劣化ウラン関連年表

 

2003.9月作成

 

1943年10月30日 マンハッタン委員会内の「S-1実施委員会」,マンハッタン計画の責任者グローブス将軍あてに,「放射性物質の兵器としての利用」と題するメモを送付.「空気から吸引されたウランは,鼻や咽喉頭,気管支の粘膜などに付着し,次に飲み込まれる.胃,盲腸,直腸では,摂取されたものが長期にわたって残留する.このため消化器系臓器が最も深刻な影響を受ける」ことを明らかにする.

1950 メリーランド州アバディーンの陸軍実験場で,劣化ウラン弾の発射実験が開始される.79年の閉鎖までに,92トンの劣化ウランが発射され,地下水が汚染.

58年 ボストン近郊のコンコードで,劣化ウランの利用を研究する核金属社が操業開始.25年の間に,裏庭に劣化ウラン181トン,銅317トンを投棄.360キロのウラン235も捨てられる.

1969 バーモント州のイーサン・アレン射爆場で20,000発の対戦車砲弾(劣化ウラン4,500kg)による発射演習.4年後に中止.

1970年代

72 ロスアラモス国立研究所,戦車貫通体として劣化ウランを利用するための研究を開始.

1972 ニューメキシコ州立工科大学で「最終効果研究・解析社」による劣化ウラン砲弾発射実験が開始される.

1973 フロリダ州のエグリン空軍基地で劣化ウラン弾の発射訓練開始.これまでに100トンの劣化ウランが発射される.90-95%のウランが残留しているとされる.

 74年 軍による劣化ウランの医学・環境評価報告,「戦闘状況下で劣化ウラン弾を広範に使用した場合,その周辺では劣化ウラン混

合物の体内への侵入の可能性がある」と記載.

1976 ニューメキシコ州ホワイト・サンズのミサイル実験場で,劣化ウラン80gを搭載したパーシング対地貫通ミサイルの4発以上の発射実験が行われる.地中60メートルまで埋没した1発のミサイルの劣化ウランは回収不能となる.

78 『ワシントン・スター』紙,劣化ウラン兵器開発について報道.共和党のロバート・ドール上院議員は,「私はこの提案に衝撃を受ける.もし国防総省がこの計画を進めならば,国防総省は自らの人員をガンマ放射線の新しい源にさらしたがっているということになる」と述べる.

79 国家研究評議会の資源関連審査会(National Materials Advisory Board of the National Research Council),「劣化ウラン使用の危険性について」の報告書と,「劣化ウランとタングステンを比較検討する」報告書の二つを公表.「劣化ウランの軍事的利用は,健康・環境に大きな影響を与えないが,事故や戦闘における劣化ウラン兵器は重大な摂取・吸入の危険性を持つ」とする.

70年代末 英国とドイツは,この頃から劣化ウランの貯蔵を開始.

 

1980年代

1980年代初頭 ニューヨーク州衛生局,160,000の宝石類のうち,170個が放射能汚染されていたと報告.同じ時期,放射能汚染された指輪をしていた人々14名が,指に癌をわずらったり,指や手の一部を切断したという. ウラン再処理で分離された貴金属が再利用された可能性.

1980.2 ニューヨーク州裁判所,オルバニー市のナショナル鉛産業会社に操業停止を命令.この工場は60年代後半から劣化ウランの30ミリ砲弾および平衡錘を製造していた.劣化ウランのエアロゾルが,40キロ以上離れた地点の空気フィルターから見つかったことが引き金となる.1ヶ月あたりの空中放出放射線量は,州基準150マイクロキュリーを超えていた.この放射線量は,30ミリ砲弾の貫通体の1.5本分にも満たない.

1980 フランス,米国エネルギー省から劣化ウラン126トンを輸入,ウラン金属に転換し貯蔵.サウジアラビアは米国から37万5,000発の劣化ウラン砲弾を輸入.

1981.5 テネシー州の劣化ウラン弾生産工場エアロジェット社で,労働環境の改善を訴える従業員が無期限ストライキ.

1982 ネバダ州ネリス空軍基地で,約3トンの劣化ウランをふくむ弾丸の実験発射.93年に劣化ウラン弾の使用は中止される.

1984 インディアナ州ジェファーソンの実験場で,劣化ウラン貫通体の実験発射が開始される.95年までに90トンの劣化ウランが発射された.その後,40-50億ドルほどの規模での回収作業により,この内22トンが回収された.

1985年8月 日航ジャンボ・ボーイング747が墜落.この際に,墜落現場で劣化ウランが散乱.公式には,ジャンボ機には282kgの劣化ウランが搭載されている.ただし1.65トンにたっするという指摘もある.

1985 ミズーリ州ブルー・スプリングスで劣化ウラン貫通体を持つ44,000発の20ミリ弾(3.5トン相当)の発射実験.発射実験場から劣化ウランの粉塵などが飛散.

1986 ニューメキシコ州立工科大学のエネルギー物質研究所が劣化ウラン弾の実験を行っていたことが,内部告発により明らかになる.大学は93年に発射実験を中止.

1988 陸軍,M1A1戦車の配備にともない,劣化ウラン弾を採用することを公式に認める.

1988 米軍A-10爆撃機がドイツのレムシャイトで墜落.劣化ウラン弾の被害が憂慮される.

 

1990年

7月 国防総省内部資料,劣化ウラン弾が非常に強力な対戦車兵器であることを認めつつも,その着弾の衝撃で飛散する粒子を吸入した場合には放射能によるガンの発生の危険があり,使用を禁止される恐れがあると指摘.「米国の規則・基準と保健活動の要請に従えば,DUを使用した後の環境において,何らかの復旧治療的活動が必要になると思われる」とする.

7月 国際応用化学社が米軍に提出した報告,「戦闘状態によっては,劣化ウランのエアロゾルが制御不能なほど放出される.」「兵士が戦場でエアロゾルの劣化ウランに被爆した場合,放射線や化学的毒性の影響を強く受ける恐れがある」,「体内被曝のときはがんと関連し,科学的毒性は腎臓損傷の原因となる」と警告.

8月 イラク軍,クエートを占領.

1991年

1.17 湾岸戦争が始まる(戦闘の経過については中東年表を参照のこと).戦争中の劣化ウラン弾の使用総量は800トンに上る.これは「広島に落とされた原爆の1万4千倍から3万6千倍の放射能」(矢ヶ崎克馬・琉球大学教授)にあたるとされる. 

米陸軍環境政策局によれば,7,000発をサウジアラビアで訓練発射,実戦で4,000発を発射.さらに3,000発を火災や事故で消失した.したがって総計で1万4,000発の戦車砲弾(劣化ウラン500トン相当)が使われた.英国チャレンジャー戦車も,少なくとも100発の劣化ウラン砲弾を発射した.
空軍は,陸軍以上に劣化ウラン砲弾を使用した.戦争中にA-10対地攻撃機「戦車キラー」が広範囲にわたって用いられ,94万発の30ミリ劣化ウラン砲弾が発射された.30ミリ砲弾1発に含まれる劣化ウランは約300g.したがって総計約280トンになる.

3月 陸軍ロスアラモス研究所のジーム(Ziehmn)中佐,「DUの使用はデリケートな問題である.もし誰もDUの有用性を主張しなければ,DU弾は政治的に受け入れられず,武器庫から抹消されるだろう」 と述べる.

7月11日 クウェートのドーハ弾薬補給基地で,車両火災が発生.爆発が6時間続き,火災は二日間にわたる.劣化ウラン装甲を持つM1A1エイブラムズ戦車4両が炎上,劣化ウラン砲弾(戦車砲660発,25ミリ弾9720発)と 劣化ウラン装甲など,約4トンの劣化ウランが炎上・飛散.8ノットの北西風に乗り数マイル範囲を汚染.

1991 カリフォルニア州のチャイナ・レイク海軍航空センターでの劣化ウラン弾発射実験が中止される.それまでの数十年間で11トンの劣化ウランが放出される.

1992年

1992.10 アムステルダム近郊で,イスラエル航空のボーイング747の貨物機がアパートに墜落して炎上.ボーイング747には主翼のバラストとして1,500kg,尾翼のバラストとして380kgの劣化ウランが使用されている.墜落現場の周辺地域で,皮膚病,腎臓の機能障害,子ども白血病,出生児の奇形が増加したという報告.

92年 化学兵器禁止条約が成立.その後劣化ウランが化学兵器の定義に該当するかどうかが議論となる.

92 クウェート,劣化ウラン砲弾を装備したM1A1戦車を米国から購入.

1993年

1月 米国会計検査院,「友軍射撃」を受けた戦車の乗組員について調査.劣化ウランに汚染された恐れがあると公表.「不溶性のウラン酸化物は肺に長くとどまり,放射線によるガンの発症リスクをもたらす.嚥下された劣化ウラン粒子は放射能によるリスクと科学的毒性の両方をもたらす」と述べる.
報告は「健康に著しい危害があるレベルの被害ではない」としながらも,「兵士が十分な知識を持っておらず,劣化ウラン対策の訓練を受けていなかった」と指摘,陸軍はより適切な対応をすべきだと勧告する.

93 マンスール病院などバグダッドの2つの小児病院に白血病専門病棟が設置される.急増する子どもたちの白血病に対応するため.

93年 ギュンター教授逮捕事件.「オーストリア国際黄十字」総裁のシーグワルト=ホースト・ギュンターが,イラクで発見した劣化ウラン砲弾の残骸をドイツに持ち込もうとする.砲弾は警察に押収され,ギュンターは「原子力法」違反で逮捕され,罰金刑を受ける.

93年 ロペスら,『Uranium Battlefields: Home and Abroad』を発表.湾岸戦争後,最も早く劣化ウランの危険性を訴える.

93 陸軍当局,会計検査院の批判に対し,「生命を脅かされる戦闘中には,戦闘による危険の方が,劣化ウランによる健康へのリスクよりはるかに高いため,防護対策の必要性は無視できる」と反論.

93 国防総省と退役軍人省,「劣化ウラン・フォローアップ計画」を起動.その調査範囲が狭く,かつ恣意的であることから,多くの批判を浴びる.

93年末 アメリカの復員軍人局,ミシシッピ州在住の湾岸帰還兵251家族を州全域に渡り調査.戦争後に妊娠・出生した2百数十人の子供のうち67%が失明,無眼球,無耳,指が融合している状態だった.結果は公表されず,のちに民間団体が手に入れて公表.

93 会計検査院の報告を受けた米国議会,陸軍環境政策研究所(AEPI)に対し,劣化ウランの健康および環境に対する影響,劣化ウラン汚染を除去する方法,劣化ウランの毒性を減らす方法,劣化ウランから環境を守る最善の方法,について調査するよう指示.
 

1994年

6月 陸軍環境政策研究所(AEPI),劣化ウランに関する「総括報告」を議会に提出.劣化ウランがアバディーン試爆場の土壌に溶解し汚染していることを明らかにする.「DU対策は,戦場の環境破壊を緩和するために,主役国に委ねられたすべての治療的復旧計画に含まれるべきである」と述べる.

1995年

3月 湾岸戦争のベテランと家族の情報交換と相互扶助を目的に「全米湾岸戦争リソース・センター」(NGWRC)が設立される.全米60団体が結集.

5月 クリントン大統領直属の「湾岸戦争帰還兵の疾患に関する大統領諮問委員会」が創設される.18回開かれた公聴会で,劣化ウラン問題はわずか1回だけ.劣化ウランの検査や取扱いの問題で証言した科学者は3名だけ.しかも2名は核兵器産業の関係者だった.

6月 陸軍環境政策研究所(AEPI),劣化ウランに対する調査結果を議会に報告.「劣化ウラン兵器の使用は潜在的に人体に危害を及ぼしうる」ことを確認.同時に劣化ウラン兵器問題に特効薬がないことを明確にする.これは秘密報告であったが,「軍事毒物プロジェクト」という団体が,密かに報告書を入手,発表したことから明らかになる.

劣化ウランが体内に入ると,深刻な医学的悪影響がもたらされる可能性がある.体内の劣化ウランは化学作用と放射作用の両方で危険をもたらす.
水溶性成分は体中に広がり,骨・腎臓・肝臓に濃縮貯蔵される.腎臓はウラン毒性の標的臓器と広く認識されている.
DUによる戦場の汚染対策がすべての治療的復旧計画に含まれるべきである.途上除去・物理的分離・科学的分離・現地封入などが考えられるが,これらが実際に行われたことはない.

8月 NATO軍,ボスニア=ヘルツェゴビナのセルビア人勢力に対する空爆.出撃回数は4,000回をこえる.主力となった米軍A-10 攻撃機は,約1万発(約3トン)の劣化ウラン砲弾を発射.

12.05 沖縄県のアメリカ軍鳥島射爆場で,海兵隊AV-8Bハリヤージェット機が,訓練中に劣化ウラン弾を「誤射」.7日と1月24日にも「誤射」が続き,1,520発の25mm 劣化ウラン弾(222kg)が発射される.このうち29kg(16%)の劣化ウランのみが回収された.この事実は2年間にわたり伏せられる.

1995 国連癌統計が発表される.これによれば,イラク南部における癌発生率は89年から94年にかけて7倍に増加.アメリカ国防省は「イランとの戦争でイラクが使ったマスタードガスのせいではないか」と反論. ちなみに化学兵器の製造工場があったとされる場所というのは,バクダッドの南部地域に限定される.バスラ周辺にそんなものがあったという記録はない.

 

1996年

3月 米下院,「安全保障・退役軍人問題・国際関係小委員会」を組織.保守派も含め超党派で,湾岸戦争症候群問題に取り組む.@退役兵の疾病は,戦場で浴びた放射線や化学物質に起因する.A連邦政府の退役兵への扱いは不当である,との報告を提出.

8月 ジュネーヴの「国連差別防止及び少数者保護に関する小委員会」(99年に人権促進・擁護小委員会と改称)で,劣化ウラン兵器・BC兵器,クラスター爆弾などの禁止を求める決議が,賛成15,反対1,棄権8で採択される.反対はアメリカのみ.「無差別大量破壊兵器,とりわけ核兵器・化学兵器・気化爆弾・ナパーム弾・クラスター爆弾・生物兵器および劣化ウラン兵器の製造と拡散を抑制する必要性」を強調.劣化ウランに関しては,「廃棄された汚染機器が生命を脅かす深刻な脅威となる」と言及.

11月 国防総省,省内に「湾岸戦争疾病に関する特別援護局」(OSAGWI)を設立.「客観的で徹底した,疾病についての調査を行う」ことを目的とする.ランド社と連携し,劣化ウランの影響を否定する研究結果を相次いで発表.

ランド社は,国家安全保障戦略,重要科学技術政策の形成等に重要な役割を果たすシンクタンク.米国内保守派を代表する.1948年に設立され,初期の宇宙開発戦略の策定から,近年の戦略的情報戦争の分析まで,先駆的研究で世界的に注目されている.

12月 「大統領諮問委員会」,最終報告書を発表.「湾岸戦争帰還兵の健康問題は,劣化ウランに被爆した結果ではありえない」と結論.湾岸戦争症候群の原因は,「戦争における精神性のストレスによる」とされる.

96年 イラク政府は,国連人権センターにあて,劣化ウランの被害に関する覚書を提出する.破壊された車両の放射能測定を行った.試料の幾つかが高い放射能を示し,さらにウラン238の高濃度の汚染が判明した.医学専門家チームは,血液,肺,消化器系,皮膚ガンの発生率の異常な増加,先天性疾患や胎児奇形の発生率の異常な増加を確認.

96年 国際司法裁判所( ICJ),「核兵器の使用および使用の威嚇に関する勧告的意見」を採択.「核兵器による威嚇や使用は国際法,とりわけ人道法の諸原則に反しており,核兵器をこれらの法律に抵触しない形で使用することは不可能」と結論.

96年 ニューヨーク州オルバニーの劣化ウラン弾製造工場跡の除染作業が始まる.1億ドルの工費がつぎ込まれる.

96年 全英湾岸戦争退役軍人・家族協会が設立される.2千名以上を組織.

 

1997年

6月 米軍環境政策研究所,「米軍内におけるDU使用後の健康・環境への影響」を発表.毒性学的に見て,劣化ウランは鉛・カドミウム・ニッケル・コバルト・タングステンなどの重金属に匹敵する毒性があると報告.

12月 対人地雷全面禁止条約が締結される.

1998年

1月 国防総省,「数千人に対する不必要な曝露」であることを認識していたにもかかわらず,劣化ウランによる健康被害の危険を広げてしまったと言明.(Helen Caldicott の著書からの不確かな引用)

1月 放射能汚染された鋼鉄スクラップ5.5百万ポンドが中国と台湾に輸出されていたことが発覚.中国に輸出された放射能汚染金属の中には,自然界放射線の400倍に達するものもあった.汚染金属を利用して建設されたアパートは1573に上る.

3月 「軍事毒性プロジェクト」のダン・フェーヒー(Dan Fahey),情報公開法で入手した湾岸戦争資料を基に,「約40万人の兵士が劣化ウランにさらされた可能性がある」と公表.国防総省は「まったく根拠のない数字」と否定.

5月 科学技術庁が鳥島・久米島の現地調査を実施.いかなる地点からも劣化ウランの汚染は発見できなかったと報告.

6月 米国エネルギー省(DOE),劣化ウラン ヘクサフローライド(hexa‐flouride) 管理計画に産業界の参入を呼びかける説明会を開催.劣化ウランを商業用に利用することで,管理,処分にかかる支出を減らすのが狙い.

8月 国防総省,「劣化ウランは軍事的にもっとも有益な鉱物である.劣化ウランの健康面の大きな問題点は,微弱な放射能ではなく,むしろ重金属としての化学由来のものである」と報告.

8月 陸軍放射線生物学研究所(AFRRI)とNIHが,骨芽細胞に与える劣化ウランの影響を検討.劣化ウランのアルファ線を照射されたマウスの芽細胞を分析.腫瘍を抑制するRb蛋白の産生が減少し,腫瘍が発生することを確認.劣化ウランは,他の生物学的活性の高い重金属化合物と同様に発ガン性を持つとする.

10月 イギリスのマンチェスターで「劣化ウラン弾とイラク」集会が開かれる.湾岸戦争症候群の元兵士の証言が注目を集める.

11月 「全米湾岸戦争リソース・センター」(NGWRC)の要請を受けた国防総省,劣化ウラン弾の使用地域の地図を公表.43万人の兵士が劣化ウラン弾使用地域に入ったことを認める.

12.02 バグダッドで,「劣化ウラン弾の被害」に関する報告会議が開かれる.報告によれば,被爆した兵士における発症率は,被爆していない兵士に対して,白血病で4.8倍,リンパ腫で5.6倍と高率である.またイラク全体でも,91年から97年にかけて癌の発生率約3倍になっており,劣化ウランがイラク南部全体を汚染している可能性が疑われる.湾岸戦争後に産まれた子供達の間では,眼,耳,鼻,舌,性器などに変形,あるいは欠損といった先天障害が多発している.

12.19 ユニセフ,「湾岸戦争」とその後の経済制裁で,すでに100万人以上のイラク人が死亡したと発表.

98年 米議会で「湾岸戦争退役軍人法」が成立.退役軍人病院での無料の病気治療と,疾病・傷害年金が認められる.

98年 国防総省の「湾岸戦争病・医療準備・軍事配置・国防長官特別補佐官事務所」(OSAGWI),劣化ウランと湾岸戦争症候群との関係を否定する報告.大統領特別監視委員会は,「OSAGWI報告は科学的論証の点で不備がある」と指摘.

大統領特別監視委員会の批判
@体調不良を訴えている者のほとんどが検査対象とされなかったこと,A劣化ウランにさらされた程度の評価が不完全であること,B可溶性劣化ウランと不溶性劣化ウランの比率が間違いであったこと,C劣化ウランの毒性の度合いの評価が間違っていること,D依拠した研究が結論付けには不完全なものであること,など.さらに言えば,劣化ウランの無害性の立証責任は,直接の使用者である国防総省にあること,

 

1999年

1月 イギリスで「核軍縮キャンペーン」(CND)の姉妹組織として「劣化ウラン弾反対キャンペーン」(CADU)が創立される.

3.24 NATO軍,コソボ紛争に介入開始.2ヵ月半にわたりユーゴスラビア連邦軍に対する空爆を行う.米空軍のA-10攻撃機は約31千発(劣化ウラン約8トン相当)の30ミリ砲弾を発射.

3月 国防総省の委託を受けたランド・コーポレーション,劣化ウランとともに,化学・生物戦争要因,油井火災,殺虫剤,ピリドスチグミン,ブロムカリ,予防接種,感染症,ストレスに関する文献的研究に取り組む.

ランド報告の骨子(米大使館ホームページ)
がんその他の健康被害と,たとえ大量であっても呼吸や(食物に含まれた形での)摂取を通して天然ウランにさらされることで受ける放射能との関係を示す証拠は示されていない.
また,劣化ウラン弾を被弾した装甲車に乗っていて,劣化ウラン弾の破片に当たった湾岸戦争の復員兵20人を追跡したところ,実際に劣化ウランを体内に持ったまま生活しているにもかかわらず,白血病,骨肉腫,肺がん,腎臓病を発病した者は1人もいなかった.さらに,子供たちに出生異常は報告されていない.

5月 プエルトリコのビエケス島基地で,海兵隊AV-8B機が267発の25mm 劣化ウラン砲弾(40kg相当)を違法に発射.578発のみが回収される.

6月 ダン・フェーヒーがランド報告を分析."The Good, Bad, and the Ugly" を発表.DUがさまざまな健康破壊をもたらす可能性を指摘した62件の適切な研究を除外していることを明らかにする.このなかにはAFRI報告も含まれる.

7月 ロンドンで「イラクにおける劣化ウランとガンについての意見」と題された会議が開かれる.バグダッド大学のモナ・カマス教授らが,湾岸戦争後のガン患者の増加について報告.また先天性異常の新生児の出生が際立って増えたことも報告される.ダウン症候群は三倍に.

10月 アナン事務総長,NATOに対して劣化ウラン兵器に関する情報を提示するように要請.

11月 メリーランド州で「低レベル放射線傷害と医療対処」に関する国際会議が開かれる.AFRRIの研究員が,ラットに対する劣化ウラン投与の実験結果を報告.大半の劣化ウランが排出されるが,腎臓と骨を中心に一部残存することが明らかになる.また劣化ウランが母体の胎盤を通じて胎児の体に蓄積するとの報告も.劣化ウランの影響としては,体重減少や知覚神経障害,発ガン作用などが報告される.

12月 学会誌『アトミック・サイエンティスト』,劣化ウラン弾を特集.フェッター&ハイペルは,「兵士によって吸入もしくは摂取された劣化ウランには重金属毒性がある.劣化ウラン弾の命中した車両への無防備な接触は重大事になりかねない」と警告.

1999年 ボスニア保健省,国内におけるガンの発生率が,戦前の約1.5倍になったと報告.

 

 

2000年

1月 イギリスのスタンステド空港で大韓航空のボーイング747が墜落.大部分の劣化ウラン平衡錘がほぼ現状どおりに回収されたといわれる.

2月 NATO,アナン事務総長の要請にこたえ報告書を提出.初めて公式にコソボ紛争中に劣化ウラン砲弾を用いたことを認め,使用状況に関する一般的な情報を提示.

3.31 国防総省の委託を受けたラブレイス呼吸器研究所,ラットに対する劣化ウランの影響調査を報告.5x5ミリの劣化ウラン植え込み群で腫瘍発生率の明らかな増加を認める.2x1ミリ群では腫瘍発生なし.また劣化ウランの神経組織への浸透を認めた.

3月 カリフォルニア州デービス市議会,劣化ウラン弾使用禁止を求める決議.

5月 フィンランド環境相,EU諸国の環境相あてに「劣化ウラン弾の使用禁止」を呼びかける手紙.

5月 在沖縄米空軍司令官,嘉手納弾薬庫に劣化ウラン弾を保管していると発表.

5月 沖縄県西原町で,米軍払い下げ品取り扱い業者の物資置き場から,米軍の25mm劣化ウラン砲弾の薬きょうが473発発見された.業者が鉄くずとして購入したものだが,実際にどこで使用されたものなのかは不明.

7月 NATO,アナン事務総長の追加要請に応え,劣化ウラン砲弾が使われた112の地点を地図で示す.

8月 米政府,イギリス国内に50トンもの劣化ウランが管理なしで放置されており,環境汚染や労働者被曝の危険性があると指摘.

9月4日 パリで開かれたヨーロッパ核医学研究会の総会で,元合衆国軍医大佐のアサフ・デュラコビッチ博士が,湾岸症候群について発表.「多くの患者はウラニウム吸引の臨床的結果である腎臓疾患および機能不全を生じている」ことを明らかにする.

11月 NATOの示した地図に基づき,11名の専門家による国連調査チームがコソボの現地調査.11の劣化ウラン砲弾目標地点において,48の汚染地点を発見.7.5個の残留貫通体と,6つの貫通体ジャケットを発見.それ以外の場所では汚染は確認されなかった.

11月 1999年にボスニア・ヘルツェゴビナへの平和維持活動(PKO)に参加したイタリア兵に白血病被害が発生.死亡者が6人に達したことが明らかになる.イタリア環境保護局劣化ウラン弾問題委員会,兵士の白血病発生率は,同年齢の普通の人に比べ2ないし4倍高くなっていると報告.

12月 バルカン地区の国連平和維持活動に参加した諸国軍の帰還兵17人が,白血病で死亡したことが報道される.

00年 大統領特別監視委員会の批判を受けた国防総省のOSAGWI,「米国陸軍健康促進予防医学センター」(ACHPPM)に研究を委託.ACHPPMは,「上限値を体内に取り入れた者以外には,何ら健康上の危険性はない」とする報告を発表.

11月 マンチェスターで「反劣化ウラン兵器国際会議」が開かれる.アイルランドのアルビル・マクドナルドは,劣化ウラン兵器を明確に禁止する国際条約が必要であると強く主張.これに対しアメリカ人法律家のカレン・パーカーは,新条約の成立を目指すのは有益ではないとし,対立.

カレン・バーカーは「すでに定着した国際人道法を犯して兵器を使用することはできない」という96年国際司法裁の核兵器判決を援用するよう主張.@兵器の使用により周辺地域,非参戦国まで危害が及ぶこと,A戦争終結後まで長期にわたり危害が及ぶこと,B民間人,特に次世代の人にまで危害が及ぶこと,C大地や大気,水など環境・生態系にまで危害が及ぶこと,をもって劣化ウラン兵器の非人道性を主張.

 

2001年

01年1月

1.04 フランス国防相,アメリカに対し,バルカン半島での劣化ウラン弾使用について説明するよう求める.記者会見では,平和維持活動を行っていたフランス軍兵士4人が,白血病のため入院した事実を公表.「これらの兵士は劣化ウラン弾の放射能により白血病を患ったものと考えている」と述べる.

1月 イタリア,ベルギー,ポルトガルはNATOに対し,劣化ウラン弾使用について経緯の説明と,放射能汚染の調査を求める.NATOは「今日のデータに基づくと,劣化ウランとがんとの関連は立証されていない.劣化ウラン弾は精製ウランよりも放射能が低く,健康にまったく影響のない安全で合法的な武器である」と反論.各国政府の懸念を「科学的根拠のない」ものと断定.

1.09 EU,バルカン地区の平和維持活動に参加した兵士の死亡と,劣化ウラン弾の因果関係について非公式な調査を行うことを発表.劣化ウラン弾の健康被害について,専門家チームを結成して調査を開始することを決定.イタリア下院の国務委員会,バルカン地区の劣化ウラン弾問題について調査を開始.

1.10 イラク外務省,国連に対して劣化ウラン弾の生態環境への影響について全面的調査を行うよう求める.イラクは劣化ウラン弾がもたらした被害に対する賠償を請求する権利を有することを強調.さらに米・英の指導者が劣化ウラン弾の使用で犯した「反人類的罪行」を裁く法廷を開くよう要求.

1.11 国際原子力機関(IAEA),劣化ウラン弾を使用した地域を詳細に調査し,関係者から事情を聞き,劣化ウラン弾が人体に与える影響を確定することを呼びかける.エルバラダイ事務局長は,「劣化ウラン弾の放射性物質はごく微量だが,健康への影響についてはっきりさせる必要がある」とし,明確な結論が出るまでは予防措置をとることを提案する.

1.14 ドイツのシャーピング国防相,「いかなる国も劣化ウラン弾を保有・使用すべきではない」と強調.劣化ウラン弾を完全禁止することを呼びかけると同時に,「ドイツ軍は例え武器が不足しても劣化ウラン弾は使わない」と強調.

1.17 国連環境計画(UNEP),コソボで現地調査.ウラン236とプルトニウム239が地表に放置されていた劣化ウラン弾の貫通体から検出される.UNEPは「再処理された劣化ウランであることを証明している」と指摘. 「現在の状況から判断して,劣化ウラン弾の影響はないという説は明らかに間違ったものである」と述べ,児童,動物,地下水に悪影響を及ぼす可能性があることを明らかにする.

ウラン236は自然には存在せず,使用済み核燃料の再処理過程で発生する.したがってそこには確実にプルトニウムが含まれている.濃縮ウラン30トンを使用すると,300キロのプルトニウムが生成される(高レベル放射性廃棄物).これを再処理しても,ウランだけ純粋に取り出すのは不可能で,必ずプルトニウムが混入する(低レベル廃棄物)


 


1.17 ドイツのシャーピング国防相,UNEPの発表を受け米国の駐独大使臨時代行と会見.劣化ウラン弾についての全面的な説明を求める.会見後,「米国は劣化ウラン弾問題に対して十分な情報を提供していない」として,米国を非難する声明を発表. NATOのスポークスマンは「劣化ウラン弾の一部には,確かに放射性物質であるウラン236とプルトニウムが含まれていた」と事実を認めながらも,「これは以前から知られている公認の事実で,このように微量な放射性物質が健康に与える影響は取るにたりない」と述べる.

1.29 ケンタッキー州パドゥカの合衆国エネルギー省の研究施設(ウラン235の製造工場)で,製造にかかわる従業員のあいだに白血病,ホジキン病,前立腺ガン,腎臓ガン,肝臓ガン,唾腺ガン,肺ガンの罹患率が有意に高いことが明らかにされる.

1月 WHO,UNEP報告にもとづきDUに対する勧告を発表.「DUは軍事的に使用した場合にだけ環境に悪影響を与えるようだ.数年後に食料や地下水の汚染が増加する可能性もある.多量の劣化ウランが存在すると考えられる場所では,対策を講じる必要がある」と述べる.

2月 ハーバード大学公衆衛生学のジョン・リトル教授,アルファ線の「巻き添え効果」(Bystander Effect)説を提唱.DNAの直接損傷だけでなく,ラジカル形成による二次損傷が隣接細胞にも起きることを明らかにする.

3月 EU専門委員会,「人間が被ばくする経路と現実的なシナリオを考えてみると,劣化ウランによる被ばくが人間の健康に認められる影響(例えばがん)を及ぼしえない」と報告.(米大使館ホームページ)

4月 WHOの人的環境保護局,「ウランや劣化ウランにさらされたことによる白血病をはじめとするがんの発生の増加は立証されていない」と報告.(米大使館ホームページ)報告書は現地調査をともなったものではなく,一般論としての推論の提示にとどまる.

9月 UNEP,セルビアの地下水から劣化ウランが検出されたと発表.DU弾が腐食し土中に染み出したものとされる.さらに建物内の空気からも劣化ウランが検出され,再浮遊の事実が確認される.

11月 国連総会,イラクは国連主導の劣化ウラン被害の調査を提案するが,賛成45,反対54,棄権45で否決される.背景に米政府の強い圧力.

12月 バスラ大学サダム教育病院腫瘍学センター長,イブン・ガズワン病院長のジャワド・アル・アリ教授,バスラ市内のガン死亡者数推移を森住氏に提供.

 

1988年

1996年

1997年

1998年

1999年

2000年

2001年

死亡者数 

34人

219人

303人

428人

450人

586人

603人

ガン発生率(10万人当たり)

11人

 

 

75人

 

 

116人

2001年 国連人権促進擁護小委員会,劣化ウラン兵器の実験・生産・使用が「人権の効果的享受に対して持つ現実的・潜在的危険性」を評価するよう要請.賛成21,反対2で決定される.

 

2002年

3月 英国王立協会,劣化ウランの主要な危険は肺にとどまった不溶性エアロゾルにあるとし,汚染地域の除染作業と貫通弾の回収を勧告する.

4月 『中国新聞』の田城明記者,「劣化ウラン弾被ばく深刻」と題する記事を発表.これによれば,米軍兵士だけでも43万人が放射能汚染地帯に入り,劣化ウラン粒子の吸入などで被爆した.白血病や肺がん,腎臓や肝臓の障害,皮膚斑点,関節痛など「湾岸戦争症候群」として,25万人が治療を求め,18万人が「疾病・障害補償」を請求し,すでに9600人以上が死亡している.彼らの子どもたちには先天性障害を抱えた子も多い.

12.31 米陸軍放射線研究所のD.E.McClain 動物実験に基づき「劣化ウランは胎盤を通過する」と発表.6ヶ月以上劣化ウランを埋め込んだラットで,胎児異常が出現することが明らかになる.また同研究所の Alexandra Miller は,人培養骨細胞を劣化ウランに曝露すると,ガン類似細胞が発生することを明らかにする.この実験では,「染色体が損傷されリングを形成する」ような遺伝子損傷を生じていたことも明らかになる.また劣化ウランを除去した後も長期にわたり影響が残存し,劣化ウランの「遅発的毒性」が示唆される.

12月 バスラ大学のジャワド・アル・アリ教授と,バグダッド大学で小児白血病専門医のフサーム・ジョルマクリ教授が来日.各地で劣化ウラン弾の被害を訴える.

 

2003年

1月 WHO,DUファクトシートを発表.「劣化ウランは,軍事に使用した場合にだけ環境に悪影響を与えるようだ.…数年後に食料や地下水の汚染が増加することもある.従って,理論的に食物連鎖に影響を与えると考えられる量の劣化ウランが存在するところでは,モニタリングと適切な対策を講ずる必要がある」と述べる.また,手についた食べ物をなめることの多い子供は,大量の劣化ウランを飲み込む可能性が大きいことにも注意を喚起する.(いやいやながら,部分的にUNEP報告を認めたという感じ)

1月 ダンディ大学のE.G.Wright ら,放射線被曝した細胞の数世代後の子孫細胞に,さまざまな異常が高率に出現することを明らかにする.彼らは「おそらく確立された細胞系に永遠に」異常が保存されるだろうとし,これを「放射線誘起遺伝子不安定性」(RIGI)と名づける.

2003年3月

3.14 米国防総省,劣化ウランに関するメディア向け状況説明会を開催.同席した医師たちは,「ボルティモア研究」にもとづき.調査対象となった退役軍人になんら健康障害を見出していないと証言.

3.14 米中央軍のジム・ノートン大佐,劣化ウラン弾はタングステンよりも有効なので戦争が始まれば使用すると予告.

3.25 UNEP,「ボスニア・ヘルツェゴビナにおける劣化ウラン」を公表.地域によっては飲料水用の水源が汚染され,また,大気中の浮遊粒子状物質にも汚染が見られるとされる.ボスニアでは94年から95年にかけて9dの劣化ウラン弾が使用された.

3.26 米中央軍のブルックス准将,イラクでの作戦で米軍が劣化ウラン弾を「非常にわずかな量」ながら使用していることを認める.同時に「人体への影響は,近くで大量に粉塵(ふんじん)を吸入した場合に限られる」と釈明.

2003年4月

4.01 バグダッドの南12マイルにあるツワイサの原子力施設で略奪事件が発生.数百トンの天然ウランと2トン近い低濃縮のウラニウムがあったと思われる.その後,毎日何十人もの急性放射線障害患者が発生,発疹の症状,鼻血やそのほかの放射線の毒性による症状を示す.

4.06 UNEP,できるだけ早期にイラクでの劣化ウランの影響に関する科学的評価を行なうよう勧告.

4.17 UNEPイラク班のハービスト議長,米軍が土壌の除去を行われなければ,汚染地域に戻ってきた住民は知らないうちにDUの健康被害の実験台にされてしまうと警告.

4.17 ガーディアン紙, Alexandra Miller の研究を紹介.Millerは「放射線学的にも毒性学的にも,影響を及ぼすはずのないほど微量の劣化ウランでも,重大な遺伝子損傷を引き起こす.それは従来の予測の8倍以上の影響となる」と述べる.

4.25 英国国防省スポークスマン,英軍の劣化ウラン弾使用を認め,その使用場所と使用量の詳細を公表する.さらに,「米政府にも劣化ウラン弾の使用場所,使用量を明らかにするよう希望する」と発言.

4.30 米中央軍空軍が報告書を公表.30ミリ弾311,597発を使用したとする.5発中4発は劣化ウラン弾であり,使用総量は劣化ウラン75トンに相当.

2003年5月

5.21 カナダの研究機関UMRC(ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター)の“第2次アフガン調査”の結果が公表される.ジャララバード,カブールなどで,米軍の爆撃と関連して発生した高濃度のウラニウム汚染が確認される.ウラニウム236も検出される.この機関はアサフ・ドラコビッチを主宰者とするもの.これに関連し,国防総省のスポークスマンは,アフガニスタンでは劣化ウラン兵器を使っていないと述べる.

5.15 クリスチャンサイエンスモニター紙,「劣化ウラン弾から環境放射線の千三百倍にあたる放射線を確認」と報道.

2003年6月

6.01 UNEPに参加したスエーデンのスニース(Snihs),アルファ線の細胞生物学的影響について発表.これまで考えられていたよりアルファ線の影響が深刻であることが明らかにされる.

6.14 ニューヨークで核政策研究所(NPRI)主催の劣化ウラン弾に関するシンポジウムが開催される.劣化ウランの医学的検討が多く発表される.

主な発表:
マウントサイナイ病院のトマス・フェイジーらは,一種の重金属中毒説からDNA損傷の可能性を検討.肺に沈着した三酸化ウランがウラニルイオンとなり体内に拡散.ウラニルイオンはDNAに親和性が高いため,これと結合し凝集クロマチンを形成する.これにより鎖の損壊や塩基の修飾などがもたらされるというもの.
英国自然環境調査委員会の Randall Parrish ,"Multicollector High Resolution ICP-MS" の導入により,劣化ウラン汚染のナノ・レベルでの定量的評価が可能であると述べる.これを用いて自然放射能の影響との鑑別が可能となる.

6.30 川口外務大臣,「劣化ウラン弾の人体及び環境に対する影響はほとんどない」と答弁.