Written by Cory Fischer-Hoffman   

Tuesday, 13 March 2012 12:18

FMLN の選挙での後退

El Salvador: FMLN Suffers Minor Setback at the Polls

変えられた選挙システム

日曜日の午後1時、太陽が激しくメタパンの投票センターに照りつけていた。メタパンはグアテマラ国境から15キロメートル南の小さな町である。焼けるような太陽以外何もない。

この町にとって国民議会と地方選挙のこのようなやり方は初めてだった。

FMLNの驚いたことには、右翼のARENA(国家共和同盟)が国民議会の議席を得たのである。

FMLNは正式名称を「ファラブンド・マルティ国民解放戦線」という。元は武装解放を目指した団体で、和平後に政党として再出発した。そして2009年の選挙でマウリシオ・フネスを大統領候補として選挙に勝利した。

これに対しAENAは議会で選挙法改正を押し通した。今回は、その改正選挙法による最初の選挙だった。

メタパンに話を戻す。投票センターでは地元の学校の戸外の渡り廊下、展示館とバスケットボール・コートに沿って31以上のテーブルが広げられた。

今回の国会選挙では初めて個人候補への投票が加えられた。「顔写真投票」"face voting"と呼ばれ、それぞれの党の旗の下に候補者の写真が張り出された。それまで投票者は候補者ではなく政党に投票した。そして政党が得票率に応じて国会に送り出す議員を選出した。

このたびは多種多様な政党の多彩な候補から投票することになった。

メタパンでは、8つの政党の旗が第一列を飾った。そして、各々の旗の下に6人の候補の顔写真が並んだ。

ある女性はそのやり方にひどくまごついた。熱い太陽の中に痛む脚で歩いてきたのに、投票せずに帰ろうとした。

我々は一緒に木陰の下に座った。他の二人の投票者が投票の感想を漏らした。

「間違えちゃうんじゃないかと心配だったわ」

一人の母親は、若い息子の手を握りながら声を上げた。そして女性に「投票は大事よ。支持する党の旗の所だけ書いても有効なのよ、もちろん候補者に投票しても良いの」

しかし彼女の説明には抜けている点があった。もし異なる政党の二人に投票すれば、その票は「無効」とされることを。実際それは開票の際にほとんどすべてのテーブルで見られた。

(中略)

エルサルバドルでは12年にわたる内戦で約7万人が殺された。

1992年の和平協定のあと、FMLNは武装闘争組織から政党に変わり、選挙による勝利を目指すようになった。

それ以来、エルサルバドルの選挙は、不正手段によって悩まされた。

2009年の大統領選挙では、ARENAはグアテマラ人に期限切れかニセの身分証明書を持たせ、トラックに積んで投票所に送り込んだ、と非難されて いる。そのARENAの試みにもかかわらず、2009年の選挙ではFMLNのフネスが当選した。フネスはFMLN党員ではなく無党派のジャーナリストだっ た。彼はより中間的な有権者にアピールした。当選後も、多くの争点に関して政治的な中立を保ってきた。

エルサルバドルでの米国の干渉の長い歴史にもかかわらず、フネス政権は米国と良好な関係にある。内戦の間、ワシントンはエルサルバドルの暗殺団を訓練し、資金を助成した。和平協定のあとも干渉は続いた。1人の米国の大使は、2004年の選挙に介入したと公言さえしている。

エルサルバドルへの米国の干渉は、サルバドル人の米国への大量入国をもたらした。米国は弾圧を支援し、選挙に介入し、ネオリベラル政策にもとづく中米自由貿易協定(CAFTA )を推進した。それが皮肉にも大量移動をもたらしたのである。今日、エルサルバドル人の1/3から1/4は米国に住む。そして彼らが親戚に送るお金は、国民総生産に対する最大の貢献をあたえている。

FMLNによって開始された社会プログラム

フネス政権はネオリベラルの経済モデルに関しては当面変更を加えようとはしていない。そのかわりに健康、読み書きと教育における新しい社会改革を始めた。

クスカトラン県の県都コフテペケでは埃っぽい未舗装道路沿いでは、一軒の家が識字サークルの集会所に改造された。そこでは大人たちが読み方の学習を行っている。エルサルバドルの文盲率は17%に達する。これは文盲を根絶するための政府による最初の計画である。

車道に歩いていくと、バナナの樹、ハイビスカスの花が通り過ぎていく。小グループの声が聞こえてくる。大声で読み物を練習している。それがそよ風に 乗って運ばれてくる。参加者のほとんどは貧しい生まれである。片親の人も少なくない。彼らは若いときから働くことを強制されてきた。その結果、彼らは学校 に行けなくて、その後も読み方を学ばなかった。

フリアーナは言った。「私はバイブルを読めるようになりたいです。自分の名前をサインできるようになりたいです。そしてバス路線の名前が分かるようになたいです」

彼女は、政府プログラムに感謝した。しかし彼女が視力が弱いために読むことを学ぶ際に障害になっていると訴えた。

識字サークルのための基金は教材やボランティアやその訓練のために用意されているが、視力に対する対策は計画には入っていない。エルサルバドルでの 新しいヘルスケア・プログラムは、「コミュニティ健康チーム」(ECOS)の一部として、貧しいコミュニティに無料ケアを提供している。

僻地の San Francisco Dos Cerros では、何十もの人々がケアを受けるために一列に並んだ。多くの女性は妊娠していた、腕の中に子供を抱えるものも多く見られた。彼らの多くはこの僻地診療所に2時間をかけて通院していた。

医者と看護婦の専用のケアに加えて、ECOSは地域活動も行っている。その中身は健康増進、予防・衛生活動、出生前のケアと母性保護に焦点が当てられている。

これらの社会プログラムは、農業改革と並行して進められている。土地が農民に与えられ、無料で種と肥料を提供している。これらは「公平な発展への道」というFMLNのマニフェストの実践となっている。

FMLN政府がこれらの社会改革に集中する間、右翼は、立法議会でFMLNの拠点を攻撃するべく、選挙改革の方へそのエネルギーを集中した。

選挙結果の分析

FMLNは日曜日の選挙で衝撃を受けた。そして、多くの議論が国中で提起された。

投票傾向の詳しい分析が続く一方、選挙改革の実行、有権者脅迫や票の買収などを弾劾するための調査などが提起された。それらはFMLNが立法府の過半数を失った理由のより完全な理解を提供することになるだろう。

その際考慮すべきいくつかの政治展開がある。

2009年の大統領選挙のあと、ARENAは分裂し、分派がGANA(国家統一大同盟)を結成した。それはFMLNとARENAの対立に代わる穏健 な政党として売り出した。GANAは若干のFMLN「浮動有権者」をとらえ、国民議会の84の議席のうちの10を獲得した。ARENAが33、FMLNが 31議席のためキャスティングボートを握った。

ARENAはかつての大統領アルフレード・クリスティアーニを党首にすえ、裕福なビジネスマンたちが資産を首都サンサルバドルに注ぎ込んだ。彼らは「都市の美化作戦」を展開し、市民の支持を得ようとした。疑惑としては単純明快な買収作戦も行われた可能性がある。

他方、FMLNは彼らの支持基盤との接触を失ったように見える。国際婦人デー行進に女性太鼓隊の一員アデルースはこう語った。「いまどきの政治家は我々の心底からの関心を持たせない」

彼女は選挙に行くつもりはなかった。そんな人は彼女一人ではなかった。投票率は低く、白票も多かった。

選挙の前の日、サンタアナの裁判官もそのような感情に共感して言った。「彼らは山から降りてきたが、結局政治屋の仲間入りしただけだった」

武装した抵抗運動から野党への転換はその政治的挑戦とともに行われてきた。しかし、2009の選挙以来、FMLNはその挑戦をある程度まで我慢しなければならなくなり、統治の責任を果たさなければならなくなった。

彼らは立法府において辛うじて過半数を得ているだけだった。行政府には確固とした足がかりはまだない。党員でもない大統領は、党としばしば矛盾を引き起こしている。

エルサルバドルは、ほかの大部分の世界と同じく景気後退に苦しんでいる。こういう時期には統治政府はしばしば、世論の攻撃を浴びるものである。

この選挙結果はエルサルバドルにとってどんな意味を持つことになるだろうか?

議会でARENAは第一党となった。しかし過半数をもつ党は存在しない。政策を進めるために鍵となるのは政治的な同盟である。

その際に重要な議論となるのはCAFTAへの態度、官民協力を通じての民営化、鉱業の振興、そして犯罪対策などであろう。注意はまた、社会プログラムにも向けられるであろう。その削減は広範な人民が不安定な状況に追いやられることを意味する。

一方、米副大統領ジョセフ・バイデンは、中央アメリカへの最近の訪問において、「安全保障」がこの地域のための最優先事項であると主張した。エルサルバドルの右翼は、選挙キャンペーンに一貫してこのワシントン製「安全保障」物語を使ってきた。

「エルサルバドルの右翼は、犯罪率のかなりの減少にもかかわらず、厳しく暴力と不安定を強調した。この戦略は、米国と符合した手法だ。米国は最近 「ドラッグとの戦い」プログラムを提起し、そのために3億ドルを援助すると提案している。“FMLNは安全保障状況に直面することがまったく不可能だ”と 決め付けることによって、右翼は二重に利益を受けることができることになる」

エルサルバドル連帯委員会(CISPES)のリサ・フラーはこう語る。

ホルヘ・シャフィク(サン・サルバドル市長選挙のFMLN候補者)は、の間、最近の選挙敗退を負けた内戦と比較し、こう語った。

「我々はある戦いでは勝利し、ほかの闘いでは敗北した。いま必要なことは、きわめて全面的な自己批判的な分析だ。人民に罪を擦り付けてはならない。そうではなく我々が変わるべき点がどこにあるのかを真に追求することだ」

 http://upsidedownworld.org/main/el-salvador-archives-74/3506-el-salvador-fmln-suffers-minor-setback-at-the-polls 

 


エルサルはそもそも分厚い活動家層が存在することで、数々の困難を跳ね返してきました。しかしトップ集団はニカラグアのような政治的訓練を積んでいません。中間層の「政治離れ」傾向に歯止めがかけられるか、在米活動家との統一が維持できるかが深刻な問題となりそうです。

政権はニカラグアのようなALBA路線ではなく、ブラジルのルーラのような路線を目指しているよですが、それだけの暇があるのか? 一時的後退は覚悟の上でもう少しごしごしと階級闘争をやるか、思案のしどころなのかもしれません。