Friday October 11th 2007
ベネズエラ共産党とベネズエラ統一社会党(PSUV)
合同するのか、別コースを歩むのか?
By Kate Clark - Red Pepper Venezuela Blog
http://redpepper.blogs.com/venezuela/2007/10/venezuelas-comm.html
インタビューにいたる経過
読者は、多分思い出すだろう。 昨年12月の初め、チャベスが大統領選挙勝利の直後に、全ての党に頼んだのを。彼は彼を支えるために単一の統一党(ベネズエラ統一社会党)をつくるようもとめた。」
すべての党が、同意するというわけではなかった。ベネズエラ共産党のヘロニモ・カレラ議長は最近ロンドンに個人的な訪問をおこなった。彼は我々の通信員ケイト・クラークにこのインタビューを与えた。そして党の決定についてその理由を説明した。
ヘロニモ・カレラ
カレラはベネズエラの有名なジャーナリストでもある。ベネズエラの新聞二紙、"La Razon" and "Tribuna Popular"のために毎週のコラムを書いている。
ベネズエラのユゴー・チャベス大統領は、去年の12月、彼の再選成功を祝福するイベントで、初めて、左翼の単一政党の考えを示した。彼がその考えに着手した時、彼は全ての左翼政党に、「単一党作りに参加するか、それともあえて外部にとどまるか」という長手袋を投げ落としのだろうか?。
最も外交的であるリーダーとしてではなく、カリスマとしてのチャベスは、このアイデアをすでに決められたものであるかのように発表した。そこには彼を支える諸政党との協議はなかった。おそらく計算されていない何かが、持ち出され、その真意が計りかねている。
ベネズエラ共産党はどんな政党か
これまでのところ誘いを受けた党の態度はどうなっているのだろうか。なかでも最も影響力がある政党が共産党である。党員数は決して大きくはないが、選挙ではおよそ35万の得票を得ている。最近の大統領選挙では約3%を獲得した。
ベネズエラ共産党は1931年に作られた。それは全てのベネズエラの政党で最も古いものである。それは独裁政権と合法的政府が次々と入れ替わるのを見続けてきた。それは合法活動も地下活動も経験してきた。それは他国の共産党が国内問題に干渉することをはねつけてきた。
(訳注: 60年代にカストロがベネズエラのゲリラ闘争を支援したことを指す。カストロは当時、合法闘争に復帰したベネズエラ共産党を激しく非難し、ゲリラ戦士を送り込んだ。後にカストロはこのことについて自己批判している)
それは60年代には3年間にわたり武装闘争を闘った。そしていまも、コロンビアのFARCによるゲリラ闘争を公然と支持している。
ベネズエラ共産党のヘロニモ・カレラ議長は85歳。多くの党と多くの政府を見送ってきた。彼はいまも驚くほど活発で、機敏である。彼は二つの独立した新聞のために毎週のコラムを書いて、党の方針を形成するのに尽力している。
カレラの最初の発言
「我々は三世代にわたり党の活動を続けてきた。党は地下活動の時代、合法活動の時代を生き抜いてきた。そして党のメンバーであることによって、弾圧と困難を経験してきた」
「現在、突如として一つの呼びかけを受けている。党を解散してもう一つの党に加わるようにと。しかし我々の党は車ではない、家でもない。私や他の指導者が適当に考えて、処分できるようなものではない。我々は我が党の管理人にしか過ぎない。したがって我々は、チャベスの提案に関していかなる性急な決定もすることができない」
ベネズエラ共産党の臨時大会
3月、共産党は臨時大会を開いた。大会には千名の代議員が参加した。そして投票が行われ、少なくとも当面、チャベスの新党「統一社会党」に加わらないことを決定した。
カレラは語る。
「我々はウ-ゴ・チャベスを全面的に支持している。これまで10年以上のあいだずっと支え続けてきた」
「しかし“新党”ははまだそのプログラムとその目的を定義していない。したがって我々は、何か未知のものに加わるために我が党を解散する、という危険を冒すことは未だできない」
「我々は、まだ知らない。それが社会民主主義の政党なのか本当の社会主義の党であるかどうか。我々は知らない。それが、ニカラグアで80年代にサンディニスタがそうしたように、社会主義インターナショナルに加わるかどうか。
「当時、我々は、社会主義インターナショナルに加わるというアイデアを受け入れることができなかった。その組織は、社会主義の主張に沿って何かをしたということは決してなかったからだ。それらの社会民主党は権力の座に座るが、そのあと本当に現状に挑戦するということは決してない。我々はそのような政党では決してありえない」
臨時党大会の後、小さなグループがチャベスの新党に加わることを決めた。そこには中央委員会のメンバー2,3名もふくまれていた。
「我々は彼らを追い出すことはしなかった。誰も、我が党にとどまらなければならないということはない。彼らは、時間とともにわかるだろう。彼らが我が党の中にいるよりも、そこにいたほうがもっと役に立つかどうか」
現在、党は議会に7人の議員を送り込んでいる。チャベス大統領は最近、共産党の指導者の一人であるダビド・ベラスケスを内閣の一員に指名した。チャベスはまた、PSUVの外に残るという共産党の姿勢に理解を表明した。
ベネズエラで何が進行しているのか
カレラはこう断言する。
「ベネズエラには進行中の革命が明確に存在する」
「それはブルジョワ革命ではない。それはプロレタリア革命ではない。我々は“ボリーバル革命”というのが正しいと思う。なぜならそれは民族主義的でないからだ。しかしそれは愛国的だ。そして19世紀の偉大なベネズエラの愛国者シモン・ボリーバルの描いた夢のように、それはラテンアメリカの異なる国を結びつけようとしている」
「それはキリスト教とマルクス主義の両方によって影響される革命である」
カレラは続ける。そしてチャベス自身が献身的なキリスト教徒であることを指摘する。
「革命が社会主義社会に向かって進むならば、たとえばキューバのように、それなら我々はそれを支持し続ける」
(ちょっと教条主義的かつ事大主義的ですが、いまのラテンアメリカにあってはリアルな認識なのかもしれません。私も話が輻輳してくると、「この件についてハバナはどう考えるのかな?」と情報を探ることがあります。それで結構「なるほどな!」という答えが見つかるのです)
ベネズエラの革命は何をもたらしたか
ウーゴ・チャベスを支える、ベネズエラ国民のあいだの強大な力について、カレラは語る。それはベネズエラの大統領が有権者に対する彼の約束を守っていることの証拠だと。それは世界中の政治家の中でも稀有の例だ。
チャベスの下でベネズエラが、たとえば健康と教育における信じられないほどの前進を遂げたことは、誰にも否定できない。いまやすべての国民に向けられた無料のヘルス・ケアーがある。
さらに新たにクリニックと病院が貧困者の住む地区に作られた。有名なバリオ・アデントロ計画だ。これによって、ヘルスケアーは貧困者にもアクセス可能となった。そこのスタッフは、多くが、相互的な政府合意の下で派遣されたキューバの医者である。
大規模な読み書きの能力プログラムと教育は国内すべての分野から歓迎されている。有権者は心から感謝している。バリオ(貧民地区)に新しく作られた低価格のスーパーマーケットもそうだ。これらがすべて投票に反映している。
これに加えて、疑いなくチャベス自身の巨大な個人的カリスマ性がある。カレラ議長は言う。このカリスマ性こそが、過去二回の選挙においてチャベスに得票率70%という驚異的な得票をもたらしたと。
この国の歴史で初めて、民衆は見る。ベネズエラの莫大な石油資源が生み出す利益が、国民すべてに役立たせるために使われているところを。過去はそれはたった一つの階級のためのものだった。
それは、誇り、自信、他国民との友愛という新しい感情を呼びさました。カレラ議長によれば、それは真の国際主義の精神である。
石油メジャーとアメリカの覇権主義
カレラは、石油資源が枯渇したときのことを心配する。彼は言う。
「世界中の油は、独占の手の中にある」
「その完全な支配から逃がれた最初の国は、1917年革命の後のロシアであった。しかしいまや我々は知っている。かつてソビエトのものであったカスピ海の石油が、ふたたび西側の石油独占の手の中にあるということを」
「我々がしたいことは、ベネズエラの油をこれらの独占からねじり取ることである。しかし、我々はひとりでそれをすることはできない」
「我々は世界で石油を持つ数少ない国のうちの1つである。OPECが設立された時、世界の原油国は、西側独占資本の支配から脱出出来るかもしれないと思えた。しかしそれは幻想だった。サウジアラビアは米帝国主義によって支配されている。イラクはその石油資源のために米国に侵略された。リビアのカダフィはもはや懐柔された…」
カレラは警告する。
「チャベスの反抗的な、自立の道は米国の覇権への挑戦とみなされる。 だから我々の上にはいまだに侵入の脅威がかかっている」
「2002年の右翼クーデターの失敗にもかかわらず、米国と右翼は、我々の政府を倒すためにどんな可能な口実でも使うだろう」
「彼らがイラクでやったことを、あなたは知っている。それならこう言ってもいいだろう。“彼らが未だにベネズエラに侵入しないとは驚きだ”と。そのような結果はぜひとも避けられなければならない」
「出来ることはすべてやらなければならない。そしてこれまでとは異なる種類の攻撃を防がなければならない。たとえばベネズエラの石油地帯に対する破壊活動だ」
世界の多極化とベネズエラ
ユゴー・チャベスの政策は多極性の概念に基づいている。それは分け隔てなく世界の全ての国と最高の関係を築き上げることだ。米国、すべての欧州諸国も例外ではない。
その狙いは、ジョージ・ブッシュが「反ベネズエラ同盟」を編成するのを防ぐことにある。それはいまイランに対して形成されつつある包囲網と似ている。
カレラは言う。
「いまは米国が国連で反ベネズエラの決議を通すことはとても難しいだろう。世界は変わった。米国がはるかかなたから、ある国にクーデターを命令できるような時代は、すでに過ぎ去った」
確かに30年前、米国はある政府の終焉に関与することができた。それはサルバドル・アジェンデ大統領とチリ人民連合政府である。その政府は分裂し敗れた。そのことから言うと、たしかに将来のベネズエラ革命は単一政党=PSUVにより担われた方が良いかもしれない。
しかしそのことに関するカレラの答えは明確であった。
「チリでは、アジェンデ大統領は投票数の40%足らずしか獲得できなかった。だから、彼は右翼と戦うだけではなく中道派とも向き合わなければならなかった。これと比べるとベネズエラは対照的である。チャベスは現に投票数の70%を獲得している。しかも一度ならずだ」
「私はこうも思う。70年代の米国ははるかに容易にチリに攻撃を仕掛けることが出来たと。その頃の米国に比べたら、今のブッシュ政府は誰からもまったく信用されていない」
カレラ議長の「楽天主義」は場違いな印象を受ける。あるいは話すべきではない内容がふくまれていたためかもしてない。
単一政党は最高の選択ではない
我々は知っている。メディアはイラク侵攻に際して英国民衆にキャンペーンを張り、戦意を盛り上げた。サダム・フセインは大量破壊兵器を持っている。それは45分以内に我々の下に到達する。それは我々にとって差し迫った脅威だ…。
チャベスのようなカリスマ的な指導者を中傷するシナリオを作り出すのは、そう難しいことではない。例えば彼を独裁者と呼んだり、他国に対する脅威とみなしたりするような手口である。すでに、我々のメディアの一部はチャベスに関して独裁者の言葉を用いるのに寛容になっている。
カレラはこうまとめる。
「ベネズエラで単一政党を編成することは、我々の意見では、最高のオプションではない。歴史の中には多くの実例がある。一つの政党の中にさえ分裂がある。たとえばソ連共産党だ。党の中に異なったグループがあった。異なった利害があった。そして彼らは権力を失った。革命的過程における成功は何によって決まるか。それは政党が単一かどうかによってではない。ましてや一方がその過程を掌握することでもない」
「レーニンは社会革命党(エスエル)をボルシェビキの盟友として残したかった。しかし当時の歴史的状況において、それは不可能であることが分かった」
ベネズエラで今日重要なことは、革命の経過を支持している政党が、それぞれの見解の違いはあっても一つの方針について合意に達することである。
「チャベス主義」とマルクス主義
カレラは主張する。
「いま、戦略的な目標は、キリスト教左派の世論を我が方に獲得することである。そして右翼の方向に行かせないことである。ベネズエラという国は、二つの陣営に分かたれている。それはチャベス派と反チャベス派である。どちらの陣営にも属していないのは、わずか10%に過ぎない」
「我々は進行中の革命的過程を支持する。しかし我々は自らをチャベス派とは呼ばない。我々はチャベス主義という言葉を使わない。我々は自身をボリーバル革命の一部と考えている」
「我々はチャベス主義者ではない。何故なら我々は特定の個人を基礎にする規定を信じないからだ。たしかに我々は“マルクス主義”という言葉を用いている。しかしそれは一種の伝統に過ぎない。その言葉はいまは正確ではない。我々は弁証法的唯物論者である。それは哲学的あるいは思想的な規定である」
「しかし、チャベス主義という言葉を使うかどうかに関係なく、我々は認める。ウーゴ・チャベスは極めて重要で価値のあるカードであることを。彼はベネズエラにとってだけではなく、ラテンアメリカの全ての国にとって大事な人物である」
共産党は批判の自由を保持する
“チャベス、チャベス主義、将来”に言及するとき、ヘロニモ・カレラは明らかに用心深くなる。共産主義運動はこれまで「個人崇拝」によってはなはだしい痛手をこうむってきた。二度と再び同じ間違いをしないよう学ぶために、十分すぎるほどのコストを払ってきた。
カレラは苦々しい口調で語る。
「私は党代表派遣団の一員としてソ連を訪問したことがある。そのとき赤の広場霊廟で、レーニンの遺体を参拝しなければならなかった。愉快なことではなかった。レーニン自身も、クルプスカヤ夫人も、けっして死体を保存することには賛成していなかった」
カレラは言う。
「ベネズエラ共産党は政府の一角を形成しているわけではない。しかし我々は間違いなく反対派ではない。野党、例えば民主行動党(AD)やキリスト教社会党(COPEI)は今日のベネズエラで自由に活動している」
「我々はそうではない。我々は自らをPSUVの同盟者と考えている。しかし、我々は感じている。我々は彼らに“批判的支持”、時によっては“建設的批判”を与えることにより、もっとも有効に役割を発揮できると。
メディアの特権の危険について
カレラを悩ませるもう一つの危険はオポチュニストの動向である。それは単一政党を作るとき、そして批判の自由が損なわれるとき、発生する可能性がある。
しかし、いま批判されるべきは自由の問題ではない。それより「特権」の問題の方がはるかに重要だ。それらの「特権」=ライセンスは、現在のベネズエラでは一部反対派メディアによって享受されている。
カレラは断言する。
「彼らは、考えられる最も下品なやりかたで、大統領を公然と中傷し侮辱する」
「世界の中の国で、メディアが選ばれた大統領に対してそのような侮辱的な言葉をあたえるものはない。私はそう確信している」
ベネズエラのキューバとの同盟についてベネズエラの共産党が好感を抱いていることは間違いない。PSUVの外側にいるよりは、それに加わることの方がはるかに自然である。
しばらくの間、PCVは外にとどまることに決めた。
それが正しい決定であったかどうか決めるのは歴史だけである。
別の報道によると、3月の党大会では、中央委員のうち13人がPSUVへの参加を決意した。党は二重党籍は認められないとして、彼らを事実上の除籍処分とした。
ジェロニモ・カレラは、憲法論議にも懐疑的である。8月のインタビューでは、「国は、憲法論議にあきている。ベネズエラが直面する社会問題の解決は、憲法改革より緊急で実践的な課題である」と述べている。