FARC襲撃事件とマンタ基地の役割

Manta Air Base Tied to Colombian Raid on FARC Camp

 By Kintto Lucas

MANTA、3月21日(IPS)

この記事は襲撃事件にマンタ基地が関与していたことを明らかにした最初の報道です。ある軍幹部の発言を中心に編集されていますが、前後から見て、ファウスト・コボ軍事学校校長か、それに近い人物と思われます。キトでマンタ基地撤去運動の活動家から、「コロンビア軍はマンタから飛び立ったといわれ」びっくりしたのですが、真相は計画し、指示し、支援したということのようです。
米軍基地があるとどうなるか、米軍はどう海外基地を利用するのかを示す典型例と思います。(見出しは訳者による)

 

事件の経過

軍事・外交関係者は、Manta空軍基地と今月のコロンビア軍によるFARC基地の爆破・急襲事件との間に、つながりがあると見ています。

マンタはエクアドルの北部海岸沿いにある港町です。マンタ基地は米軍の使用する基地です。アメリカ空軍は1999年にベースを使う特権を与えられました。期間は10年とされています。それはこの地域における麻薬活動に対抗するために用いられています。

エクアドル軍の高レベルの将校が、匿名を条件にIPS通信に語りました。「エクアドルの上級将校の多数は、米国がこの事件の共犯者であると確信している」

この事件とは、3月1日にコロンビア国境近くのエクアドル領内で、FARCのキャンプがコロンビア軍により襲撃された事件です。FARCの国際的なスポークスマンであるラウル・レイエスと24人の他の人々が、この事件で死にました。それはキト政府にコロンビアとの断交をもたらしました。数日後に国交は回復されましたが。

問題は何か

将校は語ります。「コロンビア計画が2000年に開始されて以来、米国とコロンビアの同盟関係は強化された。最初はゲリラと闘うためだったが、後には隣国を巻き込んで戦うための同盟となった。今日起こっていることは、それらの結果である」

コロンビア計画は米国により財政援助され、ボゴタにより実行される対ゲリラ活動と反麻薬戦略です。

IPSによって軍事・外交ソースから集められた情報は、マンタ空軍基地が役割を演じたことを示しています。マンタはエクアドル領内のFARC基地を特定し、偵察飛行を実施することで、襲撃作戦に大きな役割を演じたのです。

私が現地で聞いた話では、偵察衛星が現場近くの無線電話をすべて傍受し、偵察機が所在を確認した後、マンタを飛び立った米軍機が爆撃を実行し、その後コロンビア軍部隊が降下してレイエスの遺体と「ラップトップ型パソコン」を押収したとのことです。

エクアドルのウエリントン・サンドバル国防相は、「反乱軍キャンプへの攻撃のためにマンタ空軍基地が使われたかどうか、調査が行われるべきである。調査が実行されるまで、いまのところいかなる情報も提供できない」と述べました。

マンタ空軍基地に関する協定は、「基地が対麻薬活動のためにのみ使用される」と明確に規定しています。この目的を逸脱していないかどうかが問題となります。ワシントンとキトとの間の取り決め上は、このような場合、エクアドル軍側が調査にあたることになっています。

IPSへ語った軍事筋は調査すべき内容をこう語ります。

「確認すべきは、まず何よりも、襲撃前20日間にマンタ基地を飛び立ったすべての航空機の飛行記録だ。その乗員名簿、その航路、調査の内容だ。さらにそのデータは他の調査・情報と突き合せられなければならない」

スマート爆弾使用の疑惑

3月13日に、サルバドル外務大臣は、「私は米国大使リンダ・ジュエルと会談を持った。彼女は、米軍機はFARC基地襲撃事件にはいかなる方法でも加わっていないと保証した」と発表しました。

しかし軍事筋はこれに疑問を呈します。

「襲撃には技術が必要だ。まずは目標(基地)を見つけること、そしてそれを攻撃すること。そのための技術は米国から提供されることなしには不可能だ」

コロンビア政府がOAS調査団に提出した公式報告によれば、襲撃にはブラジル製のスーパー・タカノ機5機と米国製A-37飛行機3機が参加し、10発の“通常”爆弾が投下されたとされています。レポートによれば、A-37はGPSで誘導される爆弾を用い、スーパー・タカノ機は5メートルの誤差範囲で爆弾を投下する機能を備えているといわれます。

しかしこの点に関しては、すでにサンドバル国防相が重大な反論を行っています。「ラテンアメリカの軍隊にはない機材が、3月1日の爆破において使われた。彼らは5発のスマート爆弾(誘導爆弾)を投下した」

スマート爆弾といえば、1991年の湾岸戦争で米国が使用したものです。

「その精度は驚くべきものだ。誤差範囲は夜間でも1メートル以内だ。夜間に高速で飛ぶ飛行機からそのような爆弾が発射されるなら、その威力は凄まじい」

軍事関係者はこう補足します。

「誘導爆弾での攻撃は誰にでも出来るものではない。その種の作戦に参加した経験を持つパイロットが必要だ。ということは米軍パイロットということだ。コロンビア軍兵士がヘリに乗ってキャンプを襲撃したあと、“我々は到達した。そして死体を発見した”と報告しているが、そのような状況は、スマート爆弾を想定するとつじつまが合う」

米雇い兵参加の疑惑

これだけでも驚くべきことですが、軍事情報筋によれば、この事件における米国の役割はそのような程度のものではありません。彼はこう語ります。

「このエクアドル領空内での爆撃は、実際は米軍パイロットによって行われた。ひょっとするとDynCorpに雇われていた可能性もある」

DynCorpは米国に本社を置く私兵集団会社で、コロンビア計画に伴い契約を結んでいる会社である。

「飛行機はカケタ州南部のTres Esquinas空軍基地から飛び立った。この飛行機は普段はコカ畑に除草剤を散布したり、ゲリラを攻撃するのに用いられている。パイロットは現役の米軍人のこともあるし、DynCorpのような会社と契約した元軍人であることもある」

除草剤散布作戦に関しては、「コロンビア計画ともうひとつの枯葉剤ラウンドアップ」をご参照ください。

米軍基地は撤廃するしかない

米国のマンタ基地使用権は、2009年11月12日に期限切れになります。コレア大統領は、3月15日にあらためてマンタ米軍基地の撤廃の方針を明確にしました。

「どんな外国の兵士でも、正規兵か雇い兵であるかに関係なく、わが祖国の大地に足を踏み入れることは許されない。したがって2009年以後、どんな外国の基地も国内には存在しない」

3月17日、エクアドルの憲法を書き直している憲法制定議会の中の基地問題委員会は、領土主権に関する章を承認しました。その憲法案はこう述べています。

「エクアドルは平和の土地である。軍事目的のための外国の基地または施設の設立は認めることが出来ない。国軍の基地は、外国の公安部隊に貸与できない」

空軍基地貸与の更新を拒否することについて、エクアドルは多くの理由を挙げています。

外務省幹部は匿名を条件にこう語ります。

「マンタ基地を貸与すること自体が、そこからのアメリカ軍爆撃に直接あるいは間接的に加担することになる。もし彼らのテクノロジーによってFARCキャンプを見つけることに失敗していたとしても、結局、第二の目標に対する攻撃が準備されるだけだったろう。

もし彼らがゲリラ・キャンプを発見すれば、彼らは襲撃を加えるだろう。その際パートナー国の当局(すなわちエクアドル)に連絡できなければ、連絡は省略されるだろう。今回のように」

不沈空母となったマンタ基地

さらに重要なもう一つの理由があります。それは米国南方軍(Southern Command)がコロンビア軍に対して直接の支援を行っているということです。南方軍の指揮下にあるマンタの米軍戦力は、南方軍の指示の下に作戦を展開しています。

南方軍司令官のジェームズ・スタブリディス(Stavridis)提督は、3月6日に、米上院軍事委員会で証言しました。

スタブリディスは次のように証言しました。

「私はコロンビア国境におけるエクアドルとベネズエラの軍の行動を監視していた。米国の継続的支援を受けたコロンビア軍は、武装勢力との“激しく戦われた一連の戦闘”に勝利した」

彼は、こう付け加えました。

「この重要な“戦略的な盟友”は和平の方へそして、テロリズムに対する戦いにおいて不可逆的な前進を続けている。2002年に17,500人のゲリラから成っていたFARCは、いまや9,000人まで減少した」

7年前の2001年7月、軍事学校校長のファウスト・コボ退役大佐はIPSに話しています。

「マンタ基地はコロンビア計画のためといわれているが、実は米国のための不沈空母だ」

つまり3月1日の事件は、すでに7年前から予測されていたことなのです。

マンタ基地はコロンビア軍のために使われている

マンタの滑走路の拡張が始まったのが2001年4月でした。それまでは、平均100人の将兵が1日三回の偵察飛行機に参加していました。

その時、米国外交筋が英国のファイナンシャル・タイムズにこう話しています。

「10月までに偵察飛行は月当たり200回に増えるだろう。そして続く数ヶ月の間に、それはさらに2倍になるだろう」

滑走路の拡大の後、より大きい、より高機能の航空機が、偵察任務のために使われ始めました。マンタはラテンアメリカ・カリブにおける4つの「前方作戦基地」(FOLs)のうちの1つとなり、対麻薬作戦のネットワークを形成することになりました。他の三つはキュラソー、アルーバ、エルサルバドルにあります。

2006年8月に、「グアヤキル・エスプレソ」新聞は、「コロンビアのパイロットがエクアドルのパイロットと並んでマンタ空軍基地から飛び立ち、作戦に参加している」と報じました。

マンタ 航空警戒・統制システム(AWACS) 部隊のボイド司令官は、 「AWACS機の1機はコロンビア空軍将校が操縦している」と明らかにしました。

ボイドは、「各々の国の機密に関わる秘密情報は保護されている。何故なら、飛行機がエクアドルの空域にある間はコロンビア軍の将校はコックピットを出るからだ」と説明していますが、そんなことを信じるお人よしはいないでしょう。

ボイドによれば、アメリカ軍の所有する27機のAWACSのうちの3機が、マンタ基地にあります。一機の値段は10億ドルに達します。それはエクアドル空軍の年間予算の2倍に当たります。