAPの人民管理をすすめていたUP左派やMIRなどとの対立をもたらす.MIR,「革命を後退させるもの」として非難.IC,軍人入閣に抗議し内閣から脱退.MIRの路線に接近.
11 共産党中央委員会開催.9月計画と資本家ストを総括.中間層に対するセクト主義を自己批判し,総選挙へ向けての行動提起.
11.21 コンセプシオン大学の総長選挙で野党候補が勝利.
11.29 パリの民事裁判所は,ケネコット社の銅差し押え処分要求を破棄.
11.30 アジェンデ,諸国歴訪の旅に出発.メキシコ・米・アルジェリア・ソ連・キューバを訪問した後,12月15日帰国.
11 政府,当面は農業生産の確保を第一とし,農地改革を67年法の段階で凍結すること,小農に対しては援助政策を通じて国家計画のなかに組込み,改革センターに対しては組織運営場の改善をはかり生産向上をめざす方針に転換.社会党左派やMIRはこの提案に反対し,40ヘクタールを越える農場に対する占拠戦術を強化.
72年12月
12.3 銅輸出国政府間協議会(チリ,ペルー,ザンビアなど)閣僚会議,ケネコット社との取り引き停止決議.
12.4 アジェンデ大統領,国連本会議で演説.「チリは重大な攻撃の犠牲者となっている.我々は大規模な外部勢力の攻撃を受けている」と述べ,米国の干渉を糾弾.その後ソ連訪問.この間プラッツ将軍が大統領代理.
12.6 軍事法廷,ビオー将軍に減刑判決.
12.7 国連総会のあと,ソ連を訪問したアジェンデ大統領,ソ連と経済技術援助協定締結.5千万ドルの借款があたえられる.
12.11 アジェンデ,ソ連からの帰途キューバ訪問.
12.14 アジェンデとカストロ,共同声明を発表.外国の搾取に反対する国際統一行動を呼びかける.
12 MIR支持派がMAPU指導部の過半を獲得し,オスカ・ガレトーンが指導者となる.ロックアウトされた企業に対する実力占拠を強化し,労働者が自主管理するコルドネスを創出.製造業では202社が接収されるが,90社案にふくまれている企業は50社にとどまり,中小ブルジョアジーに大きな打撃となる.
1973年 73年1月
1 教育省,教育制度の改革をめざす国立統一学校構想を発表.反動層から激しい非難を浴びる.
1.8 ケネコット社,ドイツでチリへの銅代金差し押さえを強行.
1.9 カンボジアと国交樹立.
1.10 政府,ミジャス経済相とプラッツの手になる「社会的所有部門創設案」を提案.接収中の120企業を元に返還し,キリ民党との接近を試みる.社会党,MAPU,IC,MIRは真っ向から反発し,流産に終わる.ミジャスは交渉失敗の責任をとり辞任.
1.24 政府,議会に社会的所有部門創設法案を提出.
1.31 イスマエル・ウェルタ公共事業相辞任.後任にダニエル・アレジャノ提督が就任.分配・流通相のポストを新設.アルベルト・バチェレス空将が就任.
1 MIR,選挙での社会党支持を発表.社会党はこれを受入れ,MIRを「チリ革命過程を防衛し深化させることに基本的に賛成している革命的勢力」と評価する.
73年2月
2.5 共社両党党首の折衝をもとに「人民連合党の政策大綱」発表.これまでの成果の上に,生産性を向上させ経済再建をはかること,政府の統制のもとに社会的所有部門を急速に拡大させること,農地接収の限度を明確にし40ヘクタール未満の農場の私有権を保障すること,生産監視委員会や農民会議など人民諸組織を発展させることなどをうたう.また人民に奉仕する政府と人民に奉仕しない国会とのあいだの矛盾を克服しなければならないとし,2院制から1院制の人民議会への移行を訴える.アジェンデ支持派は選挙に向けて人民連合党を創設.共,社,急進党,MAPU,IC,人民独立行動(API)が参加.
2.6 共産党のコルバラン書記長と,社会党のアルタミラーノ書記長とのあいだで,職場占拠闘争と,それを推進するMIRに対する評価をめぐり公開論争.コルバラン,アルタミラーノへ公開書簡.
2.12 40人委員会,3月選挙に向け,あらたに20万ドルの支出を承認.
2.13 アルタミラーノ,コルバランへ返書.「綱領の基本線を譲らずに,ブルジョアジーと帝国主義に仕えている諸政党との妥協を通じて「人民政府の周りにチリ人の90%を結集する」という可能性は,哀れむべき錯覚とはいわないまでもわれわれには認めることはできません」と批判.
2.15 食料品配給制開始.
2 「祖国と自由」の指導者ロベルト・ティエメ,「われわれにとって自由な民主主義体制は3月4日に死に」「われわれが銃を手にして祖国をまもるときがやってきた.解放の代価が内戦であるならば,われわれはそれを支払わなければ鳴らないであろう」と宣言.
73年3月
3.1 「チリ経済は4月で破産」「経済的,社会的,政治的危機を極限まで推し進め,階級闘争の緊張を最高限度まで高めることによって内戦を引き起こす」とするMAPUの秘密文書,エルメルクリオで暴露.調査によりMIRの手による漏洩であることが判明.コルバラン,内戦の危険性を指摘.
3.4 総選挙,人民連合が大方の予想を裏切って43.4%を獲得,大統領選比で6%増となる.議席数では上院で3,下院で6議席増加する.共産党は得票を2.5倍に伸ばし,農村部でも六つの初議席をかちとるなど躍進.しかし,物価は15倍に騰貴し,もの不足深刻となる.
3.7 MAPUガズムーリ派のフェルナンド・フローレスら,緊急中央委員会でガレトーンら親MIR派の除名を決定.MAPU下部活動家の多くはガレトン派に移行.
3.14 MIRはアジェンデ,共産党,軍人閣僚を改良主義,降伏主義と激しく非難.その後街頭占拠など挑発行動を展開しながら,エルメルクリオ紙上で左からの反政府キャンペーンを展開.
3.15 アジェンデ,人民連合党の単一党化を要請.
3.20 ピノチェト「憲法に基づく解決は不可能という結論に達し」クーデター計画を推進.陸軍将軍25人のうち5人の賛同を得る.
3.21 ITT,アジェンデ政権成立を妨害した事実を認める.
3.22 アジェンデ,軍人閣僚を軍内安定化のため解任し,原職に復帰させる.
3.22 米=チリ間の政治・金融をめぐる交渉,暗礁に乗り上げる.
3.27 米国上院外交小委員会で,アジェンデ政権転覆計画へのロジャーズ国務長官の加担事実証言.
3.28 文民のみよりなる新内閣成立.ミジャスがふたたび経済相に就任.共産党中央委員会総会.コルバランは,あらたな経済システムの建設が決定的に遅れていると指摘.総選挙の総括と統一強化の課題を確認する.
3.31 社会党中央委員会総会,アジェンデ派が巻き返しに成功.人民連合からの離脱とより戦闘的な左翼戦線の形成を求めるMIRシンパに対し,アルタミラーノも含むUP支持派が主導権をにぎる.人民政府は前進を続けるための主要な道具であるとし,「政府の防衛が党の命にかかわる課題である」と規定.大衆組織の発展が政府の行動を助けるものとなるよう要求.また社共の同盟を人民連合の主軸として位置付け,MIRの排除を決議.
3.31 フレイ,「人民連合の道はマルクス主義の全体主義」と非難.ヘラルド・エスピノサ内相,工場,土地の不法占拠の禁止を声明.
第二の反動攻勢の時代 73年4月
4 統一学校構想に反対する右翼学生デモ,連日展開.
4.3 アジェンデはあいつぐ土地や工場の不法占拠(トーマ)など無政府主義的傾向に対しきびしく警告.
4.6 64年の大統領選で,アジェンデの当選を阻止するために,米国政府とCIAがフレイ派に2千万ドルの資金援助をしたことが暴露される.
4.8 MIR,アジェンデの警告を拒否し工場・土地の占拠を続行すると宣言.
4.10 サンチアゴで世界労働組合会議開催.アジェンデは演説で米国政府,CIA,多国籍企業,国内反動勢力による人民連合政府転覆の陰謀を非難.
4.10 政府,生産サボタージュに対し民間企業41社の接収で応える.
4.11 憲法裁判所,議会の賃金問題関与に違憲判決.企業接収のための42の緊急法令出される.
4.12 ITT会長,上院外交委で「アジェンデ政権阻止のため米政府に政治工作資金を申入れた」事実を認める.政府,ITTの資産接収のための憲法改正案を議会に提出.
4.18 エルテニエンテ銅山の職員・技術者からなる労働組合,キリスト教民主党の指導のもとに平均水準の2倍にのぼる賃上げを要求し無期限ストに突入.74日間にわたる.労働者の8割は就業を続けるが,輸送・港湾関係業務がストップ,3千万ドルの損失となる.
4.25 政府,武力による政府転覆をあおるエルメルクリオ紙を告訴.UP,一部軍人が反政府の立場で政治活動をおこなっていると非難.プラッツ将軍,軍部に不一致はないと言明.
4.26 学制改革反対ストとデモ.
73年5月
5 ITT,RCAなどすべての国際通信会社国有化計画を発表.
5.1 人民連合,自己批判の文書を発表.「人民連合の最大の欠陥は,労働者階級の孤立を避けさせ,国民の大多数を引きつけ,彼らの支持を労働者階級に与えることが出来なかった点にあった.このような欠陥の中でも決定的に重要だったのは,人民連合とその政府に圧力を加えていた極左主義の見解であった」
5.1 コルバラン,チリ寡頭制が数ケ月以内にクーデターを準備していると警告.
5.3 アルメイダ外相辞任,後任にレテリエル.
5.4 政府,あらたに社会的所有部門へ移す43企業発表.
5.5 サンチアゴ市,非常事態発動.
5.7 コンセプシオンで右翼によるテロ事件.日本政府,対チリ円借款拒否.
5.10 極右「祖国と自由」の責任者パブロ・ロドリゲスはテレビを通じて「もし1976年に選挙がおこなわれれば,マルクス主義は80%を獲得するだろう.だからそれより以前に行動しなければならない」と反革命クーデターを公然とよびかける.
5.10 右翼のテロ挑発のためオヒギンス州に非常事態宣言.
5.11 エル・テニエンテの鉱山スト,チュキカマタに波及.ストの影響を受け銅輸出が全面的にストップする.
5.12 エルメルクリオ紙,政府の告訴に対抗して「アジェンデは憲法にもとづく大統領ではなくなった」とする国民党の声明を発表,内戦を公然とよびかける.祖国と自由,組織的民間活動体系(SACO)を発表.工場経営者に物資隠匿,UP支持者のリストにもとづく解雇をよびかけ.ロベルト・ティエメ,チリ解放のためには内戦も辞さずと言明.政府,2州に非常事態宣言.エルメルクリオを6日間の発刊停止処分.
5.14 人民連合,内戦反対のデモ.エルテニエンテ銅山労働者,政府のスト収拾案を拒否.
5.14 キリ民党大会開催.選挙での敗北を受け,「対決に導くような,どのような暴力状態をも,憲法の枠から外れるようなすべての行動をも拒否する民主的反対派」を提案したフエンテアルバは敗れ,「アジェンデにいささかも自由に振る舞わせはしない」との決意を表明したフレイ派のエイルウィンが議長に就任.非平和的路線に転換.
5.20 キリ民党,フエンテアルパ派の巻き返しにより,国民党とのあいだの民主同盟の解消を決定.
5.21 アジェンデ,内戦回避を訴える.
5.23 フレイ,上院議長に選出される.
5.24 政府,エルテニエンテ銅山の操業再開命令.
5.24 アリカに停泊中の駆逐艦「プラット」号上で,チリ海軍のウェーベル提督らが米国大使館の代表らと謀議.
5.25 ブエノスアイレスでカンポラ新大統領の就任式.式に出席したアジェンデは,同席したロジャーズ米国務長官と会談するが不調に終わる.
5.25 プラッツ,欧州歴訪に発つ.最高司令官代行となったピノチェトは,6月クーデター敢行を最終決定.野党勢力はこれに呼応し国内不安定化策動を強める.
5.27 サンチアゴ医師会,48時間スト宣言.
5.28 キューバのドルティコス大統領,アルゼンチン大統領就任式に出席した後チリを訪問し,アジェンデと会談.両国の外交関係を樹立.
5.28 トラック業者,24時間スト.トア内相兼国防相は,スト非参加バスの保護を申入れるが軍はこれを拒否.
5.30 憲法裁判所,国有化企業に関する議会と政府の紛争に関し仲裁不能を宣言.
5.31 ドルチコス・キューバ大統領,チリを公式訪問.祖国と自由,共産党本部を襲撃.
73年6月
6.1 キリ民党,ミジャス経済相の弾劾を決議.
6.3 「祖国と自由」,社会党本部と急進党本部を襲撃.警察軍はパブロ・ロドリゲスをバルパライソで拘留.
6.4 銅公社,エルテニエンテの労働者65名を解雇.
6.05 銅山労働者のストが長期化し,政府の銅輸出は一時停止に追い込まれる.
6.5 UP政治委員会,アジェンデの提起した国民投票実施を全会一致で否決.
6.6 下院,フィゲロア労相とビタール鉱業相をあいついで弾劾.
6.7 北朝鮮と文化協定締結.
6.8 政府,二閣僚に対する処分は憲法侵害として議会を非難.
6.11 議会,農地改革に反対する中小農家層優遇の憲法改正案を採択.
6.13 米国,チリに百万ドルの軍事援助.
6.14 最高裁,ビオーを仮釈放.クーデターを拒否し人民連合を支持するCUTの大規模な集会開催.CUT議長ホルヘ・ゴドイ(PC)は政府の反動派マスコミに対する過度の自由放任主義を批判,「祖国と自由」の非合法化を要求.21日のゼネストをよびかける.
6.15 チリ大学のテレビの6チャンネル,家宅捜索.
6.15 エルテニエンテのスト参加者,政府に賃上げを要求するマラソン行進を終えサンチアゴ到着.カトリック大学校内でキャンプを張り,街頭で連日デモ.カトリック大学学生を中心に支援デモが展開,UP支持派と武力衝突を続ける.アジェンデ,現政府打倒のあとにはファシスト,親帝国主義者の政府が作られるだろうと警告.
6.19 エルテニエンテのスト,2ヶ月を超えて続く.野党勢力によるエルテニエンテ支援の大集会.アジェンデ,社共両党の反対を押し切り鉱山労働者との会見を決定.
6.20 チリ上院,下院に続きフィゲロア労働相とビタール工業相を弾劾.両相辞任.
6.20 数千の医師,教師,学生が,エルテニエンテへの政府の対応に抗議し無期限ストに入る.スト参加者に紛れ込んだ挑発者が銃を発射,爆弾を仕掛け,街頭での衝突を繰り返す.
6.21 CUT,右翼のファッショ暴動に抗議しゼネスト.サンチアゴで内戦阻止をスローガンに百万人集会.キリ民党のフエンテアルバ前委員長,サンチアゴ大司教も集会を支持すると声明.
6.21 政府,暴動を扇動したとしてエルメルクリオに6日間の停刊処分.
6.22 最高裁,エルメルクリオに対する処分を却下.
6.27 ファシスト分子によるプラッツ将軍暗殺の陰謀発覚.サンチアゴ州に非常事態発令.地区司令官マリオ・セプルベダが大権を掌握.
6.28 ボリビアで反革命軍の訓練に参加していたマルシャル少佐ら,クーデターの陰謀.セプルベダ指揮下のサンチアゴ警備師団はこれを襲い,将校数名を逮捕.
6.29 ソウペル大佐指揮下の首都第二機甲連隊百名が反乱を開始.ダウンタウンを支配下に置き,国防省と大統領官邸に向かう.戦車7台を先頭にモネダ宮に攻撃開始.このたたかいで死者22名,負傷者34名を出す.前日に発覚した陰謀の首謀者による自暴自棄的性格のもの.取材中のスエーデン人カメラマンが射殺される.プラッツの交渉により3時間後には失敗に終わる.
6.29 「祖国と自由」のパブロ・ロドリゲス委員長他5名,エクアドル大使館に逃亡し亡命申請.セプルベダ将軍,人民連合政府の合法性を再確認する声明.アジェンデ統一と警戒をよびかけ.政府,兵士に選挙権を与える法案提出を決定.軍人給与を6割引き上げ.兵士・下級将校に厚い分配となる.
6.29 右翼報道機関は一斉に「UPがクーデターを画策」というキャンペーンを開始.キリ民党委員長アイルウィンは「如何なるクーデターもこれを非難する」と声明.
6.30 CUT,クーデター未遂事件に対し大動員抗議集会.6月に入ってからこの日までにサボタージュ,放火,爆弾の投入れ,労働者と学生への銃撃など,91件にのぼる不法行為が発生.CUTは生産監視委員会の再組織をよびかけ,MIRなどは一斉に工場占拠に立ち上がる.
73年7月
7 人民連合の内戦回避のアピールに,カトリックのサンチアゴ大司教シルバ・エンリケスが支持表明.さらにキリ民党左派の指導的部分も支持を表明.
7 軍部,米国からファントム55型戦闘機を購入.
7.1 エルテニエンテ鉱山労働者のストライキは,一時金の支給で妥協が成立し終結する.
7.2 CUT,政府防衛のためゼネスト決行の用意があると声明.軍は占拠した工場の明渡しを要求するが,多くのコルドンはこれに応ぜず.
7.2 軍は左翼勢力に対し,武器取り締まり法による強制捜査開始.バルパライソの海兵隊,市内の第三高校に対し武器統制法にもとづく捜索を実施.以後の1ヶ月間に左翼勢力に対する捜索行動は23件におよび,軍による暴力行為あいつぐ.政府の意向を無視し軍が独走,事実上の二重権力が形成.
7.4 三軍司令官,合法政府に対する忠誠を声明.
7.5 第6次アジェンデ内閣成立.「経済困難を乗切るための」文民内閣として社4,共3,急3,MAPU2,その他3.内相にプリオネス,国防相にアルメイダ.緊急経済計画を発表.
7.7 アジェンデ,キリ民党との会談の用意があると声明.
7.7 MIRのミゲル・エンリケス,「軍の反動派将校による公然たる反人民的な政治的言動」のあることを警告し,反動に対する「反攻」を挑発する.
7.9 コルバラン,内戦回避のため非ファシスト諸党派との会談の必要性を指摘.
7.12 MIR,軍部への浸透とその解体をよびかけ.
7.12 アルタミラーノ,コルドン・インドゥストリアルで演説.「社会党は,チリの敵,人民連合政府の敵,労働者の敵と妥協することを決して容認しないだろう」と発言,キリ民党との対話の試みを批判.
7.13 「祖国と自由」のロベルト・ティエメ,6月のクーデター作戦に参加したことを明らかにする.
7.16 ロベルト・ティエメ,右翼新聞で反政府一斉武装蜂起を扇動し,反乱準備のための地下活動開始を宣言.
7.17 MIR,兵士にクーデター策動への不服従をよびかけ始める.社会党アルタミラーノ派も,まもなくキャンペーン開始.MIRはカウチン地方に”解放区”を設定,”ペペ司令官”が”人民行政府”を指導.
7.25 アジェンデ,キリ民党との対話をよびかける.
7.26 トラック業者4万5千人を先頭とする第2回目の資本家スト開始.サンチアゴはマヒ状態に陥る.アジェンデ,輸送手段の確保をよびかけ.極左(MIR)と極右のテロが続発.
7.26 キリ民党,アジェンデとの会談を公式に受諾.
7.27 大統領付き武官アルトゥーロ・アラヤ・マリン海軍大佐,在宅中に暗殺.各地で右翼のテロ・破壊活動激化.
7.27 共産党中央委員会総会.オルランド・ミジャスがクーデターをふくむファシズムのエスカレーション粉砕を訴える.
7.30 シルバ・エンリケス枢機卿の仲介によりアジェンデとキリ民党のエイルウィン議長が会談.
7.31 運送業者,グレミオ,スト突入.
73年8月
8.3 旅客輸送業者,トラックストに同調.バス・タクシー業界,合計11万台が無期限ストにはいる.商店主,中小企業経営者,医師,弁護士,教師などもあいついでストいり.
8.3 アジェンデ=エイルウィン会談,決裂.キリ民党は会談打ち切りを声明.
8.4 アジェンデ,政権委譲拒否を声明.全国非常事態宣言.CUT,トラックストは政府転覆をめざしていると非難.
8.5 MIR,アジェンデ=エイルウィン会談の実施を非難.
8.5 9月19日蜂起説流れる.海軍,左派分子の摘発を開始.バルパライソの海軍基地ではMIR細胞が摘発され,百名にのぼる水兵・軍関係労働者が逮捕・拷問を受ける.
8.6 カラビネーロス司令官セプルベダ,反逆者の厳正取り締まり指示.
8.7 海軍,「艦隊のふたつの分遣隊内で,軍に無縁な過激分子により支持された反乱の動き」があったと声明.この事件を機に海軍内で反アジェンデ派が主導権を掌握.
8.7 右翼,全国30ヵ所で鉄道を爆破.クリコ市では国有石油会社のパイプラインが爆破.多くの工場が材料難から操業停止に.
8.8 アジェンデ,空軍の二将軍解任.エルテニエンテ労働者5千人がふたたびスト入り.医師もスト決行.
人民連合瓦解の時代 8.9 第7次アジェンデ内閣発足.キリ民党の要求を入れ,国家安全保障内閣となる.プラッツが国防相,モンテロが蔵相,ルイスが公共事業・運輸相,セプルベダが漁業相(土地・拓殖相?)など主要ポストのほとんどを軍人が占める.アルメイダは外相,レテリエルは内相に回る.CUT,政府擁護大動員デモ.
8.10 ハイメ・ファイロビッチ運輸次官(社会党)は,軍をともない資本家の確保するトラックの実力接収に乗り出すが失敗.
8.11 ルイス運輸相,軍とキリ民党のもとめに応じファイロビッチ運輸次官を辞任させる.
8.12 政府,運輸業者所有の車両の没収を命ずる.業者のサボタージュにより失敗.
8.13 送電線の切断によりサンチアゴ全市が電力ストップ.祖国と自由,武力による政府転覆を改めてよびかけ.アジェンデ,内戦の危機を訴える.
8.14 アルタミラーノ,セリージョスの産業コルドンで人民権力の強化を訴える演説.
8.15 トラック輸送業者総連合,ルイスによる和解案と職場復帰命令を拒否.
8.17 エンリケス枢機卿の仲介でアジェンデ=アイルウィン会談.アイルウィンはバス,トラック・ストの終結に向け努力することを約束.
8.17 CUT,企業と戦略拠点防衛を訴える.
8.18 ストライキに反対していた愛国輸送業者連盟指導者バルボアが暗殺される.
8.18 ルイス運輸相兼空軍総司令官,スト解決に失敗し公共事業・運輸相を辞任.後任にウンベルト・ナビオチェッチ空軍作戦部長を指名.ルイスは辞任後のテレビ番組で,プラッツおよびモンテロも辞任するよう要求.
8.20 ルイス,プラッツの圧力により,あわせて空軍総司令官も辞任する.この間に空軍内ではクーデター派が主導権を確立.
8.20 資本家スト終了.代わって専門家統一連合が無期限スト入りを発表.クーデター,秒読みに入る.市内に「ジャカルタを忘れるな」のビラが貼りめぐらされる.
8.20 40人委員会,政府の最終的打倒に向け百万ドルの追加支出を決定.
8.21 将軍夫人連,プラッツの官邸に辞任を要求するデモをかける.空軍はナビオチェッチに対する指名受諾いったん拒否.その後右翼のグスタボ・レイ将軍が就任.
8.21 医師,48時間スト突入.キリ民党全国指導部もフレイ派のゼネストに合流.キリ民党の掌握するCUTサンチアゴ支部,48時間ストに突入.
8.22 下院でキリ民党と国民党が同盟して,政府不信任および政府非難動議を採択.軍部に政府か議会かの選択を迫る.同時にアルタミラーノとガレトンに対しても議員辞職要求の動き.
8.22 プラッツ,在サンチアゴ将官会議を開き将校夫人連のデモについての意見を聴取.過半数がデモ支持の態度を明確にする.プラッツを支持したのはセプルベダ(第2師団長兼サンチャゴ守備隊司令官)、ピケリング(首都軍事研究所所長)、ウルビナ(検事総長)、ブラディ(軍事アカデミー総長)、およびピノチェト(参謀本部長)。
8.22夜 アジェンデがセプルベダ、ブラディ、ピケリングらと夕食を共にする。将軍らはプラッツの留任は不可能との見方を示す。
8.23昼 プラッツ,軍隊の立憲制保持を不可能と断定.国防相と陸軍総司令官の両職を辞任する旨アジェンデに告げる.後継者にはピノチェトを推薦。立憲派のサンチアゴ警備師団長のセプルベダ,軍教育局長のギジェルモ・ピケリングは辞任.セプルベダの後任にはセザル・メンドーサ.
8.24 ピノチェト,プラッツに代わり陸軍総司令官に就任.政府に忠誠を誓い,謀反に参加した6人の将軍の罷免を確約するが果たさず.
8.24 反政府高校生千人,警察隊と衝突.
8.24 モンテロ蔵相兼海軍総司令官,蔵相を辞任.ホセ・トリビオ・メリノ将軍が後継.総司令官の地位は離れなかったが,その後の内紛の中で海軍の実権もメリノの手に移動.MIR派の水兵二人が軍当局の手により虐殺される.
8.26 「祖国と自由」の地下指導者ロベルト・テイエメ,市内の料亭で逮捕.エルメルクリオ紙は,「祖国と自由」とのあいだに距離をおく声明を発表.
8.27 チリの商店主,反政府ストの再開を呼びかける.
8.28 4人の高級将校をふくむ新内閣を組織.政府内および労働戦線における共産党の影響がさらに強まる.内相で社会党員のブリオネスに対し,社会党はその姿勢を批判する声明.CUTはプラッツ将軍支持のデモ.商店主,自由業者はアジェンデ退陣を要求するストを開始.
8.28 アジェンデ,UP指導部に対し辞任の意を表明.
8.29 サンチアゴ郊外のランカガ市で,連続暴力事件発生.
8.30 商店スト中止.テロ続発.政府車両動員をよびかけ.
8.31 モンテロ提督,内閣と軍に総司令官辞任の辞表提出.
8.31 トラック所有者連盟と政府の軍関係者とのあいだでトラックスト終結協定案作成.
73年9月
9.1 政府と全国トラック所有者同盟との話し合い決裂.
9.3 アジェンデ,モンテロ将軍の海軍司令官辞任を認めず.民間航空パイロット,ストに突入.
9.4 人民連合勝利三周年記念集会.百万人がアジェンデ支持デモ.非同盟諸国会議から祝電.キリ民党,内閣多数派に対する違憲弾劾告発動議を提出.アジェンデ,交通ストに対して非常事態を宣言.
9.5 反人民連合派の15万人の婦人集会.アジェンデ辞任を要求.商店主連合,48時間スト突入.国民党,政府打倒までスト続行をよびかけ.
9月07日
9.07午前 国営航空パイロット,スト突入.空軍は共産党系労働者の牙城であるスマール(繊維)工場への強制立ち入り捜査.労働者とのあいだで激しい衝突.アジェンデは内戦の危機を警告.
9.07昼 プラッツがピノチェト総司令官と会談。9月13日までに反乱が起きる可能性があるとの危惧を伝える。またキリ民党のフレイに政権を譲渡することでクーデター回避を狙うとの提案を行う。
9.07夕刻 バルパライソの海軍基地に不穏な動きがあるとの報道がサンチャゴに入る。ピノチェトは他の将官を引き連れヘリでバルパライソに向かう。
9.07夜 アジェンデ、4軍幹部の夕食会に来賓として出席。三軍を代表するメリノ海軍司令長官と話合い.アジェンデは民主制度の維持に関する国民投票と,キリ民党との対話再開を提起する.
9月08日
9.08 チリ大学所属のテレビ放送局9チャンネルにたいし警察の介入.放送局を占拠・使用するMIRを強制退去させる.
9.08午後 2時から8時までアジェンデ・プラッツ会談。アジェンデは11日に国民投票を告示することを明らかにする。これに対しプラッツは、国民投票はすでに手遅れであるとし、辞任と国外亡命をもとめる。アジェンデはこの提案を拒否。経過を知ったピノチェトは、国民投票阻止のため,14日予定のクーデター計画実行を11日に早める.
9月09日
9.09午前 アジェンデ、共産党政治委員会委員を官邸に呼び会談。国民投票について支持をもとめる。共産党は至急意見を集約すると応答。
9.09昼 アジェンデ、トマス・モロ公邸でピノチェト総司令官、ウルビナ検事総長と会談。国民投票の計画を伝える。計画を聞いたピノチェトは驚いたが、「国民投票により、議会との麻痺状態を解決し緊張を取り除くことが可能になるだろう」と述べたという。
9.09午後 アジェンデとの会談を終えたピノチェトは、直ちにレイ空軍司令官、海軍の将軍らと会談。当初は翌日に行動開始の提案もなされたが、カラビネーロスの説得に時間がかかるとの意見が出て、11日決行の線で合意。
9.9 社会党,スポーツ・スタジアムで数万人の大集会.アルタミラーノの演説は人民連合との離反をにおわせるが,具体的な内容なし.
9.9 キリ民党全国協議会,アジェンデ辞任と総選挙実施要求を決議.非同盟諸国外相会議がチリ連帯決議.
9.9 米国海軍艦隊,チリとの合同演習「ウニタス」のためバルパライソ沖に到着.アジェンデ派のポブレテ海軍大将は海軍艦艇の合同演習参加を拒否。
9月10日
9.10 アジェンデ,国民投票準備をふくむ緊急閣僚会議召集.チリ共産党政治委員会声明.全民主勢力に「戦闘部署につき,数日中に合憲政府を転覆させようとたくらんでいる反動の襲撃を撃退する準備を」とよびかける.
9.10 午後9時半 「兵隊を満載した2台のトラックがロスアンデスを出発しサンチャゴに向かって進んでいる」との情報が大統領宮殿に届く。
9.10 パブロ・ロドリゲス帰国.デービス駐チリ米大使帰任.チリ艦隊,「ウニタス」にむけ出港.夜半に反転しバルパライソに引き返す.
9.11 午前6時 チリ海軍,バルパライソの町を制圧.市長を逮捕.モンテーロ司令官を監禁し,メリノが反乱を指揮.