アフガン、四つの「何故?」

2001年11月

 

 

第一の「何故?」  どうしてアフガンは苦しまなくてはならないのだろう?

アフガン民衆には、次々に苦難が押し寄せています。

最初がソ連軍の侵攻と戦争でした。次がイスラム・ゲリラ同士の内戦でした。ついでタリバンが政権を握ると、野蛮なエセ宗教支配。そして98年からいままで連続した旱魃と飢饉です。

そこへ持ってきて、アメリカによる報復戦争です。

20年間の戦争の中で、アフガンの人たちが味わっている苦しみを、私たちは知らなければなりません。そして、みんなに知らさなければなりません。

A 20年の内戦がもたらしたもの

まず大量の難民です。国連難民高等弁務官事務所が9月末に発表した緊急アピールによると、国内外の難民は750万人に上ります。アフガン総人口の実に1/3にあたります。

さらに悲惨なのは、このうち150万人が5歳以下の幼児だということです。

ソ連侵攻と内戦による苦難の象徴となっているのが、大量の地雷です。いまアフガンの国土には1千万個の地雷が埋められているといいます。二人に一個です。この地雷のために、いまも毎週100人が犠牲になっています。

B 三年連続の旱魃がもたらしたもの

内戦の被害に追い討ちをかけたのが、98年以来続いている旱魃と飢饉です。

すでに家畜の3/4が死滅しました。人間とて同じで、国民の2/3が栄養失調と報告されています。飲料水を飲めるのは,国民の1割にすぎません。不衛生な環境と弱った体に、さまざまな伝染病が襲いかかります。赤痢やコレラに加え、最近では世界で最も怖ろしい病気、エボラ出血熱の発生も報告されています。

この1年で100万人が死亡しています。さらに、現時点で500万人以上が、文字通り死の危険にあります。この国の平均寿命は男が45歳、女が47歳にまで短縮しています。これはアフリカのシエラ・レオネにつぐものです。

WHOのアフガン地域健康問題調整官は、「毎年1万6千人の妊婦が死亡している」と述べています.

なかでも子供がいちばんの被害者です。5歳以下の幼児の死亡率は世界最悪、25%と言いますから,生まれた子供の4人に一人が亡くなっている計算です。

毎年30万人の子供が死亡しています。生き残った子供も,半数は極度の栄養失調に陥っていて、いつ死んでもおかしくない状況です。

国連難民高等弁務官事務所のアピールによれば、「この子供たちの多くはすでに生死の境にある」ということです。「戦争なんかしている場合か!」と叫びたくなります。

C 報復戦争がさらに民衆を苦しめる

今度の戦争は、生死のがけっぷちに立たされたアフガン民衆にとっては、背中を押されて、谷底に突き落とされるようなものです。

新たな難民が発生しています。これまで毎日2千人,合計10万人が国境近くへ避難してきています。この人たちは国境越えを拒否され、国境の向こうで死を迎えつつあります。

でも国境までこられた人たちは、まだしも幸せかもしれません。多くの人々は避難するだけの財力もなく、ひたすら我が家で死を待っています。彼らには爆撃で死ぬか、戦闘に巻き込まれて死ぬか、餓死するかの選択しか残されていません。

一番の問題は、アフガン国内へ援助の手が及ばなくなったことです。援助関係者はタリバン政府により強制退去を迫られました。関係者は栄養失調で死にかけている何十万の人を置き去りにしてきたのです。その耐えられないほどの苦しみを、私たちも共感しなければなりません。

中村哲先生はこう語っています。

重病の子をかかえ,やっと診療所にたどり着いたと思ったら,子供が冷たくなっていく,人間なら助けたいと思うでしょう.これが世界の人々の一致点.この一致点を確認すれば,軍事報復などできないはずです.

ユニセフなど五つの国連機関は、報復戦争の危機に際して緊急の共同声明を発表しました。国連食糧農業機関(FAO)は「軍事攻撃があれば,さらに600万人が飢餓状態に陥る」と警告しました。国連アフガン活動調整官事務所のクリス・ケイ計画部長はこう述べています。「空爆によって難民への援助が中断され,多くの人が死の瀬戸際に追いやられている.冬の到来を前に,一刻も早く援助を再開できるようにしたい.戦争中止を願っている」

国際援助を手がける6つの団体は、 「アフガンには2週間分の食糧備蓄しかない。ただちに空爆を停止し,食糧輸送を開始するよう求める」共同声明を発表しました。

D 救援の手がもとめられている。それも緊急に

ユニセフ・フランス国内委員会は訴えています。「高原地帯では,すでに夜の気温は氷点下に下がり,餓死・凍死の危険が迫っている」

ユニセフ事務局長は「アフガンの子供の危機は,40億円があれば救える」といいます。びっくりするほどわずかな額ですが、要するにお金の問題ではないということです。アメリカの爆撃が、救援の手を妨害し、幼い子供たちの命を奪っているのです。

 

第二の「何故?」  どうしてアフガンを苦しめなくてはならないのだろう?

A 「ピンポイント」攻撃のうそ

とうとう戦争が始まってしまいました。

連日の報道を見ていくと、アメリカはアフガン国民に迷惑をかけないどころか、国民を犠牲にしてこの国をひっくり返すつもりであることが明らかになってきました。

まず、10月9日、地雷撤去NGOの事務所が爆撃され、職員4人が死亡しました。同じ日、カブールのチャールズ・サダル病院が爆撃され、60人が死亡しました。続いて10.16および10.26には、国際赤十字の倉庫が爆撃されました。西部ヘラートの軍病院が爆撃を受け,入院患者など百人以上が死亡しました。

アメリカ軍は、当初今回の攻撃がハイテク兵器によるピンポイント爆撃であり、民間人には影響ないと大宣伝しました。しかし「誤爆事件」が相次ぐと開き直るようになりました。

ラムズフェルド国防長官は、「軍事施設に対する限定的攻撃ではあるが,意図しない犠牲は避けられない」と語るようになります。

ついで地方からとても誤爆とは言えない事件が報告されるようになります。

まず、ジャララバード近郊カルスク村の虐殺事件です。アメリカ軍の無差別爆撃で、少なくとも200人が死亡,村は全滅しました.カンダハル近郊チャコルカリズ村の爆撃では、民間人93人が死亡しました。

アメリカ軍は当初はピンポイントといいながら、誤爆やむなしに変わり、今では誤爆の言い訳すらせず、アフガン人を一人でも多く殺すことを戦争の目的にしているようです。

どうして、飢えと寒さに苦しむアフガンの民衆が、国際貿易センターの犠牲者の報復の対象にならなければならないのでしょう。いくら考えても矛盾は深まるばかりです。

B 国際貿易センターの5千の犠牲に見合うアフガン人犠牲者は何人だ?

皆さんは、アメリカが何の目的でアフガン爆撃を続けていると思いますか? オサマ・ビンラディンを捕まえるため? そうではなさそうですね。タリバンを懲らしめるため? そんな生易しい話でもなさそうです。

マイヤーズ統合参謀本部議長という人はとても正直な人です。その忌まわしい復讐心を隠そうともしません。「意図しない民間人犠牲者の数に懸念はしている。しかし、正直に言えば,私の心の中で最も重要な数字は,9月11日にテロリストに意図的に殺された5千人という数字だ」

責任者が「正直に言っている」のだから間違いありません。アメリカの目的は復讐にあり、5千人に見合う「いけにえ」を要求しているのです。それは何人なのでしょうか。

アメリカ軍にはそのような悪意はないと否定する人もいるかもしれません。それでは、対人殺傷用としか考えられない兵器が次々と使用されているのは何故でしょうか?

第一に、10月の1ヶ月だけで延べ2千機が出動し爆撃を行ったという事実です。軍事用施設だけをピンポイントで爆撃するのなら、もうとっくに爆撃目標はなくなったはずです。ところが、ラマダンに入ろうとする今も爆撃は続いています。もはや民生用施設もふくめ、何かしらの規模の建物ならすべて叩き潰すというやり方をとる以外に、あらたな爆撃目標は作れないでしょう。

第二に、B52戦略爆撃機の導入です。ジェットエンジンが八つもついているこの大型爆撃機は、そもそもじゅうたん爆撃用の兵器です。ピンポイントとかハイテクなどとはおよそ無縁のもので、雨あられのごとく爆弾を降り注ぎ、ひとつの地域を瓦礫の山にする兵器です。この飛行機を使うということは、住民を皆殺しにするということにほかなりません。

第三に、クラスター爆弾CBU89の使用です。これは親子爆弾で、一個の爆弾内に地雷100発が入っています。これが地上にばら撒かれれば、民間人が被害を受けるのは明白です。この爆弾は地雷禁止国際条約に違反する、卑劣な非人道的兵器です。二人にひとつも地雷があるこの国に、どうしてこれ以上の地雷を与えなくてはならないのでしょう。

第四に、燃料気化爆弾BLU82の使用です。地面にヒナギクの花模様の穴ができることから、デージー・カッターという愛称を持つこの爆弾は、重さ7トン.半径6キロの範囲に被害が及びます.人口数千の町なら一瞬にして地上から消滅します。戦術核兵器に次ぐ破壊力といわれます.

第五に、その核兵器の使用の可能性もあることです。ラムズフェルド長官は、CBSとのインタビューにこう答えています。「米国は冷戦時代から,核兵器の先制使用を排除しないといってきた.核兵器使用の可能性は排除したことはない」

アメリカが斬壕破壊用爆弾を使用したと発表したとき、世界中に衝撃が走りました。アメリカは最近、核弾頭を持つ斬壕破壊用爆弾を開発したばかりだったからです。「ついに核兵器の使用にまで踏み切ったか」と一瞬思いました。結局その新型爆弾ではなかったようですが、詳しい報道はいまだになされていません。

C 食糧投下はグロテスク

米軍は,爆弾を落とした上で「不発弾に触らないでください」というラジオ放送を流しているそうです.ご親切なことです。おまけに食料まで落としています。せめてもの良心ということでしょうか。いいえ、決してそんなことはありません。

東大の藤原教授はこういっています。

米軍は反撃されないように,まず爆弾を落としておいてから,食糧を落とします.つまり,そこは地雷や不発弾だらけになっているわけです.そこへ子供が食糧をとりに行くわけです.どういうことが起こるか…想像に難くありません.米軍の考えは,グロテスクとしか言いようがありません.

 

ブッシュ大統領たちによる報復戦争、三つのナンセンス

A この戦争には大義がない

そもそも報復・復讐という行為には大義がありません。水戸黄門も「仇討ちは天下の御法度」といっているではありませんか。

考えてください。国際貿易センターで亡くなった五千の犠牲者とその家族が,その贖いとして,500万人のアフガン国民が死ぬことを喜ぶでしょうか?いのちは引き算できるものではありません。

復讐は復讐を呼びます。このまま戦争が続けば、間違いなく500万人のアフガン民衆が犠牲となります。その犠牲者の息子たちが,その贖いを求め,復讐をしようとすれば,私たちはそれを非難できるでしょうか?

日本人犠牲者の一人、小川卓さんの両親はこう言っています。「これ以上の人殺しはいやだ.無実の人を殺すのはいやだ.報復戦争はやめて欲しい」

ニューヨーク・タイムスに投稿されたロドリゲス夫妻の言葉は、胸を打つものがあります。

「復讐が行われれば、遠い国の息子や娘、親や友人を死なせ、苦しめることになります。それは私たちの悲しみをさらに深めることになります。それは進むべき道ではありません。それで息子の死の恨みを晴らすことにはなりません。

私たちの息子の名前において復讐することはやめてください」

B この戦争には目標もなく,見通しもない

この戦争は、いろいろな付随的な事柄があるにせよ、ビンラディンを捕らえることを目標としているはずです。だからこそ、イスラム世界も含めた国際社会の、それなりの支持もあるのです。

ところが、戦争によっては,ビン・ラディンを捕まえることはできないのではないか? それは他ならぬ米軍最高指導者の意見です。彼らの率直さは度を越えています。

ラムズフェルド国防長官はこう言います.「ビンラディンを捕まえるのは,干し草の山の中から1本の針を見つけるようなものだ」

スタフルビーム統合参謀本部作戦副部長は、自らの情報能力の欠如をアッケラカンと語ります。「タリバンがこれほどしぶといとは,正直驚いた」

驚くのはこっちのほうです。一体、彼らは何を目標として、どれほどの見通しを持って戦争を始めたのでしょうか?

ラムズフェルドの言うように,ビンラディンを捕まえるめどがないのなら,国際社会が同意できる本来の戦争の意義はなくなってしまいます。タリバンに圧力をかけて,ビンラディンの身柄引き渡しを求めるのなら,タリバンの壊滅を目標とするのは筋違いというものです。

正直者のラムズフェルドはこうも言っています。この戦争は「時間表」を持たない戦いだと。つまり、この戦争にはハナから展望がないのです。

そうなると残るのは、「復讐」として,一人でも多くのアフガン国民の命を奪うことのみです。テロリストの根絶という目標に対して一歩も進むことなく、ただアフガン国民の間に犠牲者が増えていくだけ、という結果が容易に予想されます。

C この戦争には戦略・戦術としての合理性が完全に欠如している

フランスにフィガロという新聞があります。日頃はかなり右翼的な新聞ですが、それがラムズフェルド長官を痛烈に皮肉っています。「ラムズフェルドは、針1本を探すために干草の山を全部燃やすつもりか?」

まったくそのとおりです。彼らはビンラディンを捕まえる前に、数百万のアフガン国民を屠殺しようとしているのです。

いかなる目的があろうと、500万人の死の危険,600万人の飢餓をもたらす作戦は,あまりに忌まわしいものです.戦術としての合理性に根本的に欠けているといわざるを得ません.

米海軍には海軍大学院という軍事科学の専門機関があります。その大学院のアーキーラー教授という人は、こう語っています。

「空爆でテロのネットワークを壊滅させることはできない.ビンラディンを殺害しても,彼を殉教者に祭り上げ,一派の組織への忠誠をいっそう強めるだけだ.爆撃は百害あって一理なしだ」

つまり今度の戦争は、テロリストを根絶するという目標に対して無意味なばかりでなく、逆にテロリストを増やす作用をする危険すらあるということです。これが軍事科学から見た常識です。

最近「タリバン」という本を翻訳・出版した坂井定雄教授も同じ意見です。

「タリバンをつぶすとなると,米軍の兵力投入は数万に達し,イスラム教徒を多数殺傷することになります.そういうプロセスを経て軍事制圧しても,「米英はイスラムを侵略してイスラム教徒を殺した」という怒りと恨みがイスラム世界に広がる.テロ根絶どころか,「反米テロ」の温床を広げるだけです」

 

「テロ・ノー、戦争・ノー」の声は確実に広がっている

マス・メディアの情報統制と、センセーショナリズムにもかかわらず、テロ・ノー、戦争・ノーの声は世界中に広がりつつあります。先進諸国の政府が、ブッシュへの忠誠振りを競い合っているにもかかわらず、市民の中には冷静な意見が浸透しつつあります。

イタリアでは政府がアフガン派兵を検討しています。イタリアのスポーツ選手246人は派兵に反対して平和アピールを発表しました。そこには含蓄の深い一節があります。「平和を望むことは,すべての人種,宗教の人々を信じることを意味する」

日本人サッカー選手、中田選手はイタリアの新聞とのインタビューで、こう答えています。「復讐は正当なことではないということを忘れてはならない.相手が僕の同国人を殺したから,相手の国の人を殺す,そんなことをやっていたら一体どうなってしまうのだろう.ミサイルや銃弾より言葉を役立たせなければ,戦争に終わりがなくなる」

なかなか、見上げた意見ではありませんか。

瀬戸内寂聴さんは、戦争の一刻も早い終結を願い、断食祈願をおこないました。瀬戸内さんは、この戦争の根っこが人種や宗教による差別というよりも、なによりも階級差別なんだと、本質をとらえています。

「自分と人と考えが違うように,自分の国の考えをほかの国の人に押し付けてはいけませんよね.今度の戦争はいちばん富み栄えているアメリカが,いちばん貧困な国をやっつけるということでしょう.富み栄えている人は,本当に貧困な人の気持ちはわかっていない.人間である限り,痛めつけられたら力で返したい.やっつけられっぱなしで辛抱するのは難しいものです.でも,誰かが,違うんだということを言いつづけなければならないと思います」

アフガンの隣の国、イランは、長年イスラム原理主義の支配の下に苦しんできました。最近やっと、民主主義の方向に向けて歩き出したばかりです。そのイランで、民主化の運動を担っているモハマド・アリ・アブタヒ副大統領は、こう語っています。

「長年,イスラム世界の知識人たちは,イスラム教は平和を説く宗教で,テロや暴力とは無関係であることを世界に証明しようとしてきた.そうした努力の結果,イスラム過激派のテロや暴力思想は完全に否定され,民主的イスラムのほうが良いと人々も納得した.ビン・ラディン的思想は影を潜めていた.その矢先に米国で多発テロが起き,米国は憤激し,アフガンを攻撃している.暴力や過激思想が再びイスラム世界の潮流になることを私は懸念する。米英のアフガン攻撃は間違いなくビンラディンを英雄にし,彼らの過激思想も息を吹き返すだろう.そこに我々の憂慮がある」

 

第三の「何故?」  どうして日本もアフガンいじめに

加わらなくてはならないのか?

A ビンラディン逮捕とテロ根絶は、世界の共通の任務

誤解を避けるために言っておきますが、何もするなといっているのではありません。ビンラディン逮捕とテロ根絶は、世界の共通の任務です。そのために必要なことであれば、日本は最大限の努力を払うべきです。

ビンラディンが犯人とは決まっていないという人もいます。しかし、これだけの規模のテロ作戦を展開できるのは、ビンラディンを除いてありません。

ビンラディン自身も、自ら犯行を示唆しています。

「アメリカのもっとも有名なビルが破壊されたことを神に感謝する.アメリカは北から南まで,西から東まで恐怖で一杯となっている.それを神に感謝する.神はイスラムの前衛を祝福し,彼らが米国を破壊した.神が彼らの地位を上げ,祝福することを祈る」

だから、ビンラディンをとらえ、裁きの場に引き出すことは、テロ根絶のための差し迫った課題なのです。そのために、世界の人々が反テロという一点で合意し、タリバンに圧力をかけ、孤立させ、追い詰め、国連や国際司法裁判所などの正式な機関を通じて、ビンラディン引渡しを実現させなければならなかったのです。その可能性はありました。アメリカはその可能性を自分でブチ壊してしまったのです。

B 小泉首相は日本人の血が流れることを期待している?

テロ対策特別法(報復戦争参加法)が成立しました。法案成立翌日の各紙の見出しは、この法律の狙いを一言で言い表しています。「自衛隊初,戦時派遣へ」、「自衛隊初の戦闘時任務へ」

アメリカから「旗を見せろ」といわれて、小泉首相が最初に語った言葉は、大変印象的です。「今回は危険なところにも行ってもらう.多少の犠牲は覚悟しなければならない」

「多少の犠牲」というのが人的犠牲を指すことは、誰にでもわかります。小泉首相は、アメリカに向かって旗を振ってみたくてしようがないのです。そのためには自衛隊員の一人や二人、死んでもらいたいのです。

アフガンの人々のことを思えば、いま私たち、日本がやるべきことは人助けであって、人殺しの手伝いではありません。しかしアメリカとブッシュさんのことを思えば、採るべき道は逆になるようです。

 

第四の「何故?」  どうしてこのようなでたらめがまかり通るのだろうか?

マスコミの役割

A 真実に目をつむるマスメディア

マスコミは真実を報道していません。確かに事実は報道しているのでしょうが、そこには真実はありません。さまざまな事実を洪水のように流し続けることで、かえって民衆を真実から引き離そうとしているようにしか見えません。

「ロッキング・オン・ジャパン」というロック・ミュージックの雑誌があります。坂本龍一なども参加する、ちょっとハイブローなマガジンです。その特別号「サイト」で、同時多発テロ事件を緊急特集しました。「巻頭言」で、編集を担当した渋谷陽一氏がつぎのように発言しています。

「何かが変だと思う.とくに”報復は当然”とか”軍事協力を”という方向へ流れていく報道へのなじめなさ.…多くのリベラルと思われているメディアが,ためらい,おびえている.”報復は不毛”と日本のメディアはどうして云えなかったのか」

まったく同感です。

これが米国だともっと激しい。テレビ番組「ザ・スクープ」のプロデューサー、原 一郎さんはこう書いています。

「最近のアメリカは見ていて本当に恐ろしい。ブッシュを批判したボクサーがランキングを剥奪され、反戦を訴える女子高生が停学処分になり、さらには裁判所さえその停学を支持する」

B ブッシュ言いなりの論調の捻じ曲がり

マスコミの論調が、ブッシュたちにあわせてどれだけ捻じ曲がっていくか。そのことは、例えば9月15日の新聞を読み返してみればわかります。あのとき、まさかと思った不合理が,たった数週間で,いつの間にか「常識」になっていることに、あらためて気づくに違いありません。

ビンラディンが犯人だという「確実な証拠」を提示するといったが,結局提示せず.

ビンラディン引渡しだったはずが,対アフガン武力行使に

「報復」ではなかったはずが「報復は当然」に

アフガン国民には迷惑をかけない「ピンポイント」だったはずが,無差別爆撃に

タリバンに圧力をかけるだったはずが,タリバン政権打倒に

ラマダン前に終結のはずが無期限戦争に

平和協力だったはずが,「お国のために血を流せ!」に

C 「時代」に流されて良いのだろうか? 本当の勇気とは何なんだろうか?

戦争決議に,4百人以上の議員の中でたった一人反対した議員がいます。カリフォルニア州選出の女性議員バーバラ・リー議員です。以下、少し長いですが彼女の演説の要旨を紹介します。

議長、私は今日ここに重苦しい気持ちで立っております。

9月11日の出来事は世界を変えてしまいました。とてつもない恐怖が私達を襲っています。しかし、私は確信しています。軍事行動で更なる国際的なテロを防ぐことは決して出来ないことを。

この軍事力行使決議が採択されるということはわかっています。この投票がどんなに難しいものであろうとも、誰かが抑制を利かせなければならないのです。誰かが、しばし我々が取ろうとしている行動の意味をじっくり考えなければならないのです。皆さん、この決議の結果をもっと良く考えて見ませんか?

対象になっているのは通常の戦争ではないのです。従来のような対応をすることはできないのです。私は、今起こっている異様な高揚に抑制が効かなくなってしまうことを恐れます。現在の危機には、国家の安全、外交政策、公共の安全、情報収集、経済、そして殺人などいろいろな問題がからんでいます。私達の対応も同様に多面的でなければなりません。

急いで判断を下してはなりません。既に、あまりにも多くの無実の人々が亡くなっているのです。アメリカは喪に服しているのです。

私達は,憎むべきテロ殺人者たちによる法外なテロ行為に対して怒りを覚えています.しかしだからといって,アラブ系アメリカ人、回教徒、東南アジア人などの人々に対し,人種や宗教、民族を理由に偏見を燃え上がらせるということがあってはなりません。

私達は、出口も明確な目標もない終わりのない戦争を,始めないようにしなければなりません。過去の過ち(ベトナム戦争)を繰り返してはならないのです。

勇気ということでは、作曲家の坂本龍一も発言しています。

「巨大な破壊力をもってしまった人類は、パンドラの箱を開けてはいけない。本当の勇気とは報復しないことではないか。暴力の連鎖を断ち切ることではないか」

ブッシュたちと小泉首相たちが、真実を隠しつづけ、アフガンの民衆を苦しめるために戦うのなら、私たちはその邪悪さを暴き、真実を広げるために闘うしかありません。

 

【追補】

15日、タリバンがカブールを撤退しました。事態は新たな局面を迎えました。

しかしこれで平和が近づいたという見方は、わが善良なるNHK以外は誰もしていません。米軍首脳も同じです。

少なくともビンラディン引渡しの可能性は、限りなくゼロに近づきました。ひょっとすると、それがアメリカのほんとの狙いだったのかもしれません。竅った見方としては、ビンラディンが引き渡されては困るアメリカのウラ事情もいくつかあります。ただあまり竅ってばかりいると、かえって本質が見えなくなるので、それ以上は省きます。

予想された悲惨な事態が、早くも始まっています。北部同盟によるタリバン狩りです。血を血で洗う内戦が全土に拡大すれば、死傷者の数も飛躍的に増大するでしょう。

ラムズフェルドは「戦争はやめない。ゲリラ戦もいとわない」と発言しています。いまや、針を探すよりも干草を燃やし尽くすほうが、彼の心情にあっているようです。

 

この文章の引用のほとんどは新聞「赤旗」からのものです。皆さんにも「赤旗」のご購読をお勧めします。

Take it easy! のページも参照させていただきました.