ファルージャ総攻撃の記録

11月25日 ファルージャ関係の報道がめっきり少なくなっています.昨日はついに赤旗もファルージャ関係記事ゼロとなりました.しかし未だファルージャの戦闘は終わっていませんし,封鎖も解除されていません.密室化された空間の中で大虐殺がまさに進行中です.真相がわかってくるのはこれからでしょう.メディア発信でなく,インターネットを通じての情報がこれからどっと出てくるかもしれません.とりあえず11月一杯はフォローを続けたいと思います.

12月5日 ページが重くなりすぎました(内容的にも).各新聞社,各通信社のサイトのほか,益岡さんらの「ファルージャ 2004年4月」から引用させていただきました.他にも多くの関連サイトを参照させていただきました.

 

 

2004年 第一次ファルージャ攻撃

 

3.31 米警備会社要員4人が,武装勢力に殺害され,遺体を損傷される.遺体の映像は全米に放映され,社会に衝撃を与える.

4.05 米軍,ファルージャ掃討作戦を開始.

4.07 高遠さん,今井君,郡山さんの3人がラマディ・ファルージャ間の道路で捕らえられ人質となる.

4.08 カタールのアル・ジャジーラTV,人質3人の映像を放送.犯行グループは「3日以内に自衛隊が撤退しなければ,3人を殺す」と要求.福田官房長官は要求を拒否する記者会見.

4.09 小泉首相,自衛隊撤退はありえないと強調.

4.11 アルジャジーラ,「24時間以内に3人を解放する」との犯行グループの声明を報道.

4.14 安田さん,渡辺さんの2人が拘束される.

4.15 高遠さん,今井君,郡山さんの3人が解放される.

4.28 アナン国連事務総長,「軍事行動は事態を悪化させるだけであり,イラク人の抵抗はますます強まる」と警告.イラク・イスラム党首モハセン・アブドルハミドは「米軍は即時攻撃を中止し,ファルージャから撤退することを要求する.さもなければ我々が統治評議会から撤退する」と述べる.

4.29 ファルージャの米海兵隊,一部撤退を開始.イラク駐留米軍は撤退の意思のないことを強調.旧フセイン軍幹部を中心に「ファルージャ防衛隊」を組織し,管轄下に置く.

4.30 1ヶ月近い包囲攻撃で,市民約700人が死亡したとされる.米兵の死者は少なくとも130人に上る.イラク戦争開始以降の米兵の死者は740人を超える.

6.19 米軍,ザルカウィ派幹部がファルージャ市内に潜伏しているとし,空爆を開始.

ザルカウィ 1966年、ヨルダンで生まれる.89年に対ソ戦参加のためアフガニスタン入り。その後、武装組織を結成した。
イラクでの数々の外国人誘拐・殺害やテロ事件の首謀者とされ、米政府はウサマ・ビンラーディンと同額の2500万ドルの懸賞金をかけて行方を追っている。
ザルカウィ容疑者の過去の行動や各種報道から浮かび上がってくるのは、徹底した過激さ、非寛容性だ。今年6月の韓国人人質殺害の際に顕著だったように、イラク駐留部隊の撤退要求が実現しなければ、即座に人質を「処刑」することをためらわない。むしろ、こうした要求を人質殺害のための「手順」と位置づけているかのようだ。
同容疑者は拉致した外国人を殺害するのが「当然」であり、異論の余地があるとすれば、首を切り落とすか射殺するかなどの「殺害方法」だけだという.

 

総攻撃作戦に到る経過

9.20 武装勢力が実質的に支配するファルージャを巡り,暫定政府と市民代表(武装勢力側)との停戦交渉が始まる.

10月初め 米軍,武装勢力の支配するサマッラ(バグダッド北方約100キロ)を制圧.下旬に入って自爆攻撃など武装勢力側の反撃が始まり、再び不透明な状況に陥いる。

10月26日、イラク北部モスルで爆発した車のまわりに集まった人たち。米軍は同市中心部で別の自動車爆弾の情報を得て、爆破前に周辺の安全を確保していた=AP

10.08 米軍がファルージャを空爆.地元の病院医師はロイター通信に「11人が死亡し、17人が負傷した」と語る.AP通信は、死者のなかには結婚式をあげたばかりの花婿が含まれていたと伝える.

10月初め ファルージャ住民に,「米大統領選後に米軍が総攻撃を始める」とのうわさ.町を出る人が相次ぐ.武装勢力は市街戦に備えた拠点をあちこちに築き、町は異様な雰囲気に包まれる.

10.12 イラクのナキーブ内相、6月から9月までに92件の自爆による攻撃やテロが発生し、イラク人560人が死亡、1200人が負傷したと発表.また治安機関の中に武装勢力の協力者がいると言明。警察や国家警備隊、軍などへの1回の攻撃で500ドル(約5万3000円)が武装勢力からもらえるうえ、殺害に成功すればさらに成功報酬が出ていることを明らかにした。内相は「わが治安部隊は、テロに対抗するには装備も貧弱で訓練も不十分だ」と述べた。

10.14 米軍とイラク国家警備隊の合同部隊が,夜から未明にかけてファルージャを波状攻撃.5人が死亡、11人がけが.「ラマダン(断食月)中に武装勢力の攻撃が増える」とみての先制攻撃とされる.

10.15 暫定政府とファルージャ住民代表との停戦交渉が決裂.住民らは,アラウィ首相が「テロリストのザルカウィを引き渡さなければ攻撃せざるを得ない」と発言したことに対し,「いない人間は渡しようがない」と反発.

10.15 暫定政府と停戦交渉をしてきた住民代表が,家族とともにファルージャを出ようとしたところを米軍に拘束される.
 

ファルージャ攻撃に向け
演習を行う米部隊

10.19 イギリスの国際戦略研究所(IISS),年次報告書「ミリタリー・バランス04−05」を発表.「イラク戦争後にテロ脅威は増大した」とする.

報告書の要旨: イラクには現在、1千人の外国人テロリストが活動している.米国はイラク戦争によってアラブ世界の現状打破を目指したが、短期的にはテロリストを増やし、国際テロ組織アルカイダの狙いを強化する結果になった。イラクの多国籍軍は、安全を確保するのに十分な駐留兵力を持たず、イラク軍・警察が治安を担う水準に達するには5年程度かかる.イラクの安定化には(1)イラク軍・警察の早期組織化(2)政府の行政能力の早期回復(3)抵抗勢力の政治プロセスへの参加促進の3点が重要だ.
アルカイダ組織に関しては,幹部30人のうち半数と、組織メンバー約2千人が殺害されるか拘束された.しかしアルカイダの影響を受けたメンバー1万8千人が60カ国以上に潜伏し、半ば自主的に活動しながら、幹部から作戦や物資の支援を受けている.

10.20 米軍がファルージャを空爆.テロリストの拠点となっている建物2棟を破壊したと発表.その後,空爆で破壊された建物の下から、夫婦2人と子供4人の計6人の遺体が発見される(ロイター通信).交渉開始からこれまでに少なくとも70人が,空襲により死亡、130人以上が負傷.

10.20 イスラム聖職者協会,決議を採択.@我々はイラク国民が占領に対して戦う権利を持つと考える.Aアラウィ(首相)は,全責任を負うことになる.B我々は、もしも国土が同胞の血によって汚されるなら,この選挙をボイコットする.C国連事務総長と安保理に対し,大量殺戮に反対することを求める.Dアラブ諸国の各大統領に,沈黙をやめるようもとめる.E我々はイスラム諸国会議機構と世界イスラム連盟などがなぜ沈黙を保っているのかと驚いている.

イラク・ムスリム・ウラマー協会は、日本のメディアにより「聖職者協会」と呼ばれている。しかし、イスラムには聖職者は存在しない。神と人間の隔絶性を強調するイスラムにおいては、聖なるものは神のみであり、両者を仲介する「聖なる人間・職業」は認められない。人間にできることは、ただ神や宗教についての勉強だけであって、ウラマーとはそのような「(宗教)学者」を意味する。無論、ウラマーはその学識から尊敬を集め、聖職者のような役割を礼拝や儀礼で果たすものの、妻帯や食事などの日常生活に一般人との区別は一切ない。それゆえ、「聖職者協会」という訳語は、イスラムに対する誤解を招く表現であると思う(松本弘氏)  (とは言うものの,とりあえずイスラム聖職者協会で統一)
 

10月末 アラウィ首相,「武装勢力が投降しなければ、軍事力で町を制圧する」と宣言.

10.25 旧イラク軍が貯蔵していた約350トンに上る高性能爆薬が行方不明になる.ニューヨーク・タイムズによれば,不明になったのはHMX(オクトゲン)やRDX(サイクロナイト)などから成る高性能爆薬で、航空機や建物を破壊する威力を持つ.

10.31 国連のアナン事務総長,ブッシュ・ブレア・アラウィに親書.治安回復の重要性は理解するとしつつも、「武力行使は特定住民の疎外感を強めるだけでなく、イラク国民にまだ占領が続いていると思わせる」とし,ファルージャ総攻撃が「国民議会選挙などイラク復興を困難にする」として、中止をもとめる.3カ国側は内政干渉だと反発している。11月5日付ロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。 

10月13日 朝日新聞   イラク首都中枢の「グリーンゾーン」で治安悪化
 
イラク暫定政府の大統領府をはじめとする主要官庁や、米大使館などが集中し、米軍が厳重な警備を敷いている通称「グリーンゾーン」と呼ばれる地域で、治安が急速に悪化している。9月にゾーン内で米国人の拉致未遂が2件起きたほか、10月にはカフェで爆弾が発見された。米英両大使館は、ゾーン内でさえ拉致の危険が出てきたとして、昼夜を問わずひとりで行動しないよう、自国民に警告している。
 グリーンゾーンは、広さ約10平方キロ。旧フセイン政権時代から、大統領宮殿や旧バース党本部など主要施設が集中する最重要地域だった。イラク戦争後は米軍が接収し、米英暫定占領当局(CPA)など、占領行政の中枢が置かれた。
 この地域内には旧政権時代から、約1万人のイラク人が居住している。その中には武装勢力の協力者もいるとみられ、米軍が捜索を続けてきた。
 こうした中、今月4日に「グリーンゾーン・カフェ」でTNT火薬を使った爆弾が発見された。ゾーン内で爆発物が見つかったのは、イラク戦後初めてだったという。このカフェは、米大使館のすぐ近くにあり、米軍関係者や米英系企業の社員、外交官らが頻繁に利用していた。
 一方、米紙USAトゥデーは、イラク人4人が9月初旬、グリーンゾーン内で米国政府職員2人の拉致を図ったとしてイラク警察に逮捕されていたと報じた。逮捕者には、イラク人通訳1人と、ゾーン内に事務所を置く外国企業で働くイラク人2人が含まれていた。拉致に成功すれば、ファルージャの武装勢力に売り渡される手はずになっていたという。
 さらに、別の米国人2人が9月下旬、車で近づいてきたイラク人に拉致されそうになる事件も起きた。
 こうした事態を受けて、在イラクの米英両国大使館は、ゾーン内であっても、昼夜を問わず単独行動は避けるよう自国民に警告する通知を出した。さらに、ゾーン内にある米兵らに人気の中華料理店2軒とピザ店1軒にも、今後は立ち寄らないよう求めている。
 ゾーン内で働いていたが、最近、市内のホテルに移った外国人女性(33)は「親米的だったゾーン内のイラク人住民が、最近は明確に反米を口にするようになっており、外国人が非常に居づらい雰囲気になっている」と話している。

 

10月30日朝日新聞  イラク民間人の死者「10万人以上」か
 
米イラク侵攻以来一年半で,一般市民の死者は推計10万人以上とする論文が,一流医学雑誌に掲載された.執筆したのは、米ジョンズ・ホプキンス大の公衆衛生学者グループ,掲載されたのは英国の「ランセット」誌.
 イラクの民間死者数の公式データはなく、これまで米英の非政府組織(NGO)「イラク・ボディーカウント」などが報道を基に約1万6000人と推計。今回の推計数は、これを大幅に上回った。
 研究グループは先月、イラクで無作為に抽出した33地域から各30世帯、計約千世帯を面接調査。家族構成や02年1月以降調査時点までの子供の誕生と家族の死亡、死亡日や死因などについて詳しく調べた。
 その結果、03年3月のイラク戦争開始後に、死亡リスクは平均で1.5倍高まったことがわかった。これをイラク全体で推計すると、新たに約9万8000人が死亡したことになるという。しかしこれは、激しい戦闘が続くファルージャ周辺を除いており、その点を考慮すると死亡リスクは2.5倍、推計死者数はもっと増える、としている。
 戦争が始まる前の死因は心臓まひ、脳卒中、慢性疾患などの病気が中心だったが、戦争開始後の死因は「暴力」によるものが多く、暴力による死者だけを比較すると、戦争開始後は戦前に比べ、58倍に達した。とりわけ米軍の武装ヘリなどの空爆による死者が目立った。米英軍に殺害された死者の多くは女性と子供だった。
 ランセット編集部は、論文掲載について、「調査は戦争が進行する中で実施され、一定の制約は避けられないが,戦争開始後に空爆による市民の死者が増加したという報告には説得力がある」とのコメントをつけた。研究者グループは、「さらなる検証が必要だが、空爆による非戦闘員の死者を減らすようにするべきだ」としている。
 

 

 

ファルージャ総攻撃作戦

ファルージャへ向かう米軍の車列が避難していく地元住民の車とすれ違う=5日、AP
ファルージャへ向かう米軍の車列が避難していく地元住民の車とすれ違う=5日、AP

11月1日 ヤワル大統領,「軍事力行使は馬にとまるハエを銃で殺すに等しい。流血は、サダム支持者や外国人武装勢力を利するだけだ」と述べ、大規模な攻撃に反対する姿勢を示す.

11.01 サマワの自衛隊基地にロケット弾. 地面に衝突した後、鉄製コンテナを貫通.コンテナは隊員の宿舎にしているものと同じ構造.

11.03 ハンガリーのジュルチャニ首相,イラクに派遣している約300人のハンガリー軍兵士を「05年3月31日までに撤退させる」と表明.来年1月の「選挙まで派兵することが我々の使命だが、それ以上続けることは不可能だ」と述べる。

 

 

11月05日

ファルージャ 

イラクのファルージャで空爆をうけ、壊れた建物に座るイラク人男性=AP
イラクのファルージャで空爆をうけ、壊れた建物に座るイラク人男性=AP

6日、イラク・ファルージャ郊外の基地に整列した米海兵隊員。1万人以上の米兵がファルージャへの総攻撃に備えている=AP
6日、イラク・ファルージャ郊外の基地に整列した米海兵隊員。1万人以上の米兵がファルージャへの総攻撃に備えている=AP

米陸軍第一歩兵師団・第31海兵遠征隊(海兵隊は沖縄から出撃した部隊)を中心とした,米軍6500人とイラク軍2000人が、ファルージャ包囲を完了.周辺の道路は完全に封鎖される。シャップ大佐は「(制圧作戦の)最終準備に入った。あとはアラウィ首相の命令を待つばかりだ」と述べた。

これに対し、1000―6000人と推定される武装勢力側は、市内に多数林立するモスクを地下通路で結び塹壕(ざんごう)化しているといい、地の利を生かした神出鬼没のゲリラ戦で、米・イラク軍部隊を長期消耗戦に引きずり込もうという作戦とみられる。同時に、爆弾を積んだ自動車による自爆攻撃で、米・イラク軍に対し最大限の人的犠牲を強いるもくろみだ(読売新聞)

米軍,45歳以下の男性が出入りするのを禁止する.女性や子供には退去を命じた.米軍の命令は拡声機やチラシで行われ、「従わない男性は拘束する」こととなる.

午後 ファルージャ郊外の米軍基地がロケット砲で攻撃され,米兵1人が死亡、7人が負傷した。

夜から未明 ファルージャに対し三日連続となる激しい空爆と地上からの砲撃.中心部の小規模病院が破壊され、ファルージャ中央病院の関連施設も損壊.民間人二人の死亡と七人の負傷が判明.救急車も出動できない状況で、正確な死傷者数は不明(ロイター).

 

バグダッドその他

イスラム聖職者協会(スンニ派)のファイディ報道官,「ファルージャ総攻撃の目的は無辜(むこ)の民のせん滅であり、これが実施された場合、イラクの宗教者は重大な決意をもって国民に選挙のボイコットを訴えることになる」と警告.

11.06 ザルカウィ一派,マーガレットを人質にとっている武装組織に対して「彼女が占領軍の共犯者であることが証明されない限り、我々は彼女を解放するように求める。そのような証拠があるというなら、ちゃんと公に発表するべきだ」という声明.彼女の身柄がザルカウィ側に引き渡された場合は「彼女が反イスラム的でない限り、解放する予定だ。真実のイスラム教徒であれば、女性や子どもを殺したりする事はない」と述べる.

 

アメリカと世界

11.05 ブッシュ大統領,国家安全保障会議(NSC)を招集。ファルージャ総攻撃に踏み切る.

5日 アラウィ首相,訪問先のブリュッセルで記者会見.「平和的解決の窓は閉ざされつつある」と述べ、ファルージャ市民の大半はすでに町を出たと指摘.米軍の総攻撃に事実上の同意.

アナン事務総長,書簡の存在を認めたものの,「内容を明らかにすべきでないものだ」とコメントを避けた。書簡の存在がメディアに意図的に漏らされたことに不快感も示した。パリー英国連大使は「イラクにいない人たちが、治安に対するイラク人の懸念を過小評価するのは簡単なことだ」と皮肉を述べた。ワシントン、ロンドン、バグダッドの政府高官もアナン書簡を批判するコメント.

自民党の加藤紘一、古賀誠両元幹事長と亀井静香元政調会長が,東京都内のホテルで会談.12月14日で期限が切れるイラクへの自衛隊派遣の延長に際しては慎重な検討が必要であるとの認識で一致.サマワの治安情勢や,自衛隊のこれまでの活動内容を詳しく検証する必要があるとし、派遣を延長する場合も撤退時期を明確にすべきとする.今年1月、衆院本会議での派遣承認案件の採決の際、加藤、古賀両氏は棄権、亀井氏は欠席した。

 

11月06日 

ファルージャ

夕方 ファルージャの北部郊外で激しい戦闘.

夜 米軍,ファルージャ市内に過去半年で最大規模とされる空爆.500ポンド(約230キロ)爆弾5発が使われ、市民12人が死亡.アルジャジーラは、空爆で崩壊した病院の映像を放送.

アメリカと世界

アナン事務総長がブッシュに当選を祝う電話.話のなかでファルージャ情勢にも言及。「武力が必要な時もあるが、国民議会選挙の準備という重要なときには、武力行使がむしろ情勢を不安定化することもあり得る」と語ったという.

 

11月07日 

ファルージャ

8日、イラク中部ファルージャの病院の外に立つ突入部隊の隊員(暗視装置を使ったテレビ映像)
8日、イラク中部ファルージャの病院の外に立つ突入部隊の隊員(暗視装置を使ったテレビ映像)=AP

イラク中部ファルージャの病院で8日、拘束したイラク人男性に目隠しをする突入部隊の隊員
イラク中部ファルージャの病院で8日、拘束したイラク人男性に目隠しをする突入部隊の隊員=APイラク中部ファルージャの病院で8日、拘束した男性の足をつかんで動かす突入部隊の隊員

昼 米軍のシャップ司令官,「交渉の余地はなく、総攻撃以外に選択肢はない」と述べた。同司令官はアラウィ首相の命令が出しだい、実行するとしている.

午後 ファルージャ周辺に展開する米兵とイラク治安部隊は二万人規模に達する.米軍がファルージャ周辺の道路を完全封鎖.ファルージャ東部を断続的に空爆.

午後 ファルージャ周辺の宿営地を訪れた暫定政府のシャラン国防相は居並ぶイラク軍兵士を激励するとともに、ファルージャ作戦が決して「内戦」ではなく、イラクからテロリストを一掃する“祖国防衛”の戦いであることを強調した。現在のイラク混乱の構図が「親米イラク人」対「反米イラク人プラス外国人義勇兵」という泥沼の内戦構造に明確に移行することを懸念しての発言だ。今回の作戦に参加しているイラク軍は陸軍5個大隊、特殊作戦部隊、警察コマンド大隊、国家警備隊で構成され、総勢7000人前後とみられる。

ファルージャの人口は包囲前まで約30万人。米軍は人口の1、2割が残っていると発表.米CNNテレビは,現在も約5万人が残っているとの見方を伝える。

イラク・イスラム党の同地幹部(赤旗): 現在、上空には米軍の戦闘機が昼夜を問わず展開し、同市の北から南まで爆撃を繰り返している.2/3の住民が市外に避難したが、女性や子ども多数がとどまっており,総攻撃が強行されればその被害は計り知れないものになる.住民のなかでザルカウィを目撃したものなどない。外国人の武装勢力も少数にすぎず、総攻撃の理由はない.攻撃の真の理由は、イラク中から反米の声を消すため、抵抗の象徴であるファルージャをつぶすということだ.ブッシュ再選はムスリムのさらなる流血を意味し、ファルージャ住民がその最初の犠牲になろうとしている.
スンニ派の宗教指導者(赤旗): ファルージャに残った住民は食糧を得るための外出もできない.しかし、住民は米軍の圧力に屈したりはしない。多くの青年が銃を手にし占領軍に抵抗するため準備している。これは正当な抵抗だ.

夕方 ファルージャの東部と西部で,米軍と武装勢力が激しい銃撃戦.

夜 米・イラク軍地上部隊,総攻撃に先立つ前哨戦として,市西方のユーフラテス川にかかる橋2か所を制圧.橋のうち1つは、昨春、武装勢力に殺害された米民間人2人の遺体をロープでつり下げた場所。

未明 ファルージャ総合病院が占拠される.

APなど海兵隊に代表取材で同行している記者によると、米軍は砲撃や武装ヘリコプターで病院に攻撃を加えた。その後,米海兵隊のトラックに乗ったイラク治安部隊の第36奇襲大隊(Shahwanis大隊)が到着した.海兵隊は、病院の周辺の安全確保と警備を担当したが、病院内に入ったのはイラク兵だった。数百人の部隊が,海兵隊装甲車の護衛のもと、病院の2カ所の入り口のドアをけ破って侵入.銃撃戦もなく占拠した。

イラク軍のShahwanis大隊は,解体されたサダム・フセインの軍隊で兵役を務めていた兵士たちからなるエリート部隊。ペンタゴンから直接に給料をもらい,8月から市街戦向けの訓練を受けてきた.同大隊のうち138名はファルージャで戦うことを拒否したとされる.

イラク軍特殊部隊は病院内を部屋ごとに捜索した後、戦闘員年齢の男性約50人を拘束した。彼らは後ろ手に縛られ、床に腹ばいにさせられた。約半数はのちに解放された.病院関係者は「米軍は『病院から離れると撃つぞ』と言っている」とAFP記者に話し、病院を出ようとした救急車が撃たれたと証言した.

占拠が終わったあと、病院周辺で小火器の発砲音が散発的に聞こえたという。(写真を見ると術衣を着た病院スタッフなどがふくまれている.おそらくこの人たちが,別な場所で虐殺された可能性がある)

病院はファルージャ市内を貫流するユーフラテス川の西側にある。10月中旬に始まった米軍による市包囲と空爆に関連して「死傷者の大半は民間人」などと発表してきた。米CNNテレビは病院占拠の目的について「反米宣伝をやめさせるため」との米軍筋の情報を報じた。

カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは,病院関係者の話として,少なくともイラク人9人が死亡、16人が負傷.また米軍側も海兵隊員二人がブルドーザーが川に転落したため、水死と報道.

 

バグダッドその他

昼 イラク暫定政府,北部クルド地区を除くイラク全土にたいし,60日間の非常事態を宣言.令状なしの家宅捜査や、外出禁止令などを住民に課し、住民の行動に著しく制限をつけるもの(JVC佐藤真紀さん). アラウィ首相は,「来年1月に選挙を実施できるようテロリストを排除し、治安を回復する必要がある。非常事態宣言は我々が真剣であることを示す強いメッセージだ」と語る.

夕方 バグダッド市内では午後6時以降の外出が禁止される.すでに7月から発効している「国家安全法」に加え,非常事態が宣言されたことで,治安当局による令状なしの家宅捜索や身柄拘束も可能となる.また治安維持活動は事実上,警察活動もふくめ多国籍軍に委ねられる.

ファルージャ北西約150キロのハディーサで,武装勢力200人が警察署を襲撃、武器を略奪し,警官計22人を殺害.隣接するハクラニヤの警察署では、イラク西部の治安を取り仕切る准将が殺害された。中部ラティフィヤで国家保安隊員12人が武装勢力に拉致、殺害される.

 

アメリカと世界

7日 ポルトガル,11月12日までの駐留期限を90日間延長し、議会選挙までは駐留すると決める.ポルトガルは、共和国警備隊120人などをイラク南部ナシリアに昨年11月から派遣している.

 

11月08日 

ファルージャ

イラク中部のファルージャ郊外で8日、配置につく米海兵隊=AP
ファルージャ郊外で8日、配置につく米海兵隊=AP

イラク中部のファルージャで8日、迫撃砲や小型武器を使って米軍を攻撃する武装集団=AP
ファルージャで8日、迫撃砲や小型武器を使って米軍を攻撃する武装集団=AP

午前 米軍,F16戦闘機やAC130攻撃機を動員し,ファルージャ北西部に500ポンド爆弾四発を投下するなど激しい空爆.

午前 米軍,ファルージャ近郊で車両からアラビア語で「15歳から50歳までの男性の出入りを禁止する」と報告.女性や子ども、老人は市街地から出ることはできるが、治安が回復するまで戻ることは許されず.事実上の最終退去命令.

午前 米軍,イラク人犠牲者の埋葬現場に爆撃.アラブ首長国連邦の衛星テレビ・アルアラビアによれば,クラスター爆弾を投下するなどの攻撃で集まっていた住民6人を死傷.

夕方 総攻撃開始の数時間前、イラク暫定政府のアラウィ首相がファルージャ近くの米軍基地を訪れる.米兵やイラク兵士に対し「ファルージャの人々は武装勢力に人質となっている。あなた方の任務はそれを止めることだ」と激励.

夜 ファルージャに対す総攻撃を開始.激しい空爆のあと,米軍約6500人とイラク政府軍約2000人が同市の北東部と北西部6ヵ所のポイントから進攻.

イラク国家警備隊の主力はバドル旅団から形成される.これはイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の武装部門である.SCIRIは2003年春のイラク侵攻作戦ではアメリカ軍に加わっていた(イラク・レジスタンス・レポートによる).

夜から翌未明 米軍,武装勢力の拠点とされる北西部のジャラン地区などを集中的に攻撃。砲部隊と戦車による砲撃を加えながら進攻.米軍部隊は自爆攻撃や仕掛けられた爆弾などを警戒しながら、慎重に兵を進める.武装勢力は入り組んだ路地に潜み抵抗.海兵隊4000人は北東部アスカリ地区に進攻。

バグダッドその他

昼 アラウィ首相が記者会見.ファルージャの武装勢力掃討のため、駐留米軍とイラク治安部隊に対し、作戦開始を許可したことを明らかにする.また昨夜のファルージャ総合病院への突入について「イラク治安部隊が武装勢力側38人を殺害した」と語る.米軍報道官はこのときは死者は出なかったと述べたが,のちに武装勢力42人が死亡したと発表(この辺はすごく怪しい.市民を虐殺したのでは?).

アラウィによる緊急措置の内容: @ファルージャ,ラマディでの夜間外出禁止令,Aバグダッド国際空港での民間機発着を48時間禁止,Bヨルダンやシリアとの国境を閉鎖.生活必需品を運ぶトラック以外の出入りを禁止.

午後 軍のジョージ・ケーシー司令官(米陸軍大将),バグダッドからテレビ記者会見.ファルージャの包囲を完了したと発表.「ファルージャにあるテロリストや武装勢力の安全地帯を一掃し、イラク暫定政府の支配を回復するため」の総攻撃を開始すると宣言.司令官はファルージャ一帯で暗躍する武装勢力について、「つかみどころがなく、小規模で行動し、追跡が難しい」とも述べた。さらに「武装勢力の指導部にも出入りがあり、常に変化している。ただ、指導部の主要なメンバーのうち何人かはまだ(ファルージャに)残っている」と述べるにとどまった。



アル・ファジュル(夜明け)作戦: 参加米軍の規模は陸軍・海兵隊計約1万.これにイラク軍は約2000人以上が参加し,最大1万5000人が作戦に加わるとの見通し.これは一都市に対する戦闘では最大規模となる.
いっぽう,武装勢力は3000人規模との観測.また民間人については,「平時は20万人超で、うち5割から7割が避難済みと推定している」と述べ、まだ10万人以上の市民が残っている可能性を示唆する.また作戦期間については,「ここ数日間は厳しい戦いが続く.ベトナム戦争以来最も激しい市街戦となるだろう」との見通しを示す. 

午後 イラク暫定政府のシャラン国防相、明日にも武装勢力側との本格的な戦闘が起きるとの見通しを明らかに.

夕方 サドル派のアブドルラジ師,「ファルージャへの攻撃は全イラク国民に対する攻撃であり,イラク全土の治安情勢をさらに悪化させるものだ」と厳しく批判。国家保安隊や軍および警察に対し、「占領軍を支援するな」と呼びかける.スンニ派の「イスラム聖職者協会」も,「米軍の攻撃に加わることはイスラムに反する」との宗教令(ファトワ)を出した。

毎日新聞の小倉孝保シリア特派員: 9日夜は「ライラ・アルカドル」と呼ばれ、コーランを授かった日として,断食月(ラマダン)の中でも最も重要とされる夜である.この夜の直前を米軍が総攻撃開始の時期に選んだことは,たたかいに宗教的意義付けを与えることになる.イスラム原理派の怒りに油を注ぐ結果となり,周辺諸国などからも激しい批判が生まれる可能性が高く,米軍と政府軍がイスラムを敵にする可能性も出てきた.

夜 ザルカウィを名乗る人物が、米軍に対する徹底抗戦を呼び掛ける声明をウェブサイトに掲載.「戦争が始まった。聖戦の呼び掛けがなされた。あらゆる苦悩を受けているが、敵は、自分たちが損害を受けるような事態になることが分かるだけだ。あらゆる力を結集して抵抗しよう。辛抱すれば、神の助力により、数日で勝利が来る」

写真

ファルージャを攻撃する米軍

 

バグダッドその他

夜 バグダッド市内の2か所のキリスト教会が自動車爆弾による攻撃を受け、3人が死亡、42人が負傷.「キリスト教対イスラム教」という構図を作るための,テロリストの策動と見られる.

夜 バグダッド市内西部のヤルムーク病院付近に駐車中のイラク警察の車列に迫撃砲弾2発が撃ち込まれ警察官3人が死亡、15人が負傷.ファルージャ攻撃に対する武装勢力側の報復と見られる.

夜 ファルージャ西方のラマディなどでも,米軍に対する自爆攻撃や爆弾事件が相次ぐ.AFPは女性や子どもを含む少なくとも14人が死亡、60人以上が負傷したと伝える.

 

アメリカ+世界

ラムズフェルド米国防長官が記者会見.完全制圧まで攻撃を続ける決意を強調.民間人犠牲者については、米軍が市街戦に備えて十分な訓練を受けていることや、精密誘導兵器を使うことで最少に抑えられると主張したが、現在市内にいる民間人の数については「だれも分からない」と述べる.

ラムズフェルド談話の要旨: イラクの一部を暗殺者に支配させるわけにはいかない。この連中は人殺しだ。人の首を切り落とすようなやつらだ.米軍はイラク暫定政府の判断と依頼に基づいて,「法と秩序を回復する手助け」を行うために攻撃に従事している.政治的な解決を求めてあらゆる説得が試みられたが、ファルージャの犯罪者は暴力の道を選んだ.総攻撃が成功すればイラク国内のテロリストにとって大きな打撃となるだろう.
イラクが自由で平和な社会になるには、テロリストやサダム・フセイン政権の残党が支配する地域が一つたりともあってはならない.1月の国民議会選挙を実施するために,総攻撃は最後の手段であり不可避である.(4月の時のように)攻撃を途中でやめることは全く考えていない.

記者会見に同席したマイヤーズ米統合参謀本部議長は,「我々は、ファルージャだけでなく、到るところでテロとの戦いを制するだろう.米軍に関する限り、訓練は行き届いており、精度の高い武器もある。多数の民間人が殺されることはない」と語り、作戦成功に自信を見せた。

9日、ファルージャ市内で戦闘する米海兵隊(ビデオ映像から)=ロイター
 
9日、ファルージャ市内で戦闘する米海兵隊

 

パウエル米国務長官、周辺国であるエジプト、トルコ、サウジアラビア、ヨルダンと、多国籍軍で重要な位置を占めるポーランドの各国外相に電話し、ファルージャ総攻撃に対する理解を求める.バウチャー国務省報道官によれば連絡の内容は,「イラク暫定政府が政治的解決のためにあらゆる努力を重ねたが、軍事作戦以外に方法がなくなった」との趣旨.さらに米国主導ではなく暫定政府の判断であることを強調.

午前 細田官房長官,イラク暫定政府から非常事態宣言を出すことを「特に事前に聞いていない」と答える.

昼 小泉首相,「(非常事態宣言は)選挙を実現させようというイラク政府の考え方と、それをなんとか妨害したいというテロリストとのせめぎ合いでしょう」との見方を示し、自衛隊が派遣されている南部サマワについて「(非戦闘地域であるとの認識に)変わりありません」と述べる.また12月14日に期限を迎える自衛隊の派遣延長問題への影響に関しては「12月14日が近づいてから、総合的に情勢を判断して決めなきゃいけないと思う」と述べる.

 

11月09日 

ファルージャ

煙が立ちのぼるファルージャの鉄道駅。米軍とイラク軍、市の中心部に迫る

 

煙が立ちのぼるファルージャの鉄道駅=AP

 

イラク兵 

 

爆撃を受けるファルージャから昇る黒煙を見ながら、鉄道を護衛するイラク兵=9日=AP

 

朝 米軍の市内北部掃討作戦が明らかになる.ジャラン地区では少なくとも4発の900キロ級爆弾が投下された.戦車も激しい砲撃.海兵隊員がモスクや学校など複数の建物に突入.ジャラン中心部のモスクが爆撃され、10人が死亡.

朝 ロイター,AP通信によれば,市北西部で激しい市街戦.武装勢力は建物の陰などから戦車部隊にロケット弾を発射するなど激しく反撃.米兵3人が死亡、14人の負傷者が出た。

朝 カタールの米中東軍報道官、無人航空機「プレデター」が,武装勢力の持つ対空砲を壊滅させたと語る.プレデターには,殺傷能力の高いサーモバリック(熱圧)弾頭を搭載した空対地ミサイル「ヘルファイアー」が搭載され,遠隔操縦で発射される.

朝 イラク軍部隊が鉄道ターミナルを制圧する.これに対し武装勢力側はロケット弾数発で反撃. 

午前 ユーフラテス西岸の米軍部隊,渡河作戦を開始.武装勢力の反撃で海兵隊員2人が死亡.米軍の援護を受けたイラク軍部隊が,ファルージャ北部の鉄道ターミナルの制圧行動.

午前 米軍当局者は過去十二時間の戦闘で、ファルージャとその周辺で米兵三人が死亡、十四人が負傷したことを明らかにした。また米軍ヘリコプター1機がミサイルで被弾、パイロットが負傷した。CNNは当局情報をもとに,武装勢力側に20―25人の死者が出ていると報じる.

昼 米軍とイラク軍はファルージャへの進攻を始めた8日夜から約1キロ前進.市中心部を東西に貫く幹線道路まで進軍.武装勢力の抵抗は9日午前までにやむ.

9日、ファルージャの駅で米兵に拘束されるイラク人=AP
9日、ファルージャの駅で米兵に拘束されるイラク人=AP

午後 米軍報道官,この日の戦闘で「市の北部3分の1を制圧し,武装勢力側の42人を殺害した」と発表.「武装勢力の抵抗は予想を下回った」と述べる.米陸軍第1歩兵師団タスクフォース2−2のニューウェル中佐,これまでに武装勢力90人前後を殺害したと話す.

午後 イラク軍幹部は武装組織指導者のヨルダン人、アブムサブ・ザルカウィがファルージャ市にはいない可能性を示唆.

夕方 米軍部隊,市街地の3分の1制圧.市街地を東西に貫く幹線道路に達する.米軍当局者は米軍10人、イラク軍2人の計12人が死亡、22人が負傷したことを確認.

11.09 イラク多国籍軍司令官のメッツ米陸軍中将,ビデオ会見.「これまでのところ、予定通りあるいは予定より早く作戦目的を達成している」と説明。米軍とイラク軍の損失は「予想より軽い」とした上で、武装勢力側の死傷者数は「予想よりやや多い模様だ」と述べた。いっぽうでザルカウィ幹部について「すでにファルージャを離れていると考えるのが妥当だ」と述べ、拘束に失敗したようだと認める.ニューヨーク・タイムズは、テロ組織の戦闘員や幹部らの一部は総攻撃開始前に同市を脱出したと報じる.

市内の状況

町の被害の様子@ AP通信とロイター通信は、市内の診療所の医師の証言をもとに,市民ら12人が死亡し17人が負傷したと報じるが、死傷者の総数は分かっていない。BBCの記者は、発電所などへの空爆により電力や水道などライフラインが寸断されているほか、住民は攻撃を恐れ、屋内に閉じこもっていると報道.残っている市民数万人の健康状態が懸念される。

町の被害の様子A 何百発もの爆弾や砲弾がずっと爆発し続けている.市の北部は炎に包まれている。火と煙が見える。街は地獄のようになってしまった.米軍は市内の電気を止めており、夜には街は暗闇に包まれた。さらに米軍は、攻撃開始の前に、ファルージャの水道供給を切断した.多くの店も閉まっているため、食糧も不足している。時折、覆面をした武装勢力の一団が通りを駆け抜け、狭い通りから米軍に向けて発砲している(AP通信)

11.09 午前5時30分,米軍戦闘機がファルージャ中央保健センターと隣接する医薬品倉庫に3発の爆弾を投下.10歳未満の少女2人と少年3人を含む35人の患者が建物の下敷きとなり死亡した.さらに15人の医者と4人の看護士と5人の保健介護スタッフが殺された.

この市内中心部にある平屋建ての診療所は,米軍が総合病院を制圧した後、その代替医療機関として急遽診療を開始したばかりだった.市内における主要な患者の受け入れ先となっていた(他に小さなイラク軍の診療所1ヵ所).
総合病院の医師で、米軍の制圧時に逃れたサミ・アル=ジュマイリさんは,次のように語った.「ファルージャには外科医がひとりもいなくなってしまった.爆弾が落ちた時,診療所には約60人の患者がいた.その多くは米軍の空襲と攻撃で重傷を負っていた.救急車は米軍に撃たれるし,医者は怪我をしている。自宅にいるままの民間人負傷者が何十人もいるのに,動かすことができない.負傷者を救援に行った民家で,13歳の子供が、私の腕の中で息を引き取ったばかりだ」(ロイター通信,AFP通信,新華社通信など)

11.09 ファルージャ総合病院のラフェ・チアド院長,「米軍当局は、負傷者を治療するために医者や救急車、医療器材、医薬品をファルージャに運び入れたいという要求をすべて却下した.現在ファルージャの残る唯一の医療機関は、多くの地域から遠くにあり、また米軍狙撃手と銃撃戦に会うことを恐れて、ほとんどの人はそこに行けない状態である」と語る.チアド博士によると、173床あるファルージャ総合病院はカラッポのままである(ネーション紙).ファルージャ総合病院のハミッド・サラマン,救急車が米軍の発砲の標的となり,運転手が殺され救急医療士が負傷.救急車に乗っていた5人の患者も殺されたと述べる.(AP通信)

 

 

 

11.09 現地の医師アル=アニ,「人々は死んでいっています。負傷し、食べるものも飲むものもなく、ほとんど全く医療を受けられないからです」と博士は言う。「米軍兵士が手渡す少量の食料と水の配給では人々に行き渡りません」と語る.ある病院スタッフは、人々の中で下痢が急激に広まっていると述べた。子どもたちと年寄りが、伝染病や餓え、脱水症状で毎日ますます沢山死んでいる.(ネーション紙)

11.09 アムネスティ・インターナショナル,ジュネーブ条約のもとでは「医療関係者は、倫理的責任である診療を行うことをむりやり阻止させられてはならない」ことになっていると指摘.

11.09 国連人権高等弁務官,ファルージャにおいて「民間人と戦闘員を保護するために作られた戦争の規則に対する侵害」を調査し、実行者を裁きにかけると述べる.

11.09 ヒューマンライツ・ウォッチ,「この病院が軍事目的で使われていたこと、また対応が相応のものであったことを立証する責任は米国政府にある。仮に病院の中に狙撃手がいたとしても、病院を破壊することは決して正当化されない」と述べる.

バグダッドその他

11.09 首都バグダッドでは米軍管理区域グリーンゾーン周辺で4発の迫撃砲攻撃.アラウィ首相は、バグダッド地域に午後10時半から午前4時までの夜間外出禁止令を発令.

11.09 バグダッド南西ドーラ地区で武装グループ約50人が警察署を襲撃、警官との間で数時間にわたり激しい銃撃戦.

11.09 スンニ派主要政党のイラク・イスラム党,暫定政府からの離脱を決める.モフセン・アブドルハミド書記長は「ファルージャ攻撃と罪のない市民を苦しめる不正義に抗議する。米軍を助け、イラク人の流血を認める暫定政府の政策は無責任だ.我々は攻撃する側にとどまることはできない」と声明.

11.09 イスラム聖職者協会,国民議会選挙のボイコットを発表.イラク国民に、ファルージャに対する食料や医薬品の救援を訴える。全ての警察と国家警備隊に対して、アメリカに従わないように、アラウィの言葉を聞かないようにと呼びかける.ハリス・アル=ダリ事務局長は,「イラク国民は国を守るために米軍の占領に対して抵抗する権利がある」との声明を発表。

イスラム聖職者教会: スンニ派法学者の8割を組織している.同委員会は、バグダッドなどで市民を殺傷する無差別の自爆テロは拒否するが、イラク各地で起きている米軍への攻撃は「合法的な抵抗」と解釈している。

11.09 サドル師の広報担当者,カタールのアルジャジーラ放送を通じ,「国家警備隊やイラク軍は、米軍を助けるファルージャ攻撃に参加するな」と呼びかける.

 

11日、イラク中部ファルージャの中心部で、イラク人を拘束した米海兵隊員=AP

11日、イラク中部ファルージャの中心部で、イラク人を拘束した米海兵隊員=AP


11.09 夜 アラウィ首相のいとこのビジネスマン(75)夫妻,「聖戦支持者集団」を名乗るグループにより誘拐される.

 

スンニ三角地帯

11.09 北部のイラク第三の都市モスル(人口170万)で,武装勢力が市内数カ所でほぼ同時に警察署や米軍車両を攻撃.少なくとも警察官ら5人が死亡。モスルの米軍拠点も砲撃され米兵2人が死亡.

11.09 中部バクバ周辺で警察署2カ所が,自動小銃やロケット弾で武装した集団に襲撃され、警官など18人が負傷.ロイター通信は警官ら45人が死亡と報道.「イラクの聖戦アル・カーイダ組織」がウェブサイトに犯行声明.

 

アメリカと世界

 11.09 午前 細田官房長官が記者会見.「基本的には,米政府が,新政権樹立に障害となる事件が続くことに対応していると理解している.しかしそのための手段、戦術・戦略の内容は承知しておらず、これをとやかく言うことはない.実際にどういうことが行われるか,またその効果に関してはこれから見ていかなければならない」と発言.攻撃への支持を明言せず。また米側からの事前説明は「あったとは聞いていない」と発言。

11.09 大野防衛長官,米・イラク軍によるファルージャ攻撃について「新しい国造りの第一歩を確実にする意味で評価している。治安が回復し、イラクの国造りにつながることを期待したい」と述べる.

11.09 町村外相,「法律上は、『国または国に準じる組織』と戦争状態に入る地域を戦闘地域と言っている。テロリストは,この定義には当たらないため、イラクは戦闘地域には当たらない」と述べる.(ブッシュはテロリストとの戦争だといっているが)

昼 小泉首相,ファルージャ総攻撃について「成功させなきゃいけない。治安改善がイラク復興のかぎですから。テロリストグループが混乱させようと動いてますからね」と述べ、支持を明言した。さらに首相は武装勢力制圧の見通しについて「そういうふうに持っていかないといけない」と語った。

11.09 民主党の岡田代表,「退避していない一般市民もたくさん残っている。街ごと攻撃を加えるというやり方が適切かどうか。全面的賛成とはとても言うべきではないと思う」と述べ首相発言を批判.共産党の志位委員長は同日の会見で「米国がやっているから支持を与えるという、情けない対米追従の姿勢がむき出しになった」と述べる.

11.09 アラブ連盟のムーサ事務局長,「このような方法でファルージャを爆撃することなど,誰も受け入れるわけにはいかない.ファルージャへの侵攻を即時中止し,対話と合意の路線に立ち戻らなければならない」と声明.

11.09 スコット・リッター元査察官,「ファルージャは決戦などではない.問題はゼリーのように,握り締めようとすればするほど,指の間からすり抜ける」と論評.

 

11月10日 

ファルージャ 

 

燃え上がる石油パイプラインのそばを進む米軍の装甲車=AP
米軍とイラク軍が総攻撃を続けているファルージャの郊外で10日、燃え上がる石油パイプラインのそばを進む米軍の装甲車。前夜、武装勢力のロケット弾による攻撃で燃え上がった=AP

 

 

11.10 米軍,ファルージャ中心部の市庁舎と警察署を占拠.海兵隊の報道官は「ファルージャの7割を掌握した」と語る.

11.10 イラク軍幹部,「武装勢力が人質を殺していた家が見つかった。黒い服や数百枚のCD、人質の記録が残っている」と述べる.

11.10 夜から未明 米軍とイラク軍,ファルージャ中心部で武装勢力の抵抗に遭い、激しい市街戦.武装勢力はモスク(イスラム礼拝所)に立てこもり、銃や小型ロケット弾で反撃。米軍幹部は「抵抗は根強いが、予想していたほどではない」と語った。

ファルージャは「モスクの町」といわれるほど、その数が多い。イラク暫定政府のアラウィ首相は10日、「武装勢力がモスクを悪用している」と非難した.アルジャジーラ放送は,市内のモスクの半数が破壊されたと報道.モスクは安全だと考えて避難した住民が殺害され,遺体はモスクの中に放置される.

11.10 アルジャジーラ,武装勢力が「ファルージャでイラク国家警備隊員20人を拘束した」と主張するビデオ映像を放映した。覆面の男たちが制服姿の隊員らに銃を突きつける姿が映っている。

 

市内の状況

10日 ジョランから避難してきた男性の話――米兵は建物の屋上に上がり,そこから老人,子供,女性の区別なく,動くものすべてに銃撃を加えました.「我々は民間人だ」と告げる暇さえ与えませんでした.近所の住民の死体を埋葬していた際も,米軍がその現場まで銃撃を加え,3人が負傷しました.(赤旗)

10日 市内に残ったパドラーニ記者がBBCに電話レポート.

昨晩,米軍が引き上げた後,町の様子を見て歩いてみました。どこに行っても,壊れた建物や遺体を目にしました――路上で殺された地元住民や戦士です。ハスビヤー地区では,私が数えただけでも6体の米兵の遺体が転がっていました。米軍が市の70パーセントを制圧しているというのは,誤解につながるのではないかと思います。というのは,戦士たちは常に居場所を変えているのですから。
戦士たちは私に,死ぬまでアメリカ人に抵抗する覚悟だと言っていました。戦士たちは,自分たちが戦っているのはファルージャのためだけではない,イラク全体のためでもあるのだ,と言っています。最後に勝つのは自分たちだという自信を,彼らは示しています.

10日 ワシントン・ポスト,米軍が黄燐弾を使用している可能性があると報道.黄燐弾は着火すると水で消火することができない.イラク人医師たちは,病院に運び込まれている死体の皮膚が溶けていると報告している.(米軍がナパーム弾を使用している可能性はかなり高い.白燐弾に関してはナパーム弾を誤認している可能性もある)

米軍が使っているM-15黄燐榴弾は,爆発半径は17メートルあって,燃焼温度は5000度だ。身体に付着した破片を取り去ると,空気に触れて自然発火する。だから取り去る前に怪我をした箇所を水につけなければならない。破片はすぐに水にひたさなければならない。黄燐は酸素の少ない水に触れるとホスフィンを出すが,これがおそろしいガスだ。煙を吸入すれば,「phossy jaw」と呼ばれる症状が起きる。口に傷ができるがそれは治ることなく,顎の骨自体が砕けてしまうこともある。黄燐は少量(小匙1杯未満)摂るだけで,吐き気,嘔吐,肝臓障害,心臓障害,腎臓障害,ひどい眠気をもよおすし,時には死に至ることもある。

10日 国際赤十字委員会,「敵であれ味方であれ,ケアを必要とするすべての人々が,医療機関にアクセスできるようにすること,医療従事者と医療関係車両が,いかなる場合においても,障害なく活動できるよう配慮すること」を,交戦当事者に対し要求する. 

 

バグダッドその他

 

イラク暫定政府アラウィ首相の親族が拉致された現場近くの家に残る弾丸のあと=AP
アラウィ首相の親族が拉致された現場近くの家に残る弾丸のあと。首相の親族は9日夜に拉致された=AP

11.10 「聖戦支持者集団」,アラウィ首相の親族誘拐に関しインターネット上に犯行声明.48時間以内のファルージャ攻撃停止やイラク国内の囚人全員の釈放を求める.アラウィ首相は「テロと戦う政府の決意は揺るがない」とする声明.

11.10 アラウィ首相,バグダッド国際空港の閉鎖を24時間延長すると発表.

11.10 夜 バグダッド市内東部で警察の検問を狙った車爆弾が爆発。市民が巻き添えになり、AP通信は少なくとも10人が死亡したと報じた。また、バグダッドの北部で道路に仕掛けられた複数の爆弾が爆発し、イラク国家警備隊員6人と米兵1人が死亡.

11.10 イスラム聖職者協会(AMS),全国選挙をボイコットするよう呼びかけ.ハリス・アル・ダーリ事務局長は,「我々は、イラク占領開始のとき以来、レジスタンスを支持すると述べてきた.それは私たちイラク人の権利である。したがって、この問題についてファトワは必要ない。論点ははっきりしているのだから」と述べる.

11.10 イラク・イスラム党の報道官アヤド・アル=アジ,暫定政権から完全に撤退すると言明.また選挙ボイコットを真剣に検討していると発表.

10日 バグダッドでファルージャ総攻撃に抗議する集会.イスラム聖職者協会とサドル師派,各部族が共同で呼びかけ.数千人が「侵略者よ,ファルージャから手を引け」のスローガンのもと結集.

 

スンニ三角地帯

11.10 モスルで武装蜂起が同時多発的に発生.各地の警察署や行政庁舎、クルド政党の事務所などの襲撃を繰り返す.住民が外国企業の事務所に押し入って食料や備品を持ち出すなど混乱が拡大.警察署では武器が強奪され、放火される.警察の一部は鎮圧に動かず、

10日夕方 モスルをふくむニナワ州の知事、モスルに夜間外出禁止令を発令する.クルド人政党PUK幹部はファルージャから多くの武装勢力がモスルに流入していると指摘。

 

アメリカと世界

11.10 国会で党首討論.

岡田 ファルージャ攻撃で多くの市民犠牲者が出る可能性がある。首相は「成功させなければいけない」と言ったが、違う言い方があったのではないか。
首相 (攻撃が)失敗すればあの地域がテロリストグループの拠点になる。「失敗してもいい」なんて言えるわけがない。
岡田 イラク復興特別措置法における非戦闘地域の定義は,「現に戦闘が行われておらず、(自衛隊の)活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」だ。サマワが(今も)非戦闘地域と断定した根拠は。
首相 戦闘が行われていないということだ。自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ。将来のことを100%見通すことはできないが、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域というのがイラク特措法の趣旨だ。

 

11月11日 

 

ファルージャ

11.11 夜 米海兵隊,市内を東西に貫く幹線道路の南側への攻撃を開始。西部の市場付近でも武装勢力との戦闘.

市内の状況

11日 イラク赤新月社のスタッフ,「米軍に,ファルージャ住民を救援する許可を求めているが,何の反応もない.ファルージャには医薬品も水も電気もない.住民は我々の支援を必要としている」「これは人道上の大惨事であり,他に言葉が見つからない」と語る. 

11日 ファルージャから二十キロの距離にあるAmiryaにはファルージャ住民一万七千家族が避難生活.医師がいないため,産気づいた妊婦が母子ともに死亡したり,毒蛇にかまれた少年が治療を受けられず死亡するなどの事態(ロイター)

11日 バドラーニ記者,BBCに電話レポート.

私の家が面している通りには,かつてヤシの木が並んでいました――現在は幹しか残っていません。迫撃砲で吹き飛ばされたのです。街路の遺体はますます増え,悪臭は耐えられないものになっています。
私は昨晩町を脱出しようとしたのですが,あまり遠くに行けませんでした。あまりに危険でした。
私の家の並びにある1軒の家に,水曜日(10日)の夜の爆撃の間に着弾がありました。13歳の男の子が殺されました。ガジという名前の子でした。爆撃には慣れてきつつあります。騒音の中でも眠れるようになりました――小さ目の爆弾はもう気になりません。
今日が何曜日なのかがわからなくなりました。金曜日になったことにもほとんど気付きませんでした。新鮮な食料がまったく入ってこないので,まだここにいる人々は,デーツ【訳注:ナツメヤシの実】を食べて生き延びています。空腹のために,人々は弱ってきています。町には医療援助がもうまるで残っていないので,怪我のために死んでゆく人々もたくさんいます。家族は,死者を,家の庭に埋葬し始めています。
ジョラン地区にはたくさんのレジスタンスがいました。米軍は一帯をコントロールできなかった。なぜならば,ジョランの街路は非常に狭く,撃っても命中させることができないからです。米軍は大通りに沿って動き,横道は避けています。兵士たちは装甲車両や戦車から出ません。発砲を受けたら,戦車から反撃するか,あるいは空からの攻撃を要請します。夜は戦士たちのものです。闇にまぎれ,戦士たちは再集合して新たな武器弾薬を受け取ります。戦士たちはうまく逃げています。私は彼らが戦闘しているのを目撃しました。米軍に対して迫撃砲や榴弾を発射していました。
この町は,爆発物と腐敗してゆく肉のにおいがします。ゴースト・タウンです。戦闘の合間に,ぽつりぽつりと絶対的な,ぞっとするような沈黙があります。人々の多くが逃げてしまいました。通りはからっぽですが,多くの家もからっぽになっています。

11日 バドラーニ記者,赤旗に電話レポート.

現在、ファルージャは米軍の支配下に置かれた北部と、依然として米軍と抵抗勢力が激しく交戦する南部との二つに分かれています。
米軍による攻撃でファルージャの医療体制は最悪の状態で、市全域が停電し水道も止まっています。米軍は通信施設も爆撃し、電話回線も不通となっています。総攻撃が開始されて以降、ファルージャ総合病院は米軍に占拠されたままで、二日前には診療所が四発のミサイルで爆撃され、医師や助手、患者が死亡しました。
市内には現在も約十万人の市民がとどまっていますが、爆撃や戦車からの砲撃など、無差別の攻撃にさらされています。米軍は市外に逃れようとする住民にも銃撃を加えており、通りには死体が放置されたままになっています。家屋に対する攻撃でも多数が死傷していますが、負傷者が治療を受けられず次々と命を落としています。食料不足により多くの子どもが死亡しています。いま、街頭には死臭がただよっている状態です。
市内には約百二十のモスク(イスラム教礼拝所)がありますが、そのほとんどが米軍の攻撃により破壊されるか損傷したもようです。モスクは安全だと考えて避難した住民が殺害され、遺体はモスクの中に放置されたままになっています。死者の中には宗教指導者も含まれています。アルハサン・モスクには、化学物質を搭載したミサイルが撃ち込まれたと聞きました。

 

バグダッドその他

 

バグダッドの繁華街で車爆弾が爆発した=AP
バグダッドの繁華街で車爆弾が爆発した

11日 暫定政府当局,イスラム聖職者協会のクバイシ師とハリス・アル=ダリ師の自宅を強制捜査.アル=ダリ師は,「我々はファルージャを支援する主要な勢力とみなされている」と述べる

11日 米軍はバグダッド市内のイスラム聖職者協会事務所を襲撃し押収.クバイシ師,アル=ダリ師ら指導者を逮捕.協会は,「イラク軍とあらゆるムスリムは、イスラム教も人権も尊重することの無い軍隊の旗印のもとにファルージャを侵略するという大きな過ちを犯してはならない」と呼びかける.

11.11 マハディ・スマイダイエ師,暫定政府が制圧作戦を停止しない場合、全土でストライキを行なうよう呼び掛け.スマイダイエ師はイスラム聖職者協会とは別系統組織のスンニ派有力聖職者.

11.11 午前 外国メディアが拠点とするパレスチナホテルから約300メートルの繁華街で車爆弾が爆発.渋滞中の車十数台が炎上.少なくとも市民17人が死亡.夜には文化省のそばの警察検問を狙った車爆弾で10人が死亡.

 

スンニ三角地帯

11.11 昼 モスルで武装集団約50人が警察署6カ所や米軍施設などに一斉攻撃.武器や弾薬を奪って建物に放火.またクルド愛国同盟(PUK)の本部事務所も襲撃を受ける.モスル警察の防犯部門の責任者が自宅で射殺され、家に放火される.

11日 武装集団は中心部の道路を封鎖し、警察と銃撃戦.主な橋を警戒中の米軍を攻撃.米兵1人が死亡.現地当局者によると、襲撃を受けた警察署では、警官の大半が応戦もせずに逃走。市南部、西部地区では警官の姿は見えず、自動小銃やロケット砲で武装した男たちが建物周辺や道路などで警戒にあたっている.

11.11 イラク北部バイジで武装勢力が蜂起.市中心部でいくつかの通りを占拠して車の通行を止め、イラク国家警備隊との間で銃撃戦.病院関係者の話では女性を含む市民ら10人が死亡.イラク治安機関は、バイジにあるパイプラインなど石油関連施設の安全確保を急いでいる

11.11 北部ハウィジャでも武装勢力と米軍が衝突。米軍が街を包囲し、夜間外出禁止令が発令された。

11.11 北部キルクークでは,州知事の車列の近くで車爆弾が爆発.知事は無事だったが周囲にいた16人がけがをした。

11.11 夜 モスルで、武装勢力の攻撃に対し米軍が空爆を実施.


アメリカと世界

11.11 あの産経新聞が,小泉首相をきびしく批判.

党首討論は、自衛隊のイラク派遣をめぐる小泉首相のいい加減な答弁ぶりが目立った。首相は,イラク特措法における『非戦闘地域』を定義することができず、「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ。これがイラク特措法の趣旨なんです」など、論理が逆さまの説明にならない説明をするばかり。「定義は文書をもってくればすぐ言えますよ。党首討論ですから考え方を言ってるんです」とも述べ、派遣の基本条件である「非戦闘地域」の意味を十分理解していないことをうかがわせた。
首相は、「将来(サマワで)、組織的、計画的、継続的に戦闘が行われるかどうか、はっきり百パーセントどうなるかは断言はできない」と、特措法に沿った根拠のある説明はできなかった。岡田代表は「まともに議論する気がだんだんなくなってくる。(特措法上の非戦闘地域の)定義は政府がおつくりになったんですよ」とあきれるばかりだった。

11.11 民主、共産、社民の野党三党,「イラク復興支援特別措置法廃止法案」を衆院に共同で提出.国際人道法に反する無差別攻撃を直ちに止めさせること,小泉首相の無責任発言を追及することでも一致.

11.11 小泉首相,「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と答弁したことについて、「適切ないい答弁だった.おかしかったら問い返せばいい」と記者団に語る.

11日 アラファト自治政府議長が死亡.

 

11月12日 

ファルージャ

 

ファルージャで12日、中心部での戦闘から逃れようとするイラク人女性=AP
ファルージャで12日、中心部での戦闘から逃れようとするイラク人女性=AP

11.12 米・イラク軍,市内ほぼ全域を掌握。市内南部に立てこもる武装勢力のせん滅に着手.

11.12 ファルージャ市街地のモスクにいた約300人が、投降を求めて交渉に入る.アラウィ首相の報道官,ファルージャでイラン人やサウジ人、ヨルダン人など151人の外国人を拘束したと述べる.イラク軍幹部は「武装勢力なのか市民なのか、両者が混じっているのかが分からない」と語る.

11.12 米海兵隊のサトラー現地司令官,ファルージャ近郊で記者会見.「すでに市内の約8割を確保した.彼らは北に行くことができない。そこにはわれわれがいるからだ。ユーフラテス川があるから西に行くこともできない。われわれの大規模部隊がいるから東に行くこともできない。だから彼らは南部に追い詰められている」とし,13日にも全市完全制圧を目指すと語る.また戦車部隊司令官は、武装勢力の最後の拠点を同夜中にも攻略したいと述べる.

11.12 米軍,フランス人記者2人とともに拉致されたシリア人運転手を保護.8月に「イラク・イスラム軍」を名乗る武装組織に、仏人記者2人とともに捕らえられたもの.運転手は、記者たちと約1か月前に引き離され、消息はわからないと語る.市内では人質の拘束・殺害に使われたと見られる家屋も複数見つかっており、ファルージャが外国人らの拉致の拠点となっていた実態を裏付けている。

11.12 米軍当局,今回の作戦では米軍の18人が死亡、178人が負傷した。イラク兵は五人が死亡、34人が負傷したと発表.これに対し武装勢力の死者は約六百人に上るという。ロイター通信は,ファルージャ攻撃が開始されて以来,227人の米兵が治療のためドイツへ送られたと報道.これは米軍当局の発表した負傷者数を大幅に上回る.

 

       

 

   米軍検問所の難民たち。写真はAP

11.12 UAEのアルアラビーヤ放送,ファルージャで、米軍の戦闘ヘリコプター「コブラ」2機が撃墜された、と伝える.米軍は地上からの攻撃で被弾し、緊急着陸を強いられたと弁明.

11.12 制圧したとされた北西部ジョラン地区で,激しい戦闘が発生.武装勢力の一部が抵抗を続ける.

市内の状況

11.12 市外に脱出した住民によると、民家や病院の破壊が激しく、女性や子どもら多数が死傷。また、市内は電気、水道が止まったままで、住民は汚水を飲んだり、小麦粉を食べたりして飢えをしのいでいるという。ロイター通信によれば,人道支援団体はファルージャへの接近を禁じられており、市内で孤立している住民への食糧や水の供給ができない状態.

12日 共同通信によれば,市内に残留した住民の水、食料、医薬品不足が深刻化。戦闘の巻き添えになっても手当てができず、死亡するケースが続出.

12日 ファルージャのイラク人記者のレポート--身の安全のため、彼自身名前を伏せておくよう求めた(USAトゥデイ紙)

レポートの要旨: 路上の遺体そしてそれより多くの人々が瓦礫の下に埋もれている.遺体を動かそうとした二人の男が米軍狙撃手に射殺された.街の小さな診療所3軒のうち2軒が爆撃を受け、そのうち一つでは、医療スタッフと患者が殺された.三つめの診療所の脇には米軍の戦車が居座っているため、住民は怖くてその診療所に行けない.アメリカの兵士たちは、動くものをすべて撃っている.狙撃手が狙っているため、人々は窓から外を覗くことさえ恐れている.

12日 テレビ・アルジャジーラ,ファルージャで米軍の拘束を逃れた数少ない医師の一人、アッバス・アリ氏に電話取材.現地からの声を伝える.

ファルージャは悲惨な状況に置かれています。われわれは通りで住民の死体を日々見ています。けが人がいても彼らにたいし何もしてあげることができません。それどころか、彼らを避難させることもできません。私たちには電気もない、水もない、食料もない、住民同士で連絡をとることもできません。市内ではいたるところで、子どもや女性が火に囲まれた恐怖から泣き叫んでいます。米軍はいたるところで爆撃をおこなっています。
私たちを助けてください。どうか助けてください。私たちは世界のすべての人々に訴えます。どうか私たちを助けてください。私の住む地域(アルゴムフリア地区)には数千の家族がいます。米軍はスピーカーで外に出て降伏しろなどといっていますが、いたるところで爆撃と銃撃がおこなわれているなかでどうしてそのようなことができるでしょうか。水も電気も食料もないなかで家に閉じ込められている数千の家族は、家でじっとしていて死を待つのと、外に出て銃撃されるのとどちらがいいのでしょうか。われわれにはどうすればよいのかわからないのです。いま、私たちの耳に聞こえるのは子どもたちの叫び声と爆撃の音だけです。通りには数百の死体が放置され、その傍らには負傷者が横たわっています。しかし私たちには彼らを助けることができないのです。
私たちはアルジャジーラを通して世界の人々に訴えます。どうかこの声に耳を傾けてください。どうか私たちを、負傷者を、この悲惨から救ってください。

12日 米軍、ファルージャと外とをつなぐすべての道路と橋を封鎖.街を逃れようとした15歳から55歳までの男性数百人をファルージャに押し戻す.米軍現地当局は、男たちを街から逃れさせないことが、作戦の成功の鍵となると述べる.人権専門家たちは、ジュネーブ条約の条項にいくつか言及しながら、現在認められている戦争関係法では、軍は避難する民間人を保護しなくてはならず、戦闘地帯に連れ戻すことを禁じていると語る(USAトゥデイ紙).

「戦闘が続いている地域に民間人を連れ戻して多大な危険に晒させることは極めて問題の大きな行為である」とヒューストン大学の法律学教授で元軍検察官のジョーダン・ポーストは語った。ヒューマンライツ・ウォッチの上級法律顧問ジェームズ・ロスは「そんなことが行われたのなら、それは戦争犯罪だ」と述べた。


 

負傷者を後送する米軍兵士

 



バグダッドその他

11.12 ロイター,目撃者の証言を報道.「9歳の少年が砲弾の破片でお腹をやられました。両親は、戦闘のために彼を病院につれていけず、お腹の回りをシーツでしばり出血を止めようとしました。数時間後、彼は出血多量で死亡し、庭に埋葬されました」

11.12 イラク国家防衛隊と駐留米軍,スマイダイエ師と同師の支持者27人をバグダッド市内のモスク(礼拝所)で拘束.イラク国家保安隊がモスクを急襲、米軍は付近一帯を封鎖した。国家保安隊当局者は、TNT火薬や自動小銃、対戦車ロケット砲などのほか、最近の米軍車両への攻撃の写真などを発見したという。同師はファルージャ攻撃に抗議し、非暴力的な不服従運動を呼びかけていた。

11.12 スンニ派に影響力をもつイスラム聖職者協会,13日から1週間のゼネストを呼びかける.アルクベイシ師は「イラク暫定政府にファルージャでの虐殺をやめさせるため」と説明する.

11.12 サドル師支持の聖職者,金曜礼拝で宗派を超えた抵抗支援を呼びかける.

11.12 「1920年革命旅団」をなのる武装組織が、バグダッド空港に勤務する米国人男性を拉致.この男性はレバノンの出身で、バグダッド空港のビルでマネジャーとして勤務していた。

 

サマワのシーア派デモ.横断幕には「自衛隊はすぐに出て行け」と書かれている

 

12日 バグダッドの複数のモスクに、「イラク人レジスタンス」を名乗るグループが張り紙を掲げ、「選挙は米国による占領の正当化だ」として投票所を襲撃すると宣言.

 

スンニ三角地帯

12日 サマワ市街で,シーア派サドル師の支持者らが自衛隊撤退を叫び、デモ行進.

11.12 モスルで,武装勢力が警察署9ヶ所と市庁舎の一部を占拠.武装勢力メンバーはAFP通信に対し、「(米・イラク軍による)ファルージャへの攻勢を弱めるため、新たな戦線を開くのが狙い」と述べた。

12日 米軍はファルージャ部隊の一部500人を派遣すると発表.モスル警察本部長は責任を追及され解雇される.

 

アメリカと世界 
 

   オランダ軍
12日 パウエル米国務長官,首長国連邦の衛星テレビ局アルアラビーヤとインタビュー.掃討作戦を早急に完了して、速やかに同市の復興に取り掛かりたい意向を表明.

11.12 マイヤーズ米統合参謀本部議長,「ファルージャ制圧は武装勢力の終焉を意味するものではない」と強調。

11.12 野中元自民党幹事長,小泉首相がファルージャ総攻撃を支持したことについて、「残念だ。成功を祈るような発言をなぜ日本の首相がするのか、非常に疑問に感じる」と批判.村山富市元首相も、先の党首討論で「自衛隊が活動する地域が非戦闘地域だ」と答弁した首相に対し「開き直っている。国会軽視だ」と不快感を示す.

12日 オランダ国防省,イラク駐留部隊1350人が、予定通り来年3月に撤退すると発表.報道官は、「ムサンナ州の治安状況がイラク治安当局に任務を移譲できる程度に安定すると思う」と述べる.オランダは昨年8月、イラク北部ムサンナ州に部隊を派遣した。今年6月には議会決議で、駐留期限を来年3月まで延長. 

 

11月13日 

ファルージャ

13日早朝 米軍はこの日の戦闘に先立ち、武装勢力がファルージャで築いたトンネル網を空爆.CNNによれば,市内南東部の「巨大地下施設」に対し,陸軍第1歩兵師団と空軍部隊が2000ポンド(約900キロ)級の爆弾4発を投下した.この爆弾は地下施設を破壊するための「バンカーバスター」と思われる.

巨大地下施設: 米軍筋は、この大規模施設は縦400メートル横300メートルほどの大きさがあり、無数のトンネルが出入りしていたと話している。中には大量の医薬品など物資が備蓄されており、武装勢力の活動拠点だったとされる.


イラクのファルージャで13日、制圧作戦の中で連絡をする米海兵隊員たち=AP
イラクのファルージャで13日、制圧作戦の中で連絡をする米海兵隊員たち=AP

 

13日 米軍,南部にある武装勢力最後の拠点、「クイーンズ地区」に突入を開始.

13日 米軍当局者、AP通信に米軍が市内全域を「占領した」と述べる。組織化された抵抗はなくなり、制圧作戦が最終段階を迎えているとの見方を示す.しかし発表の直後,北西部で戦闘が再発.武装勢力は分散して執拗に抵抗.

13日 モスクに踏み込んだ海兵隊員が,横たわる負傷者に銃を向けて「こいつ、死んだふりをしている」と言い、射殺した。この経過をNBCテレビのスタッフが撮影.NBCによると、この負傷者は武装勢力に加わっており、モスクに運ばれて治療を待っていたという。

13日 暫定政府のダウード国防相、「ファルージャ制圧作戦がほとんど終わった.フセイン元大統領の支持者やテロリストら1000人以上が死亡し、約200人が逮捕された.」と話す.

昼 イラク暫定政府、ファルージャ総合病院から「多数のけが人」をバグダッド市内に搬送したと発表.

13日午後 アラウィ首相,「戦闘は今日か明日終わる。明白な勝利だ」と述べる.

 

市内の状況


午後 イラク赤新月,医師らでつくる緊急援助団をファルージャに派遣.医薬品や食料、毛布を積んだトラック5台と救急車3台がユーフラテス川西岸の総合病院に到着.作戦開始以来初めての救援物資.同病院に負傷者はおらず、医薬品なども十分あったという.

午後 米軍は「危険すぎる」と市街地での活動を拒否.援助団は総合病院で待機し、市街地入りを求めて米軍と交渉を続ける.

夕方 赤新月社のアバディ報道官,米軍当局が市中心部への立ち入りを拒否しており、緊急物資は中心部に残る一般市民には届いていないと述べる.ファルージャ市内の状況は壊滅的で、食糧や医薬品が著しく不足している。

13日 援助団からバグダッドの本部に入った連絡では、「市街地では銃声が続き、家屋はほとんどが破壊されている.路上のあちこちに遺体が放置されている。野犬が遺体を食べる姿も目撃される.電気、水道の供給は止まっている」という.

 

バグダッドその他


13日 イラク暫定政府,バグダッド国際空港の閉鎖期間を無期限とすることを決める.閉鎖は数日間で解除される予定だった.

13日 ムクタダ・サドル師の報道官アリ・サマスム,ファルージャ攻撃に抗議するため,来年1月の「選挙に参加しない」と語る.すでにスンニ派のイスラム宗教者委員会が選挙のボイコットを決めている.サドル・シティのサドル事務所報道官アフメド・アル=ビデリも,選挙プロセスに対するアル=サドル師の支持は終わりを告げたと述べる.

13日 「イラク聖戦アルカイダ組織」など3つの武装組織は、ファルージャ掃討作戦に対抗して「ファルージャの虐殺に対抗し,全土に攻撃を拡大させる」との声明を発表.この日までに,11の武装組織が戦闘宣言.

 

スンニ三角地帯

13日 モスルで、武装勢力が攻勢を強める.ロイター通信は、武装勢力が市南部、西部を支配下に置いたと報道.米軍のモスル駐留部隊が撤退.武装グループが市内をパトロール.病院・学校・消防署などを警備.米軍が立ち去った市内の米軍基地(かつての大統領宮殿)は地元の市民たちの略奪にさらされる.(モスル関連の記事は断片的で,日時も不正確なものが多い)

 

 

モスル市内をパトロールする武装集団

13日 イラク暫定政府は武装勢力と戦わなかったとしてモスル警察署長を解任。事態収拾のため、現地に国家警備隊250人を増派.

13日 AP通信は、米軍が中部ファルージャ攻略作戦に参加していた1個歩兵大隊をモスルに転戦させたと伝える.駐留米軍のカーター・ハム准将はロイター通信に「一部武装勢力が(総攻撃を受け)ファルージャから北部に移動することは予期していた」と述べる.

13日 バグダッド北方20キロのタジで,米軍のUH−60ブラックホークが武装集団により撃墜される.

 

アメリカと世界

ラムズフェルド米国防長官、ファルージャはもはや「テロリストのための安全地帯ではなくなった」と述べる.(グリーンゾーンはどうだろう?)

 

 

11月14日 

ファルージャ

イラクのファルージャ西部で14日、警戒しながら進む米海兵隊の兵士たち=AP
イラクのファルージャ西部で14日、警戒しながら進む米海兵隊の兵士たち。後ろの鉄橋は、今年3月、武装勢力に殺された米国の民間人2人の遺体がつるされ、米国に衝撃を与えた場所だ=AP

14日 武装勢力はファルージャ市南部で激しく抵抗.

14日 米CNN,香田証生さんのパスポートがファルージャで見つかったと伝える.また、両手足を切られた白人とみられる女性の遺体も見つかったという。

14日 ナタンスキー米海兵隊少将(ファルージャの制圧作戦を立案),現地を訪問.「作戦は予定より早く進んでいる」と述べ、現時点で作戦は成功しているとの見方を示した。

14日 バグダッドの米軍当局は、開始から1週間を迎えた同作戦の米兵死者は38人、負傷者は275人に上ったとかたる.これに対し,武装勢力側の死者は約1000人で、450─550人を拘束したとしている。 アルジャジーラは、抵抗組織側の話として「我々は複数の地区を確保している。米軍はうそをついている」と伝える.

14日 英日曜紙サンデー・タイムズ,ファルージャから数百人の武装勢力が脱出し、北部や首都バグダッドで再結集していると伝える.同紙によると、サウジアラビアの自爆攻撃志願者7人が脱出しバグダッドに到着、攻撃対象リストの受け取りを待っている。このサウジ人は、イラク各地で頻発するテロや拉致事件の黒幕とされるザルカウィ容疑者が率いる組織に雇われた。武装勢力筋によると、ファルージャで武装勢力は大きな損害を受けたものの、米軍が同市内に入る前に少なくとも半分が市内から脱出。中部や北部で他の武装勢力に合流した。

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14日 ファルージャで家を砲撃され、バグダッドの病院で治療を受ける2歳児。砲撃で片脚を失った。(ロイター/Ali Jasim)

14日 米軍,総合病院と市中心部とを結ぶユーフラテス川の橋の通行を再開。AFP通信,米海兵隊大尉が「ジョラン地区から12人の市民が市外に出ることを許可した」と報道.

市内の状況

14日 午前 赤新月社、中心部での物資配給を許可するよう米軍に求め、米軍側と協議を続ける.

14日 海兵隊のマイク・シュップ大佐は,「我々は住民への支援物資を持っており,援助なら自分たちで出きる.現地でイラク赤新月社が救援物資を市民に渡す必要はない.市街地に市民が残っているとの報告は聞いていない.負傷者はわれわれが運び出す.総合病院につれてくるので,援助活動は(市内に入らなくても)この病院でできる」と語る(ロイター)

14日 市内に入ったロイター通信記者の報告.通りには腐乱した死体が放置され、家屋やモスクなども破壊されており、電力は止まり、電話も不通となっている。 総攻撃開始以来、市民のもとには支援物資は届いていないとしている。また水と食料の不足に苦しみ、砲弾でけがをした子どもを抱える父親の話を伝える.別の報道では「住民は現在,汚水を飲んでおり,ある家族では7人の子供全員が激しい下痢に見舞われている」ことが明らかになる.

14日 赤新月社の救援隊責任者アブファード,アルジャジーラの質問に答える.「米軍は市の八割を支配しているといいながら,安全を理由に市街に入ることを拒否している.ファルージャでは電気も水も絶たれている.医薬品も救急車もない.住民は家から出ることを望んでいるが,安全な場所はない.通りには死体や負傷者が放置されている」 

14日 バグダッドの赤新月社は「ファルージャに“大惨事”が起こっている.飢餓と水不足によって死者が出ている.とくに子供の状況は深刻だ.この危機を解決できなければ,ファルージャは大惨事に陥り,それは他の大都市にも広がるだろう」と語る.アハマド・ナセル災害対策部長,「状況は破滅的だ。援助活動に入れるよう、戦闘を1時間でも止めてほしい。そして、国際社会の助けを強く求めたい」と話す.(朝日新聞の電話取材)

11.14 ロイター,「米軍の爆撃がファルージャにある診療所を爆撃し、医者と看護士、患者を殺した」と報道.米軍はこの報道を否定.

 

呪われた人々 バグダッド

14日 8日に封鎖されたヨルダン、シリアとの国境閉鎖が解除される.

14日 ヨルダンでの訓練を終えて帰任途中のイラク人警察官31人(60人以上説,35人説がある)が,イラク西部ヨルダン国境に近いルトバのホテルに滞在中、武装勢力に襲われ連れ去られた.これらの警察官は中部カルバラの警察により,リクルートされたばかりの新人であった.事件は17日,カルバラ警察当局者の話としてAP通信が伝えた.

14日 バグダッド中心部では相次ぐ爆弾テロ.米軍管理区域グリーンゾーン付近で爆発があり、民間警備員が死亡.南部では住宅地に連続して砲撃があり、4人の子供を含むイラク人6人が死亡.

 

 

U.S. Army critical care nurse Cpt. Marvetta Walker checks on a 9-year-old Fallujah boy who was wounded in the face and stomach, while at the 31st Combat Support Hospital in Baghdad, Iraq Monday, Nov. 15, 2004. The boy was in critical condition. The hospital has been treating both American wounded as well as civilians from the Fallujah fighting.(笑)(AP Photo/John Moore)

 

スンニ三角地帯

14日 モスルで武装勢力が警察署2カ所を襲い、少なくともイラク国家警備隊員ら6人が死亡.武装勢力の30人以上が死亡.

14日 モスルに駐留する米軍報道官,武装勢力に占拠されていた同市南西部の警察署を2時間以上にわたる戦闘の末に奪回したと語った。モスルでは武装勢力が警察署9カ所を占拠して武器や警察車両、防弾チョッキなどを略奪していた。

14日 ラマディで,米軍と武装勢力が衝突.イラク人6人が死亡.バイジでも重装備の米軍が攻撃を続けており、武装勢力側に死者.バクバでも戦闘が行なわれる.

14日 キルクーク近郊の石油施設4箇所が爆破され炎上.

14日 中部ブフリズで,ファルージャ制圧作戦に反対するデモ.数百人のデモ隊は、米軍が民間人を「大虐殺」したと非難.作戦を承認した暫定政府のアラウィ首相についても「裏切り者」「米国の手先」などと批判.ブフリズはバクバに隣接。ファルージャ同様、スンニ派信徒が多いため反米感情が強く、武装勢力の活動も活発な地域。

 

アメリカと世界

14日 ニューヨーク・タイムズによれば,米政府部内に国連のアナン事務総長に対する批判が拡大.国連担当の米高官は「シエラレオネやコンゴへ何千人もの平和維持軍派遣を勧告しながら、イラクには7人の選挙要員しか出していないことがすべてを物語る」と言明.

アナン事務総長はイラクへの多数の国連要員派遣に抵抗しているほか、9月にはイラク戦争を「違法」と批判。2週間前にはファルージャ制圧作戦がイラク人をさらに離反させ、来年1月の国民議会選挙実施を阻害すると警告する文書を米国、英国、イラクに送った。

 

 

11月15日

 


 ファルージャで米軍とともに戦っている「イラク国軍」の兵士.ホメイニの写真を掲げていることからシーア派と見られる.それにしても幼い.

ファルージャ

15日 米軍,武装勢力が立てこもる最後の拠点に空爆.その後地上では戦車が進攻.戦闘で破壊された建物内の捜索を行う(ロイター通信)

15日 武装集団,市南部を中心に散発的な抵抗を続ける.米海兵隊司令官は英BBCに対し、「現在市内に残留している武装勢力は強硬派で、装備も当初の武装勢力よりも優れているようだ。しかし、われわれは掃討する」と話す.

15日 イラク駐留米海兵隊第1遠征隊の作戦将校,マイケル・レグナー大佐は、ファルージャから国防総省担当記者向けに電話会見. まだ一部で武装勢力との交戦が続いているとした上で「米軍は、市内どの地域でも行けるようになった。100パーセント確保された」と述べる.少なくとも武装集団の1052人を捕虜にし,千人以上を殺害したと述べるが,正確な人数は言及せず.捕虜のほとんどがイラク人だが、外国人も含まれているという。

15日 イラク赤新月社の支援隊,市街に入ることができないまま引き返す。アバディ報道官,ファルージャへの立ち入りを米軍が拒否したため、同市内への緊急人道物資搬送を断念したと発表.赤新月社はトラックを市外にある避難民キャンプに向かわせ、食料などを配給する。米軍当局はこれについて、米軍自ら支援物資を渡しており,問題はないと述べる.

15日 ファルージャの医師たちが支援を求めるアピールを発表(イラク・レジスタンス・レポートによる)

米軍はファルージャ総合病院を攻撃し、医者と看護婦、医療専門スタッフを逮捕した。人々は「テロリスト」の汚名を着せられ殴り倒された。米軍に付き従う「イラク国家警備隊」と呼ばれる傀儡(かいらい)軍は、出産中に看護婦を分娩室から連れ去り、まだ母親とつながっている赤ちゃんを置き去りにした.
その後、米軍は市内に設置された代用病院を爆撃した.その廃墟のなかには医者と患者の血が混ざっていた.それでも生存している者を瓦礫(がれき)のなかに見つけると、米軍は生存者を戦車で押しつぶした。米軍は,人道救援チームの入市を阻み、イラク赤新月社とボランティアに脅しと圧力をかけた.
アルワン「保健相」は,米軍と傀儡軍の犯した残虐行為を話せば給料をカットし、資格を剥奪し、刑務所に入れると語った.ファルージャの医者たちは、すべての医者に対して、これらの野蛮な行為を非難し、ファルージャの市民を救援するためのイニシアティブをとるよう呼びかける.

11.15 ファルージャのNGOsが,アピールを発表.@ファルージャ、サクラウェイヤおよびカルマの都市に医療スタッフが入って、死者の埋葬と負傷者の治療を許可するよう、米政権に要求してください.Aファルージャとアル・アンバール地方の人々に、どんなものでもいい、食料と薬を届けてください.

 

 

ファルージャ市外で待機する赤新月社の支援隊

11.15 Dahr Jamailによるファルージャ難民とのインタビュー.

「今じゃ道路に怪我人が転がってて,兵士たちが戦車で轢いていくんだ。何度も何度もあったよ。あんたがテレビで見てんのは,何でもない.あんたが見られないものがどんなに多いことか」「地面に死体がごろごろしてる。誰も埋葬できないんだ。アメリカ人は死体をユーフラテス川に落としている」「小さなのが空から,煙の長い尾を引きながら落ちてくる。それらが地面で爆発して,30分も燃え続ける大きな炎を上げる。線路の近くでこういうのが使われていた。大型機からは戦車くらいの大きな爆弾が落とされる。この炎に触れた者は,体が何時間も燃え続けていたよ」

11.15 BBC,非公式の死者数推定は2000人を越え、その多くが民間人であると発表した。

 

バグダッド

15日 バグダッド国際空港、1週間ぶりに民間機の運航が再開される.イラク航空のアンマン行きなどが離陸.

 

写真1

 

15日 ファルージャの病院前で監視にあたる米軍 (ロイター)

15日 米軍、8月にバグダッドのサドルシティー制圧作戦時に,負傷した民兵を殺害したとして、エリック・アンダーソン少尉を殺人などの容疑で訴追.アンダーソンは,重傷男性を「苦痛から助け出すため」射殺したと述べる.

15日 バグダッドで9日に拉致されていたアラウィ首相の親族3人のうち女性2人が解放される.首相のいとこの男性は引き続き拘留.

 

 スンニ三角地帯

15日 多くの武装勢力はファルージャから西方約50キロのラマディに移ったとされる.米軍は2大隊を新たに投入、ラマディ掃討作戦を展開.

15日 バクバで武装勢力が複数の警察署などを襲い、米軍は2回にわたり空爆.20人が死亡.

15日 モスル、バグダッドなどで武装勢力の攻撃や米軍、イラク治安部隊との衝突が相次ぎ、武装勢力や住民、警官など約80人が死亡した.

 

アメリカと世界

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11月15日 モスクを調べる米兵の映像 (ロイター)

15日 米NBCなど各テレビ局,米海兵隊員が負傷した非武装のイラク人を銃殺する映像を放映.映像は、13日にモスク捜索に取材団代表として同行していたNBCが撮影した.実際に射殺するシーンは放送されなかった.

15日 国防総省スポークスマン,負傷者射殺事件が戦争犯罪に当たるかについて調査を開始.海兵隊報道官は国防総省で、調査は海軍犯罪調査局が行っており、「戦争法違反の可能性」に焦点が合わせられている、と説明した。

15日 ルーマニアのナスタセ首相,「正常化を前提として」イラク派兵部隊700人を来年6月までに撤退させると発表.

15日 ハンガリー議会(定数386),イラクに派遣中の軍部隊300人の任期について、来年3月末までの延長を求めた政府案を最大野党、青年民主連盟などの反対で否決。同国部隊は任期満了の12月末までにイラクから撤退することが決まる。ジュルチャーニ首相は今月初め、イラクで来年1月に予定されている国民議会選挙までは部隊駐留義務があると発言。任期を3カ月延長した上で、来年3月末に撤退させると表明していた。しかしハンガリーでは最新の世論調査で国民の54%が部隊を早期に撤退すべきだと答えるなど、適切な時期の撤退を求める声が高まっていた。


 

11月16日

イラク中部ラマディで13日、米軍と武装勢力との衝突の巻き添えとなり、砲弾の破片でけがをした男児を抱く母親=AP
イラク中部ラマディで13日、米軍と武装勢力との衝突の巻き添えとなり、砲弾の破片でけがをした男児を抱く母親=AP

ファルージャ

16日 市南部で自爆攻撃を受けた米兵1人が死亡し、一連の攻撃で米軍の死者は39人になった。

16日 イラク暫定政府のダウド国務担当相(国家安全保障担当),ファルージャ市長と会談したあとロイター通信と会見.「(武装勢力側の)死者数は1600人を超える。拘束者数は昨夜時点で1052人で、国籍もさまざまだ」と述べる.また武装勢力側はほとんど、身分を証明するものを携行していなかったため、遺体の写真撮影や指紋の採取を行っていると述べる.また,食料不足や建物の破壊で市民生活が脅かされているとの報道を否定し、「市内の総建物1700棟のうち損傷を受けたのは200棟にすぎない.市民の9割以上が総攻撃開始前にファルージャを脱出しており、一部は近在の村に移動した」と反論。

16日 アラウィ首相,保健省の代表団がファルージャを視察したが,「ファルージャに市民はほとんどおらず,人道問題は起きていない.水や食料,医薬品の不足は起きていない」と述べる.しかし市民の犠牲について、米軍もイラク政府も具体的な人数を明らかにしていない。
小泉流に言えば,「市民は残っていない.なぜなら残っているのは武装集団メンバーだから」となる.55歳以下の男性の避難を許さず,市内に閉じ込めたのは誰か?

16日 ルイス・アーバー国連人権高等弁務官,ファルージャで過剰な武力行使が行なわれ,一般市民が標的とされていることについて調査を求める.同氏は米軍や多国籍軍,政府部隊もふくめ,違反行為に責任あるものは逮捕し裁判にかけられるべきであると述べる.

市内の状況

16日 BBC放送,ファルージャ現地のファディル・バドラーニ記者の証言を報道.

町は前より落ちついています――しかしまだ恐怖はあります。いくつか戦闘もあります。最近,奇妙なものを見るようになっています。路上に転がっている遺体を野良犬がかじっていたりしています。一方,人々は,何か食べる物を探して,庭をほじくり返しています。これまで生き延びてきた人々は,やつれ果てています。死者には逆のことが起きています――倒れた場所に放置され,身体は膨張し腐敗しつつあります。
総合病院に援助物資が到着したという話は始終聞いていますが,病院は現在アメリカの手にあります。この地域のほとんどの人々は,あまりに弱っているか,あまりに恐がっていて病院まで行くことができません。それどころか,家を後にすることすらできません。
現在のところ,動かないでいるのが最善です。私はファルージャから脱出したいと思っていますが,それを試みたら結局殺されて終わってしまうのではないかと思っています。食料と水はほとんど底をついています。私には,あと数日は何とかしのげるだけのドライ・デーツ(ヤシの実)と水がありますが。

 

バグダッドその他

16日 アルジャジーラとアルアラビーヤは、トップニュースとしてモスクにおける負傷者殺害の一部始終を繰り返し放映.専門家や人権活動家のコメントを伝える.カイロ大のサレハ・アミル教授(国際法)はアルジャジーラで「負傷者の殺害はジュネーブ条約違反だ。殺されたのが民間人の可能性もある。モスクでの殺人は宗教上、禁じられている」と批判.

16日 米海兵隊,イラク人負傷者殺害事件で,事件にかかわった部隊を撤退させ、事実関係の捜査を始めたと発表.米軍当局は,負傷者射殺事件が国際法や軍法の規定する「自衛」の範囲を超えているかの調査を開始(AP).

16日 バグダッドの米軍当局,サドルシティで8月、負傷したイラク人の射殺に関与したとして、エリック・アンダーソン陸軍少尉を計画殺人と、計画殺人教唆の容疑で起訴.軍法会議で有罪判決が出た場合、死刑もあり得る。軍当局は、アンダーソン被告が、すでに重傷を負って生存の見込みがなくなったイラク人青年に発砲することを部下に許可したかどうかを調査。ただ一部の軍関係者は、事件が安楽死措置だった可能性にも言及している。部下2人は、9月にこの事件で起訴された。

16日 バグダッドで、米軍車両が攻撃を受け米兵1人が死亡.

16日 米中央軍のアビザイド司令官,サマワの自衛隊基地を訪問.「自衛隊は連合国軍の大切な一員であり,同盟者である.…(イラク派兵は)外国での重要な任務に軍事的に関与する重要な一歩である」と語る.

16日 サドル師派幹部のガジ・ザルガニ師,ナジャフにいる同派指導部が「自衛隊は占領軍」と規定することを決めたとし、「われわれは占領者と戦っており、日本もその戦いの(相手の)一部になった」と言明.末端まで同じ認識だと強調.(共同通信との会見) サドル師派が自衛隊を敵視する姿勢を明確にしたことが、サマワの治安に対する不安定要素となることは確実とみられる.

16日 サマワを州都とするムサンナ州で、新たに編成されたばかりの警察の即応部隊(650人)が,首都バグダッドに緊急招集される.イラク暫定政府の内務省の指示によるもの.治安が極度に悪化している事態に対応するのが狙いとみられる.内務省報道官は「非常事態宣言が出ているため、コメントできない」としている.(共同通信)

 

写真1
 11月16日、衛星テレビが入手したビデオ映像によると、イラク武装勢力が人質の英国人女性、マーガレット・ハッサンさん(写真)を殺害したもよう。昨年1月撮影。提供写真(2004年 ロイター)

スンニ三角地帯

16日 米軍報道官は、チグリス川西側に潜伏している武装勢力の掃討に乗り出したことを明らかにする.イラク駐留米軍数百人とイラク国家警備隊あわせて約1200人が,モスルの武装勢力の掃討作戦を開始.米軍部隊が前線に立ち,イラク国家警備隊や警察特殊部隊が支援.

16日 米軍とイラク国家警備隊,モスル市西部にある21カ所の警察署すべてを奪還.モスルでは、市内46警察署のうち6割が武装勢力から攻撃され、一部が占拠されていた.

アメリカと世界 

16日 アルジャジーラは、イラクの武装集団が人質の英国出身女性を殺害する様子を映したものとされるビデオテープが届いたことを明らかにする. 映像には覆面をした男が女性の頭部を銃撃する模様が映し出されており、外交筋や家族によると、先月バグダッドで拉致(らち)されたマーガレット・ハッサンさんである可能性が高い。同テレビは、視聴者の感情を害するとして映像は放映しないとしている。

16日 イラク人の夫はロイター通信に対し、「妻の生死を知りたい。死んでいるのあれば、安らかに葬ってやりたいので、遺体がどこにあるのか知りたい。マーガレットと私は30年以上連れ添ってきた。彼女はイラク国民に人生を捧げてきた」と述べた。  

ハッサンさんは、イラク人と結婚し、サダム・フセイン政権ができる前から、ずっと(30年以上)イラクに住み、国際援助団体などで働いてきました。ハッサンさんは、イラク国籍を持ち、アラビア語を自由に操り、イスラム教徒でもありました。最近は、国際的な非政府組織(NG)「ケア・インターナショナル」のバグダッド事務所代表を務めていました。ハッサンさんの誘拐事件後、バグダッドでは、ハッサンさんの解放を求める(イラク人による)デモも組織されました。それだけの人望がある方だったということでしょう。

16日 ストロー英外相,「分析の結果、残念ながら彼女が殺害されたらしいと家族に伝えなければならない」と述べ、ハッサンさんが殺害されたとの見方を示す.

16日 シラク仏大統領,英タイムズ紙とのインタビュー.「英国はイラク戦争で米国を支持したが何も得るものはなかった」と語る.また,イラク戦争開戦前、英国に対し、ブッシュ大統領を支持する代わりに中東和平プロセスを再開するよう要請したことを明らかにする.

 

11月17日

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17日 ファルージャの通りで発砲する武装勢力メンバー (ロイター)

ファルージャ

17日 イラク駐留米軍は、ファルージャに砲撃.依然抵抗を続ける武装勢力の掃討作戦を継続.17日も銃撃や爆発があるなど完全な治安確保には至っていない.いったん逃走した武装勢力がひそかに戻っているとの情報もある.

17日 ワシントン・ポスト,ファルージャ・ムジャヒディン諮問評議会の議長アブダラー・アル・ジャナビの発言を報道.ジャナビは宗教指導者、部族長、バース党員で構成される同評議会18人のメンバーである。

アメリカは地獄の扉を開いた。ファルージャの戦闘はさらなる戦闘の始まりである。われわれは依然として抵抗力と勢力、弾薬を保っている。今回の戦闘はひじょうに長引く。そしてわれわれはイラクを一つの大きなファルージャに変えるだろう。
軍事的な見地からいえば、まだ始まったばかりだ。われわれは米兵をファルージャの泥沼、細い小道と路地に引き込むことに成功した。爆発物と地雷の詰まったワナに彼らははまり、守る側の補給路はその地区内にあって短い。個々人が死んでしまえば、この運動も終わるだろう。しかし最後のイラクの聖戦士が死ぬか、あるいは弾丸が尽きるまで、それは生き続けるであろう。
(政府の高官がジャナビのことを攻撃前に市内から逃げた「卑怯者」だと報道陣に語ったことについて)私はここにいる。(ここに来れば)諸君は私と会うことができる.

11.17 暫定政府のサーダ首相報道官,毎日新聞特派員の電話取材に応える.米軍発表の「制圧」が実態のない独りよがりである可能性を示唆すると同時に,ヨルダン人のザルカウィ容疑者ら外国人組織はごく一部で,反米組織の主体は「旧バース党、前政権の国軍、警察、共和国防衛隊の関係者」であるとの分析を示す.

トンネルなどでつながっていたのは確認しただけで五十軒。逃走を用意周到に準備していたようだ。米軍の中心市街地突入前に、相当数の武装勢力が、北部モスル、バグダッド南部など、別の拠点に移動したことをわれわれは確認した.今後,退却と見せかけた武装勢力が再集結する可能性もあり得る.
 最近のあいつぐ要人暗殺は,標的に関する正確な情報と暗殺技術がなければ不可能な事例が多く、土地勘のない外国人の主導でできる芸当ではない.

11.17 バグダッド大学政治学部のサルマーン・アルジョマイリ教授(スンニ派),毎日新聞の取材に応える.

@イラク全土で既に三十五人の大学教授が暗殺された。医者や科学者などを加えると、暗殺の犠牲者は二百人を超えるのではないか。まるでイラクの知識階層を抹殺しようとしているようだ.
A (ザルカウィ首謀説を強調し続ける米国の真意は)アルカイダとの関係を訴え続けることで、米国民の支持を取り付けることにある.
B(サーダ首相報道官のサダム派主犯説に対して)それは違う。旧政権に賛同した十代後半から二十代のイラクの若者たちが、抵抗運動に続々と加わっているのが真相。この戦争は、本当の意味でイラク市民による抵抗運動になった.

 

 

 

 

An Iraqi man carries a casket in a funeral procession Tuesday, Nov. 16, 2004,

市内の状況

17日 ファルージャ在住のジャーナリスト、ファディル・バドラーニ,衛星電話を通じ赤旗の小泉記者と連絡.

 私が住民などから集めた情報を総合すれば、民間人の死者は少なくとも二千人はいます。私自身、民家で、米軍に頭を銃撃されて死亡した民間人五人の遺体を発見しました。千人以上の武装勢力を殺害したとする米軍の発表は誤りです。米軍は多くの死体をユーフラテス川に運び、遺棄しています。戦車は路上に放置された多数の死体を踏みつぶしています。野良犬や猫が路上の遺体をあさっています。今も住民約十万人が市内にとどまっていますが、食料も医薬品もなく次々に死んでいます。多くは子どもと女性です。米軍は赤新月社の市街地入りをいまだに許可していません。爆撃音による精神的ショックで死亡する住民も増えています。米軍は生き残った住民も野蛮に扱い、容赦なく拘束しています。ファルージャの惨状を伝えるジャーナリストは次々拘束されています。私自身も捕まるかもしれません。

 

バグダッド

17日 アラブ各紙が負傷者銃殺について論評.アルバヤン紙(アラブ首長国連邦)は,「この戦争犯罪に沈黙はできない」と題し,以下のように述べる.「良心は死に,正義は倒れ,法は強者の手に落ちたのであろうか.映像に移った行為は,あらゆる人間性と国際法の醜い侵害である.…今回の映像により,悲惨なファルージャが死臭漂う集団墓地となってしまったことが暴露された.…責任は銃撃した兵士だけが担うべきではない.軍指導部にこそ向けられるべきだ」

17日 バグダッドでシーア派のデモ.数千人が参加し,米軍によるカルバラのシーア派幹部事務所攻撃に抗議.

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17日 ヨルダンの軍養成学校の卒業式に出席するイラク人女性兵士(ロイター/Ali Jarekji)

 

スンニ三角地帯

17日 バイジで,米軍の車列を狙った自動車爆弾攻撃.イラク人15人が死亡、22人が負傷.反撃した米軍は製油施設を封鎖した。ラマディでも、米軍が武装勢力からロケット弾などで攻撃され、イラク人9人が死亡、15人が負傷した。

 

アメリカと世界

17日 米議会上院,国債発行などによる連邦債務の法定上限を8000億ドル引き上げ8兆1840億ドル(約851兆円)とする法案を賛成多数で可決.政府の一部機能停止に陥りかねなかった資金繰り難が、瀬戸際で解消される見通しとなった。米政府はイラク戦費と大型減税が重なったため債務残高が膨らみ、10月中旬に現在の債務上限にほぼ達した。財務省は連邦職員の退職年金基金への支払いを延期するなど緊急策を駆使して資金繰りを続けてきたが、それも18日には限界を迎えるとされていた。

17日 シラク大統領,英BBCとのインタビュー.ブッシュ米大統領とブレア英首相はイラク戦争によりテロリズムを活発化させたとして、「世界がより安全になったと言えるかどうか、まったく確信が持てない。テロリズムが活発化したことに疑いの余地はない」と語った。英首相報道官は「われわれの間には明らかな意見の相違があり、それを率直に認めるべきだ」と述べた。

17日 北大西洋条約機構(NATO),イラク内外の軍養成学校で1000人のイラク陸軍要員を1年にわたって訓練するための詳細な計画を承認.訓練担当者は300人前後とされるが,訓練担当者を警護する人員として、300人をはるかに上回る人数が必要.

 

 

11月18日

 

ファルージャ

18日 ファルージャ制圧作戦を指揮する米海兵隊第1遠征軍のサトラー司令官,バグダッドから衛星テレビ電話を通じて記者会見.

サトラー発言の要旨: 我々は家屋を1軒ずつ捜索して,武装勢力を粉砕し,彼らの聖域を奪った.これまでに武装勢力の約1200人を殺害し、1000人以上を捕虜にし,“武装勢力の背骨をへし折った”.ザルカウィの武装勢力は散り散りになり、弱体化した.ファルージャは,相対的に安全になった.武装勢力の完全掃討が終了次第、アラウィ首相に対し、住民が戻っても良いと勧告する.

18日 ニューヨーク・タイムズ,「抵抗勢力は今後さらに増大するだろう」とする米海兵隊の機密報告を報道.

18日 イラク駐留米軍,ザルカウィ容疑者が「司令部」として使っていたとみられる建物を発見したと発表.建物内部の柱には、アラビア語で「アルカイダ組織」「アラーのほかに神はなし」などと大書され、書類や写真、爆発物の材料となる薬剤などもあった.CNNは,ザルカウィ容疑者の「作戦命令書」とみられる文書が発見されたと伝えたが,米軍当局は「テロ司令部かどうか確認できない」としている(AP通信).

18日 暫定政府と駐留米軍司令官,ファルージャの制圧作戦は成功したと宣言.1世帯当たり100ドルの見舞金に加え、破損した家屋などの修復も補償すると述べる.

18日 英インディペンデント紙,ファルージャからの避難民の状況を紹介.

30万人のうち、10万人が アミリーヤ(Amiriyah) に、5万人がバグダッドに、2万人がカルマ(Karma) に、1.8万人が Nieamiyah に、1.2万人がハバニーヤ(Habbaniyah) に避難している.ユニセフなどはテント等の収容設備が全く足りていないと訴えている.
このうちハバニーヤは援助団体が近づくことも難しい。武装勢力が近隣にいるためきわめて危険である.ハバニーヤ難民の状況が極度に悪化し,水さえも不足していることは,イラク軍側も認めている.政府は、赤新月社が被害を誇張していると非難している.援助団体は,政府がさらに非協力的になることを恐れ、状況の公表に慎重にならざるを得ない.

 

バグダッドその他

 

 

武装集団の攻撃を受けた米軍(バグダッド市内)

18日午前 バグダッド市内西部の警察署前で,爆発物を積んだ車による自爆テロがあり、近くにいたイラク人女性ら2人が死亡、5人が負傷.車は近くを通りかかった米軍の車列を狙ったとみられるが、米軍は被害を免れる.

18日 イラク警察と国家警備隊,米軍の支援を受けてバグダッドのスンニ派武装勢力の拠点ハイファ・ストリート周辺を急襲、武装勢力とみられる104人を拘束した。うち9人はファルージャから逃亡した者とされている。 シリア人など外国人も含まれているという.

18日 武装組織「アンサール・アルスンナ」を名乗るグループ,来年1月の国民議会選挙について、「選挙に立候補する者は背教者とみなし攻撃する。聖戦士は異教徒の投票所を攻撃する」と宣言.

 

スンニ三角地帯

18日 モスルでは、武装勢力がニネベ州知事庁舎を攻撃.庁舎前で、ガソリンを積んだタンク車が爆発。庁舎に向かって迫撃砲が10発撃ち込まれた.この攻撃で警備員1人が死亡、4人が負傷.知事は無事だった。この庁舎は米軍などが武装勢力から奪回したもの.米軍基地も迫撃砲の攻撃を受けた。

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11月17日 シラク大統領(ロイター/Regis Duvignau)

18日 イラク治安部隊と米軍がモスル市内の掃討作戦.モスクや喫茶店に立てこもる武装勢力に攻撃を加え、15人を殺害し、45人を拘束した。

18日 モスルで,頭部のない身元不明の4遺体が見つかる。

18日 首都北方のバイジで道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発.通行中の乗用車が大破、女性や子供ら4人が死亡.

18日 北部キルクーク中心部でも、米軍車両を狙ったとみられる仕掛け爆弾が道路脇で爆発、イラク人2人が死亡、3人が負傷.

 

アメリカと世界

18日 シラク仏大統領、英国を公式訪問しブレア首相と会談.会談後の記者会見で、両首脳は中東和平やアフリカ問題などで一致して対応する方針を示す.

共同記者会見の要旨: シラク大統領は「英米の密接な関係は欧州の利益となる」と述べ、「大西洋の懸け橋」を英外交の目標に掲げるブレア首相の姿勢を支持した。大統領は英仏に緊張関係があるとした報道を「私自身や英政府の考えを反映していない」とも語り、英仏の良好な関係を強調した.
一方でイラク戦争については「歴史が判断する」とだけ語り、直接批判は避けたものの、仏独などの同意を得ないまま戦争に踏み切り、現在の混迷状態を招いた英米とは依然、距離があることをうかがわせた。
ブレア首相は「イランの核開発問題でも我々は共同して解決に当たり、成功した」と協調の成果を指摘。「中東和平でもコンセンサスができている」と一致して解決にあたる姿勢を示した。シラク大統領も「中東和平では米国、欧州がそれぞれ実行可能な協力を行う」と応じた。

18日 シラク・フランス大統領,ロンドンで講演.「力の論理による世界秩序は不安定であり、いずれは危機や紛争につながる.国際法に基づく多極的な世界秩序こそ安定につながる」と言明、その基盤として挙げた国連については、常任理事国と非常任理事国の双方を増やす安全保障理事会の拡大を支持する考えを示した。名指しは避けながらイラク戦争を主導したブッシュ米政権を暗に批判.さらに環境問題にも言及し、京都議定書をロシアが批准したことを「人類の未来に向けた偉大なステップだ」と称賛.来年の主要国首脳会議で「米国とともに決定的なステップを踏み出したい」と述べ、米国に議定書への復帰を求めた。

18日 ハンガリーのジュルチャニ首相,イラク派兵部隊300名の出来るだけ早い帰国の方針を明らかにする

 

 

11月19日

ファルージャ

19日 ジャラン地区のサクラウィヤ住民,民間人犠牲者の遺体を回収し埋葬する.放置された遺体は103体にのぼり,多くの女性と子どもが含まれていた.米軍は遺体の回収作業にあたり,武装メンバーの遺体を回収する許可を与えず.アメリカ兵は「レジスタンス戦士の死体は犬猫が食べるにまかせておけ」と指示したとされる.またイラク国家警備隊は,住民にむかって、「死人を拾いあげるがいい! これはお前らを待つ運命だ!」と嘲笑した(イスラム・メモの通信員)

 

19日、バクダット市内で自動車爆弾が爆発し、消火作業をする消防士=AP
19日、バクダット市内で自動車爆弾が爆発し、消火作業をする消防士=AP

バグダッドその他

19日 バグダッド東部ザユナ地区の繁華街で,検問の準備をしていた警察官をねらったとみられる自動車爆弾が爆発.警察と一般車両計3台が破損し,警官と通りかかった医師夫婦の計3人が死亡、13人が負傷した。犯人は自爆した.

19日 イラク治安当局,「武装勢力の暴力をあおっている」としてイスラム聖職者らの摘発を強化.イスラム聖職者協会のメンバーらが数人、シーア派のサドル師派も複数の聖職者が拘束された.

19日 イラク駐留米軍の支援を受けたイラク兵数百人が,バグダッド北西部アドハミヤ地区にあるアブハニファ・モスクを急襲.治安部隊は,スンニ派が米軍のファルージャ攻撃を批判し、武装勢力の攻撃をあおったことを理由にしている.

イスラム聖職者協会によれば,金曜礼拝の終わったところに,手りゅう弾を投げてモスクの扉を壊し治安部隊が乱入してきた.怒った礼拝者が「神は偉大なり」と叫びながら、靴を兵士らに投げつけ、撃退しようとしたところ、兵士らが銃を発砲した.スラム教では、靴を人に投げつける行為は非常に屈辱的とされる。この襲撃により4人が死亡、少なくとも9人が負傷.17人前後が拘束される.

11.19 ダール・ジャマイル記者,バグダードのモスクに米軍が突入した事件について目撃者の証言を紹介.

礼拝の最中に米軍兵士約50人がイラク国家警備隊員20人を引き連れてモスクに入ってきた.モスクの外には5台のハムビーとイラク国家警備隊員を乗せたトラック数台が待機していた.
「皆が、恐怖に陥ったので、“神は偉大なり”と叫び始めました。そのとき、米軍兵士たちが祈りをあげる人々を撃ち始めました!」 その後30人程の男たちが、フードを被され後ろ手に縛られて連れ出された。兵士たちは彼らを軍用車両に押し込み、連れ去った。
モスク内の壁のある一面に、飛び散った脳が飛散していた。また、カーペットの数カ所には大きな血だまりができていた。イラク赤新月社の医者は、礼拝していた人々の4人が死亡し9人が怪我をしたことを確認した.

19日午後8時半 サマワで市内をパトロール中のオランダ軍の車両に対し何者かが手りゅう弾を投げ付ける.オランダ軍が応戦し発砲.オランダ国防省当局者によると、手りゅう弾は爆発したが、オランダ軍兵士に負傷者はなかった。投げ付けたのは2人組で、兵士らが発砲した後、逃走した。地元警察によると、オランダ軍が車2台で走っていたところ、サドル師派の事務所の近くで攻撃を受けた。事務所周辺のパトロールに反発した同派支持者による犯行の可能性もある。

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11月20日 イラクのサマワで警備にあたる自衛隊員ら(ロイター/Kimimasa Mayama)

19日 アラブ圏の有力紙アッシャルクルアウサト,アルジャジーラの元バグダッド支局長の弟について報道.「フセイン元大統領の護衛で、10年前にアフガニスタンで国際テロ組織アルカイダに合流した後、01年のタリバーン政権崩壊後に帰国。ザルカウィの下でテロを指揮した」と指摘した。情報源は「イラク情報筋」としていた。アルジャジーラのバグダッド支局は8月から「偏向報道」を理由に閉鎖されている.

19日 アルジャジーラ,アッシャルクルアウサト紙の報道を真っ向から否定。元支局長の弟を出演させ、「私はいま24歳。どうして14歳の10年前に、大統領の護衛やアフガン渡航ができるのか」と反論させた。

 

スンニ三角地帯

19日夜 米軍,新編成のイラク人部隊400人を加え,モスクで掃討作戦を開始.24時間内に武装勢力15人を殺害,45人を拘束. 

19日 「イラク・アルカイダ機構」,イスラム系ウェブサイトに声明を出し、モスルで拉致したイラク国家警備隊幹部2人をのどを切って公開処刑したと述べる.

19日 モスルの食糧配給所が襲撃され、国民議会選挙のための有権者登録の関係書類が焼き払われる.

19日 サーマッラでも道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発し、市民2人が死亡。サーマッラは米軍などが武装勢力から奪還したばかり.

19日 ティクリートでは警察署が銃撃され、警官と市民計2人が死亡した。北部バイジでは、市民が狙撃され、女性1人を含む5人が死亡した。

 

ファルージャでの遺体収容作業

 

アメリカと世界

19日 アーミテージ米国務副長官,アルジャジーラとのインタビュー.「シラク大統領は我々が(イラクで)成功しないと思っているのか,成功することを恐れているのだと思う。イラクには関与しないとの決断を下しているためだ」と語る.シラク大統領は先週、米国のイラク侵攻で世界は一層危険になったとし、米政府を批判する発言を行った.

19日 米中東軍のスミス副司令官(空軍中将),国防総省で記者会見.国民議会選挙に伴い予想される治安悪化に対応するため、駐留米軍の規模を1旅団(5000人規模)前後増やすよう、国防総省に要請することを検討中だと述べた。ブッシュ大統領は現場の司令官の判断に基づき、必要な兵力、装備を投入する考えを一貫して示しており、正式な要請があれば、年内にも米軍の増強が実現する。

副司令官によると、現在の駐留米軍の規模は18旅団で約13万8000人。選挙対応で19旅団前後の規模にすることを検討中.これは昨年5月の「大規模戦闘終結宣言」当時とほぼ同規模の兵力となる.具体的な増員数については「最終的な決断が出るまで言えない」と言及を避けた。 選挙実施の見通しについては「ファルージャのような一部の都市で投票が行えないとしても、選挙は正当なものだと受け止められると思う」と語り、全土での実施が行えない可能性を示唆した。

「アルカイダ」と「イラクの聖戦アルカイダ組織」のザルカウィとの関係についてのスミス副司令官の発言(毎日新聞): 
ザルカウィが「アルカイダ」と連絡を取り合おうと試みている形跡がある.両者は過去にCDで情報を交換していた.こうした試みが今も続いていると考えている.今もザルカウィはイラクにいると,個人的には考えている.パキスタンとアフガニスタンの国境地帯などに潜んでいるとされるアルカイダ上層部と、相互に連絡を試みているものの距離が離れているので成功はしていないと思う.アルカイダ上層部が、ザルカウィ容疑者のイラクでの活動を指揮しようとしているかは不明だが、最近は戦術レベルの具体的指示はせず「大枠での構想や哲学を提示する形を取っていると思われる.

  

11月20日

ファルージャ

 

 

 

20日 サクラウィヤでさらに遺体収容活動が続けられ,さらに20体が埋葬される.遺体は黒く変色しているものと膨張して黄色く変色しているものがあり,いずれも外傷がなく,服装が乱れていないことから,2種類の化学ガス兵器が用いられたように思える.約22の遺体は犬と猫がかじったように見え、顔、手、腕、足から肉片がちぎられていたことから、容易に判別することができた。そのような遺体の一つは、完全に食べられたことが判るほど、ただ骨だけを残していた(イスラム・メモの通信員).

11.20 ファルージャの米軍,拘束した1450人の男たちのうち400人を非戦闘員と判断して釈放したと発表.21日にはさらに100人が釈放される予定.

 

バグダッドその他  この日のバグダッドはやたらとバンバンやったようで,情報が錯綜しています

20日未明 昨日モスク襲撃事件があったアドハミヤ地区で,ザルカウィ派武装勢力がロケット弾や小火器で警察署を襲撃.警官3人が死亡.

20日 バグダッド国際空港に通じる道路で自動車爆弾が爆発し.パトロール中の米兵1人が死亡,5人が負傷.

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11月20日 爆発した自動車爆弾の残骸を見守るイラクの人たち(ロイター/Ali Jasim)

20日 バグダッド西部のアムリヤ地区で,車に乗った武装勢力がイラク治安部隊に発砲.襲撃した者7人が死亡、通行人7人が負傷した。バグダッド市中心部では、自動車が爆発して2人が死亡.

20日 バグダッドで、公共事業省顧問ら同省の計4人が車で移動中、銃撃されて死亡.

11.20 イスラム聖職者協会のクバイシ師,アルジャジーラに寄稿.抵抗勢力の中心はイラク人である.外国人勢力が入ってきているのは事実だとしても、ザルカウィらが抵抗の主導権をとることはありえない.ファルージャの人々は、占領者と手をつなぐよりは命を犠牲にするほうが、また占領軍が彼らの家で楽しむのを見るよりは破壊される方が楽であり、もはや占領者と共に存在することはできない.もはや占領軍には二つの道しか残されていない.全ての信用を失いイラクに留まり続けるか、もしくは出て行くかである.

 

スンニ三角地帯

20日 「イラク聖戦アルカイダ組織」,イラク治安部隊員17人をモスルで殺害したとの声明を出す.

20日 米軍,ラマディに通じる道路を封鎖.市南部で建物の捜索.住民に武装勢力を引き渡すよう求める.

20日 米海兵隊,ラマディの検問所で警告を無視したとし,民間バスに発砲.民間人7人が死亡.現地警察によると、バスに銃弾などが積まれていたという。

日米首脳会談で、ブッシュ米大統領(右)と握手する小泉首相=AP
日米首脳会談で、ブッシュ米大統領(右)と握手する小泉首相=AP

20日 モスルで,後頭部を銃撃されたイラク兵9人の遺体が見つかる.モスル南部で、チグリス川から約2キロの地点.9人は軍服は着ていなかったが、モスルの西方約50キロにあるイラク軍基地に所属していたことが分かった。

20日 イラク駐留米軍当局,モスルで切断された遺体4体を発見、イラク側に引き渡した.3遺体は市北東部の道路脇で、残る1体は南西部で見つかった。遺体の身元は不明だが、武装勢力に拉致され殺害された可能性が大きい。

 

アメリカと世界

20日 チリのサンチアゴ市内のホテルで日米首脳会談.小泉首相は、12月14日に期限切れとなる自衛隊派遣の延長については明言を避ける.

記者会見のイラクに関する部分: 首相は「イラク復興支援は継続したいが、どのような支援をするかは日本にまかせてほしい」と発言。大統領は「当然だ」と応じた。また、首相は「イラク復興では国際協調を強化していくことが重要だ」と米国が欧州などと連携するよう注文をつけた。また「大統領が国際協調の枠組み強化に強い意欲を持っていることを心強く思う」と感想を述べた。

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11月20日 ワルシャワで記者会見に臨む同首相と解放された女性(ロイター)

 

20日 チリ・サンティアゴでの米韓首脳会談.ブッシュ大統領は韓国軍派兵の「英雄的な寄与」に謝意を表明.

11.20 バグダードの自宅から拉致されていたポーランド出身・イラク在住の女性Teresa Borcz Khalifaさん(54歳)が解放される.空路ワルシャワに戻り,マレク・ベルカ首相とともに会見.Borczさんはイラクの男性と結婚して市民権も取得,30年間イラクに住んできた.先月27日、無名に近い武装組織に拉致されていた。武装組織は、イラク駐留ポーランド軍の撤退を要求していたが、ポーランド政府は応じなかった。

 

11月21日

ファルージャ

21日 米軍,武装勢力が保有していた武器を公開.民家や学校など、さまざまな場所に隠されていた。第2次大戦時に製造されたドイツやロシアの機関銃もあった。ファルージャの警官が、迫撃砲や地雷、地対空ミサイルを隠し持っているのも判明したという。

21日夜 米海兵隊のウエスト少将が記者会見.ファルージャへの総攻撃開始以来これまでに、武装勢力が外国人人質の拉致・殺害などに使用していた民家約20軒を発見したと明らかにした。米軍の情報将校が記者団に対して血の飛び散った壁や床の映像・写真を見せ、「おぞましい場所で殺人と拷問が行われていた。発見時、壁に鎖でつながれていた人質もいた」と語った。

報道によれば,9月中旬にバグダッド市内でザルカウィ容疑者率いる武装組織に拉致され、首を切断して殺害された英国人技師ケネス・ビグリー氏や、同僚の米国人ジャック・ヘンスリー氏とユージン・アームストロング氏を拘束していた場所も含まれているという。


 

Nov. 17, 2004,. (Lucian Read / World Picture News)

 


21日 バグダッドの米国大使館,日本大使館に香田さんのパスポートなどを手渡す.米軍がファルージャを総攻撃し、武装グループを捜索した際に家屋内で発見されたという.

21日 アルアラビーヤ,ファルージャ内部で抵抗を続けている武装勢力の状況を,イラク人“戦士”のインタビューとともに伝えた。同市周辺の武装勢力4人とのインタビューによれば,西側を流れるユーフラテス川を泳いで脱出した戦士も多い.脱出後も、包囲の外側にいる仲間に市内の米軍の位置を伝えるなどして抗戦を続けている.自爆攻撃の準備をしていたという男は「われわれがいた(同市南部)シュハダ地区には、50人から70人の戦士がいた.弾薬は底を尽き、多くはひどく負傷している」と話した。またファルージャには外国人戦士は100人程度しかおらず、ほかはみなイラク人だったという。

 

市内の状況

21日 @米軍は現在も深夜から早朝にかけて空爆を続けている.A市街はほぼ100%破壊された.B電気・水道・通信・道路など生活インフラも100%破壊された.「昨日はサクラウィヤの住民が中心部に救援にきて,路上の遺体76体を回収した.ほぼすべてが女性や子供,老人と見られる.米軍はナパーム弾のような兵器を使っており,死体は見るも無残な状況だった.先日,モスクの中で非武装の負傷者が海兵隊員に銃殺される様子が放映されたが,ファルージャ全域で起こっているのは,それよりもさらに醜いものだ.2日前にも米軍は民家を襲撃し,家族7人を銃撃した.唯一殺害を免れた20歳の女性も両足を失った」(バドラーニ=赤旗)

21日 ファルージャ総合病院長,「赤新月社の援助隊に加え,医師20人と救急車20台が病院まで到着している.しかし立ち入りは許されていない」と語る(バドラーニ=赤旗)

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11月21日 武装グループに拉致されていたアラウィ首相のいとこが解放された ロイター/Ceerwan Aziz

11.21 アルジャジーラ,ファルージャでの遺体回収作業に参加した,ファルージャ近くのサクラウィヤ村の住人とのインタビューを放映.彼らは73人の女性と子どもの遺体を埋葬する手伝いをしたという。遺体は、誰が誰だかわからないほど焼けていたという。別の住人たちによると、何百人もの遺体が路上に放置されたままになっており、野犬の群が遺体を食べているという。

11.21 ヨルダン駐在の国際赤十字委員会報道官ムアイン・カシスは,アルジャジーラに「ファルージャの人道状況は極めて深刻である.水も電気もない。町の内部に取り残された怪我をした家族に医療を施すこともできない」と語る.

 

バグダッドその他

21日夜 アラウィ首相の事務所,ガジ・アラウィ氏(75)が「解放され、現在バグダッドで家族とともにいる」と発表.午後5時にバグダッド市内で解放されたという。解放の理由、経緯は不明.

ガジ氏はアラウィ首相の従兄弟.中部ファルージャでの軍事作戦が始まった直後の9日、妻と義理の娘とともに拉致され、翌10日、「アンサール・ジハード(聖戦の支援者)」を名乗る組織が犯行声明を出し、ファルージャ作戦を48時間以内に中止するよう要求、受け入れられない場合は3人を殺害すると予告していた。妻と義理の娘は15日に解放されている。

21日 イラク独立選挙管理委員会のファリド・アヤル委員,フセイン政権崩壊後初の直接選挙となるイラク移行国民議会選挙を来年1月30日に実施すると発表.
 

国民議会は275議席で比例代表制で選出される。同議会は移行政権を選ぶほか、新憲法を起草。国民投票で新憲法が承認されれば05年末までに総選挙が実施される。 @スンニ派地域で治安が一層悪化,Aスンニ派地域で選挙の延期やボイコットを求める声が多い,B選挙を支援する国連要員の復帰も難しい状況.など課題は多い.


21日 バグダッドの米大使館,国際空港の民間航空機内で手製爆弾が発見されたことを明らかにする.米大使館は米国民に対し、イラク入りの際に民間機を利用するかどうかをふくめ、渡航計画を見直すよう注意を呼びかける。

11.21 イラク保健省とノルウェイの応用国際研究所、国連の調査によると、5歳未満のイラクの子どもたちの栄養失調が、7.7%に急増.また下水システムが崩壊した結果,地方住人の60%と都市住人の20%が汚染された水にしかアクセスできていない.(ワシントン・ポスト紙)

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21日 バグダッド近郊で監視任務にあたる英軍ヘリ (ロイター/Damir Sagolj)

 

スンニ三角地帯

21日 イラク駐留米軍,モスル南部で20日、イラク兵の9遺体が、21日には市内の路上で3遺体が見つかったと発表.12人はいずれも頭部を銃で撃たれていた.近郊の基地に所属していた兵士が武装勢力に拉致、殺害されたとみられる.3遺体のそばには、3人はクルド人兵士だと書いた紙片が残されていた.

21日 ザルカウィ過激派組織,モスルの治安維持にあたる治安部隊の兵士17人を殺害したとの声明を発表.

21日 米軍,ラマディに通じるすべての道路を封鎖.住民たちにラウドスピーカーで,テロリストたちを引き渡すよう呼びかける.ラマディで国家警備隊の車列が武装勢力により待ち伏せ攻撃.兵士9人が射殺され,17人が負傷.

21日 イラク国家防衛隊とイラク警察,週明け以降、バグダッド南方からバビル県にかけた武装勢力の支配地域に対する共同作戦を展開すると明らかにする.米軍との協力を含めて作戦の具体的内容は不明.

21日 バグダッド南郊のラティフィヤで、武装勢力に殺害されたとみられる12遺体が発見される.遺体は町の運河や畑などで発見された。5遺体は頭部が切断され、残りは頭部を後ろから撃たれていた。1人は、4週間前に自宅から拉致された国家警備隊員とみられているが、他の身元は不明という。付近は武装勢力の事実上の支配下にあり、外国人やイラク治安要員、イスラム教シーア派幹部、暫定政府要人などへの襲撃が頻発している。このため、米軍などが近く、本格的な掃討作戦を始めるといわれている。

 

アメリカと世界

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21日 イラクの韓国兵。10月撮影 (ロイター/Sasa Kralj)
21日 ブッシュ米大統領,ラゴス・チリ大統領との首脳会談後、共同記者会見.「われわれは正しいことをしており、歴史もこれを証明するだろう」と述べ、大統領に再選された自信を背景に対イラク政策で米国への支持をあらためて訴える.ラゴス大統領がイラク戦争に反対したことについて、ブッシュ大統領は「彼の意見は尊重する」と述べる一方、「私の(開戦)決定に賛成しようがしまいが、フセイン元大統領が政権の座にいなくなったことで世界は平和になり、イラクを民主国家にすることが重要だという2点については、同意しなくてはならない」と言明.

21日 韓国の潘基文・外交通商相,ロイター通信に、「軍の駐留期間は12月31日に終了する。政府はこの問題について、関係機関と真剣な検討に入っており、近く決定が下されるだろう」と語り,イラク復興に積極的に取り組んでいるとの姿勢を表明.

21日 エジプト東部の保養地シャルムエルシェイクで,主要8カ国(G8)とイラク周辺国など約20カ国の外相会議.イラン、サウジアラビア、クウェート、トルコ、シリア、ヨルダンに加え、日米欧の主要八カ国、アラブ連盟、国連、欧州連合(EU)が参加する。

予備折衝での論点: 会議の第一の柱はイラク国民議会選挙を支援すること.第二の柱は,イラク周辺国が国境管理を強化し,武装勢力の侵入を防ぎ,不正な武器・資金の流入を阻止すること.仏外交筋は,多国籍軍の存在が「非武装、武装にかかわらず、あらゆる反政府勢力の共通の口実」とし,多国籍軍の早期撤退の可能性を盛り込むことを主張.

21日 日米欧など19か国で構成されるパリクラブ(主要債権国会議),イラクの対外債務を3段階で80%削減することで合意.

イラクの対外債務の総額は現在、1200億ドルで、その約3分の1の389億ドルがパリクラブ諸国に対するもの。パリクラブはイラクの対外債務について今年と来年で各30%、2008年に20%をそれぞれ削減、同国の対外債務を78億ドルにまで減らす。パリクラブ以外のサウジアラビアなどもこれに追随する方針.外務省によると、日本のイラク向け公的債権は、遅延損害金を含めて計約73億ドル(約8700億円)。このうち80%相当を放棄すると、債権放棄額は単純計算で約58億ドル(約7000億円)にのぼるとみられる。

 

11月22日

ファルージャ

22日 海兵隊第一遠征軍当局者,「死んだふりをした後に米兵に発砲してけがを負わせた武装勢力の男を,米海兵隊員が射殺した」事件について概要を発表.13日の負傷者射殺事件に対する対抗宣伝と見られる.

22日 負傷者射殺事件をビデオ撮影したフリーランスのケビン・サイツ記者(米NBCテレビと契約),詳細をインターネット上で公表.http://www.kevinsites.net/

サイツ氏は前日にも現場に入っていた。戦闘で殺害された武装勢力10人の遺体のほかに、米海軍の衛生兵から包帯を巻かれるなどの治療を受けたイラク人5人がいた。負傷者はその日はモスクに残された.
13日朝,モスクに向かうと、中にはすでに別の隊員がいた。その隊員は指で、イラク人らが中に5人いることを示した。駆けつけた隊員が「撃ったのか」と聞くと、「そうです」。「武装していたのか」と尋ねると、肩をすくめて否定した。
モスクにいたイラク人ら5人は、前日に治療を受けた人々だった。1人はサイツ氏が到着した時にすでに射殺されていて、3人が銃撃を受けて血まみれで瀕死の状態にあった。残る1人だけは新たに撃たれた形跡がなく、前日と同じ毛布をかけられて横たわっていた。5人が武器を持っている様子はなかった.
サイツ氏が、血を流しながら壁を背に座っていた老人と、その隣の男を撮影していると、隊員の1人が4、5メートルほど離れたところにいた別の負傷者に近づいた。「死んだふり」の言葉を叫んで射殺した後、「さあ、これで死んだ」と言った。隊員は撮影されていたことに後で気づき、「(あなたがいるのを)知りませんでした」と怖がるような様子で話したという。

 

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11月22日 米軍がファルージャ市内で、武装勢力の人質拘束部屋を発見 ロイター/Mohanned Faisal)

バグダッドその他

22日 アラウィ首相,「治安対策を講じ、1月選挙実施とイラク国民全員の投票を目指す決意である」と述べる.またファルージャ掃討作戦で反政府勢力を壊滅させたとし、ザルカウィらの武装組織が再編成するのは困難になった、との認識を示す.

22日 バスラで,バース党の幹部だったバスラ大学元薬理学部長の男性が、何者かの銃撃を受けて死亡した。男性は自分が経営する薬局を出たところを、警官を装った制服姿の男に撃たれたという。バスラ市内では同日、パトロール中の警官も銃撃を受けて死亡した。

 

スンニ三角地帯

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11月22日 バグダッドで民間人1人が死亡した迫撃砲攻撃後、破壊された車のそばで遊ぶ子供たち (ロイター/Ali Jasim)

22日夜 サマラでは、路上爆弾で通行人1人が死亡.

22日 モスルとバクバ近郊で、イスラム聖職者協会の広報担当者のフェイド・ムハンマド・アル・フェイディ兄弟が走行中の車から狙撃され死亡.二人は米占領軍の支持者だったとされる.ザルカウィはイスラム系ウェブサイトで「彼らは聖戦士を裏切った」と述べ、殺害の実行を示唆.

22日 イラク駐留米軍,モスル郊外で、地対空ミサイルや迫撃弾などを含む武装勢力の大量の武器を発見したと発表。爆弾製造に必要な物質がまとまって貯蔵されている建物もあったという。

 

アメリカと世界

22日 イラク支援国閣僚会議の本会議.辞任が決まったパウエル米国務長官のほかアナン国連事務総長、アラブ連盟、イスラム諸国会議機構(OIC)、欧州連合(EU)の代表も参加.

会議の概要: 
@国民議会選挙について 米国などは「(選挙の)実施を遅らせるべきではない」と主張.国際的なイラク支援体制を構築し民主化過程の推進を目指す。これに対し,暫定政府内からでさえ「治安が改善されない状況で1月に実施するのは困難」との観測が広がる.
A選挙ボイコット勢力の参加問題 フランスやシリアなどは、スンニ派を選挙に参加させるよう努力すべきだと主張.「暴力を否定するすべての者が政治・選挙プロセスに参加すべきだ」とされる.そのため「選挙前のできるだけ早い時期に、イラク政治諸勢力の代表や市民の代表者を集めて話し合うべきだ」と提案.
B撤退問題 シリアやイランは,「米軍の駐留こそが地域の不安定要因.米軍による過度の攻撃こそが住民の反発につながり、暴力の連鎖を呼んでいる.まず撤退のスケジュールを示すべき」と主張.当面,「全当事者が過度の武力行使を避け,一般市民を害する暴力を避けるよう最大限の自己抑制を要請する」という表現で妥協.

22日 スンニ派部族の有力者マズハル・ドレイミ氏ら,シャルムエルシェイク入り.イラクにおけるテロを非難するとともに,米軍によるイラクでの無差別攻撃の即時中止,占領状態の終結を求める.会議への参加を認められず,滞在を拒否される.イスラム聖職者協会のダーリ事務局長,サドル派幹部も「会議は占領を正当化し,支持するものだ.イラク国民になにももたらさないだろう」と批判,

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 11月22日、ジャクソン英陸軍参謀長は、英軍のイラク撤退期限について明言を避け、より危険な地域に英兵を再配備する可能性を示唆。写真は21日、任務のためバグダッド南方の砂漠にヘリで向かう英兵ら(2004年 ロイター/Damir Sagolj)

22日 イラク暫定政府のジバリ外相は、町村信孝外相と会談.「サマワにいる自衛隊はすばらしい働きをしている。日本がイラク国民とともにあるというシンボルであり、政治プロセスが完了するまで自衛隊にはイラクにとどまってほしい」と述べ、来年末の正統政府樹立までの駐留継続を要望.町村外相は「現在、12月中旬の駐留期限延長について国内で論議している.困難なときに助けるのが真の友であり、今後とも支援を続けていきたい」と答える.

22日朝 ポルトガルのサンチェス内務相,「何が起きるか分からない」と駐留再延長の可能性をにおわせる.90日間の延長を決めたばかりの議会は一斉に反発.同じ日の午後,サンタナ・ロペス首相は,駐留部隊の交代要員の出発式後に記者会見.「イラクで努力を継続するとしても別の形態になり、今回が最後の部隊となる」とし,国民議会選挙の後、駐留期限を延長せずに撤退させる考えを示す.総選挙後は治安部隊の訓練などで協力する意向.

22日 英陸軍トップのジャクソン参謀長,「われわれのイラク駐留期間は、現地での状況次第。任務は政治経済面でイラクに未来を与えることだ」とし,安保理決議がイラクの多国籍軍の駐留期限とした2005年末以降も、英軍が駐留する可能性を示唆.さらに,情勢が比較的安定しているバスラとその近郊から、より危険な地域に英兵を再配備する可能性にも言及。(英紙インディペンデント)

 

 

11月23日

 

ファルージャ

23日 米国防総省,昨年3月のイラク戦争開始以来、負傷した米兵の数が9326人と発表。ファルージャ掃討作戦での負傷者は868人.開戦以来の死者数は1228人となる.

23日 マイヤーズ米統合参謀本部議長が記者会見.「ファルージャはもはやテロリストの牙城ではない」と述べる.同席したラムズフェルド国防長官も、「国民議会選挙が近づくにつれ、武装勢力の攻撃がさらに激しさを増すことは疑いない」としながら、駐留米軍の増強などによる治安確保に自信を示す.

11.23 バグダッド大学構内のファルージャ難民キャンプ(約150家族)で,責任者アブ・ハマドはダール・ジャマイルに語る.

アメリカ人は,ファルージャから退避したければモスクに来るようにとアナウンスした。一般市民はモスクに行った.だが白旗を持った老婦人がアメリカ人に殺された.負傷者までも殺された。食べるものもない,電気もない,水もない.ろうそくを灯すことすらできなかった。アメリカ人が火を見たら殺されるから.
ファルージャに留まっていた者はみな,アメリカ人に殺されると思った,だから川を泳いで渡ろうとした。泳げない人ですら川を泳いで渡ろうとした.アメリカ人に殺されるために留まるよりは,溺れ死ぬことを選んだ.それでさえ,アメリカ人は岸からライフルで撃った.

バグダッドその他

 

Fallujans in Baghdad camp

 

23日 アッシャーラン国防相,アッシャルクルアウサト紙の取材に応える.アルジャジーラを「テロリズムの放送局」と断定、「言葉でなく(実力で)対抗する時に来ている」とまで述べた。武装勢力の掃討作戦をめぐって同テレビは「市民被害」に焦点を合わせた報道を続けており、国防相の神経を逆なでしていた.

23日 イスラム聖職者協会のガリブ・アッ・ズハイル師,中部バクバ近郊のミクダディヤで,武装した男たちに襲われ暗殺される.イスラム聖職者協会の役員は,米占領軍と国家警備隊によって暗殺と拘束の標的にされている.

 

スンニ三角地帯

23日 米、英、イラク軍、計5000人規模の部隊を動員、バグダッド南方で新たな掃討作戦を開始.「プリマス・ロック」作戦と名づけられる.中部ファルージャ、北部モスルに次ぎ、今月3カ所目となる大規模作戦.バビル県北部一帯で活動するスンニ派武装勢力を狙ったもの.この地区の高速道路周辺は、米・イラク軍や外国人に対する武装勢力の襲撃が頻発している。

死の三角地帯: マハムディヤやラティフィヤなど首都南方の一帯は「死の三角地帯」と呼ばれる.フリー記者の橋田信介さんが殺害されたあたりで,イラク国内でも武装勢力の活動が極めて活発な地域.武装勢力が事実上支配しているといわれる。警官が追放され、武装勢力や強盗団による襲撃が頻発。チグリス川とユーフラテス川の間の主要ハイウエーがあることから、バグダッドと南方のシーア派地域との交通が妨害され、イラクが二分される可能性が浮上している。 

23日 米軍,南方掃討作戦の皮切りとして,バグダッド南約80キロにある町ジャバラ(別の報道では「ヒッラの北方の村」となっている)を掃討.武装勢力32人を拘束.この後スンニ派が制圧している地域に到達する日程。

23日 サマラで武装勢力と米軍の間で銃撃戦.イラク人とみられる男性1人が死亡、子ども2人が負傷.サマラは10月初めに米軍が「制圧」を宣言したところ.

 

アメリカと世界

23日 イラク支援国閣僚会議,「国連の主導的役割のもとで,国際社会の一致した支援姿勢」を打ち出す共同声明を採択して閉会.@政治プロセスでの国連の主導的な役割を強調する.A来年1月末までの選挙実施を確認.B撤退問題では,「安保理決議の政治プロセスに従って終了することを再確認する」とし,「(駐留は)無期限ではない」と指摘.(今年6月採択された国連安全保障理事会決議1546号は,駐留軍の合法性が2005年末の本格政権樹立に伴い失効すると明記)

23日 イラク支援国閣僚会議を受け,国境管理に関する周辺国の内相会議が30日にイランのテヘランで開催されることとなる.ただしイラク暫定政府が,「シリアなどが国境管理を十分に行っていない」と批判するなど,合意の履行は難航が必至とされる.

23日 韓国政府,韓国軍部隊の駐留期限を2005年末まで1年間延長することを決定.韓国軍は現在、北部のクルド人自治区アルビルに約2900人が展開しており、後発部隊約700人も近く韓国を出発し、米英に次ぐ規模の約3600人の兵力となる.

 

11月24日

ファルージャ

24日 21日に釈放された,ファルージャ在住のアブドルカデル・サアディ氏(AP通信契約記者),拘束中に米軍から受けた扱いの模様を語る.サアディ氏は作戦開始後も自らの意思で市内に残ったが、11日に米軍に投降した.彼はイラク国家保安隊がモスクのスピーカーで,市民にモスクに避難するように呼び掛けたのを聞き、自宅から退避した。その途中で,女性や子供が射殺されるのを見た。モスクでは全裸で身体検査をされ、最初の2日間は一切食事を与えられなかった.

24日 ファルージャからの脱出に成功したバドラニ記者がBBCに投稿.

市に残された人たちがどれほど互いに助け合ったか,それを忘れることは決してないでしょう。同じ家にいた人たちとは,非常に仲良くなりました。誰もが,死が訪れるときは私たち全員に訪れるであろうということがわかっていました――今この瞬間にも,私たちは全員,同じ爆弾でやられてしまうかもしれないのだ,と。
ファルージャは,イラクの諸都市と比較して,貧しい都市ではありませんでした。けれども,ファルージャの家屋の多くは今では土くれになってしまっています。戦争で傷を負わずにたっている家は,まずないでしょう。どこを見ても,銃痕があり,焼けた痕があり,壁には大きな穴が空いています。多くの人々が,庭に花を植えていたものでした。ですが薔薇は枯れ,庭は墓場となりました。

24日 海兵隊員が無抵抗のイラク人を射殺した事件で,米軍は発砲に正当性があったかどうかの調査に着手.隊員は戦闘の前線から外された。

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11月24日 総攻撃によって破壊されたファルージャのスンニ派モスク (ロイター/Akram Saleh)

11.24 イラク赤新月社,ファルージャに事務所を置き、翌25日から援助を開始すると発表.

 

バグダッドその他

24日 イラク・イスラム党などスンニ派7政党,国民議会選挙の延期を求める声明を発表.延期期間は「発令中の国家非常事態宣言が解除され、同派とシーア派、クルド人の(待遇の)違いが解消されるまで」としている。声明は「われわれは政治プロセスへの参加を確認する」と述べ、選挙をボイコットする可能性には触れていない。

24日 国民議会選挙へ向けた政党・組織の資格審査届け出が締め切られ、イラク独立選挙管理委員会は届け出のあった212件のうち156件を承認した。審査で承認された政党には、暫定政府に参画する主要政党や、スンニ派有力政党であるイラク・イスラム党と7つの小規模な政治・部族グループ、ヤワル大統領の新党などが含まれている。

選挙は275議席を比例代表方式で選ぶ。12人以上の候補者名簿を提出した政党・組織が争う形のため、今後、各党間で統一名簿作りなどの協議が加速していく見通しだ。国民議会は新憲法案を作成し、国民投票を通じて新憲法を制定。それに基づいた選挙を来年末までに実施して、正式な政府が誕生する見通し。

 

スンニ三角地帯

24日 米国とイラク軍,バグダッド南西のスンニ派抵抗勢力の掃討作戦を一段と強化.バグダッド南方作戦は,「死の三角地帯」をすべてカバーする大規模作戦になると述べる.作戦はラティフィヤ、マフムディヤなど武装勢力の拠点を標的として掃討していく計画.

24日 モスルで,ニナワ州副知事の車列が武装勢力による襲撃を受け、護衛と治安部隊員の2人が死亡、護衛2人が負傷した。副知事は無事だった。

 

アメリカと世界

24日 国防科学委員会(米国防総省の諮問機関),米政策を浸透させるための対外宣伝の改善について勧告.アフガンとイラクへの進行がイスラム世界の反米感情を強めていると指摘.「戦争は,欧州で米国への不信を強め,世界中で対テロ戦争への支持を弱め,米国の信頼を傷つけている」と述べる.また米国の広報外交は「危機」にあり,米国は「傲慢,偽善,わがままだと受け止められている」が,ブッシュ政権はこうした問題に「ほとんど注意を払っていない」とする.


11月25日

再来日したサレハ君(中央)=成田空港で
再来日したサレハ君=成田空港

ファルージャ

25日 ダウード国務担当相(国家安全保障担当),ファルージャの戦闘での死者が2085人,拘束者数は1600人を超えることを明らかにする.また、ザルカウィ容疑者の側近アブ・サイドを北部モスルで拘束したと述べる.このほか、イラクの治安部隊がファルージャで化学兵器の製造工場を発見したと発表.米軍はこの発言を否定.

25日 日本で左目の手術を受けて帰国したイラクのモハマド・ハイサム・サレハ君(10),再手術を受けるため、航空機で成田空港に到着.サレハ君はファルージャの在住.現地の模様について、「攻撃で隣家の2人が死んだ。疎開のため、日本からのお土産もすべて残して逃げた。元の生活に早く戻りたい」と話した。一緒に来日したおじ、ワリード・サレハ・モハマドさんは「ファルージャにはまだ何万もの人が残っている。人々は過酷な生活を送っている」などと語った。

11.25 ファルージャからバグダッドに到着したアリ・アッバス医師,インディペンデント紙のインタビューに答える.

診療所が爆撃された理由はわかりません。ファルージャ総合病院の同僚たちが米軍に話をしており、米軍は診療所を攻撃はしないはずだと言っていたのです.私は家々をまわり、怪我をした人々を助けようとしました。多くの人が私たちの目の前で死んでいきました。私たちは薬もなく、手術をする設備もなかったからです。私たちはファルージャ病院の医師に連絡し、ひどく状況が悪いことを伝えました。彼らは米軍に阻止されていると言いました.
私たちが最も注目したのは、米軍の狙撃手に殺された人々が多数いたことです。男性だけでなく、女性や子どももいました。最も小さな犠牲者は4歳の少年でした。これらの人々のほとんど全員が、頭か胸、あるいは首を撃たれていました.

 

バグダッドその他

25日 独立選挙管理委員会,スンニ派の政党登録期限を1週間延期.

25日 サマラで,道路際のしかけ爆弾でイラク警備隊員の乗った車が破壊され,隊員2人が死亡.

アメリカと世界

25日 町村外相,オランダ軍撤退後のサマワの治安維持に関し,「多国籍軍でイラク南東部に責任を負っているのは英国だ。今後、英政府、イラク暫定政府とも話し合っていく」と述べ、英軍などが治安維持を担うとの見通しを示す.

 

11月26日

ファルージャ

 

 

 (Lucian Read / World Picture News)

26日 武装勢力が、家宅捜索中の米海兵隊に手投げ弾を投げつけ、海兵隊員2人が死亡.この時の衝突で武装勢力3人が死亡.

バグダッドその他

26日 スンニ派やクルド勢力など17政党,国民議会選挙を六カ月延期するよう求める声明に署名.このなかにはパチャチ元外相など暫定政権与党メンバーもふくまれる.アラウィ首相が党首を務めるイラク国民合意のアルアワディ書記長も、延期に同意する姿勢を示す。

26日 イラク中央選管のアヤル報道官,候補者届けの提出期限を11月末から12月10日まで延長したと発表.また政党の登録申請も11月末から12月2日に延長.また選挙延期提案については,「憲法にあたるイラク基本法で決められたことなので、暫定政府にも諮問評議会にも、その延長を決める権限はないはずだ」との見方を示す.

アメリカと世界

26日 国連のエッカート報道官,選挙の期日について、「決めるのはイラク人だ」と言明。「国連の役割はあくまでも支援することのみだ。しかし選挙が実施される環境は重要で、時期についてもイラク人の総意が必要だ」と、主要政党との合意が必要だと指摘する.

26日 ブッシュ米大統領,テキサス州クロフォードで記者団に対し、「予定通り1月に(選挙が)行われるよう期待している」と述べる.

 

11月27日

ファルージャ

27日 イラク赤新月社,ファルージャ攻撃による犠牲者が6千人を超えている可能性があると発表.「死体が多いため街の中を移動することが困難だ.食料の包みを受け取る時,人々は大声をあげて泣かんばかりである」と述べる(BBC放送)

バグダッドその他

27日 ナキーブ首相報道官,予定通りの選挙実施の姿勢を強調.「アラウィ首相は延期を望んでいない.選挙を延期しても、参加者が増えるとは思えない.イラクの安定と民主化には、全てのイラク人が選挙に参加することが必要だと考えている。(延期を主張する)政党も参加するよう、引き続き折衝を重ねていく」と述べる.シーア派のアッダワ党幹部アセリ氏は「治安状況は良好と考えている。もし選挙を延期すればテロリストを勇気づけるだけだ」とし,延期論に反対.

27日 ジョルディース内閣報道官,選挙延期要求の声明が出された背景を説明.「より多くの有権者が参加できる方がイラクの国民世論を反映した選挙になる.今の治安状況を見れば、選挙を行うのによい時期とは言えない.クルド政党も,より幅広い国民参加の機会をつくるため延期を要求した.問題は(暫定憲法により)暫定政府は来年一月末までと定められていることだが,各政党とアラウィ首相が合意すれば延期できると思う」と語る.

27日 バグダッドで3カ所で爆弾が爆発し、5人が死亡.最初の爆発は午前8時45分ごろ、イラク中央銀行前であり,通行人2人が死亡.警察は、銀行職員が標的だったと語る.

27日 駐留米軍、モスルで新たに17人の遺体が発見されたと発表.武装勢力に殺害されたとみられる。モスルでこれまで8日の間にみつかった遺体は、これで57になった。

アメリカと世界

11月28日

ファルージャ

11.28 英デイリー・ミラー紙の政治担当編集者ポール・ジルフェザー,「米軍は,ファルージャで残存勢力を一掃するため,秘密裡にナパーム・ガスを使っている。民間人がナパーム弾の攻撃で,燃えながら死んでいる.ブッシュ大統領がナパームの使用を公認したというニュースは、世界中の政府に衝撃を与えるだろう」と報告.ナパームは,ポリスチレンとジェット燃料の混合剤.ジェル状のボンドが肉に粘着し人間を火の玉とする.その残虐性から,1980年に国連で使用を禁止されている.

11.28 ダール・ジャマイルがバグダッドのファルージャ難民キャンプでインタビュー.キャンプの責任者アブ・アハメドは,「私たちは家のない難民です.70歳の女性がオサマ・ビンラディンでしょうか.子供たちがビンラディン一派のテロリストだと? 子どもは,アメリカ人を憎悪しながら成長するでしょう。70歳の女性は『アメリカ人に神罰を!』と言っています」 27歳のアジズ・アブドゥラは「多くの一般市民が殺されました。通りで負傷者たちを戦車が轢くのも見ました」と語る.12歳の男の子は,「アメリカ人が僕たちの町を粉砕し,数千という人々を殺し,僕たちのモスクや病院を破壊した.どうしてです?」と言う。

バグダッドその他

28日 サマラで,米軍車列に道路脇のしかけ爆弾.イラク人5人が死亡,4人が負傷.バグダッド空港道路でも,米軍車列に自動車による自爆テロ.米兵二人が負傷.

 

11月29日

11.29 イラクの大学人,ジャーナリスト,政治家ら十六人が,共同声明を発表.@イスラム聖職者協会などの呼びかけた国民議会選挙のボイコットを支持する.A暫定政府は,米軍事作戦への協力を止め,国民への抑圧を中止し,国民の完全な自由を保障せよ.B「米国流の戦闘機と戦車による民主主義を断固拒否」し,暫定政府による占領継続の要請をやめるよう求める.

11.29 バグダッドではガソリンのヤミ価格が総攻撃前の10倍に急騰.燃料危機はすべての物価を押し上げている.スタンドには数マイルに達するガソリン待ちの長い列.給油には8時間かかる.しかも自分の番が来るまでにガソリンが尽きてしまわないという保証はない.目覚まし時計のように規則的に毎朝7時に始まる銃撃戦.(ダール・ジャマイルのウェブログ)

11.29 バグダード北西部で路上爆弾が爆発し,兵士2人が殺され3人が負傷.バグダッド北方のアラズ付近で道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発.監視パトロール中の米第一歩兵師団の米兵1人が死亡.イ

29日 ラク東部のクット近くでは「車両の事故」のために兵士1人が死亡し2人が負傷.ラマディ西部で,警察署に自動車爆弾.警察官など12人が死亡.

29日 米軍,バグダッド南部作戦で,米兵5人の死亡を発表.また武装勢力の迫撃砲攻撃で、米海兵隊員13人が負傷したことも明らかにする.

11.29 日本政府,オランダ軍が来年三月に撤退することを踏まえ、隊員の安全確保策を強化する方針を固める.「延長に対する世論が厳しく増員は困難」(幹部)と判断し,対迫撃砲レーダーを新たに複数配備することで対応.サマワの治安を担当する後継部隊は英軍となる見通しだが,「英軍にはサマワに部隊を回す余裕はない」とされ,オランダ軍並みの千人規模の人員を駐留させるのは困難との見方が強まる.



11月30日

30日 11月中にイラク内で死亡した米兵は,非公式記録で134人にのぼる.昨春に始まった対イラク戦争で、単月で被った米軍の最多犠牲者数は昨年4月の135人だが、11月の記録はこれに次ぐものとなる。 イラク戦争開始後の米兵の死亡者総数は1,252人に達する.

11.30 イラク暫定政府の保健省と米軍,市東部での医療機関開設を許可.総合病院のラフィ・アル・イサウィ院長ら医師4人をふくむ医療スタッフが活動開始.http://www.geocities.jp/urknews

11.30 イラク保健省がファルージャに行くよう依頼した支援物資輸送隊が,米軍にブロックされる.米軍はハドラ,ムハマディヤ地区への立ち入りは許可しているが,ジョラン,アスカリ,シナイ地区には,一切の立ち入りを禁じる.隊員のイブラヒム・アル=クバイシ医師は「化学兵器が使用されています。死体には銃創はまるでなく,黒いしみがあります」と語る.(アルジャジーラ英語版)

11.30 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),ファルージャ市に隣接する街に数十万人が避難していると発表.

30日 バグダッド北方約180キロのバイジ市で,監視パトロール中の米兵のそばで自動車爆弾が爆発、地元病院の医師は、市民7人が死亡、20人が負傷したと述べた。米兵2人もけがした。現場は、バイジ市の混雑する市場で、爆風で複数の露店に被害が出た。 また市内に展開する米軍戦車に武装勢力が小型ロケット弾を1発発射.子供1人、交通警官3人が負傷した。 製油所のあるバイジでは、ファルージャ総攻撃以降、米軍や石油関連施設への攻撃が相次いでいる。

11.30 政府筋,自衛隊派遣の一年延長を閣議決定する方向を示す.自衛隊派遣期間に人道復興支援のほか、撤収作業の期間も含めるとする.撤収作業には一カ月半以上かかるとされる.

 

 

12月01日

12.01 米国防総省,駐留米軍を現行の十三万八千人から十五万人規模に増強すると発表.

12.01 イラク暫定政府のヤワル大統領,選挙延期への反対を表明.

12.01 英サンデータイムズ紙の記者サイモン・ジェンキンス,米軍がファルージャで白燐弾を使用したと報告.「水では消せない火の幕を吹き上げる白燐弾が発射された。反乱勢力兵士たちは、皮膚を溶かす物質で攻撃を受けたと述べている。これは、白燐による火傷の特徴である」

12.01 アジア・タイムズ紙オンライン,「米軍はジョラン、アシュ=シュハダ、アル・ジュバイル地区を爆撃する際、化学兵器を使った。これらの地区にはクラスター爆弾も激しく投下された」と報道.イラク人医師の証言として,遺体の多くが「膨れ上がり、黄色くなっていて、臭いがしなかった」と述べる.

12.01 米国,バグダード包囲の際ナパームを使ったことを認める.この事実は「ニュース報道が証拠を確認したのちに」明らかにされる.この新兵器は「マーク77焼夷弾」と呼ばれる.独立系記者たちによれば,海兵隊員たちはこの爆弾をナパームと呼んでいる.

12.01 国際赤十字委員会(ICRC),米軍がグアンタナモ基地で“拷問に相当する”心理的,ときには身体的強制手段を意図的に用いていることを明らかにする.具体的には「侮辱を与える行為、独房への隔離、極端な温度、むりやり一定の姿勢をとらせる」などの行為.さらに報告は、尋問に際し「医者をはじめとする医療関係者が関与しており」、それは「医療倫理にあからさまに違反している」と指摘する.

12.01 ニューヨーク・タイムズ紙,国際赤十字委員会の報告にもとづき,「このようなシステムの構築は、残忍で異常かつ品位を傷つける扱いであり,拷問の一形態であるとしか見なしようがない」と断罪.

 

12月02日

 12.02 イラク独立選挙管理委員会,政党の候補者名簿提出期限を15日まで再延長.

 2日 ファルージャ入りを拒否された出身者,赤旗取材に答える.「通りにはいまだに多数の遺体が放置されたままです.米軍は身体に爆発物が巻きついている可能性があるとし,埋葬を拒否.脱出しようと検問所に集まった女性や子供の様子は悲惨きわまるものでした.衣服はぼろぼろで,空腹やのどの渇きから言葉を発することも出来ない状況でした.一方で,米兵はミネラルウォーターを当然のように飲んでいました.住民の間では下痢が蔓延していますが,そのクスリもほとんどありません」

 

 12月03日

12.03 ファルージャで,米軍兵士が運行中の救急車に発砲.総合病院のラフィ・アル・イサウィ院長が,二人の同僚とともに負傷.イサウィとその同僚は、イラク暫定政府の保健省と米軍から市内で医療センターを復興する許可を与えられていた.

12.03 赤新月社の現地救援隊,赤旗の電話取材に応じる.「いまも市南部を中心に米軍が激しい攻撃を行っており,私たちの活動拠点のすぐそばも爆撃されている.あっ,たった今,すぐ近くで爆撃が会った.ここから100メートルくらいのところで煙が上がるのが見える.米軍は女性や子供たちが街の外に避難することも許さない.食料や水などの援助が必要な人々に,私たちの援助はまったく届いていない」

12.03 同じく赤旗記者の取材に現地住民が答える.「通りにはいまも数百の死体が放置されたままだ.米軍は遺体を運び出し埋葬することさえ許さない.遺体は腐りかけており,衛生状態は最悪だ.米軍はいま,民家をしらみつぶしに捜索し,爆弾を仕掛け,人が住めないようにしている」

12.03 ファルージャ北部の村サクラウィヤで,政府ビルとテントにとどまる4000人以上の住民が、食料、飲料水、医薬品を含む基本的な生活必需品の不足によって、厳しい生活状態に直面している(アルジャジーラ).

12.03 バグダッドのアダミヤ地区で,自動車爆弾により14人が死亡,19人が負傷.市南西部では武装勢力が警察署を迫撃砲攻撃.警察官12人を殺害,受刑者51人が逃亡.市西部の空港付近の警察署では自動車爆弾.死者はなし.

12.03 ブッシュ米大統領,国民議会選挙について「専制政治から、投票で自ら意思表示できる社会への迅速な転換」を示す「驚くべき歴史的瞬間」と強調。選挙の「延期はあり得ない」と述べ、予定通りの実施にあらためて強い決意を示す.

 

 12月04日

4日 中東テレビ各局,昨年5月に米海軍特殊部隊がイラク人捕虜を虐待する場面を一斉に報道.

4日 バグダッド中心部の警察署前で自動車爆弾.7人が死亡,57人が負傷.モスルでは,PUKの民兵が乗ったバスが爆弾攻撃.民兵17人が死亡,40人以上が負傷.

12.04 ウクライナ最高会議,「イラクでの緊張の高まりで、ウクライナ軍は軍事行動に巻き込まれている」とし,「イラクからウクライナ軍の撤退を求める決議」を可決.ウクライナは03年8月から約1,600人をイラクに派兵。これまで9人が死亡し、20人以上が負傷.世論調査では8割が撤退を求める。ヤヌコビッチ首相は選挙戦中にイラクを訪問し「05年初めのイラク総選挙の結果をみて撤退」と表明。野党のユシチェンコ氏は「当選後に2週間以内で撤退計画を決める」と訴える.

12.04 EUのバローゾ新委員長,「イラク戦争で世界はより危険になった.欧州内部の意見の不一致を解決すべき」と強調.

12.04 ブラヒミ特別顧問,「選挙は魔法のクスリではなく,政治的過程の一部だ」とし,現状のままでは一月の選挙実施は不可能と語る.

12.04 ニューズ・ウィーク誌,陸自と米海兵隊とが「都市型戦闘訓練」を行なっていると報道.

11月,グアムの米海軍基地で陸上自衛隊と米海兵隊が約二週間にわたり共同演習を行った。参加したのは、沖縄とハワイの第三海兵遠征軍、陸自中部方面隊第三師団(大阪)に所属する普通科中隊百二十五人.同師団の一部は来年、イラクに派遣される見通し.
ここでは建物への突入、室内掃討について、隊員各個の訓練から組、班行動など段階的に訓練した.陸上幕僚監部広報室は「市街地を攻撃する中隊の行動を、作戦準備から作戦地域への前進、敵の所在する市街地への突入、掃討、撃破にいたるまで、一連の状況下で演習した」と説明している.在沖縄米海兵隊のホームページでは,「訓練で設置された検問所はイラクにあるものと類似している」とされる.

 

 12月05日

5日 ディクリットで,米軍下請企業に働く労働者が銃撃を受ける.バスに乗っていた17人が死亡,13人が負傷.バイジでは国家警備隊の検問所で自動車爆弾.隊員3人が死亡18人が負傷.

12.05 日刊ゲンダイは,サマワ駐留部隊に小銃を連射可能にする改造「指令書」が出されたと報道.防衛事情通の談話として,「物陰や狭い場所でも連射できる市街戦対策です。オランダ軍が撤退するのを前提に、イラク復興支援郡長らに指示された.また、また,軍事ジャーナリストの神浦元彰氏の談話として「サマワを非戦闘地域といっているのは小泉首相だけで、現場は戦闘 を想定して準備を着々と進めている」と報道.





2004年12月14日(火)「しんぶん赤旗」

イラク開戦後10万人が死亡

政府に独立調査委設立を勧告

英医療専門家団体が報告書


 英国の医療専門家団体「MEDACT」は十一月三十日、イラクでは二〇〇三年三月の米英軍の侵攻後、医療状況がさらに悪化したとする報告書を公表し、米国のイラク戦争に参戦している英政府などに、犠牲者とイラクの保健状況について徹底的な調査を行う独立した委員会の設立などを勧告しました。


多くの病院が破壊や略奪に

 報告は、九月にイラク全国規模で行った九百八十八世帯での調査を紹介、「紛争の直接影響」として、米英軍侵攻以後約十万人を超える死亡が推定されるとしています。その死因のほとんどが暴力、とりわけ米英軍などの連合軍の空爆によるもので、連合軍に殺害されたとみられる犠牲者の半数は女性と子どもだとしています。侵攻後十八カ月間の暴力による死者は、侵攻前十五カ月の五十八倍、暴力以外の要因を含むすべての死因でも二・五倍という数字もあげています。

負傷者の数は死者の10倍に

 報告は、通常の戦争では死者数の三倍の数の負傷者が出るとされるが、爆弾テロなどの分析調査では、イラクでの負傷者の数は死者数の十倍に達していると指摘しています。

 MEDACTは一九八五年にノーベル平和賞を授与された核戦争防止国際医師会議(IPPNW)英国支部で、これまでイラク開戦前の二〇〇二年十一月と開戦後の〇三年十一月に、イラクの医療状況についての報告書を公表しており、今回の報告書は三度目。さまざまな専門機関の報告書や隣国ヨルダンに出国したイラクの医療関係者や非政府組織(NGO)関係者などからの聞き取り調査に基づいたものです。

 報告はさらに、イラクの中・南部の主要な病院からの情報についての世界保健機関(WHO)の報告を引用し、銃撃などによる精神的な後遺症が戦争以来急激に増加、戦闘がさらに続けば、精神的後遺症からの障害が大きな問題になると指摘しています。またイラク北部だけで一千万個と推定される地雷や不発弾が残されており、その今後の影響も予測できないと述べています。

 「紛争の間接的な保健への影響」の項目では、ことし一月から四月にかけてチフスが流行し五千人が発病したとし、背景として、治安悪化や停電などで冷蔵保管システムが使えず、予防接種計画に深刻な支障がでたことをあげています。イラク保健省の情報として、出産に当たって専門的な援助がえられない女性が都市では30%、農村部では40%に達していることを紹介しています。また、水道・衛生設備、電力供給、栄養・食料安全保障などへの戦争の影響を指摘、医療機関への大きな損害を指摘しています。

 報告は、「イラクには千二百八十五カ所の保健所、百七十二カ所の公立病院、六十五カ所の私立病院があった」が、「公式の推定では〇三年に病院の約12%が破壊され、7%が略奪された」「家族計画サービスを行っていた施設の三分の一が破壊され、地域子ども保健施設の15%が閉鎖された」と指摘。また、多くの病院が下水や廃棄物処理、水道、電力や医薬品・医療器具の供給などで長期的な問題を抱えていると述べています。

 また、イラクでは一九九〇年代からの医療専門職の国外流出の傾向がさらに強まったとして、最近の調査では医師は近隣国の半分の人口十万人当たり四十七人、看護師はもっと深刻で人口二千六百万人に一万六千七百人しかいない危機的な状況にあるとしています。

女性への暴行400件以上

 報告は、〇三年四月以降に四百人以上の女性や少女への暴行事件が報告されていることなどをあげ、「治安悪化、とりわけ性的な暴力の現実的な危険が女性や少女の公的な生活―通学、通勤、通院など―への参加だけでなく、外出をも阻んでいる」と述べています。

 そして、「〇三年の戦争は、これまでの諸戦争、独裁支配、国際制裁によってもたらされた破壊による保健への脅威を増幅させた。戦争は保健状態をいっそう悪化させる条件をつくり出しただけでなく、イラク社会がそれを回復する能力さえも奪った」と結論。

 「勧告」として、被害調査独立委員会の設置のほか、米英占領軍にたいし、▽ジュネーブ条約を順守し、非戦闘員や民間社会基盤への攻撃を停止すること▽人道的援助と軍による救援活動を明確に区分すること▽病院などの医療施設の民間人利用を保障し、軍事的に利用しないこと―などを要求。国連環境計画(UNEP)が劣化ウラン調査をできるだけ早期に実施することも求めています。

 

 

2004年12月14日(火)「しんぶん赤旗」

米がIAEA事務局長を盗聴

イランとの通話数十回

3期目就任の阻止を狙う


 【ワシントン=浜谷浩司】米紙ワシントン・ポスト十二日付は三人の米政府高官の話として、ブッシュ政権が国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長の再任を阻止するため、同事務局長とイラン外交官との数十回にわたる電話でのやりとりを盗聴していたと報じました。

 同紙によるとブッシュ政権内では、イラクの大量破壊兵器に関する米情報に疑いを差しはさんだり、イランの核開発疑惑に慎重な姿勢をとってきたとして、同事務局長の退任を迫る声がボルトン国務次官(軍備管理担当)を中心にあるといいます。

 デフランシス・ホワイトハウス報道官は十二日、「国連機関の長は三期以上とどまるべきではないとの政策を米政府は常に支持してきた」と発言。事実上、エルバラダイ氏の退陣を求めました。

 エルバラダイ氏は一九九七年に事務局長に就任し、現在二期目。来年任期切れを迎えるのを前に、三十五理事国の大半が再任を支持していると伝えられます。

 国連への電話盗聴では今年四月、英国の情報機関がアナン国連事務総長の電話を盗聴していたことが明らかになり、国連事務局は条約違反にあたるとして中止を求めています。

2004年12月11日(土)「しんぶん赤旗」

米がアナン総長「信任」

国連大使表明 孤立回避へ転換


 【ワシントン=浜谷浩司】米国のダンフォース国連大使は九日、米国内で辞任要求が出ていたアナン国連事務総長を「信任する」と記者団に述べました。イラク戦争を批判したアナン氏を辞めさせようとする米右派勢力のたくらみに国際的な批判が強まった結果、米政府が、信任を保留する姿勢を転換し、孤立回避に動いたとみられます。

 米国では、アナン氏の息子がイラクに対する「石油・食料交換計画」の不正に関与したなどとして、与党・共和党議員らが辞任を要求。FOXニュースなど右派メディアもこの問題を大きく取り上げ、アナン氏の事務総長としての適格性に疑いを示してきました。

 背景には、アナン事務総長がイラク戦争の違法性を指摘するなど、米国の単独行動主義に批判的な態度を示してきたことがあります。

 しかし、米国の右派勢力が非難を強めるにつれて、国連では逆に支持の動きが拡大。二千七百人を超える国連職員が、アナン事務総長の活動は「バランスがとれ、公正だ」として、支持を表明する書簡に署名しました。

 八日には、国連総会への報告を終えた事務総長に、各国代表団が総立ちで拍手を送るというまれな事態が起きました。各国が信任を表明したものと受けとめられています。英国、フランス、ドイツ、ロシア、オーストラリアの代表はアナン氏に電話をかけ、支持を表明しました。

 

2004年12月10日(金)「しんぶん赤旗」

「いつまで兵役延長が続くのか」

米国防長官に米兵不満

クウェート


 【ワシントン=浜谷浩司】米軍部隊激励のため八日にクウェートを訪れたラムズフェルド米国防長官が、米兵から次々と厳しい質問を浴びました。イラク情勢の悪化を反映し、いつまで兵役延長が続くのか、装備が不十分だ、などの強い不満の声が兵士の口から相次ぎました。

 ある女性兵士は、自分が兵役延長措置を受けていると述べた上で、「いつまでこの制度を続けるのか」と質問。ラムズフェルド長官は、同制度は「健全な規則であり、十分理解されている」として、当分の間維持されるとの考えを示しました。

 米軍はイラク戦争に必要な兵員を満たすため、志願兵の兵役を個別に延長する措置をとり、命令を受けた兵士はその間除隊できません。

 しかし、意思に反して兵役を延長されることには反発が広がっており、六日には八人の兵士が同長官を相手取って、制度の撤廃を求める訴えを裁判所に起こしたばかり。八人のうち五人はイラクに、二人はクウェートにそれぞれ駐留しており、残る一人はいったんイラクから帰国したものの、再度の派遣命令を受けています。

 来年一月のイラク暫定国民議会選挙後の米軍の役割を問う質問には、「選挙後は多国籍軍は削減されるだろうが、現場の状況次第だ」とあいまいな回答。相次ぐ質問に「落ち着いてほしい。私は年寄りで、まだ早朝だ。いま頭を整理中だ」と質問をかわすのに精いっぱいになる場面もありました。

 米国内で大きな反響を呼んだのは、兵員輸送車両に爆弾攻撃を防ぐ装甲がなく、現地の兵士は防弾ガラスの破片や鉄くずなどの廃棄物まで使って補修しているが、なぜ必要な材料がないのかという質問。兵士から一斉に拍手と歓声が起き、ぶぜんとした同長官は、「いまある軍で戦争しているのだ」と開き直るように答えました。

 道路に仕掛けられた爆発物による攻撃で米兵の犠牲が増える中で、車両の装甲問題は以前から指摘されてきたもの。それだけに、同長官の姿勢には議員やマスコミからも批判が出ています。


2004年12月9日(木)「しんぶん赤旗」

派兵の根拠はことごとく崩れた 撤退を決断すべきだ

志位委員長が会見で強調


 日本共産党の志位和夫委員長は八日、国会内で定例の記者会見を行い、小泉内閣がイラクへの自衛隊派兵の一年延長の基本計画を九日にも閣議決定しようとしていることについて、「一年間の自衛隊の派兵がもたらしたものは何か、イラクの情勢はどうなっているのかの全体について徹底した検討を行い、すみやかな撤退を決断すべきだ」と強調しました。

 志位氏は、自衛隊派兵の一年間を振り返り、「三つの大問題がある」と指摘しました。

 第一は、イラク戦争の「大義」とされた大量破壊兵器の問題で、この口実が虚偽だったことが十月の米調査団報告で明らかになったことです。

 第二は、六千人を超える犠牲者を出したイラク・ファルージャでの無差別殺りくが、イラク情勢を劇的に悪化させ、この大虐殺を「成功させるべきだ」と小泉首相が全面的に支持したことが日本政府を深刻な立場に追いやっていることです。

 第三は、自衛隊のいるサマワではこの数カ月間で、八回の迫撃砲・ロケット砲が撃ち込まれ、オランダ軍に死傷者が出て来年三月にも撤退するなど、「サマワは非戦闘地域だ」という虚構がはっきりしたことです。

 志位氏は「自衛隊が派兵を続ける根拠はことごとく崩れた。九日の(閣議決定による)強行をせず、撤退の決断をすべきだ」と強く求めました。
 

2004年12月9日(木)「しんぶん赤旗」

「非戦闘地域」の虚構崩れるなか

イラク撤兵の世論を無視

自衛隊派兵延長狙う政府 きょう閣議決定


 米軍を中心とするイラク軍事支配を支えるため、政府は九日の臨時閣議で、十四日に期限切れを迎える自衛隊イラク派兵の一年延長を決定しようとしています。派兵の要件である「非戦闘地域」の虚構がいっそう明らかになり、イラク軍事支配そのものが大きな破たんに直面しています。その中での派兵延長の強行は、日本を取り返しのつかない道に踏み込ませる危険を持っています。


グラフ:世論調査は反対が多数

要件満たさず

 イラクへの自衛隊派兵はもともと、海外での武力行使、軍事占領への参加を禁止した憲法を真っ向から踏み破るものでした。しかも、昨年三月のイラク戦争以後、情勢は悪化の一途をたどり、米軍が今また各地で「掃討作戦」に乗り出すなど、戦闘状態が続いています。

 派兵の根拠となっているイラク特措法は、自衛隊の活動地域を「非戦闘地域」に限定しています。しかし、陸上自衛隊が派兵された今年一月以降、イラク南部サマワの治安も急速に悪化。陸自宿営地を狙ったとみられる砲撃はこれまで八回にのぼっています。

 サマワの治安維持を担当するオランダ軍は交戦で二人の戦死者を出し、来年三月までに撤退することを決定しています。自衛隊を占領軍の一員とみなし、撤退を要求するデモも起こっています。

 このような事態が繰り返されるたび、陸自部隊は宿営地内に退避し、「人道復興支援」を中断しました。

 現在、六百人の部隊のうち百五十人が警備部門(警備中隊)に配属されていますが、防衛庁は今後、同部門を増員する方針。来年二月から派兵される第五次部隊からは対迫撃砲レーダーを持ち込み、宿営地の対弾工事を進めているのが実態です。イラク特措法の要件すら満たさない状況が続いているのです。

 イラク戦争の口実となった大量破壊兵器が存在しないことも確定し、その大義は根底から失われました。

「視察」数時間

写真

 イラク特措法の要件さえ満たさない現状を覆い隠すため、政府は臨時国会では派兵延長について一切、口をつぐんでいました。

 一方で、チリで行われた日米首脳会談(十一月二十日)で、小泉純一郎首相は「日本としても協力を継続するが、どのような支援をするかは日本に任せてほしい」と派兵延長を強くにじませました。

 「治安は安定している」「市民は歓迎している」――。五日、サマワを「視察」した大野功統防衛庁長官は、わずか五時間半の滞在でこう断言しました。三日に臨時国会が閉会した途端、大野長官や武部勤、冬柴鉄三の自公両党幹事長が相次いで現地「視察」し、わずか数時間の視察で“安全宣言”を出し、延長の決定を強行しようとしているのです。政府は、派兵延長の理由を国会、国民にまともに説明できないからにほかなりません。

情勢は泥沼化

 米軍の軍事支配に対するイラク国民の抵抗やテロ勢力のばっこで情勢はいっそう泥沼化し、多国籍軍から撤退する国も相次いでいます。

 オランダ軍撤退後、サマワの治安を担当する部隊はいまだ「決まっていない」(大野防衛庁長官)のが実情です。

 それでも自衛隊派兵の延長を強行すれば、ファルージャでの住民虐殺に象徴されるイラク軍事支配の加担者としてまさに突出した存在になり、イラク国民の憎悪の矢面に立たざるを得なくなります。

 陸自幹部が作成し、中谷元・元防衛庁長官に渡した「憲法草案」は、集団的自衛権の行使を可能にすることで「有志連合軍に参加し戦闘行動(アフガン、イラク等)が可能になる」としています。イラク派兵を継続することは、こうした道へ日本を引きずり込むことにもなりかねません。


「人道復興支援」というが…

給水活動の縮小検討

有効性問われ、理由も失われ

 政府は、自衛隊のイラク派兵はあくまで「人道復興支援」であることを強調しています。しかし、その有効性そのものも問われています。

 サマワに展開する陸自部隊は、給水、施設補修、医療技術指導を行ってきました。

 その中心となっている給水活動では現在、一日あたり二百―二百八十トンを供給、これまでに約四万四千トンの給水を行ってきたとしています。ところが、政府がODA(政府開発援助)の一環として来年からの供与を決定した浄水装置六基がフル稼働すれば、「一日あたり約三千百四十トンの給水が可能」(外務省)になります。そうなれば、二週間で陸自のこれまでの給水に匹敵することになります。

 多くのサマワ市民は自衛隊に「雇用効果」を期待していました。現在、陸自部隊は施設補修を中心に一日三百―五百人程度の雇用を創出しているとしています。しかし、サマワの人口は二十五万人、失業率は七割ともいわれており、市民には失望が広がっていると伝えられています。

 防衛庁は給水活動の縮小を検討しており、「復興支援」という政府の口実からしても、駐留継続の理由は失われているのです。

 クウェートを拠点に空輸活動を行っている空自も、「人道支援」物資の輸送を強調していました。

 しかし、最近はニーズが全くないのが実態で、空輸の大半は陸自隊員。その他は米兵など多国籍軍兵士の輸送で、軍事支援にほかなりません。

 

2004年12月9日(木)「しんぶん赤旗」

CIA「イラク情勢悪化」

バグダッド責任者報告

米政府公式見解より「悲観的」


 【ワシントン=浜谷浩司】米紙ニューヨーク・タイムズ七日付は、中央情報局(CIA)のバグダッド責任者が十一月に、「イラクの情勢は悪化をたどっており、すぐに回復しそうにはない」との厳しい見方を示した機密報告を提出していたと報じました。

 同紙によると、この報告は、イラク暫定政府の権威や経済建設が飛躍的に向上しない限り、治安状況がさらに悪化すると警告しているといいます。同紙は、ブッシュ政権が示している公式の見解と比べて、報告が「かなり悲観的なもの」だとする政府高官の発言を報じています。

 米CNNテレビも同日、ほぼ同じ内容のニュースを報道し、ブッシュ米政権にとっては「悪いニュースだ」としています。

 一方、ブッシュ大統領は同日、カリフォルニア州のペンドルトン海兵隊基地を訪れ、イラクに部隊を送り出している海兵隊と家族を激励。真珠湾攻撃六十三周年に言及しながら、対テロ戦争には「勝利する」と言明しました。同大統領は、イラクのファルージャ攻撃が「敵に深刻な打撃を与えた」と強調、一月の暫定議会選挙を予定通り実施することで、「テロリストは外国の占領とたたかっているという作り話を打破する」と豪語しました。

 しかし、イラクでの戦闘で死亡した米兵が千人の大台に達したことが同日、明らかになるなど、同大統領の強気の発言とは裏腹にイラク戦争は泥沼化の様相を一段と深めています。


2004年12月8日(水)「しんぶん赤旗」

イラク戦争「反対だった」

世界はより危険に

訪米のパキスタン大統領


 【ワシントン=浜谷浩司】パキスタンのムシャラフ大統領は、五日放送されたCNNテレビのインタビューで、イラク戦争には「反対だった」と明言するとともに、戦争によって世界はより危険になったとの認識を表明しました。インタビューは同大統領が四日、ワシントンでブッシュ米大統領と会談後に行われたもの。

 ムシャラフ大統領はこの中で、パキスタンは当初からイラク戦争に反対だったとし、いまでは「さらなる問題を抱え込んだ」「人々は外国軍隊に支配されるのを嫌う」と述べました。

 ブッシュ大統領が世界はより安全になったとしているのに対し、ムシャラフ大統領は「より安全でなくなったことは明らかだ」と指摘。「侵攻を命じたのはブッシュ大統領の誤りか」との質問には、「イエス、後知恵だがイエス」と断言しました。

 ただ、米軍がただちに撤退することは「さらに問題を生み出す」として反対し、イラクを安定化させなければならないと主張。そのためにも、同時にパレスチナ問題の解決に力を注ぐべきだと、持論を展開しました。

 同大統領は、少数派の「過激主義、テロリズム、好戦性」を最も恐れるとし、パキスタン社会をそれらが「汚染している」と指摘しました。

 パレスチナ問題の解決は過激主義の根を取り除き、イラクにいい影響を及ぼすだけでなく、「世界に調和をもたらす」と強調。ブッシュ大統領との会談でも最も重視した点だと述べました。