米国国務省による

キューバ概要

 

この文章は,インターネットで米国国務省のホームページから探したものです.そこには各国データの一覧ファイルがあり,その中のキューバの部分を訳出しました.記載には一部気にくわないところもありますが,全体としてはそれなりに役立つ資料だと思います.
保存しておいてなにかの時に役立たせてもらえれば,と思います.


鈴木 頌



地理


 北緯21 30, 西経80 00 ,カリブ海と北大西洋とのあいだに位置し,西インド諸島中最大の島.ジャマイカ,イスパニョーラ,プエルトリコとともに大アンティル諸島を形成する.総面積は110,860 sq km(111,400平方キロ?).東西の最長距離は1,255キロ,南北の幅は平均97キロ.海岸線は3,735 kmにおよぶ.


 青年の島(約2,400平方キロ)を始め2,000近い属島を有する.3,200キロにおよぶ海岸線は珊瑚礁とマングローブで縁取られている.白砂の海浜は280を数え,複雑に入り組んだ入り江が多くの良港となっている.そのひとつであるグアンタナモ湾は1903年に米海軍基地として貸与され,いまも米国の管理下にある.
グアンタナモ基地と29 kmにわたり国境を接する以外,隣接国はない.
 領海12 kmのほか,200キロの排他的経済水域を主張している.


注: グアンタナモ米海軍基地は米国に貸与されており,相互の合意,もしくは米国の一方的領有権放棄に基づく場合にのみ貸与期間が終了する.


 山岳地帯は全体の1/4,平均標高が91メーターを下回る平らな島で,ほとんどが平地かなだらかな丘陵地帯 からなるが,東南部では山岳地帯を有する.島の中部には最高1,160メートルのシエラ・デ・トリニダーと,エスカンブライ高地が,西部にはシエラ・デ・ロス・オルガノスがある.オルガノスの由来は,パイプオルガンのパイプのように林立する奇岩(ライムストーン)にある.最低地点はカリブ海 の0 m,最高地点はピコ・トゥルキノ山 2,005 m(1,980m?)


 200を数える河川のほとんどは短く急流であり,季節ごとに洪水をくり返し,船舶の航行には適さない.


 海洋に囲まれた環境と,ゆるやかな北東の貿易風が,キューバを穏やかな熱帯気候に包んでいる.乾期(11月から4月)と雨期(5月から10月)とを分かつ.年間平均気温は約25度,冬は21度,夏は27度となる.自然の脅威としてあげられるのは東海岸におけるハリケーン.多くは8月から10月にかけて来襲する.統計的にこの国は平均2年に1回のハリケーン被害を受けてきた.山岳や森林が少ないため,旱魃は珍しくない


 自然資源としてはコバルト,ニッケル, 鉄鉱石, 銅, マンガン, 岩塩, 錫, シリコン, 石油がある.
 土地利用の内訳は耕地: 23%,農地: 6%,牧草地帯: 23%,森林地帯: 17%,その他: 31%となっており,潅漑面積は8,960 sq km (1989)におよぶ.


 当面する環境問題としてはハバナ湾汚染; 乱獲による自然破壊,人口増加; 森林破壊などがあげられる.
自然環境に関する国際協定のうち以下のものに加盟している.

Antarctic Treaty, Biodiversity, Climate Change, Endangered Species, Environmental Modification, Hazardous Wastes,
Law of the Sea, Marine Dumping, Ozone Layer Protection, Ship Pollution;

以下の条約については締結はしたが未批准となっている.

Antarctic-Environmental Protocol,
Desertification, Marine Life Conservation

 



人々の生活


 人口は10,951,334 人,人口増加率は0.44% (1996 年7月推計)である.年齢構成は以下の通り.


0-14 才: 22% (男 1,256,674; 女 1,191,652)
15-64 才: 68% (男 3,753,343; 女 3,736,043)
65 才以上: 10% (男 478,630; 女 534,992)

 また性別比は以下のようになっている.


出生時   : 1.06 男/女
15歳以下 : 1.06 男/女
15-64 才 : 1 男/女
65 才以上 : 0.9 男/女
全年齢 : 1 男/女

 出生率は13.37 /1,000 ,死亡率は7.39 /1,000 ,このほか多くの移民ないし難民があり,総移住率は-1.54 /1,000 の出国超過となっている.

 平均寿命は全人口で75.05 才.男は72.71 才,女は77.54 才 である.
 総出産率は1.52 で,幼児死亡率: 9 /1,000 となっている.

 国民の人種構成はムラート 51%, 白人 37%, 黒人 11%, 中国系 1%からなる.現在多くが無宗教であるが,カストロの権力掌握前は,名目上のローマン・カトリックが 85% を占めていた.ほかプロテスタント, エホバの証人, ユダヤ教, サンテリア教などがある.


 言語はすべてスペイン語であり,15歳以上で読み書き可能なもの (1995 est.)は95.7%.男では96.2%,女では95.3%となっている.

 


政府


国名: キューバ共和国
国家形態: 共産主義国家(!?)
首都: ハバナ
行政区: 14 県と 1 特別区; Camaguey, Ciego de Avila, Cienfuegos, Ciudad de La Habana, Granma, Guantanamo, Holguin, Isla de la Juventud*, La Habana, Las Tunas, Matanzas, Pinar del Rio, Sancti Spiritus, Santiago de Cuba, Villa Clara


独立: 1902年5月20日.1898年12月10日スペインから独立したが,その後1902年まで米国が“統治”(!占領?)


祝日: 7月26日 反乱記念日(1953年カストロらがモンカダを襲撃した日)

1月1日 解放記念日(1959年独裁者バチスタが国外に去った日)


現憲法は1976年2月24日に公布.法体系はスペイン法と米国法を基礎としつつ, ソ連などの法理論を多く採用している.compulsory ICJ jurisdictionの受け入れを拒否.


選挙権: 16歳以上の普通選挙権

行政機構:
1976年12月2日以降,現在までフィデル・カストロは国家評議会議長と閣僚会議議長 を兼ねている.1959年2月から1976年12月までは首相の地位にあった.弟のラウル・カストロは国家評議会第一副議長と閣僚会議第一副議長とを兼ねている.


内閣: 閣僚会議は国家評議会議長により提案され全国議会の承認を受ける.


国家評議会: 評議員は人民権力全国議会(国会)により選出される
立法機関:一院制(全国議会): 総議席数は589 , 候補者選定委員会の認めた候補者を直接選挙で選出する.最近の選挙は1993年2月に実施された.次回は98年の予定である.


司法機構: 人民最高裁判所.長官,副長官その他の判事は全国議会により選ばれる.


加盟国際機構: CCC, ECLAC, FAO, G-77, IAEA, ICAO,
ICRM, IFAD, IFRCS, ILO, IMO, Inmarsat, Intelsat (非署名使用者), Interpol, IOC, ISO, ITU, LAES, LAIA (オブザーバー), NAM, OAS (1962年以降公式参加を排除されている), PCA, UN, UNCTAD, UNESCO, UNIDO, UNOMIG, UPU, WCL, WFTU, WHO, WIPO, WMO, WToO, WTrO

米国内における代表: なし

注 - キューバはワシントンのスイス大使館内に利益代表部を設置している.首席代表はラミレス・デ・エステニョス
宛先: Cuban Interests Section, Swiss Embassy, 2639 16th Street NW, Washington, DC 20009;
電話: [1] (202) 797-8518 through 8520


米国外交代表部: なし

注 - 米国は実際にはスイス大使館内に利益代表部を設置.首席代表は Joseph G. SULLIVAN;
住所: USINT, Swiss Embassy, Calzada Entre L Y M, Vedado Seccion, Havana;
電話: 33-3551 through 3559, 33-3543 through 3547(交換手を通じて);
ファックス: 33-3700; キューバにおける保護国はスイス


政党: - キューバ共産党(PCC)の単一政党制となっており,第一書記はフィデル・カストロがつとめる.


経済

概括:
  国家が経済活動の主役を演じている.また対外貿易を全面的に規制している.
 購買力(交換レートと読め)により補正したGDPは,1995年の推計で147億ドル,一人当たりGDPは1,300ドル,実質成長率は2.5% である.
 産業別の比率は農業: 7%,工業: 30%,サービス業: 63% となっている.


 政府発表の95年度経済データによれば,89年から93年までのあいだにGDPは35%低下した.この低下はソ連からの大量援助が途絶したことによるものであるが,キューバ自身の経済的脆弱さが危機を長引かせた.GDPは94年で下げ止まり,政府発表によれば95年には2.5%の増加を示した.輸出は95年には20%増の16億ドルに達した.これは砂糖の国際価格の上昇,およびカナダ企業との合弁ニッケル鉱の増産によるものである.


 輸出の好調と,ヨーロッパ,メキシコからの新規借款が成立したことから,ハバナは過去6年間で初めて輸入を増加することが出来た.輸入額は21%増の24億ドルに達した.とはいえ,それは89年に比較して約30%の水準である.


 インフレ率 (消費者物価)は不明であるが,94年夏には,闇市場の交換レートが1ドル120ペソにまで跳ね上がった.政府は消費物資生産企業へ資材を提供する一方,通貨供給量を抑制した.この結果95年末には,交換レートは25〜30ペソにまで回復した.


 経済活動人口は1989年現在で471万人.これに対し実際の労働人口は3,527,000人.基本的にはほとんどすべて公共労働者である.公式には失業者はいないことになっているが,実際の失業率は不明である.
 1990年6月の統計では,軍を除く公共部門 を職業別に分類すれば以下の通りである.
 公務員及び政府職員 30%, 工業 22%, 農業 20%, 商業 11%, 建設 10%, 通信,輸送 7% .


 ここ数年,政府は資産の流動性,労働の意欲を高める改革を行っている.また食料,消費財,サービスの危機前状態への復興に勤めている.94年10月には農産物市場の自由化が実施された.そこには国営,民間を問わず余剰生産物が自由価格で持ち込まれる.この市場により消費物資の公的な価格設定が拡大し,闇価格の低下につながった.
 政府公認の自営業者の数はあまり増えていない.94年末に16万人だったのが,95年7月19万人,96年1月21万人という程度である.収入格差の増大をめぐる議論は相変わらず続いている.比較的裕福な生活を送ることが出来る自営業者をどう管理・統制するかは,きわめて均質な社会であったこの国にとって重大な問題である.


 政府は現在米下院で議論中の新立法(いうまでもなくヘルムズ・バートン法のこと)を厳しく批判している.それは在キューバ米資産(訳注:革命前の資産)を利用することような第三国の投資を禁止すること,ハバナに対する公式の援助を拒否することを柱としている.

予算:歳入,歳出とも不明.政府投融資も不明.
産業:
キューバの主要産業は農業である.もっとも価値が高いのは砂糖キビ.その生産高はブラジル,インドにつぎ第三位となっている.砂糖は輸出産品の2/3を占めている.いまでも耕地の半分以上が砂糖キビ栽培にあてられている.砂糖キビの加工は工業の基幹となっている.砂糖の副産物にはmolasses,シロップ,工業用アルコール,ラム酒がある.砂糖キビの収穫期(サフラ)は1月から4月末までである.単一産品への貿易依存は,いまもキューバ経済の弱点となっている.
その他の主要農産物はタバコ,柑橘,コーヒー,米,じゃがいもその他, 根茎類,豆類.
農業以外に石油,食料,織物,化学工業,製紙,木工,金属(とくにニッケル),セメント,肥料,日用品,農業機械.
工業生産成長率は1995年推計で6% .

輸出: 10億ドル (出荷時価格, 1995 est.)
輸出産品: 砂糖,ニッケル,エビ,タバコ,医薬品,根茎類,コーヒー,
輸出先: カナダ 15%, 中国 15%, ロシア 15% (1995 est.)
輸入: 24億ドル (入荷時価格, 1995 est.)
輸入品目: 原油,食料,機械,化学物質,
輸入先: スペイン 15%, メキシコ 15%, ロシア 10%, (1995 est.)

電力:
1993年現在で,容量は3,990,000 kW,生産量は12 billion kWh,一人当たり消費量は1,022 kWh

財政:
対外債務は1995年現在で91億ドル に達する.これはドル建て債務であり,他にロシアに200億ドルの負債 を抱えている.
通貨は キューバ・ペソ (Cu$) である.100 センタボが1ペソに相当する.米ドルとの交換率は公式には1:1で固定されているが,現実には変換不能である.

 



交通


鉄道総距離は4,677 kmに達する.うち4,677 km が標準軌道である.ほかに1.435-m軌道がある.電化区間は132 kmである.機関車の多くが砂糖農場で使われている


ハイウエイの総延長は26,500 kmに達する.うち舗装道路は14,575 kmであり11,925 km が未舗装である(1996 年推計)


主要港湾: シエンフエゴス,ラ・アバナ,マンサニージョ,マリエール,マタンサス,ヌエビタス,サンチアゴ・デ・クーバ,
水路の総延長は240 kmにのぼる.
商用船は41 隻 (1,000 屯以上) 計 220,870 屯/310,169 DWTを保有する.
船種としては貨物船 17, 化学タンカー 1, 液化ガスタンカー 4, 石油タンカー 9, 貨客船 1, 冷凍貨物船 9


注: このほかキューバは47隻を保有 (1,000 GRT or over) .これを加えれば462,517屯となる.なお「DWT」はパナマ,キプロス,マルタ,ベリーズ,モーリタニアの船籍で操業しているもの(1995 est.)


空港:キューバは,1995年時点で156の空港を保持している.内訳は以下の通りである.


3047メートル以上の補装滑走路を持つ空港: 7
2 438 to 3 047 mの補装滑走路を持つ空港: 7
1 524 to 2 437 mの補装滑走路を持つ空港: 14
914 to 1 523 mの補装滑走路を持つ空港: 9
914 m以下の補装滑走路を持つ空港: 87
1 524 to 2 437 mの未補装滑走路を持つ空港: 1
914 to 1 523 mの未補装滑走路を持つ空港: 31

 



通信
1987年現在でキューバの保有する電話台数は430,000 と推計されるが,その電話システムは世界でもっとも未発達のシステムといわれる.
国内: 不明
国際: 地上衛星基地 - インタースプートニク1号 (大西洋地域)
テレビ放送局は58.ラジオ放送局はAMが150, FM 5局.短波 放送局は0.1993年現在テレビ台数は250万,ラジオは214万台と推定される.

 


国防
革命以来の伝統を持つ革命武装軍(FAR) が陸上部隊を包め全軍を掌握している.この他に海上革命軍 (MGR), 空軍および防空軍 (DAAFAR), 国防義勇軍 (MTT), 青年労働者義勇軍 (EJT)が組織されている.またグアンタナモ周辺には内務省の国境警備隊 (TGF)が配置されている.
動員可能人員は年齢 15-49才の男性3,053,431人,女性3,009,852人におよぶが,実際の兵役可能男性は1,898,644人,兵役可能女性は1,866,313人である.1996年推計では,毎年新規に編入される17才男性は65,182人,女性は61,960 人である.
国防費は不明であるが ,およそGDPの 4% と推定される(1995 ).数十年にわたり続けられてきたモスクワの軍事援助と軍事物資供与は,93年までにほとんどすべて打ち切られたと思われる.