キューバ共産党第4回大会:経済政策に関する決議

 

1991年11月 サンチアゴ・デ・クーバ  

  
キューバ共産党は,ソ連からの援助がなくなるという事態の下で,未曾有の危機を打開するため緊急の大会を開いた.
この大会における決議のうち,経済改革に関する部分を訳出する.出典は「グランマ・インタナショナル」

 

キューバは外国貿易の85%をソ連・東欧に頼ってきた.4大会では次の方針を打ちだした.

1,食料政策

食料計画の目標を,基礎食料の一日も早い自給体制に持っていくこと.

2,バイオテクノロジー政策

教育・医療の到達した技術を発揮し,医薬品産業を発展させる.そして価格・品質において世界市場において,世界市場に進出できるレベルを獲得する.とくに遺伝子操作とバイオの分野に力を注ぐ.

3,観光政策

観光にさらに力を注ぐ.とくに施設やアクセス面での充実をはかる.治安の良さ,衛生的な環境,医療の充実,人々の文化的・教育的な高さは明らかな優位点である.

4,ベンチャー育成

国民の教育レベルの高さを生かした技術,研究開発的なビジネス・プロジェクトを推進する.

5,従来型産業の振興

砂糖やニッケル,漁業やタバコ,コーヒーなど,これまでの輸出産業をひきつづき重視する.それと同時に,スポーツ,芸術などに関連した製品や,サービスの振興をはかる.

いずれにせよ常にわれわれは,輸出できるものはないか,輸出競争力を高めるにはどうしたらよいかを常に念頭においていく構えがだいじ.同時に贅沢品や不用品の輸入を極力抑える.

6,海外投資の奨励

外国からの投資を奨励しなければならない.投資受入れの形態は多様であってよい.ジョイントベンチャー,共同生産方式,販売協定などさまざまな工夫.参加比率についても柔軟に考えるべきである.

7,輸出産業の振興

経済活動の基準はコストを下げ,利潤率をあげることである.社会レベルでいえば,それは労働の生産性を上げることである.それらは原則として手持ち資金で賄われなければならない.とくに外貨についてはそうである.したがって全ての企業は,外国との貿易を振興することなしに,みずからの成長はありえないと知るべきである.

8,産業組織の再編

公的機関は企業を大いに援助するべきである.とくに基幹産業を基軸とする一次,二次の下請など,産業組織の系列化を進めなくてはならない.強調すべきは,省資源型産業の振興である.また機械の補修のためのスペア生産技術も急がなくてはならない.

リサイクル運動もだいじである.使用可能な廃物を残らずリサイクルすることは,全労働者・市民の義務である.

9,社会主義(統制経済)の推進

社会主義建設をさらに推し進めることは,生き残りのため決定的である.今日のように資源がきわめて限られている状況の下では,出来るだけこれを中央に一本化し,計画的に配分しなければなりません.たとえ民間企業であってもこの条件と目的にはしたがわなければならない.

10,経営情報公開の推進

労働者をどれだけ思想動員できるかに,この計画の成功の条件がある.企業の管理者と指導者は常に全面的に労働者の前に情報公開していかなければならない.とくに彼らがいかに重要な役割を担っているかを具体的な明らかにする作業がだいじである.形式主義や官僚主義を避けるためには,労組の指導者や一般組合員との接触の機会を意識的・系統的に保障しなければならない.

12,労働への情熱の鼓舞

このような条件の下で,各種のあやまった風潮が生まれることは避けがたい.怠業,稼働率低下,生産・販売のルール違反などである.労働法,場合によっては刑法に正確に準拠した厳正な対処が必要である.ただし,労働への情熱を常に高め組織していく努力がまず必要であることはいうまでもない.この点でとくに労働者党員の役割に期待する.これは党のもっとも崇高な任務である.

13,政策立案の組織

官僚主義を排し,あらたに能率的な計画,実行組織を作ることが求められている.閣僚会議の最高委員会がこの計画を建てることになった.

14,政策決定への大衆参加

各企業が官僚的でない利益計画を立てることがだいじである.形式主義的な案ではなく,創意に満ちた計画がもとめられている.対案をふくめいくつかの選択肢を用意し,決定過程に大衆を参加させていくことが必要である.

15,インフレ政策の排除

消費を抑えると同時に,通貨発行量を抑え,経済を軟着陸させる必要がある.通貨を利用した国家の経済介入を出来るだけ減らさなくてはならない.インフレは労働生産性の向上を阻害し,投機や労働意欲の低下を生むのみである.

16,海外市場の開拓

国際的な販売先を確保する必要がある.このためには通産省を先頭とする一丸となった取り組みがだいじである.また輸送手段の確保も決定的である.輸出入銀行によるドルの管理も重要であるが,各企業の自主性もこの分野では尊重されなければならない.

17,対外債務の解決

キューバが抱える対外債務の解決は,複雑で困難な課題である.当面,ラテンアメリカ諸国との債務関係を交渉し,あらたな融資条件を獲得しなければならない.