中東民族主義の歴史年表  U

(ブッシュ戦争を中心に)

 

いまも続くブッシュ戦争に関しては多くの年表がネット上にあり、あえて踏み込まないこととしました。基本は中東民族主義に関する事項ですので、今後はその趣旨に沿って絞り込んで行きたいと思います。もっとも包括的な年表としては延近先生のサイトをご覧ください(2005年1月)

 

2000年

6.16 ニューヨーク・タイムズ,イランのモサデグ首相に対するCIAのクーデタについての公式レポートを入手.インターネット上に公表する.

10.13 イエメンのアデン港で,停泊中のアメリカ駆逐艦コールに爆弾を積んだボートが突撃.

 

2001年

1.20 ジョージ・W・ブッシュ(子),第43代米国大統領に就任.

1.30 ブッシュ政権下、初の国家安全保障会議。オニール財務長官は、当初より「イラクの政権を変えることが関心の焦点となっていたことに驚いた」と述べる。

2月 米英軍,バグダッド郊外のイラク軍司令施設などを空爆.

7.25 ブッシュ政権,生物兵器禁止条約は効果がないばかりか,米国の安全保障にとって危険であるとして,交渉自体を拒絶した.

9.06 ニューヨーク・タイムズ,ブッシュの生物兵器禁止条約拒否の背景を報道.軍が@未完成の細菌爆弾開発の完成,A遺伝子工学による炭疽菌の耐性種の開発計画を進めており,いずれも条約に抵触する恐れが高いことが背景にあるとされる.

9.11 アメリカ同時多発テロ.

10.07 米英軍がアフガン空爆を開始.

11.13 北部同盟が首都カブールを制圧.

11.27 ボンでアフガン4派の暫定政権協議が始まる.

12.05 アフガン4派が暫定政権発足で最終合意.

12.06 オマール師,カンダハル撤退に同意.

 

2002年

1.29 ブッシュ米大統領,議会で一般教書演説.イラク,イラン,北朝鮮がそれぞれ大量破壊兵器開発を目指していることから「こうした国々とテロリストたちは悪の枢軸を形成し,世界の平和を脅かすために武装している」と述べ,3国との対決姿勢を鮮明にする.イランを「悪の枢軸」に含めたことについては,同国のハタミ大統領が曲がりなりにも民主的に選ばれた事実を軽視するものだとの批判.

2.03 国連とイラク,査察問題をめぐる対話再開.

3.17 英オブザーバー紙によれば,イギリス軍の上層部がブレア首相と会見.「対イラク戦争は必ず失敗し,軍に多くの死者が出ても,政治的に獲得するものがほとんどない」と警告したという.

3.23 アラブ首脳会議,「イラク攻撃全面拒否」の最終声明を採択.

3月 米英高官レベル会合がワシントンで開かれる。「ブレアは、サダム排除のためアメリカ人とともにやると同意した」とされる。

05年5月にロンドン・タイムズに報道された政府漏洩文書「ダウニング・ストリート・メモ」(以下DSM)の「第一文書」による。ダウニング・ストリートは英首相官邸の所在地。

5.14 イラクへの経済制裁下「石油と食料の交換プログラム」を180日延長決定.

5.26 ブッシュ大統領,「フセイン政権を変えなければならないというのが米政府の政策だ」としてフセイン政権転覆を公言.

5月 アメリカ、イラク南部での爆撃を開始。8月までのあいだ、一日平均10トンの爆弾が投下される。「大釘打作戦」と呼ばれ、フセインの反発を狙った挑発行動とされる(DSMによる)。

5月 アーミテージ国務次官,久間防衛長官と会談.イラク攻撃への賛成を迫る.久間氏は「米国が国連と違う行動をすれば,後押しするわけにはいかない」と述べたという.

7.21 ブレア内閣の幹部閣僚が秘密会談。「英国は米国主導のイラク侵攻に参加することを約束したので、この戦争を合法なものにする道を探さねばならない」との前提で協議(DSMによる)。

7.23 幹部閣僚とブレアの会談。英諜報機関MI6のリチャード・ディアラブ部長、「アメリカのイラク攻撃の理由は、方針を正当化するための諜報と事実のつぎはぎ」と批判。ストローは「戦争の論拠は薄弱で、サダムは隣国の脅威ではない」ことを認める(DSMによる)。

7.30 英紙ガーディアン,イラクに対する米地上軍の電撃的な攻撃が,早ければ10月にも行われると報道.米政府高官の話では,地上軍の兵力を最大5万人におさえ,クウェートとカタールから侵攻し一挙に首都バグダッドを目指すという.

7月 UNSCOM元代表ロルフ・エケウス,スウェーデンのラジオ・インタビューで,「安保理の一部メンバー(英国と米国)が査察団に圧力を加え,問題のある査察を行わせようとした.そしてイラク側からの査察妨害を創り出し,軍事介入の口実に使おうとした」と述べる.

02年8月

8.01 フセイン大統領の次男クサイ,反体制組織イラク国民会議により銃撃され腕を負傷.クサイは大統領特別警護隊指揮官で,ウダイに代わり後継者筆頭とみなされていた.

8.04 サウジアラビアのサウド外相,テヘランでハタミ・イラン大統領と会談.イラク軍事攻撃への反対で一致.サウジ外相はイラク攻撃に国土は使わせないと強調.ヨルダン,クウェート,トルコもイラク攻撃反対を相次いで表明.

8.04 自民党の山崎拓幹事長,「国連決議があるかどうか,国際テロと深く関係があるのかどうかがギリギリの条件だ」と述べる.

8.05 イラク議会のハマディ議長,米連邦議会に書簡を送り,議員団に核兵器や生物化学兵器の研究者を加えた代表団をイラクに派遣するよう要請.

8.06 フランクス米中東軍司令官,イラク攻撃作戦の計画書をブッシュ大統領に提出.攻撃に踏み切る時期や条件などは大統領の決断に委ねられる.

8.07 元英軍参謀総長,BBCとのインタビューで「潜在的に非常に危険な状況だ.英国がイラク攻撃に参加すれば,中東での長い戦争に巻き込まれるだろう」と警告.

8.08 ドイツのシュレーダー首相,米国が対イラク軍事行動に踏み切った場合,国際社会による対テロ戦争への支持を損ねる可能性があるとの見解を示す.

8.08 チェイニー米副大統領,国連の大量破壊兵器査察ではイラクの脅威は取り除けないとの見解を表明.

8.11 ブッシュ,イラクの反体制組織6派の代表をワシントンに集め「打倒フセイン会議」を開催.

8.11 ブッシュ米大統領,イラクについて「敵でないことが証明されるまでは敵である」と述べる.

8.12 デーリー・テレグラフ,「米国のイラク攻撃に正当性がない」と考える英国人が58%に達するという世論調査の結果を報道.

8.13 ワシントン・ポストとABCニュースの世論調査.戦争を支持する69%,地上部隊を投入しての侵攻は57%が賛成,イラクは脅威だとするブッシュ大統領の見解に77%が同意.

8.15 米国防総省,イラク攻撃を念頭においた国防報告を議会に提出.「最大の防衛は攻撃だ.アメリカの敵にはあらゆる手段を行使する」と述べ,イラクに対する先制攻撃と核の使用を公言する.

8.19 バーレーンのハマド首長,イランを訪問.イランの最高指導者ハメネイ元首と共同声明を出し,「両国はイラクに対するどんな一方的な軍事行動にも断固とした反対を宣言する」と強調.バーレーンとしては,これまでになく明確に,イラク攻撃反対の姿勢を打ち出す.

バーレーンの首都マナマには,中東全域での米軍の作戦をつかさどる米第五艦隊の司令部があり,米国は昨年秋以来のアフガニスタン攻撃で,同国を軍の供給作戦基地として利用している.現在断続的に行われているイラクに対する空爆作戦の拠点の一つともなっている.

8.21 サウジアラビアの対米個人投資資金のうち1000億―2000億ドル(約12兆―24兆円)が欧州に流出.同時多発テロに関連して,サウジ資産凍結を求める米国のタカ派の主張が原因.王室を含むサウジの対米個人投資は,推計4000億―6000億ドル(50兆円)に上るといわれる.

8.22 ブッシュ,「私は思慮深く,忍耐強い」と述べ,近い将来の軍事行動に消極的ともとれる謎の発言.ストロー英外相も「英国は査察官の復帰を最善の解決策と見なす」と述べ,これまでと打って変わった慎重姿勢を示す.

8.25 ジェームズ・ベーカー元国務長官,ニューヨーク・タイムズに寄稿.「イラク攻撃には新たな国連決議が必要であり,国際的な協力なしに踏み切るべきでない」と主張.

8.26 チェイニー米副大統領,「行動しないことの危険は行動することの危険よりもはるかに大きい」とイラクに対する先制攻撃を主張.

8.27 米英軍,1週間にわたりイラクを連続爆撃.バスラでは市民8人が死亡,9人が負傷.

8.28 アーミテージ国務副長官,首相官邸に小泉純一郎首相を表敬訪問.「万一戦争になった時に,ドイツのように反対しないで,日本はできる限りの協力をしてほしい」と要請.

8.28 「ヒューマンライツ・ウォッチ」によれば,9.11以降に身柄を拘束された中東・南アジア系市民は全米で1200人に達する.乗っ取り犯と名前が似ているだけの理由でサウジ人医師が13日間拘留されたケースも.

8.28 ニューズウィークによれば,米軍は逮捕したタリバン兵千名以上をコンテナに詰め込み,その結果全員が窒息死したと報道.

8.29 自民党の山崎拓幹事長,「単独行動は世界中の対米不信を買うことになる.われわれ同盟国としては単独行動には反対すべきだ」と述べる.

02年9月 米議会の戦争決議

9.01 パウエル国務長官,国連査察官をイラクに戻すことが優先事項であり,「大統領は,査察官を戻すべきだと確信している」と述べる.これに対しチェイニー副大統領は先制攻撃論を主張,「査察官を戻すことは重要な目標になるべきでない」と主張.

9.02 フセイン大統領,「米国がイラクに悪意を抱く理由は,もしイラクを打倒すれば,世界の石油埋蔵の65%を占める中東の石油を掌握できると思っているからだ」と述べる.

9.03 アジズ副首相,アナン事務総長と会談.「米国との緊張状態について国連と協力する用意がある」と述べる.

9.03 全米世論調査.言論・集会・出版の自由を保障する憲法修正第一条に対し,「権利保護の行き過ぎ」との声が49%に達する(2年前には22%).

9.05 米英軍の爆撃機約百機が,過去4年間で最大の規模で,バグダッド西100キロの防空施設を爆撃.特殊部隊がイラクに潜入するための準備作戦といわれる.

9.05 アラブ外相会議.イラク攻撃は中東地域において「地獄への扉を開く」ことになると指摘するとともに,イラク政府に対して国連武器査察団を受け入れるよう強く求める.

9.05 ブレジンスキー(カーター政権の安全保障担当大統領補佐官),NYタイムズに寄稿.ブッシュ政権は「アメリカが直面している挑戦」を強調する.しかしそれは,ほとんど事実の裏づけがない「宗教用語」である.非政治的に定義された「対テロ戦争」は,ほかの目的に「ハイジャック」される恐れがあり,その結果は恐ろしいものになる.対テロ戦争の勝利は,国家の公式の降伏などでは得られない.将来またアメリカ人に対するテロが起これば,戦争に勝てなかったことが分かるだろう.

9.05 宮沢元首相がインタビュー.フセイン政権を打倒しても問題は片付かない.民主的な平和政権を建設しなければ目的は達成できないが,それは米国一国ではできないほど時間も金もかかる.

9.07 米英首脳会談,安保理に対し大量破壊兵器の査察と解体を,軍事力を背景に強制実施する新たな決議を求めることで合意.これが実現しなかった場合,米英両軍のみで対イラク軍事作戦を発動させることで合意.

9.08 元国連上級査察官スコット・リッター,イラク議会アラブ外交委員会で証言.現在のイラクはブッシュが言うような脅威ではなく,イラク攻撃は国際法に違反する歴史的な過ちであると述べる.リッターは元アメリカ軍諜報員であり,91年から97年までのあいだ国連大量破壊兵器査察官としてイラクの査察を行った.

証言の骨子
イラクは9月11日の合衆国に対して犯されたテロのスポンサーではありません.むしろ過激な原理主義者を押さえつけることに熱心な国です.
今日のイラクは近隣諸国にたいして脅威ではありません.国連憲章と国際法に従うならば,イラクに対する軍事行動を正当化するどんなシナリオも描くことはできません.7年間の国連による継続的な査察活動で,95%のレベルで,武装解除されたことが証明された.
イラクは大量破壊兵器がないことを声高に宣言すべきです.それを証明するために国際法の枠組みに入るべきです.それは安保理に従って,査察官の無条件の復帰と,制限なきアクセスを保障することにあります.

9.10 イタリアの文化・スポーツ人が,対イラク攻撃に反対する共同声明.サッカーのトッティやビエリなどが名を連ねる.「われわれはテロの悪循環をあおることを望まない.戦争,死,犠牲者はもう十分だ」

9.12 国連総会開催.アナン事務総長は,「ある国が世界平和を乱すものに対し,武力の使用を決定する場合,国連による正統な承認は欠かせない」と声明.ブッシュ大統領,国連総会でイラク非難の「根拠」を公開する演説.査察失敗なら単独でも攻撃と表明.

9.12 シュレーダー首相,「私が首相である限りは,ドイツは対イラク戦争には参加しない」と述べる.

9.14 日本・イラク外相会談.川口外相は無条件査察受け容れを強く要望.

9.16 イラク,大量破壊兵器に関する査察の無条件受け容れを表明した書簡を,アナン国連事務総長に提出.

9.17 ブッシュ,「世界最悪の兵器で米国と同盟国を脅す,世界最悪の指導者らを許してはならない」と発言.改めてフセイン政権打倒を強調.

9.19 議会両院合同会議,「地域で国際の平和と安全を回復する」ため,武力行使を容認する決議を採択.下院議員18人が,決議に際し反対を表明.

9.20 米国,「国家安全保障戦略」を発表.「封じ込めと抑止」から「先制攻撃」への戦略転換を基軸とする.

9.22 イスラエルのシャロン首相,イラクから攻撃を受ければ軍事報復する方針を明らかにする.

9.23 ASEM(アジア欧州会議)首脳会議,反テロ宣言を採択.「テロリズムとのたたかいは,国連憲章の原則と国際法の基本的な規範に基づかなければならない」「国際社会による政治,経済,外交,軍事などの手段から構成される包括的アプローチが必要」と述べる.

9.24 ブレア首相,イラクの大量破壊兵器開発に関する「報告書」(dossier)を提出.「フセインは45分以内に大量破壊兵器を発進させようと思えば出来る可能性があるといわれており、したがってイギリスと世界に緊急の脅威となっている」と述べる。のちにこの書類は、イラク系アメリカ人学生の1991年の博士号論文からインターネットで盗用したものだということが明らかになる。

9.24 カリフォルニア州サンタクルーズ市議会,イラク攻撃反対決議を全会一致で採択.

サンタクルーズはサンフランシスコから車で約2時間ほど南へ下ったところにあります。人口5万3200人。サーフィンが好きな人なら聞いたことがある地名かも知れません。19世紀終わり頃、ハワイ王朝のプリンス達がここでサーフィンをしたのが始まりということで「サーフ・シティ」と名乗っていましたが、最近この「サーフ・シティ」という名称を南カリフォルニアのロング・ビーチと争い、負けてしまいました。

9.25 米CBSニュースの調査.米国民の68%がイラクへの武力行使を支持.イラクとの交戦は不可避とみる者は78%に達する.

9月26日 米英共同決議案の発表

9.26 パウエル国務長官 上院外交委員会公聴会で証言.「新たな安保理決議案の骨格について英国と合意した」と述べる.

9.26 アメリカ,国連での仏・露・中との協議を開始.新決議に必要な三要素として,@イラクが安保理決議の「重大な不履行」を犯してきたことを確認する.Aイラクに要求する具体的な行動を明示する.Bそれにイラクが従わないときは「厳しい結果」を伴うことを決定する,をあげる.さらに決議が採択されない場合は米国が単独行動を起すと宣言.査察の完全受入と決議履行の期限を約2ケ月とすることを提起.

9.26 米,19回目の臨界前核実験を実施.

9.28 イラク攻撃反対デモ.ロンドンで40万人,ローマで10万人が参加.

9.30 米議会で,対イラク武力行使容認決議案が審議入り.

02年10月 国連安保理のつばぜり合い

10.01 イラク,査察に関する国連との協議で合意.大統領関連8施設を除くすべての施設の即時・無条件・無制限査察を受け容れる.アメリカは査察を戦争に先行させることに反対,新決議の準備に入る.

10.01 米,クウェートと合同演習開始.

10..02 米英両国,安保理常任理事国に対しイラク決議案の第一次案を提示.

10.02 サウジ外相,米への基地提供を拒否する姿勢を明確に表明.

10.03 国連査察委員会(UNMOVIC),英米の新決議案に対する安保理作業完了まで再査察延期を報告.

10.03 国務省リーカー副報道官,イラク査察再開合意で対象除外されている大統領関連施設のうち,バグダッド中心部西の「ラドワニヤ」と,バグダッド北約90キロメートルのティクリート(フセインの故郷)の施設の査察を要求.ラドワニャは広さ17平方キロメートルで,ホワイトハウス敷地の約40倍.要人用大邸宅や宮殿など150以上の建物が点在する.ティクリートも約4平方キロメートルで30以上の大邸宅等が存在する.

10.04 パウエル米国務長官,ブリクスUNMOVIC委員長と会談,査察延期で合意.

10.04 米,12月末までにイラク射程内の洋上に空母4隻配備の計画を発表.

10.06 イエメン沖の仏タンカー「ランブール」が爆発,17人負傷.

10月07日 米市民の2/3が軍事行動支持

10.07 ブッシュ大統領,米国民向演説.「イラクの脅威は比類がない」と強調し,戦争への支持を訴える.直後のNYタイムズの世論調査では,フセイン大統領追放の軍事行動を支持するものが67%に達する.しかし,「国連による査察を待つべき」とする者が63%にのぼり,「すぐ軍事行動すべき」の30%を大幅に上回る.

10.07 イラクは,大量破壊兵器の保持,アルカイダとの接触いずれも虚構,と反発.

10.07 英国法務長官,政府に対し,「フセイン政権排除目的の軍事行動は,国際法に侵犯するおそれがある」と警告.

10.08 バークレー市議会,バーバラ・リー議員らの「対イラク戦争に反対する修正案」を支持する決議を全会一致で可決.

10.09 米英軍がイラク北部「飛行禁止空域」を爆撃,市民4人が死亡,10人が負傷.

10月10日 戦争宣言が上院を通過

10.10 米議会上院,「イラクに対する軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える決議」を採択.賛成77,反対23.「イラクの脅威から米国を守り,全ての安保理決議を履行させるため,大統領が必要かつ適切と判断するなら,軍事力を行使する権限を大統領に付与する.事前または軍事力行使後48時間以内に議会通告を要する.また60日に1回以上,議会に報告しなければならない」

10.10 サンフランシスコ市議会,対イラク戦争反対決議を可決.

10.10 イエメン,米仏の調査チーム,タンカー「ランブール」爆発をテロと断定.

10.10 パキスタン下院選挙で,米軍協力反対派が躍進,大統領支持派過半数割る.

10月11日 戦争宣言が下院を通過

10.11 米下院,武力行使容認決議案を298対133で可決.バーバラ・リー議員の提出した修正案は,賛成72反対355で否決される.

10.11 イラク,武器査察メンバーに米国人の参加受け容れ発表も,米国拒絶.

10.11 ロシア,武力行使を容認する米国の安保理新決議案拒否の立場を表明.

10月12日 バリ島のディスコ爆破事件

10.12 バリ島のディスコ「サリ・クラブ」と米国名誉領事館で爆発事件,171人死亡.

10.12 米国防総省,陸軍,海兵隊に対し,司令部に湾岸出動命令.

10.12 イラク,アル・サディ大統領顧問,大統領宮殿の自由な査察も受け容れを表明.

10.12 カーター元大統領にノーベル平和賞.ノーベル賞委員会,ブッシュ政権を批判.

10.12 フランス30都市でイラク攻撃反対デモ,合計数万人参加.

10月13日 緒方共産党議員,バグダードでイラク議会議長と会見

10.13 緒方議員を団長とする共産党訪問団,イラクを訪問しハマディ国民議会議長と会談.ハマディ議長は大統領宮殿の査察受け入れを言明.

10.13 オーストラリア,メルボルンでイラク攻撃反対集会,3万人参加.

10.14 ブッシュ大統領,バリ島爆発事件をアルカイダのテロと主張.

10.15 フセイン・イラク大統領の信任を問う国民投票,続投決まる.

10月16日

10.16 米英軍爆撃機,バグダット南東の防空施設を爆撃.

10.16 ブッシュ大統領,イスラエルによるイラクへの反撃を容認.

10.16 イラク問題をめぐる国連安保理の緊急公開協議開始.

10.18 ベイルートでフランス語圏諸国サミット開催.シラク大統領,すべての紛争は国際法を守った方法で解決されるべきと警告.

10.21 米国,国連安保理常任理事国に対し,新決議案を正式に提案.決議採択から7日以内の受諾を迫り,30日以内の申告をイラクに要求し,応じない場合は単独の武力行使を示唆する「深刻な結果」を警告.フランス,ロシアはこの案に強く反発.

10.21 ノーベル平和賞受賞者がローマで会合,イラクとの戦争に明確な反対を表明.

10.22 米英軍爆撃機,イラク北部の防空施設を爆撃.

10月23日 米英,安保理決議案を提出

10.23 対イラク攻撃に関する決議案,米英共同で安保理に提案,協議にはいる.

10.23 ブッシュ大統領,3554億ドル(約44兆円)の03年度国防予算案に署名.

10.24 フランス,独自の安保理決議草案を,常任理事国一部と全非常任理事国に提示.米英が独自判断で武力行使する根拠を弱め,実行可能な査察を重視する内容.

10.25 米中首脳会談で,江沢民主席,国連の枠組みでの政治的解決を要求.

10月26日 最初の世界統一反戦行動

10.26 世界統一反戦デモ,「ベトナム反戦以来の規模」となる.ワシントンで20万人,サンフランシスコで5万人,ベルリンで3万人参加.

10.26 ブッシュ大統領,安保理協議決裂の場合,単独武力行使強行をあらためて表明.

10.28 ブリクスUNMOVIC委員長,米英案賛同するも安保理の意向尊重を要望.

10.29 安保理,理事国15か国の非公開協議開始.

10.29 イラク,米国の新決議案を「宣戦布告に等しい」と厳しく非難.

10月30日 アメリカ,「フセインを戦犯法廷へ」と主張

10.30 安保理,イラクへの経済制裁を軽減する6000項目の人道的物資供給を承認.

10.30 米国,イラク現政権転覆後,フセイン大統領と側近を戦犯法廷で裁く意向を発表.

10.30 シリア外相とロシア特使会談,米国の戦争の脅迫への拒否を改めて表明.

10.30 小泉首相,対イラク戦争に関し「米国が国際法を破るはずがない」と国会答弁.

02年11月 攻撃開始の延期と査察の開始

11.01 米国,対イラク決議案を部分修正し,イラクによる申告の期限を延長する意向を明らかにする.

11.02 ロシア下院,安保理承認なしに武力行使しないよう米議会に求めるアピール採択.

11.02 米空母リンカーン搭載機,イラク「飛行禁止空域」で爆撃訓練実施.米空母コンステレーション,サンディエゴを出港,12月には空母4隻体制に.

11.03 サウジアラビア,国連安全保障理事会がイラク攻撃を認めても,サウジ国内基地の使用を許可しない方針を明らかにする.

11.04 フセイン大統領,新決議受け容れの条件表明.国連憲章や国際法を尊重すること,イラクの主権,独立を尊重すること,「米国の悪意を覆い隠すものでない」ことを要求.

11.05 米中間選挙,共和党が上下両院で過半数を獲得.ブッシュ大統領勝利宣言.

11.05 イスラエルのシャロン首相,イラクの次にはイランを攻撃すべきと発言.

11.06 米国,国連安保理の非公式協議に対イラク修正決議案提出.

11.07 米英軍爆撃機,バグダット南東150キロのイラク防空施設を爆撃

11月08日 安保理決議1441号の成立

11.08 国連安保理,対イラク新決議1441号を全会一致で採択.イラクに7日以内の受諾をもとめる.仏中ロ三国は決議を受け,「自動的武力行使の可能性を排除した」と共同声明.

対イラク決議1441号要旨
イラクは,30日以内に,化学・生物・核兵器と弾道ミサイルなどに関する完全な報告書を提出せよ.
全ての地域や施設への無条件で即時の査察を認めよ.査察に必要な機器の持ち込みと,査察で得られた物資や書類の国外持ち出しを認めよ.イラクは査察行動に対し,敵対的な行動を取ってはならない.
査察官が望む全てのイラク人を,イラク国外の自由な状態でインタビューすることを認めよ.
査察行動の安全は,国連治安警備隊によって保証される。査察区域の保全を図るため,「立ち入り禁止区域」や「飛行禁止区域」が設置される.

11.08 ブッシュ大統領,安保理決議採択を歓迎するとともに,フセイン・イラク政権に大量破壊兵器の「完全な武装解除」を求め,この最終的な要求に従わなければ「最も深刻な結果」が待っていると演説.

11.08 イラクのアルドウリ国連大使,安保理決議に抗議.軍事攻撃が開始された場合は原油輸出を停止することを示唆.

11.08 ダグラス・ファイス米国防次官が訪日.石破防衛長官や自民党の山崎幹事長らと会談.米軍のイラク攻撃について日本の理解を求める.同次官は,アル・カーイダとイラクの「深い関係」を繰り返し強調.山崎氏は「日本のイラク対応は,米同時テロとの関係がはっきりしないと,現行法制では米軍に協力できない」と応える.

11.09 フィレンツェでヨーロッパ社会フォーラムが開催される.イラク攻撃などに反対する反戦デモが展開され,参加者は50万人を超える.

11.09 イワノフ露外相,「決議履行はイラクの利益に合致」と述べ,イラクに決議受諾を呼びかける.  

11.10 ブッシュ大統領,25万の兵力を動員する対イラク戦争計画承認と米紙報道.

11.10 米英軍爆撃機,イラク南部の防空ミサイル基地2カ所を精密誘導弾で爆撃

11.10 アラブ連盟外相会議,新決議を攻撃正当化の口実としないよう米国に要求

11.11 フセイン大統領,イラク国会緊急会議召集,安保理新決議への対応を審議.

11.11 ブッシュ大統領演説,対決は脅威が訪れる前に,と最短年内の先制攻撃を示唆

11月12日 戦争が始まれば犠牲者は推定46万人

11.12 イラク国会,対イラク新決議の受諾拒否を政府に勧告,ただし大統領に決定を一任するとし閉会.

11.12 フーン英国防省,米国のミサイル防衛構想に参加する姿勢を初めて表明.

11.12 英国医療従事者団体メダクト,開戦時の死者推定46万人とする報告書を発表.報告書によれば,乳幼児や難民の犠牲が大で,戦争より査察や禁輸の強化を優先すべきと勧告する.

11月13日 イラク,安保理決議を受諾

11.13 イラクのサブリ外相,アナン事務総長に書簡提出,安保理決議1441の無条件受諾を表明.「査察団が任務を果たせば,イラクが大量破壊兵器を開発していなかったことが確認され,米英政権のうそとごまかしが暴露されることになる」とし,「大量破壊兵器の開発疑惑が解消されれば,安保理は対イラク制裁をすべて撤廃するべき」と主張.

11.13 全米カトリック司教会議,「対イラク戦争は道徳的に許容できない」  とする声明を発表.

11.15 ブリグス委員長,査察を27日から再開と発表,事前通告なしの700箇所含む.

11.15 米英軍機,バグダッド南東を精密誘導弾で爆撃,民間施設が被害,7人死亡

11.15 英国世論調査,回答者の3分の1が,「米大統領の方が世界平和への脅威」と答える.

11.16 フセイン大統領,国会に説明.「米国に攻撃の口実与えぬため決議受諾した」と述べる.

11.16 イラクのアジズ副首相,査察団を歓迎し全面的に協力すると表明.

11.17 米英軍爆撃機,イラク北部「飛行禁止空域」の防空施設を精密誘導弾で爆撃.

11.17 ラムズフェルド米国防長官,対テロ戦争用に小型核爆弾を開発中と発表.

11月18日 査察団の調査開始

11.18 UNMOVICの先遣隊,バグダッドのサダム国際空港に到着.

11.19 イラク当局,国連査察団との事前協議で,通告なし査察も含め全面的協力を表明.大量破壊兵器開発に関して12月8日までに報告することを約束.

11.19 アナン事務総長,飛行禁止空域での対空砲火を決議違反とする米国主張に疑問表明.

11.19 米上院,テロ対策を統括する国土安全保障省設置法案を可決(下院はすでに可決).  

11.20 米国,友好約50カ国に対イラク軍事行動の協力を要請,各国政府に回答を要求.

11.20 米英軍爆撃機,バグダッド南東150キロの防空施設3か所を爆撃

11.21 プラハでNATO首脳会議.テロ即応部隊の創設や軍備の近代化などを盛り込んだプラハ宣言を採択.

11.21 米上院,大量破壊兵器情報を提供したイラク科学者の米国亡命を認める法案を可決.  

11.22 アラブ外相会議,査察遂行のため,米国にイラクへの恫喝の停止を求める声明採択

11.22 米英軍機,イラク南部「飛行禁止空域」の通信施設を爆撃

11.23 米英軍,昨日に引き続きイラク南部アマラ付近の通信施設を爆撃,イラクは民間施設への攻撃と非難

11.23 イラク政府,安保理決議1441号は「イラクへの侵略の口実になる」とする見解を発表.

11.23 イラク政府,米英軍の空爆に対する抗議書簡をアナン事務総長に送付.査察受諾に変更なし.  

11.24 バチカン市国国務長官,対イラク戦争と先制攻撃に反対を表明.

11月25日 査察団の中間総括

11.25 国連査察,いったん休止し中間総括.ブリグス委員長,「大量破壊兵器はすでに廃棄済み」とするイラクの主張を安保理に報告.エルバラダイIAEA事務局長,現状を評価する発言.「査察を通じた平和的な解決が可能」と述べる.

11.25 安保理,イラクへの人道物資輸入計画を延長する案を審議.米国の反対で,期間を半年から9日間に短縮.

11.25 FBI,「米国内イスラム教徒への憎悪犯罪が前年比17倍の481件に増加した」と報告.

11.27 国連査察再開.バグダッド近郊のカーボン工場など2カ所を査察.IAEAのボット査察官,UNMOVICのペリコス査察官は, 「イラクはこちらが見たいという物をすべて見せた」とイラクの協力を評価.

11.27 ワシントンでイラク攻撃に反対する抗議集会.20万人がホワイトハウスまで行進.ジェシー・ジャクソン師は「(米国のイラク攻撃は)醜く,不必要な戦いだ。国際社会の大半も反対している」と述べる.女優スーザン・サランドンは,「暴力によるテロ撲滅は不可能である.米国人の大半は紛争を望んでいない」と強調.同じ日サンフランシスコでも10万人が行動に参加.

11.28 米英軍機,イラク北部ニネベの民間と軍の施設を攻撃,民間人1人が死亡.

11.28 中国外務省,査察団に中国も参加する意向を発表,米国の武力行使を牽制するねらい.

11.28 イラク人医師2人が,日本記者クラブで会見.劣化ウラン弾が原因とされる小児がんに苦しむ子どもたちについて紹介.「バスラ市周辺で,妊娠中の被曝が原因と思われる子どものがんや奇形が急増した。奇形児が生まれる率は3倍になった.がん発生率は10倍に,がんの死亡率も20倍近く激増した」と述べる.

11.30 オーストラリア各都市でイラク攻撃に反対するデモ,シドニーでは1万人が参加.

2002年12月

12月01日 日本で最初の大規模な反戦集会

12.01 米英機,バスラの石油会社の事務所を精密誘導弾で爆撃,4人死亡,27人が負傷.

12.01 代々木公園で有事法制,イラク攻撃などに反対する集会.2万5千人が参加

12.01 エルバラダイ事務局長,「査察の結論には1年必要」と国際社会の忍耐を訴える.

12.01 オーストラリアのハワード首相,バリ島テロ事件に関し,「テロ攻撃が懸念される時には先制攻撃する」との方針を表明.東南アジア各国はハワード発言にいっせいに反発.マレーシアのマハティール首相は「アボリジニーをためらいなく銃で撃っていた時代のようなごうまんさだ」と非難.

12月02日 B52爆撃機による攻撃

12.02 米英軍機,イラク北部の複数の防空施設を爆撃.

12.02 国連査察団,バグダッドの大統領宮殿を抜き打ち査察.「計画通り完全な査察が行われた」と声明.

12.02 中ロ首脳会談,イラク問題の政治的解決のために協力することで合意

12.02 トルコのイスタンブールでイラク戦争に反対するデモ,5千人が参加.

12.02 米軍のB52爆撃機,アフガニスタンのシンダード付近に爆弾投下,B52の空爆は5ヶ月ぶり.

12月04日 イージス艦派遣が決定

12.04 米英軍機,イラク北部の複数の防空施設を精密誘導弾で爆撃.

12.04 国連安保理,イラクへの人道物資輸入計画をさらに180日間延長すると決定.

12.04 日本政府,インド洋の対テロ作戦後方支援に海上自衛隊イージス艦派遣を正式決定.護衛艦のローテーションであり,艦艇内の居住性と調査能力を配慮した結果だと説明.アーミテージ米国務副長官は「小泉首相の傑出した指導力によるものであり,深く感謝する」と語る.

12.04 トルコ政府当局,「米軍の領空通過や基地使用に対し,いかなる約束もしていない」と強調.

12.04 米民主党系のシンクタンクが世界44カ国で実施した大規模な意識調査の結果を発表.イラク攻撃に関しては,軍事力を行使することに米国の62%が賛成.一方,ロシアの79%,ドイツの71%,フランスの64%が反対.英国は賛否が47%で並ぶ.

12月05日

12.05 フセイン大統領国民に向け演説,「査察は米国の主張を覆えす好機」と述べる.

12.05 日本政府,イラク対応に後方支援活動強化や武器携行条件緩和を含む新法骨子発表  

12月06日

12.06 米ニミッツ級原子力空母トルーマン,ペルシャ湾に向けノーフォークを出航

12.06 ペルシャ湾北部で,米駆逐艦ポール・ハミルトンが民間船舶と衝突

12.06 イスラエル,ガザ地区を戦車と武装ヘリで攻撃,国連職員も犠牲に

12月07日

12.07 イラク,大量破壊兵器開発に関する申告書をバグダッドの国連査察本部に提出.計1万1807ページにCD―ROM12枚が添付された膨大なもの.この報告の中で大量破壊兵器所持を否定.

12.07 フセイン大統領クウェートに書簡,90年の侵攻を謝罪.クウェート政府は回答を保留.

12.07 オーストラリア,カタールで実施された米軍軍事演習にオブザーバーとして参加表明.

12.08 イラク提出の申告書が国連到着,査察委が直ちに内容精査着手  

12月09日 アーミテージ国務次官の対日圧力

12.09 米英軍,カタールで大規模な演習「インターナル・ルック」を開始.米中央軍は首都ドーハに近いアッサイリア基地に,本国並の指揮・通信機能を持つ大規模な前線司令部を建設.約1万2000人の米軍部隊が展開するクウェート,米第5艦隊の司令部があるバーレーン,ペルシャ湾に展開中の米空母部隊などとの通信系統を整備.司令部の800人は演習後も駐留.

12.09 常任理事国がイラクの提出した「申告書」を先んじて入手したことが明らかになる.安保理議長は「米国の圧力があった」と証言.

12.09 ブッシュ米大統領,「イラク解放法」に基づき反体制派6団体へ総計1億ドルの支援.

12.09 英反核団体CND,「国連決議なしで米国が参戦することは国際法違反」と英政府を起訴

12.09 カーター氏,ノーベル平和賞授賞式挨拶で米国に国連を通じた解決を要望

12.09 日本政府高官,アーミテージ米国務副長官と非公式に会談.武力行使にふみきった際の支持を表明,さらに攻撃に際し国際社会の支援を広げる環境整備を提言.

12月10日 全米で初の大規模抗議行動

12.10 全米の数百の都市で戦争反対の抗議行動.140人以上の人々が逮捕される.シカゴの連邦政府ビルは一時封鎖され,ニューヨークでは国連本部前での座り込み抗議に参加したダニエル・エルスバーグも逮捕される.

12.10 ハリウッドで,百人以上の著名俳優が名を連ねたイラク攻撃反対請願の発表.人気ドラマ「ザ・ホワイトハウス」で大統領を演じる俳優マーティン・シーンをはじめ,キム・ベイシンガー,ミア・ファロー,ヘレン・ハントらが出席.

12.10 米,核先制攻撃を国家戦略とする報告「大量破壊兵器に対する国家戦略」を発表.付属文書で北朝鮮,イラン,シリア,リビアをテロ国家として名指しする.

12.10 米英軍機,バグダッド南東アルアマラの防空施設を爆撃

12.10 イラクのドウリ国連大使,アナン事務総長と会談.米国の申告書コピー入手を批判.

12月11日

12.11 中東歴訪中のラムズフェルド国防長官,カタールと基地使用協定に調印.イラク侵攻時の主要な爆撃基地となる予定.

12.11 シュレーダー首相,戦端が開かれた場合にトルコ上空の警戒任務にドイツ軍を参加させる方針を表明.

12.11 ハリウッド俳優ら100人以上が米大統領にイラク攻撃反対の書簡提出

12.11 ブリクス委員長,米英が「イラクが大量破壊兵器保有している証拠を提出した」とする情報を全面的に否定.

12月12日

12.12 国連賠償委員会,米仏伊蘭サウジ5カ国の湾岸戦争被害者に,約1.8億ドルの補償を追加承認,補償金額は累計437億ドル.

12.12 イラク国家監視局のアミン局長,科学者への聴取に前向きな姿勢を表明

12.12 イラク石油省,露石油会社ルクオイルとの西クルナ油田開発契約を,債務不履行を理由に破棄.

12月13日

12.13 EU首脳会議,イラクに対して安保理決議の遵守を呼びかける宣言を採択

12.13 イラク高官,化学・生物兵器の製造にあたって原料・技術の提供を受けた米企業名が,申告書に記載されていることを示唆.

12.13 イラク攻撃反対の12・13集会東京で二千人参加,小田実氏らが呼びかけ.

12月14日 韓国で女子学生轢殺の抗議集会

12.14 米軍,イラク軍機が「飛行禁止空域」で飛行したとし,バグダッド南東の防空施設を爆撃.サブリ外相,英米の空爆を「不布告

の戦争」として,停止を国連に強く要請.

12.14 秋葉広島市長,米国の「大量破壊兵器に対する国家戦略」に対しブッシュ大統領に抗議書簡送付.また北朝鮮の核施設の稼働再開に対し金正日総書記に抗議書簡送付.

12.14 米国,対イラク攻撃に備え予備役と州兵2万7000人に待機指示.

12.14 クウェート国民議会,90年の侵攻に対するフセイン大統領の謝罪(12.07)に対し拒否声明.

12.14 米軍の女子中学生轢殺に抗議する韓国の国民平和大行進,ソウルで10万人参加.

12.15 米軍機,イラク南部の「飛行禁止空域」でレーダー施設を爆撃.

12.15 エルバラダイIAEA事務局長,現時点でイラクの核兵器製造証拠はないと証言.

12月16日 日米の安全保障共同声明

12.16 海上自衛隊のイージス艦「きりしま」,横須賀基地をインド洋向出港.

12.16 日米両政府が安全保障共同声明発表.イラク問題での日米の行動緊密化を確認.また日本がミサイル防衛計画の共同研究にいっそう主体的に参加することを確認.

12.16 米英軍機,バグダッド南東のアルクトにあるイラク防空施設を爆撃.

12.16 ブレア首相,シリアを訪れアサド大統領と会談.国連安保理決議の遵守で一致.

12月17日

12.17 イラク反体制派の会議がロンドンで開かれる.「民主的連邦国家」樹立を宣言.

12月18日

12.18 米英軍機,バグダッド南東アルクトの対空レーダー施設を爆撃.

12.18 安保理,クウェート侵攻時の捕虜,行方不明者や資産の返還をイラクに要求.

12.18 安保理非常任理事国のシリア,「申告書」問題での常任理事国との差別に抗議.「申告書」(改訂版)を査察団に返却.

12月19日

12.19 パウエル長官が「申告書」に対する米国独自の評価を発表.「重大な決議違反」がふくまれていると断定.ブッシュ大統領は申告書不備を理由に,湾岸兵力を11万人に倍増する方針を決定.

12.19 安保理非公式協議開始,ブリクス委員長がイラク申告書の最初の評価報告を行う.「新たな事実は少ない」と申告書の不備を指摘.また「米英にイラクの安保理決議違反の確証があるなら,我々に伝えるべきだ」と述べ,米英の情報開示にも不満表明.

12.20 米英軍機,バスラとアンナシリア近郊の対空防衛通信施設2カ所を爆撃.

12.21 国連,米軍攻撃で流出するイラク難民を約60万人と推定.これはアフガン攻撃時の3倍にあたる.

12月22日

12.22 湾岸協力会議,イラクに対し戦争回避のために安保理決議の遵守を呼びかけ.

12.22 アフガニスタンと周辺6カ国外相会議,相互不可侵で合意.

12.22 米国,欧米在住のイラク反体制派志願者数千人に,軍事訓練を実施する方針を発表.

12月24日 イラク,米無人偵察機を撃墜

12.23 米国,イラクが「飛行禁止空域」に侵入した米無人偵察機プレデターを撃墜したと発表.

12.23 英タイムズ紙,イラク戦争が始まった場合「予想される難民は90万人」と報道.

12.23 ドイツのアイヒェル財務相,「対イラク戦争ではアメリカに対して財政支援することはない」と述べる.

12月24日

12.24 フセイン大統領,「国連の破壊兵器査察で米国のうそが露呈する」と国民向け演説.

12.24 IAEA,過去に核開発に携わったイラク人科学者1人から非公式に事情聴取を開始.国外聴取の対象となるイラク専門家と家族の安全確保を関係各国に要請.

12.25 イスラエル,「イラクがシリアに生物・化学兵器を移送中」と発表.シリアはこの疑いを全面的に否定.

12月26日 イラク政府,日本を非難

12.26 米英軍機,イラク南部民間及び公共施設を爆撃,市民3人死亡,16人以上負傷.

12.26 イラクのラマダン副大統領,「日本は米英に次いでイラクに敵対的な態度をとっている」と強く批判.同時に「独自に代表をイラクに派遣し,現状を見てから公平に判断してほしい」と要請.

12.26 ロバートソンNATO事務局長,イラクが安保理決議を履行しない場合は,米国の軍事行動を支援すると表明.「NATO加盟国は米国が必要とする支援を行う道徳的な義務がある」と語る.

12月27日 国連,犠牲者予測は50万人と発表

12.27 米国防総省,イラク戦争の可能性に備え主力部隊にペルシャ湾行きを命令.

12.27 米無人偵察機プレデター,対戦車ミサイルでイラクの通信用車両を破壊.

12.27 ルベルス国連難民高等弁務官,イラク攻撃は人道的に悲惨な結果招くと警告.報告によれば戦争が起こった場合,イラク国民50万人が犠牲となると想定される.

12.27 イラクの冶金学者ジャミール氏,核兵器開発計画との関与を否定.

12.28 イラク,大量破壊兵器開発の疑惑を解くため,500人以上の科学者リストを国連に提出.研究者が聴取に応じるかどうかは,研究者自身の判断によるとする.

12月29日 米軍機,パキスタン領内爆撃

12.29 中独首脳会談,イラク問題に関し国連安保理の場で緊密に連携をとることで一致.

12.29 米軍機,パキスタン領内の「アルカイーダ基地」を爆撃.

12.30 国連安保理,対イラク「石油と食料の交換プログラム」の輸入制限品目を追加.

12.30 米英軍機,イラク南部の「飛行禁止空域」で防空・通信施設を爆撃.イラク側は地対空ミサイルで応戦.

12.31 ブッシュ大統領が国民向けの演説,対テロ戦争での勝利を訴える.

12月末 米財務省代表団,トルコを訪問.最大約280億ドルの経済支援策を約束.これと引き換えに,トルコは実質的に攻撃を容認.出撃拠点として同国のインジルリク空軍基地の使用も認める.

 

 2003年

1.01 国連安保理,非常任理事国のうち5カ国が交替,新理事国の任期は2年. (新任)ドイツ,スペイン,パキスタン,チリ,アンゴラ.(継続)ブルガリア,カメルーン,ギニア,メキシコ,シリア.

1.01 米英軍機が南部バスラの防空施設を爆撃.イラク人1人死亡,2人負傷.イラクのアジズ副首相,「米国は査察の結果に関係なく攻撃している」と非難.

1.02 米英軍機,バグダッド南東クト近郊の防空施設を爆撃.

1月03日

1.03 ブッシュ大統領,陸軍基地で演説.「イラク攻撃はフセインの脅威を取り除くためのもの」と述べる.

1.03  パキスタン各地で12月の米軍機爆撃に抗議し,イラク攻撃に反対するデモ.あわせて数万人が参加.

1.03 バーレーンの首都アル・マナーマで,数百人がイラク攻撃に反対するデモ.バーレーンは米第五艦隊司令部の所在地で,イラク戦争が始まれば米軍の中枢基地となるところ.

1.03 中国と英国の外相が電話会談.イラク問題で恒常的協議を続ける必要性で一致.

1月04日 トルコ首相の中東歴訪

1.04 米英軍機,「飛行禁止空域」のナーシリーヤ付近の通信施設を精密誘導弾で空爆.

1.04 イラク軍機関紙,イラク攻撃に対抗する「人間の盾」に十万人が志願したと発表.

1.04 国連査察団,バグダッドの北375キロのモスルに常設事務所設置.

1月04日 トルコのギュル首相,アラブ諸国(シリア,エジプト,ヨルダン)を歴訪.開戦時はNATOの一員として対米協力に踏み切らざるを得ない自国の事情を説明.「最後まで戦争を回避する努力を続けていく責任がある」と述べ,イラク攻撃反対で一致したことを強調.予定したサウジアラビア訪問は直前で中止される.

1月05日

1.05 イスラエル,地中海沖で世界最高精度の迎撃ミサイル「アロー」の発射実験に成功.

1.05 国連査察団,「国家監視局」への査察を実施.「国家監視局」は査察団との連絡調整機関であると同時に,イラクの組織した調査妨害機関であるとの悪評.

1.05 ボストン・グローブ紙,「米特殊部隊とCIAがすでにイラク国内に潜入し,数ヶ月に渡りイラクで活動中である」と報道.

1月06日 米軍,予備役1万を出動準備態勢に

1.06 フセイン大統領,国軍創立記念日で演説.「国連査察はほぼ純然たる諜報活動となっている」と批判.

1.06 エルバラダイIAEA事務局長,これまでのところ査察で疑問点は見つからなかったと報告.

1.06 米英軍機,イラク南部メイサン地方を爆撃,民間人2人が死亡,13人が負傷.

1.06 米陸軍,1万人以上の予備役に出動準備を指令.その大半はペルシャ湾岸派遣を予定される.

1月07日

1.07 南ア,非同盟諸国会議の議長国として,査察報告書を国連全加盟国に公開するよう要請.

1.07 ラムズフェルド米国防長官,対テロ特殊作戦軍(SOCOM)の経費を増額するとの方針を表明.

1.07 国連とWHO,戦争が始まった場合のイラク国内の被害予測を公開.攻撃初期で50万人のイラク国民が犠牲になるとし,「湾岸戦争」以上の深刻な被害となるだろうと警告.この報告はもともと人道支援計画を策定するために作成されたもの.

1月08日

1.08 同時多発テロのアメリカ人遺族などを含む「ピースフル・トゥモロウズ」がバグダッドを訪問. 「世界は軍事行動の被害者すべてに等しく関心を持つべきである.対イラク戦争を防ぐため全力をあげる」と声明.

1.08 仏ロ外相が会談.安保理決議を厳守することで一致.安保理での両国の協力姿勢を強調.

1.08 イラクとクウェート,湾岸戦争時に行方不明となったクウェート人捕虜問題で協議再開.

1月09日 ブレアの忍耐発言

1.09 ブレア首相,閣議で「国連の査察には時間と場所を与えるべきだ.忍耐が必要」と発言.査察期限延長を支持.

忍耐発言の背景
新たな国連決議なしの英国参戦に反対する,100人前後の労働党下院議員と多くの地方組織党員の存在.英王立国際問題研究所のウィリアム・ホプキンソン主任研究員は「国内外で意見の分裂を避けたいのが現時点での首相の方針だ.慎重姿勢は時期をめぐる戦術的判断で,武力攻撃支持を含む対米協調は不変.イラクへの対応が軟化したわけではない」と指摘.

1.09 UNMOVICのブリグス委員長,安保理に査察の中間報評価告,大量破壊兵器の決定的証拠はないが,申告書は世界の疑念に答えるものではないとし,なお時間が必要との見解を表明.

1月上旬 米ギャラップ社が実施した世論調査で,武力攻撃への支持は53%と大きく下落.

1月11日

1月11日 英空母アークロイヤルが湾岸方面に向け出港.地中海で15隻の艦船と合流して艦隊を形成する予定.英海軍としてはフォークランド紛争以来,20年ぶりの大規模艦隊.

1.11 ロサンゼルスでイラク戦争反対の市民集会,2万人以上が参加.

1.11 シカゴで,公務員労組,アメリカ教員連盟,港湾労組,サービス従業員組合,チームスター,ホテル・レストラン労組,全米自動車労組などが参加しイラク戦争反対の会議開催.USLAW(イラク戦争に反対する組合組織全国会議)の結成で合意.これらの労働組合の加盟組合員数は合計200万人を超える.

1月12日 イギリスの戦争反対世論,8割に達する

1.12 イギリスのデイリー・メール紙,労働党地方支部長の約9割が反対,参戦強行なら党員数千人が大量離党すると報道.

1月12日 BBC放送の電話アンケート.回答者の約8割が「決議なき参戦」に反対.

1.12 イランのハタミ大統領,クウェートのサバハ外相と会談.ともにイラクの旧敵国でありつつも,イラク攻撃回避で合意.

1.12 モロッコの首都ラバトでイラク戦争反対デモ,2万5千人参加.

1月13日 ローマ法王,ブッシュ非難の演説

1.13 IAEA,報道官談話を発表.「査察には1年はかかる」と言明した上で,「安保理は,査察団に必要な時間を与えると信じている」と述べる.

1.13 南部の飛行禁止空域,バスラの民間施設を米英軍機が爆撃.イラク人6人が負傷.

1.13 ローマ法王,米国のイラク攻撃の計画を非難する演説.対イラク戦争反対の姿勢を明確にする.

1.13 米共和党内の戦争反対者,ウォール・ストリート・ジャーナルに攻撃反対の全面意見広告を掲載.

1月14日 シュレーダーとシラク,安保理重視で合意

1.14 仏国内の最新世論調査.開戦反対が76%で昨年とほぼ変わらず.仏軍の参加に賛成する人が昨年9月の34%から19%へ急落.

1.14 シュレーダーとシラクが会談.イラク攻撃が必要となれば,その決定は安保理が行うこと,決定にあたっては新たな決議の採択が不可欠との認識で一致.

1.14 査察団,「イラクが禁輸物資となっているミサイル用エンジンなどを輸入した事実が発見された」と報告.

1.14 日本政府,米第七艦隊の新鋭原子力空母「ジョージ・ブッシュ」号が,横須賀を母港とすることを了承.

1月15日

1.15 米国,NATOに対し,イラク攻撃が始まった場合の基地提供,輸送への協力など後方支援を正式に要請.

1.15 米行政管理予算局のダニエルズ局長,対イラク戦争が始まれば,同盟国に戦費負担を要請するとの考えを明らかにする.

1.15 ラムゼー・クラーク元司法長官,ブッシュ大統領らに10項目からなる弾劾書を提出.

1.16 UNMOVIC,イラク国内のウハイダー弾薬庫で,空弾頭11発を発見.化学兵器爆弾として利用可能なものと発表.

1.16 国連査察団,バグダッド市内でイラク人科学者2人の自宅を訪問.大量破壊兵器に関する聴取を実施.

1.17 米英軍機,バグダッド南東の2カ所の防空施設を爆撃.

1.17 シラク大統領,安保理に対し査察延長を要請.同時に,国連に対する圧力を強めるブッシュ大統領の姿勢を批判.

1.17 フセイン大統領,「湾岸戦争」開戦12年を記念しTV演説,最後の最後まで抵抗を続けるよう訴える.

1月18日 ワシントンの50万人集会

1.18 ワシントンでA.N.S.W.E.Rの主催する抗議行動.50万人の参加者が,議事堂前からワシントン海軍工廠に向けデモ.アメリカの大量破壊兵器の即刻の撤去を要求.この他,東京の7千人を始め,世界30カ国を超える地域で100万人が参加して,イラク攻撃反対の連帯集会.

1.18 IAEA,「イラクの物理学者ハッサン氏の自宅で,ウラン濃縮技術に関連した大量の文書を発見した」と発表.

1月19日 ブリクス・エルバラダイの査察交渉

1.19 ブリクス委員長,エルバラダイ事務局長がバグダッドを訪問,サアディ大統領顧問と会談.さらに積極的な協力を強く要請するとともに,ミサイル弾頭などに関し,補足情報を要求.

1.19 米英軍機,バグダッド南東の通信施設など8か所を空爆.

1.19 パウエル長官,「決定的証拠」や新決議がなくても,イラク攻撃は可能と強調.

1.19 米国とイスラエル,イスラエル南部でイラクのミサイル攻撃を想定した訓練開始.

1.19 15カ国8宗派の宗教指導者,イラク攻撃阻止へ積極的な行動を信者らに呼びかけ.

1月20日 最初の安保理外相級会合

1.20 査察団とイラク政府,査察方法の改善に向けて,10項目で合意.

1.20 安保理外相級会合が開かれる.パウエル長官は対イラク武力行使をめぐり,単独行動も辞さないとする強硬発言.これに対し,仏ロ中が一斉に反発.

1.20 英フーン国防相,兵士2万6千人と戦車120台をイラク周辺に増派すると発表.地上戦に備えたもの.

1.20 ドビルパン仏外相,対イラク武力行使を容認する新決議が提案されれば,拒否権を発動する可能性があると示唆.

1.20 キプロスのカスリデス外相,国連のキプロスでのイラク人科学者聴取実施を了承.

1月21日

1.21 ラムズフェルド長官,空母2隻にたいし新たに増派命令.イラク周辺海域は米空母6隻体制に入る.

1.21 シュレーダー独首相,米英両国が準備しているイラク攻撃容認の新決議には反対する方針を表明.

1月22日 日本,開戦時の資金援助を表明

1.22 ニューヨーク・タイムズ社説,「ブッシュ大統領は,査察の継続ではなく戦争の方向に傾いているが,これは間違いを起こすことになる」と指摘.

1.22 日本政府,「イラク攻撃が始まれば,難民支援策として資金提供する」との意向を米国に表明.

1.22 イラク対空防衛部隊,領空に侵入した米無人偵察機プレデターを撃墜.

1月23日 ブラジルの世界社会フォーラム,「2.15統一行動」を呼びかけ

1.23 NATO,大使級会合を開催.米国のイラク戦争に対する軍事支援要請を審議.独仏の抵抗により継続審議になる.

1.23 中東6か国外相会議,イラクの査察完全履行と攻撃反対を求める共同宣言を採択.

1.23 アジズ副首相,フセイン大統領が戦争回避のために辞任・亡命する可能性はないと否定.

1.23 クウェート議会のホラフィ議長,「対イラク戦争が始まったとしても,イラク侵攻作戦に参加する意思はない」と意向を表明.

1.23 ブラジルのポルトアレグレで第3回世界社会フォーラム開幕.ブッシュ政権の戦争政策や大企業の世界支配に反対するデモに7万人が参加.集会は,来る2月15日を期して世界の反戦勢力が一斉に立ち上がるよう呼びかける.

1.23 日本外務省,バグダッドに滞在する邦人約30人に対し,「自主退避」を勧告.

1月24日 民主党議員122人が,査察継続を求める

1.24 米民主党所属の下院議員百二十二人が,査察団の活動継続を求める手紙を大統領に送る.「米国は,安保理決議1441のプロセスにしたがい,同盟国の完全な支持を得て,外交的手段を通じてイラクの武装解除を達成するべきである」と述べる.共和党内でも懸念の声が広がる.

1.24 ニューヨーク・タイムズ紙とCBSニュースの世論調査.「査察団に時間を与えるべきだ」と考えている人が77%に達する.大統領の支持率は52%と,一昨年九月の同時多発テロ以降最低.

1.24 英国の大衆紙デーリー・ミラー,読者にたいしイラク戦争反対署名を呼びかけ,二日間で七万人がこれに応じる.

1月25日 「人間の盾」がロンドンを出発

1.25 イランとインド,覇権主義と一国主義に反対し平和的解決を求める共同宣言発表.

1月25日 米英人ら約50人,二階建てバスに乗りロンドンを出発.「人間の盾」となって攻撃を阻止しようとバグダッドへ向かう.イラクでは,標的となる発電所や橋などの周辺に陣取り,体を張って攻撃を阻止する予定.呼びかけ人の元米海兵隊員ケン・オキーフさん(33)は,「戦争を止めるには,自分たちで行動しなければならない」と訴える.2月15日には,第2陣約600人が,バス6台でロンドンを出発する.

1月25日 ワシントン・ポスト,国防総省当局者らの話として,「イラク攻撃に踏み切る準備が完了するのは3月にずれ込む見通し」と報じる.

必要とされる準備期間
 陸軍の主力5師団のうち,現在,湾岸地域への派遣命令を受けているのは第3,第4歩兵師団だけ.命令を受けていない師団の中で,攻撃用ヘリ「アパッチ」などを擁し,侵攻作戦に必須とされる第101空てい師団の場合,装備の海上輸送などには1か月かかる.さらに,同師団の指揮官らは湾岸地域に到着後,兵士らを砂漠の気候に順応させ,基礎的な訓練を施す期間として,最低でも1,2週間は必要と述べる.米国が国連査察の数週間延長を容認するのは,この準備の遅れによるものと説明される.
また海軍は,現在ペルシャ湾と地中海に1隻ずつ空母を展開しているが,新たに派遣命令が出された空母2隻がそろうのは,2月中旬以降になる見込みとされる.

1.25 ベルギーの世論調査.「いかなる場合にも」戦争を拒否すると答えた者は68%,「国連安保理が容認する場合に限って」戦争を

容認すると答えた者は29%.両者をあわせると,一方的な対イラク戦争には97%が反対.

1月26日 七ケ国の首都市長が共同アピール

1.26 カード首席補佐官,テレビ・インタビューで,「米国はあらゆる手段を使う」と述べ,イラクへの核兵器使用の可能性も排除せず.

1.26 米英軍機,バクダッド南東のケーブル中継所など5カ所を爆撃.

1.26 欧州七カ国の首都の市長,「イラクにおける紛争は回避されうるし,回避されなければならない」との共同アピールを発表.ローマのベルトローニ市長,パリのドラノエ市長,ロンドンのリビングストン市長,ベルリンのウォーウェライト市長,ウィーンのホイプル市長,ブリュッセルのティレマンス市長,モスクワのルシコフ市長の七人が呼びかけ人として署名.

1.26 イスタンブールで,米国への基地提供に反対する5千人のデモ.この他ギリシャで1万人,イエメンで数万人,スーダンで1万人の抗議行動.

1.26 米政府,対外広報戦略を統括する「世界広報宣伝局」を新設.

1月27日 ブリクス,イラクが非協力的と報告

1月27日 UNMOVICのブリクス委員長,国連安全保障理事会で約30分にわたり査察報告.「シロでもないがクロでもない」と述べた1月9日の中間報告に比べて,ぐっと「クロ」に近づいた印象を与える内容となる.一方,IAEAのエルバラダイ事務局長は,「あと数か月の査察継続でイラクの核保有疑惑を完全に否定できるだろう」と楽観的な見通しをを述べる.

ブリクス報告の内容
 イラクの非協力性だけでなく,兵器を隠し続けようとしている意図を具体的に列挙.化学兵器用弾頭の発見は「氷山の一角」であり,「兵器を移動させ隠ぺいしている疑いがある」と述べる.化学兵器であるVXガスなどの製造に関しては,「矛盾した情報があるだけではなく,兵器化された形跡すらある」と指摘.また炭疽菌についても,情報データに意図的な改ざんと見られる遺漏があった事実を明らかにする.関係者によれば,この「遺漏」は安保理決議1441が定めた「重大な違反」に「確実に該当するだろう」と言われる.

1月27日 パウエル米国務長官,イラクは国連安保理決議に反して査察に協力せず,武力行使に道を開く「重大な違反」を継続していると強く非難.化学・生物兵器や炭疽菌,VXガスなどの所在が不明であることなどを報告書に沿う形で次々と指摘.「イラクが平和的な武装解除を選択するための時間は急速になくなりつつある」と警告.

1.27 アジス副首相,査察団の報告を受け,「延長後は必要があれば更に積極的に査察に協力する」と言明.

1月27日 CBS放送,イラク攻撃計画「衝撃と畏怖」の概要を報道.

1月27日 ブッシュ大統領,非常任理事国であるスペインのアスナール首相と電話会談.さらに週内に英国のブレア首相,イタリアのベルルスコーニ首相とワシントンで会談する予定を発表.

1月27日 民主党のトーマス・ダシュル上院院内総務,「現実に核の脅威を我々に突きつけているのはむしろ北朝鮮の方ではないか」と述べ,イラク攻撃に突き進むブッシュ政権の外交姿勢をけん制.

1月27日 EU議長国ギリシャのシミティス首相は,「全加盟国が歩調を合わせ,戦争回避に向けてあらゆる手段をとる」と表明.ハビエル・ソラナEU共通外交安全保障上級代表も「違反の証拠なしに開戦は難しい」と繰り返す.

1.27 加藤良三駐米大使,「日米関係がイラク問題への対応を考える基盤になる.仮に武力攻撃が発生した場合は,日本はまず基本的立場を表明すべき」と述べる.

1月28日 ブッシュの一般教書演説

1.28 ブッシュ米大統領,議会で一般教書演説.「米国の旗は力や利益以上のものを象徴している」ゆえに,「この国のとる道は他人の決断に左右されない」と断言.「邪悪な者のもくろみを砕く信念」を強調するとともに,超大国としての力を背景に新たな国際秩序の構築に向かう決意を表明.イラクに武装解除を迫るだけではなく,「脅威が突如として顕在化した後では,行動も言葉も非難もすべて手遅れ」として,国際社会が行動を躊躇することにも警告を発する.またブッシュは「イラクがアル・カーイダを含むテロ組織に大量破壊兵器を与えている」と強調したが,具体的証拠は示さず.

「悪の枢軸」への見解
「異なった脅威には異なった対応が必要だ」と述べ,イラク,イラン,北朝鮮に対しそれぞれ異なったアプローチを表明.「悪の枢軸」発言を事実上撤回.イラクについては,早期開戦への懐疑論が内外から出るなか,武力攻撃を辞さない構えを改めて鮮明にする.一方で,イランについては,「大量破壊兵器を追求しテロを支援している」としつつも,「自由に生きたいというイラン国民の願いを米国は支援する」と語り,民主化運動を促す.北朝鮮については,すでに核兵器を持っている可能性がある以上,武力行使は周辺への影響を考えると,現実的でないとする.

1.28 ジョーンズ国務次官補(欧州・ユーラシア担当),イラクへの核使用を否定.しかし核攻撃計画が検討されている事実は否定せず.

1月28日 プーチン大統領,「国際査察団は,現時点でイラクでの活動に問題や困難があるとは言っていない.しかしイラクが査察を妨害するようなことがあれば,ロシアはイラク擁護の姿勢を転換させ,より強硬な対イラク安保理決議の策定・採択へ動くだろう」とのべる.

1.28 米国人のノーベル賞受賞者41名,対イラク攻撃に反対する共同声明を発表.ブッシュの強硬策を「米国の安全と地位を損なうもの」と非難.

1月29日 安保理で米英と独仏の対立が尖鋭化

1.29 国連安全保障理事会,査察報告を受けて非公式会合を開催.理事国15カ国中11カ国が査察の続行を主張し,査察継続を確認.米英両国は,イラクが査察に非協力的で「武装解除」していないと主張し,長期継続に反対.ブルガリアとスペインがこれを支持.

1.29 UNMOVIC,イラクで発見した砲弾の弾頭に,化学薬品は含まれていないと結論.

1.29 ブレア英首相,攻撃を可能にする新たな国連決議を求める発言.労働党議員の約3分の1を占める左派系議員はイラク攻撃に強く反対.党員の4分の1が党籍を離脱するという情報も流れる.米英が国連の承認なしに攻撃に踏み切った場合,ブレア首相の政治生命は危機に陥るという見方が広がる.

1.29 米国防省,予備役兵1万5千人を追加招集,これまで召集された予備役兵は計9万5千となり,「湾岸戦争」以後最大となる.

1.29 全米14都市で,ブッシュ大統領の一般教書演説に対する抗議行動が行われる.

1.29 CBSによる米国内の世論調査.ブッシュの「年頭一般教書」を受け,「賛成」が演説前の47%から演説後には67%にハネ上がる.

1.29 フランス・サウジ会談,武力行使に代わるあらゆる解決策を検討することで一致.

1.29 韓国の与野党国会議員17名,米国の対イラク戦争に反対する声明を発表.

1月30日 欧州議会,一方的軍事行動反対の決議

1.30 欧州議会,「イラク情勢に関する決議」を採択.賛成二八七,反対二〇九,棄権二六.

決議の骨子
@今のところ確認されている安保理決議1441への違反は,軍事行動を正当化するものではない.
Aいっさいの新たな行動は,情勢の全面的な評価ののち,国連安保理によってとられなければならない.
B欧州議会はあらゆる一方的軍事行動に反対する.先制攻撃は国際法や国連憲章に合致するものではなく,地域の事態の混乱を増長するものであると確信する.

1.30 ブッシュとブレアの会談の前日,AFL・CIOのジョン・スウィーニー会長と英国TUCのジョン・モンクス書記長は連名で,イラクに対する査察の継続を求める書簡を両国政府に送る.

1月30日 参謀本部戦略研究センターのワルフォロメイ・コロブシン大将,「米軍がイラクの地下の化学・生物兵器貯蔵庫を破壊する目的で,地層突入型核爆弾B61―11といった兵器を使用する可能性がある」と述べる.

地層突入型核爆弾 B61―11
 航空機から投下され,地下7―40メートルまで突入して爆発し,地震波で地下目標を破壊する.爆発エネルギーの大きさを,0・3―80キロ・トンの範囲で選択できる.核兵器としては低威力だが,放射能が地表に噴き出し,深刻な汚染をもたらす可能性がある.アフガンでも使用が検討されたが,結局使われなかった.

1月30日 英国,イタリア,スペイン,デンマーク,ポルトガル,ポーランド,ハンガリー,チェコの8か国首脳,イラクの脅威に団結して対抗する決意を示す.この「論文」はイギリスの「タイムズ」紙,アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」など英米有力紙に掲載される.フライシャー報道官は,欧州8か国の指導者が,イラク攻撃支持の書簡を寄越していると指摘.

8カ国首脳共同寄稿
外交的・政治的位置づけが,なんともあいまいなこの文章は,アメリカの発意,スペインのアスナール首相の起草によるといわれる.
文章は,27日の査察団報告で,「イラクの欺まんと否定,不服従が継続していることが確認された」とし,イラクの対応を非難.「イラクの政権とその大量破壊兵器は世界の安全保障の明確な脅威である.我々の政府は,この脅威に立ち向かう共通の責任を有している」と宣言している.
フランスとドイツや欧州連合(EU)議長国のギリシャは,この共同声明に加わらず.

1.30 南アのマンデラ前大統領,ブッシュ大統領を傲慢で近視眼的であると発言,「先見の明なく,適切に考えることのできない大統領をもつ一つの大国が,今世界をホロコーストに落としこもうとしている」と非難.

1月31日

1.31 ブッシュ=ブレア会談.イラクは武装解除していないとし,米英単独でも攻撃可能と宣言.戦争遂行の意思を改めて確認.ブレアは新たな国連安保理決議案の提起を主張.

06年に漏洩されたメモによれば、二人は「化学・生物兵器が、今後数週間のうちに見つかりそうにないと率直に表明しあった」とされる。ブッシュは「米軍の無人機に国連色を塗ってサダムに撃墜させよう」と提案したという。

1.31 米英機,イラク北部を精密誘導兵器で爆撃,民間人1人が負傷.

1.31 UNMOVICの植木安弘報道官,「イラクはさい疑心に満ちた対応を続けている」と,非協力を批判.

 

2003年2月

2月1日 スペースシャトルの爆発・墜落

2.01 スペースシャトル「コロンビア」号,着陸直前に爆発.7人の乗務員全員が死亡.

2.01 欧州8首脳の共同寄稿,「ウォールストリート・ジャーナル」紙と,英国・スペイン首脳のメディア操作によるものと判明.

2.01 イラク,パウエル国務長官が安保理に提出予定の決議違反の「証拠」を,国連査察団が検証するよう要求.

2.01 カーター元米大統領,「ブッシュ政権は先制攻撃の正当性を証明していない」との見解を表明.

2月02日 「衝撃と畏怖作戦」の全貌

2.02 ニューヨーク・タイムズ紙は,米国防総省によるイラク攻撃の詳細なシナリオ「衝撃と畏怖(Shock and Awe),またはAデー」作戦を報じた.作戦実施に必要な兵力の展開は2月中旬にも整う見通しだとする.300機が配備済み.約6700発の衛星誘導爆弾と3000発以上のレーザー誘導爆弾も持ち込まれている.

Aは空爆(airstrikes)の頭文字.サダムの兵士たちを戦闘不能にする,あるいは戦意喪失させるに十分な壊滅的打撃を与える空爆作戦.
3月のある日,空軍と海軍がイラク国内の標的めがけて300〜400発の巡航ミサイルを打ち込む.これは,第一次湾岸戦争の全期間40日に投入された数を上回る.そして二日目,またもや300〜400発の巡行ミサイルを打ち込むことになっている.
さらに2日間で500機の爆撃機により3000発の精密誘導爆弾も打ち込まれる.これによりイラクの持つ中距離弾道ミサイル(推計数十発)など空軍力を掃討.
この戦闘計画のコンセプトは,高精度誘導兵器を多用するのが特徴だ.第一次湾岸戦争では,兵器のうちピンポイントの精度で誘導されるものは10%だった.今度の戦争ではそれが80%になるという.
立案者の一人,ハーラン・ウルマンは,「彼らが恐怖のあまり戦闘をやめてしまうことを我々はねらっている」と言う.「バグダッドにいる将軍の指揮下の30師団が突然消されてしまうのだ.都市も破壊される.バグダッドに安全な場所はなくなる.2日か3日か4,5日で,彼らは,物理的にも情緒的にも心理的にも力尽きてしまう」

2.02 インドのフェルナンデス国防相,「対イラク戦争が始まっても,これに参加するつもりはない」と表明.

2月03日

2.03 国防総省,対テロ戦の勝利,米軍の変革,部隊と兵員の質の維持の3つを柱とする国防予算案を発表.総額3799億ドル,対前年度比4・2%増にのぼる.これは世界の2位から11位までの10か国の合計にほぼ等しい.

2.04 米軍とイスラエル軍,イラク報復攻撃を想定し,迎撃ミサイル「パトリオット」の実射訓練を実施.

2.03 ギャラップ社,仏,英,独,ロ,スペインの欧州五カ国と米国で対イラク戦争に関する世論調査を実施.「いかなる攻撃にも反対」とした人はスペインで74%,ドイツ,フランスではそれぞれ60,50%,ロシアで59%に上る.これに比し,英国では41%,米国で21%にとどまる.米国の一方的な攻撃に賛成した人は,英国10%,ドイツ9%,フランス,ロシア7%,スペイン4%にとどまる.

2月04日 スコット・リッター元査察官の訪日

2.04 アフリカ連合(OAU)首脳会議,南アの強い態度を受け,対イラク攻撃反対などを盛り込んだ声明を発表.

2.04 スコット・リッター元主任査察官,東京都内で記者会見.イラクの大量破壊兵器は大半が廃棄済で脅威にあたらないとし,ブッシュ政権を批判.

2月05日 パウエル,安保理で演説.

2.05 パウエル米国務長官,国連安保理外相級会合で,衛星写真,録音テープ等の決議違反「証拠」となる情報を開示.

パウエル発言の要旨
@フセインは「査察チームを監視する委員会」を設置し,査察の妨害を組織的に行っている.
Aロケット発射装置と生物兵器を搭載した弾頭が,イラク西部各地に配備されている.UNMOVICはイラクは380個のロケットエンジンを不法所持していると報告している.
Bイラクは少なくとも7つの移動式製造装置を持っており,乾燥タイプの炭疽菌やボツリヌス菌を1か月で製造できる.
C控え目の推定で,イラクは今でも100トンから500トンの化学兵器を貯蔵している.
Dフセインは,すべてのイラク科学者を脅迫し,緘口令を敷いている.
E
アル・カーイダの上級幹部アブ・ムサブ・ザルカウィがイラク北部のクルド人自治区に拠点を置いている.イラク政府は彼らの活動を保障している.


ザルカウィ問題
 ザルカウィはアルカーイダ幹部で毒物テロの専門家といわれる.
 ヨルダン生まれのパレスチナ人.アフガニスタンでアル・カーイダの毒物テロ訓練キャンプをまかされていたが,タリバン崩壊後,イラク北部に逃げ込み,イスラム過激派「アンサール・イスラム」のもとで,毒物爆発物訓練センターの設立・運営を助けるなどしたという.
 昨年10月のアンマンの米外交官殺害事件を指揮したといわれ,現在までに仏,英,スペイン,イタリアでザルカウィの関係者,計116人が逮捕されている.

2月5日 東欧10か国外相,パウエル米国務長官の機密情報提示を受けて,イラクの大量破壊兵器隠蔽が明確になったとの認識を示す.宣言に署名したのは,ルーマニア,ブルガリア,スロバキア,スロベニア,エストニア,ラトビア,リトアニア,クロアチア,マケドニア,アルバニアの各国.東欧各国の世論調査では,イラク戦争への反対は,チェコで67%,ハンガリーでは82%.

2.05 ドビルパン外相,「武力行使の可能性を排除しない」と発言.「フランスも妥協するのでは」との観測が内外メディアに広がる.

2月5日 ブッシュのイデオローグ,トーマス・フリードマンが,ニューヨークタイムスに寄稿.「イラクは米軍とその同盟国による鉄拳(iron fist)によって支配され,その鉄拳を背景に,イラク文民政権が段階的に前に出ていくことになるだろう…」

2.05 ロシアとパキスタンが首脳会談.イラク攻撃反対で一致.パキスタンは北朝鮮への核技術供与を否定.

2.05 豪上院,米国のイラク攻撃に追随するハワード首相に対する不信任動議を可決.

2.05 毎日新聞,外務省幹部の小泉首相に対する“進言”を報道.幹部は「米国がイラク攻撃を始めたら,『支持する』と言ってください.それで日本の仕事の8割は終わりです」と伝えたとされる.

2.05 川口外相,雑誌に寄稿.多国籍軍への自衛隊参加や包括的テロ対策法の制定などを提言.

2.05 海上自衛隊の戦車揚陸艦「しもきた」が,ペルシア湾内のカタールに向け出航.

2月06日 101空挺師団に出動命令

2.06 ブッシュ大統領,イラク攻撃を容認する新たな国連決議を要求,イラクに「最後通告」を発する.

2月6日 UNMOVICのブリクス委員長,イラク指導部に強い調子で警告.

ブリクスの発言要旨
査察団の正式報告やパウエル発言などにより政治的環境がかなり変わった.安保理内では,「いつまで査察を続けるのか」などの疑念が強まり,忍耐が限界に近づいてきた.
「重大な違反」の一歩手前の違反が「数多い」ことから,査察へのイラクの協力姿勢に不信を抱かざるを得ない.
武力行使の開始時期は限りなく近づいており,イラク指導部は事態の深刻さを認識すべきだ.

2月6日 第101空てい師団約1万6000人に出動命令.同師団は,攻撃用アパッチヘリ約70機を持ち,バグダッド侵攻をにらむ.ニューヨーク・タイムズ,湾岸一帯の米軍は約10万人で,2月中に約17万5000人に達すると報道.英軍約3万1000人,豪州軍約2000人も加わる.イラク総兵力は約42万人.

地上戦計画の概要
 空爆を数日で終え,南部のクウェートと北部のトルコから挟み撃ちの形で地上戦に突入する.最短で5日で決まる可能性もあるといわれる.
イラク軍が市街戦で徹底抗戦すれば,米軍にも100人から5000人の死者が出る可能性がある.このため,市街戦は極力避け,バグダッドなどの都市部を包囲したうえで,衛星や無人偵察機の情報に基づき空からの攻撃を繰り返すとされる.
地下壕に対しては,厚さ6メートルのコンクリートも貫通可能なGBU28爆弾「バンカーバスター」を使用.
建物や人に被害を与えずに電子機器を不能とする新兵器,高出力マイクロ波(HPM)爆弾も試験的に使うという.

2.06 英国,イラク攻撃に備えて約100機の軍用機をペルシャ湾岸に派遣する計画を発表.

2.06 川口外相,衆院予算委員会で答弁.「安保理決議六七八号が(ふたたび)使われるということは,論理的にはあり得る」と述べる.678号決議は,90年の湾岸戦争を認めた安保理決議.

2月6日 報道によれば,日本外務省幹部は「米国の武力行使の方針は変わらない.結論は米国の武力行使『支持』以外にあり得ない」と述べたとされる.

2月07日 シラク大統領の決意表明

2.07 シラク大統領,パリの有力メディアの記者5人を官邸に招き,みずからオフレコ・ブリーフィング.5日のドビルバン外相発言を修正し,査察の強化と継続という主張を強く再確認する.

2.07 江沢民国家主席とシラク大統領,電話でイラク問題を協議,戦争回避で協力することで一致.

2.07 イラクの兵器隠匿を指摘した英政府報告書,12年前の米大学生論文等の盗用と判明.

2月7日 横須賀を母港とする空母「キティホーク」にペルシャ湾岸地域への出動命令.イラク周辺に展開する総兵員は7日現在で11万に.

2月08日

2.08 アナン事務総長,「国連の枠組みから逸脱した武力行使はあってはならない」と強調.米英両国に警告を発する.

2.08 マレーシアのヒシャムディン・スポーツ相,戦争反対署名が50万人を突破したと発表.

2月9日 ベルギー,NATOのトルコ派遣を拒否

2.09 ベルギーのミシェル外相,NATOのトルコ防衛計画に拒否権発動の意向を表明.

2.09 ドイツとフランスが,「国連平和維持軍が査察団の活動を支援する」という提案を準備していることが明らかになる.

独仏共同提案の骨子
@査察要員を3倍に増やす,
Aイラク全土を飛行禁止空域とし,国連部隊が数年間にわたって管理する,
Bフランスのミラージュ戦闘機が上空から査察団を護衛し,独も連邦軍を派遣する,
Cイラクの石油密輸を防ぐため周辺国と協定を締結する

2月09日 ブリクス委員長とエルバラダイ事務局長,イラク側との協議を終了.イラク側は核科学者の追加リストや,炭疽菌,VX,ミサイル分野の追加文書を提出.U2機の上空査察を容認する意向を示すなど新たな動き.ブリクス委員長は「イラクは実質面で真剣な態度を取り始めた.現状打開には至らないが,こうした態度が続けば問題の平和的解決につながる」と一定の評価を与える.エルバラダイ氏も「イラク側の心境に変化の兆しが見られる」と述べる.

2.09 米英軍機,バスラ近郊を爆撃.民間人2人が死亡,9人が負傷.

2.09  ジャカルタでイラク戦争反対デモ,過去最高の数万人が参加.

2.09 ワシントンで日米「戦略対話」が開かれる.報道によれば,席上アーミテージ米国務副長官から,新決議に消極的な非常任理事国への働きかけを要請された.

2月10日 仏独露共同声明の発表

2.10 パリを訪問中のロシアのプーチン大統領とフランスのシラク大統領が会談.会談後の記者会見で仏独露共同声明を発表.

共同宣言の骨子
 国連による査察の継続と実質的な強化を改めて主張し,米国が急ぐ対イラク攻撃に反対する.
 現在の査察の根拠となっている安保理決議1441の枠内で,まだすべての手段が尽くされているとはいえない.
3カ国は,査察の継続と人的・技術的な強化を支持し,平和裏のイラク武装解除に向け,あらゆる手立てを講じる.

2.10 イラク政府,無条件で米偵察機U2をふくめすべての上空査察を受け入れる意向を,国連側に伝える.ドゥーリ国連大使は,「米英は否定的に見るだろうが,イラク政府は決議の履行にベストを尽くしている」と強調.

2.10 NATO緊急理事会,トルコ自身による防衛力配備の要請をうけ開催.フランス,ドイツ,ベルギーは「NATO条約の精神に基づき,同盟国としての防衛の責任は果たす.しかし国連の査察が続いているいま,武力攻撃を前提とする支援の決定は時期尚早」との姿勢を変えず.

2月10日 トルコ,米軍3万8千人の国内基地への展開を容認.

2月10日 ベルギー,NATO支援不支持を通告.

2.10 英主要五労組(通信労組,公務員労組,鉄道運転士組合,鉄道海員組合,高等教育教員組合)が記者会見.ブッシュとブレアが戦争に突き進むならば,大規模なストが起きると警告.「英労働組合会議(TUC)は戦争の危険があるときは大会を開催すると規約にある」と述べ,軍事攻撃をストップさせるための臨時大会開催を呼びかける.

2月10日 川口外相,国連新決議あれば米国の攻撃支持すると明言.

2月11日 英国民は,サダムよりブッシュを危険視

2.11 CIAとFBIの責任者が議会で証言.「ここ数日間に,ワシントンとニューヨークに対し,アルカイーダ(Al Qaeda)が何らかの大量破壊兵器を用いた攻撃を行う可能性がある」と証言.

2.11 中国の江沢民国家主席,「国連の枠組み内で問題を解決するのは国際社会の普遍的願い.われわれは,今後もこの方向に沿って努力するよう関係国を促すべきだ」とし,共同宣言への支持を表明.

2.11 バチカンのエチェガレイ枢機卿,ローマ法王の特使としてバグダッドを訪問.

2.11 英民間テレビ放送チャンネル4の世論調査.イラクを世界の平和への脅威と考えている国民は,十一月の調査の40%から27%と大幅に減少.逆に米国が最も危険な国だとこたえた者は27%から32%に増加.

2.11 タイムズ紙の世論調査.57%が「米英政府は対イラク攻撃に説得力のある根拠を示していない」とし,86%が「国連査察団にもっと時間を与えよ」と回答.「ブレア首相はブッシュ大統領のプードル犬だと思う」人は過半数の51%に.女性の間では55%に上る.

2.11 米人気歌手マドンナ,最新ビデオで,対イラク戦争反対を訴える.関係者らは「反戦,反ブッシュのかなり衝撃的な内容」と指摘.

2月12日 スペインのアスナール,アメリカ支援に固執

2.12 プーチン大統領,米英準備中のイラク攻撃容認の新決議案が提出されれば,拒否権を発動する可能性を示唆.

2.12 EUのプローディ委員長,戦争回避を目指す仏独,ベルギーの努力を支持すると表明.

2.12 ドイツのシュレーダー首相,スペイン・カナリア諸島でアスナール首相と会談.シュレーダーが平和的武装解除案を説明するが,アスナールは「欧州は米国が必要だし,米国も欧州を必要としている」と米国との協調を主張.シュレーダー首相は,イラク問題で「両国間に相違がある」と述べ,平和的武装解除を目指す独仏へのスペイン側の理解が得られなかったことを明らかにする.

2.12 インドネシアのイスラム教指導者,自爆攻撃煽る「ビンラディン声明」に拒否表明.

2.12 小泉首相・川口順子外相・福田康夫官房長官ら,「イラクに誤ったメッセージを与える」と,独仏露共同声明を非難する談話.

2月13日 イラクのミサイル射程,制限を超過

2.13  国連査察団が依頼した専門チーム,イラク所有のミサイル「アルサムード2」の射程が,国連決議の定めた150キロを超過していると指摘.英紙タイムズは,射程違反の事実は大量破壊兵器所有の決定的証拠に等しいと報じる.

2.13 ブッシュ米大統領,フロリダ州ジャクソンビルのメイポート海軍基地で,兵士たちを前に軍用ジャンパー姿で演説.

メイポート演説の要旨
イラク問題の解決に向けて米軍は準備を整えた.米軍はイラクの人々とではなく,抑圧者と戦う.征服のためではなく,解放のために戦うのだ.
軍事力行使は最後の選択であるが,大多数のNATO加盟国は,厳しい選択が必要かもしれないと理解している.
国連安全保障理事会が,たんなるおしゃべりクラブになることは許されない.これまでの決議を実行するつもりがあるのか,いまこそ決断しなければならない.

2.13 パウエル国務長官が下院予算委員会の公聴会で証言.フセイン政権打倒後の政権構想について述べる.

パウエル証言の要旨
@米軍が一定期間にわたって駐留し,駐留軍司令官が統治をおこなう.
Aその後,できるだけ早く非イラク人を指導者とする文民の暫定統治機構に権力を移行させる.
B最終的にはイラク人の手による新政権を発足させる.
ここまでおよそ2年の期間を予想する.
また,イラクの石油資源は「イラクの人々に属する」と述べ,戦後復興に石油資源をあてる考えを改めて強調.イラクを攻撃する場合は石油施設の破壊を避ける方針を示す.

2.13 ラムズフェルド国防長官,上院軍事委員会の公聴会で証言.E.ケネディ議員の質問に答え,「核兵器の使用を排除しないのが,これまでの米国の政策だ」と語る.イラクが生物・化学兵器を使用した場合に核兵器で対抗する含みを残した発言とみられる.

2.13 ドイツのシュレーダー首相,連邦議会で演説.「戦争せずにイラクの武装を解除することは可能だ.この機会を生かさなければならない.ドイツは対イラク攻撃に直接にも間接的にも加わらない」と述べる.トルコに対しては,必要な段階になればオランダ経由で対空ミサイルの供与をするとし,「同盟国との連帯」を強調.

2.13 イタリア,カナダ,スペインなどからの「人間の盾」第1陣15人が,バグダッドに到着.水道施設に陣取るロベルタ・タマン(カナダ)は,「攻撃で死ぬつもりは全然ない.戦争が起きずに家族の元に戻れると信じている」と話す.

2.13 対イラク戦争の中止を求める米軍兵士と家族ら,ブッシュ大統領を相手取り,連邦裁判所に提訴.

2.13 タイ国軍,「アメリカが安保理決議なしに単独でイラク攻撃を行えば,米軍との協力関係を見直す可能性がある」と警告.

2.13 公明党,「米英が安保理決議なしにイラク攻撃に踏み切っても,これに対する日本の支援を容認する」との方針を決定.

2月14日 査察団,調査が進んでいると追加報告

2.14 安保理外相級会合,UNMOVIC,IAEAの追加報告を受ける.ブリグス委員長は査察の成果を強調し,活動継続を強く主張.

ブリクス報告の要旨
@計300カ所以上で抜き打ち査察を実施.大量破壊兵器は発見していない.イラクは査察には基本的に協力.
Aミサイル「アルサムード2」は150キロの射程限度を超え,安保理決議に違反.1000トンの化学物質の行方が説明されていない.炭疽(たんそ)菌,VXガスは廃棄と主張したが,さらなる証拠が必要.
B多くの科学者が当局者同席や録音が許されない限り聴取を拒否. 
 イラク側の協力姿勢は「まだ十分ではない」が,「積極的で無条件の協力を得られるなら,査察期間は短期で終了できる.

2.14 国連安保理の外相級会合,ブリクス委員長によるイラク査察報告について協議.フランス,ロシア,中国,ドイツなどは,報告が一定の前進を示す内容になったことを受け,査察継続・強化を主張.パウエル国務長官は「基本的な問題を解決せず,査察を永遠に続けることが決議の目的ではない.武力行使の決断の時が来た」と主張,真っ向から対立.シリアのシャラ外相は,「アラブの人々全員が反対する,中東地域で初めての戦争だ」と強調,戦争回避を訴える.

ドビルバン外相演説
戦乱に明け暮れた「古いヨーロッパ」を知るフランスは,(第二次大戦における)米国の自由の戦士への感謝を忘れない.
国連というこの殿堂において,我々はその責任と名誉にかけて理想と良心の守護者でありたい.国際社会の全員とともに,よりよい世界を作るために,決然と行動することを望み,そうできると信じている.(議場後方の各国外交官らは異例の総立ちで拍手)

2.14 パウエル米国務長官,安保理会合後のインタビューで,「三月一日に安保理が査察団報告を受ける」と語る.月内の査察継続を事実上認めるもの.

2.14 米政府,地球規模でのテロとの戦いを進める方針を示す「テロリズムと戦う国家戦略」を発表.

対テロ新戦略の概要
 昨年9月に発表した国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)を補強するもの.米国への脅威を除去するために必要なら先制攻撃や単独行動もためらわないことを改めて強調.
 「テロと戦う意思を持つが,力のない国々には軍事,経済面などで支援を惜しまない.しかしその意思がない場合は,我々が断固たる行動を起こし,テロ支援をやめさせる」と明記.

2.14 ブッシュ米大統領,ワシントンのFBI本部で演説.「イラクを武装解除するために兵士を送る場合,イラク国民の生命を守るために全力を尽くす」と述べる.

2.14 ブッシュ大統領,ワシントンでトルコ外相らと会談.イラク北部に展開するため,トルコ国内の複数の基地に米軍部隊数万人規模の駐留を認めるよう求める.地元報道によると,既に約2万人のトルコ兵がイラク北部のクルド人自治区内に進出.約7000人のクルド人民兵が案内役として徴用されている.

2.14 ニューヨーク・タイムズ紙による世論調査.「時間をおかず武力行使すべきだ」は37%.一方「査察継続を」との声は59%にのぼる.

2.14 イラク攻撃反対決議を可決した全米90都市の代表団,ブッシュ大統領あてに決議を提出.

2.14 フセイン大統領,大量破壊兵器の製造と輸入を禁じる大統領令を発布.

2.14 仏国際関係研究所米国センター所長のギヨーム・パルマンチエ,「フランスはいつ米国に同調するか,と問う必要はもうない」と語る.

2.14 ムベキ南ア大統領,イラク攻撃を回避するため兵器解体の専門チーム派遣を発表.

2.14 国際連帯行動のトップを切ってメルボルンで反戦集会.警察発表で15万人が参加.

2.14 川口外相,米国の新決議提出を支持し,非常任理事国への説得工作に着手すると発表.非常任理事国のチリのラゴス大統領と13日会食した際,協力を要請したことを明らかにする.

2.14 茂木敏充外務副大臣,非常任理事国カメルーン,ギニアの駐日大使と会い,協力を要請.

2.14 朝日新聞,元防衛庁長官の久間章生・自民党政調会長代理とインタビュー.久間氏は「外務省は,『米国の外務省』みたいなものだ.日本は米国の何番目かの州みたいなものだから,米国を離れて,日本は何もできないわけだ」などと語る.

2月15日 世界で1千万人が反戦行動

2月15日 世界約60カ国の約600都市で反戦デモ.参加者は計1000万人超と史上空前の規模.デモ開催地は欧州と北米が計約300都市と最も多く,アジアと南米で計約50都市,アフリカで10都市,オセアニアは約20都市.

英国の反戦デモ
 市民団体,労組などの連合体「ストップ・ザ・ウォー」や英国イスラム協会などが主催して,各地でイラクへの武力行使に反対するデモが行われた.
 ロンドンではデモ隊は市内2か所に集合,15日正午,主会場のハイドパークに向かって行進を始めた.参加者を乗せた貸し切りバスが続々と到着.警察発表でも50万人に達し,主催者の最終発表では200万人を越える.
スコットランドのグラスゴーでは,約4万人がデモ行進.当地で開催中の労働党総会の会場へ詰めかける.
 ブレア首相は強硬姿勢を改めて強調.
イタリアの反戦デモ
 ローマ市中心部の反戦デモに300万人以上が参加.最新世論調査では,「国連の支持なしでのイラク攻撃に反対」と答えた人は85%に達する.
スペインの反戦デモ
マドリードの反戦デモに200万人,バルセロナでは150万人が参加(いずれも主催者発表).
ドイツの反戦デモ
 ベルリンで約50万人(警察発表)が参加する反戦デモ.シュレーダー首相の参加自粛要請にもかかわらず,トリッティン環境相ら3閣僚のほか,ティールゼ連邦議会議長がデモに参加.
最新の世論調査では,ドイツ国民のが「ブッシュ米大統領の方がサダムより危険」と考える人が38%に達し,「サダムの方が危険」とする意見を1ポイント上回る.
アメリカの反戦デモ
 全米約150の都市でデモや集会が行われた.ニューヨーク・マンハッタンでは15日,零下10度の寒さをついて約38万人(主催者発表)が結集.
オーストラリアの反戦デモ
 メルボルンでの十六万人デモに続き,首都キャンベラで一万六千人,パースで一万人,ニューカッスルで一万五千人,タスマニア州ホバートで一万人以上がデモ行進.16日にはシドニーで20万人集会.

2.15 ブレア英首相,労働党総会で演説.「戦争を懸念する人々の気持ちはわかるが,戦争をしない代償として,サダムはイラクを支配し,人々を苦しめ続ける」と発言.武力による独裁政権の打倒は倫理的に容認される,とする意見を示す.

2.15 オーストラリアのハワード首相,メガワティ大統領とジャカルタで会談.メガワティ大統領は,ブッシュ大統領に電話で直接に反対を表明.ハワード首相は「我が国の立場は決して反イスラムではない」と強調.

2.15 ロイター通信,「ブッシュ米政権がトルコ政府に,協力の見返りとして,総額260億ドルの金融支援を打診している」と報道.

2.15 ニューヨーク・タイムズ,イラクへの武力行使の開始が,3月中旬か下旬にずれこむ可能性があると報道.

2.15 自民党の山崎拓幹事長,「新しい国連決議を取り付けようという米英の努力について,日本も外交努力を展開すべきだ」とし,武力攻撃容認の新決議採択に同調する立場を示す.

2.15 政府関係者,「これからは国内的な説明をどうクリアするかが大変だ」と指摘.今後は国内世論対策も重要になるとの見方を示す.

2.15 橋本元首相,小泉首相の親書を託され,メキシコ訪問.新安保理決議案への説得を行う.

2月16日

2.16 バグダッド市内にあるアメリヤ・シェルターでは,各国からイラク入りした「人間の盾」の参加者たちが「ダイ・イン」で反戦を訴える.

2.16 公明党の冬柴書記長,「戦争に反対するのは利敵行為」とし,独仏の査察継続案を非難,アメリカの武力攻撃決議案に対する支持を公言.

2.16 NATO防衛計画委員会,トルコへの軍事支援をフランスを除外して合意.ロバートソン事務総長は「決定は戦争への一歩ではない」と強調.これを受け入れベルギーは反対を取り下げる.

2.21 タイムとCNNテレビ,米国民の多数が対イラク戦争を支持しているとの世論調査結果を発表.戦争の理由としてはフセイン大統領の独裁者ぶりが83%で,大量破壊兵器廃棄実現の72%を上回る.

2.21 イタリア鉄道労組,イラク攻撃のために運び出される武器の輸送拒否を呼び掛ける.地中海側のリボルノ港の港湾労働者組合も積み出し拒否を表明.

2.23 アナン国連事務総長,「アッサムード2は破壊しなければならない.拒むなら安全保障理事会は何らかの決定をしなければならない」と述べる.

2.23 ユニセフ,イラクの乳幼児400万人に対し,麻しん(はしか)とポリオ(小児まひ)のワクチン投与を開始.現地スポークスマンは「すでにイラクでは人道的な危機が発生しており,5歳以下の乳幼児の23%が栄養不足に陥っている」と報告.

2.24 フセイン大統領,米CBSテレビとインタビュー.アッサムード2が,安保理決議で禁止された射程150キロを超えないと改めて主張.「設計より軽い弾頭を使い,誘導システムなしにテストしたからだ」と述べる.そして「適切なミサイルを保有する権利は認められており,廃棄の理由はない」と拒否.

2.24 ドビルパン外相,対イラク武力行使を容認する新決議案に反対する意向を表明.「国連査察官は(査察に)進展があると確認した.それが,われわれが反対する理由だ」と述べる.

2.24 米大衆紙「ニューヨーク・ポスト」,シラク仏大統領とシュレーダー独首相を並べた写真を掲載し「いたちの枢軸国」と批判する.「いたち」という言葉には「裏切り者」の意味もある.

2.24 クアラルンプールで114カ国・機構が加盟する非同盟諸国会議の首脳会議が開幕.

2.25 イラク政府,「生物・化学兵器の廃棄に関する資料などが新たに発見された」と通告.見つかったのは「R400」と呼ばれる爆弾2個で,うち1個に「生物兵器とみられる液体」が入っていた.ブリクス委員長は,「前向きな動き」と一応の評価を示す.

2.26 イラクのラマダン副大統領,民主党の首藤信彦衆院議員と会談,「日本は米国,英国に次いでイラクに敵対的だ」と述べる.

2月 エリック・シンセキ陸軍参謀総長が議会で証言。イラク戦争が始まれば数十万の兵員が必要になると述べる。ラムズフェルドとウォルフォビッツはシンセキを激しく非難し更迭に追い込む。

 

2003年3月

3.02 英「オブザーバー」紙、2月5日付の「NSAからの最高機密メール」を報道。国連安保理メンバーに対するスパイ行為を英国の情報機関に依頼したもの。漏洩者は英政府通信本部に勤務するキャサリン・ガン。

3.03 米国防総省,総額3799億ドル,対前年度比4・2%増にのぼる国防予算案を発表.ミサイル防衛関連予算が対前年度比約20%増になるなど軍近代化に重点.地上発射用の迎撃ミサイル10基を初期配備し,北朝鮮の弾道ミサイルに対抗する狙いであることを国防予算案では初めて明記.海上発射用迎撃ミサイルも最大20基そろえ,こちらは中東の脅威に対抗するためとしている.今回の予算案には,最大2000億ドルとも見積もられている対イラク戦の費用は含まれておらず,戦端が開かれた場合はさらに国防費が膨らむ.

英国際戦略研究所によると,米国の国防費は2001年の実績で,世界の2位から11位までの10か国の合計にほぼ等しい.ワシントンの調査・研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」の試算では,2009年には冷戦期のレーガン政権時代と同じ水準に達する.

3.07 ブリクス委員長,安保理に二度目の中間報告.イラクの協力は積極的・自発的になったが,未解決の問題解決のため数カ月の査察継続が必要だと報告.

3.07 アメリカ、査察は不十分として、戦争をも辞さないとする新決議を提案。フランスなどは、査察は成果を挙げており継続すべきと主張する。

3.15 アメリカ、イギリス、スペインがアゾレスで秘密会談。安保理で新決議案が反対多数で否決される見通しとなったため、採決を避け独断で開戦に踏み切ることを決定。

3.17 ブッシュ,イラクに対し一方的な最後通告.フセイン一族と主要閣僚が48時間以内に国外退去することをもとめる。フセインは徹底抗戦を宣言。

3.17 イギリスのゴールドスミス司法長官、「新たな国連決議がなくても、イラク侵攻は合法である」と宣言。ゴールドスミスは閣内で最後までイラク侵攻に抵抗していた。

3.17 英国労働党の下院院内総務ロビン・クック、「新たな国連決議なしにイラクを侵攻することは国際法違反で非道徳的である」と断罪演説の後辞任。下院は起立喝采で応える。

3.19 米英軍,イラク空襲作戦「イラクの自由」を開始.

3.19 米外交官アン・ライトが抗議の辞職。アンライトは海軍大佐まで勤めた後、上級外交官に転じ、当時はモンゴルに赴任中であった。

3.20 米英軍地上部隊、クエートからイラク領内に侵攻を開始。砂嵐が激しいため前進を阻まれる。

2003年4月

4.01 ラムズフェルド米国防長官、和平交渉の可能性を否定し、無条件降伏を目指すと声明。

4.01 ジェシカ・リンチ事件が発生。捕らえられた女性兵士リンチを、米軍が救出する場面が大々的に報道されたが、のちにでっちあげであったことが判明。米軍の報道統制と、メディアの報道姿勢に疑問が投げかけられる。

4.01 ラマダン副大統領、「アラブ諸国から義勇兵が6000人来ており、半数近くが自爆攻撃要員である」と述べる。 フセインはメディア画面から姿を消す。

4.07 アメリカ軍、バグダッドの宮殿の一つを占拠と発表。

4.08 米軍の砲撃で国際ジャーナリスト3人が死亡.

4.09 バグダッド陥落.フセイン政権崩壊.

4.10 バグダッド市街の報道陣が陣取るホテル前で、フセインの銅像が引き倒される。

4.11 モスルを防衛していたイラク陸軍の第5軍団が投降。モースルは無血で制圧される。

4.15 イラク西部アンバール県を防衛していた西部軍が降伏。

4.16 ナシリアで大規模な抗議デモ。アメリカの介入を拒否し、シーア派による統治を求める。

4.28 ファルージャで小学校からの米軍撤退を求めるデモに米軍が発砲.15人が死亡.

2003年5月

5.01 ブッシュ大統領,「大規模戦闘の終結」を宣言.米兵の死者は138人にとどまる。

5.02 米、イギリス、ポーランドの各軍が地域別に分担して各地域での平和維持軍を主導することとなる。スペイン、オランダや東欧諸国などの参戦国は県別に配置される。

5.12 サウジのリャド市内外国人居住区で連続自爆テロ.35人死亡.

5.16 モロッコのカサブランカ市内ベルギー領事館など数カ所で爆破テロ.24人死亡.

5.22  国連安保理、アメリカとイギリスによるイラクの統治権限の承認、経済制裁の解除などで合意。国連決議1483号を採択する。決議を受けて連合国暫定当局(CPA)が発足。

6.18 米軍が逃亡中のフセインと思しき車列を発見。シリア領に侵攻して追跡。シリア軍国境警備隊など80名が死亡する。後に車列はガソリンの密輸グループであることが判明。

7.04 パキスタンのクエッタのモスクで爆弾テロ.47人死亡.

7.13 イラク統治評議会が発足.

7.18 デビッド・ケリー、外交委員会での証言の後「自殺」。ケリーは「イラクに関する英国最高科学顧問」であり、「45分説」がブレアのでっちあげとする情報をBBCに漏洩した。BBCは開戦直前にこのニュースを一度流したが、ブレアの圧力を受け、その後の続報を中止した。

2003年8月

8.05 ジャカルタの米国系ホテルで爆発.11人が死亡.

8.07 バグダッドのヨルダン大使館前で爆弾テロ.17人が死亡.

8.19 バグダッドの国連事務所で爆弾を積んだトラックによる自爆テロ。国連事務総長の派遣したセルジオ・デメロ特別代表ら23人が死亡する。国連はこれを機にイラクから撤退する。

8.29 シーア派聖地ナジャフで,自動車爆弾テロ.イラク・イスラム最高評議会(SCIRI)の最高指導者ムハマド・バクル・ハキム師を含む80人以上が死亡.

9月 ポーランド軍9千人が進駐を開始する。ほかの東欧各国もアメリカの費用支出によって派兵。

2003年10月

10.09 バグダッド北東部のシーア派居住区の警察署で自爆テロ.自爆犯二人を含む10人が死亡.

10.26 ウォルフォウィッツ米国防副長官が滞在していたバグダッドのホテルにロケット弾.米国人一人死亡.

10.27 バグダッドの赤十字国際委員会(ICRC)事務所付近などで連続爆弾テロ.35人死亡,230人負傷.

2003年11月

11.02 バグダッドの国際空港に向かっていた米軍ヘリが,ファルージャ南方で撃墜され,米兵16人が死亡.

11.06 バグダッドの国連職員の退避完了.

11.09 リャドの外国人居住区で自爆テロ.18人が死亡.

11.07 ティクリットで米軍ヘリが墜落.乗っていた6人全員が死亡.

11.12 南部ナシーリアのイタリア軍駐屯地に自爆攻撃.イタリア人19人をふくむ28人死亡.

11.14 南部ウムスカルで邦人男性が負傷したことが判明.

11.15 CPAと統治評議会,主権委譲案で合意.

11.15 モスルで米軍ヘリ二機が墜落.17人が死亡.

11.15 イスタンブールのユダヤ教礼拝所で自動車爆弾テロ.23人が死亡.

11.18 バグダッドの日本大使館付近で発砲事件.

11.20 イスタンブールの英国系銀行と英国総領事館で自爆テロ.27人が死亡.

11.21 バグダッドの二つのホテルと石油省にロケット弾攻撃.少なくとも3人負傷.

11.22 バグダッド北方のバクバとハンバニサアドの警察署で自動車爆弾テロ.15人死亡.民間貨物機がバグダッド国際空港離陸後にミサイル被弾.

11.26 バグダッドのイタリア大使館に攻撃.建物の一部が損壊.

11.27 ブッシュ大統領が極秘裏にバグダッドを訪問。滞在は2.5時間、米軍パーティーに出席したのみ。

11.29 ティクリット南郊で日本大使館の奥克彦,井ノ上正盛氏が銃撃され死亡.

11.29 バグダッド南方でスペイン情報機関員の車列に攻撃.7人が死亡.

11.30 ティクリットの幹線道路で韓国人2人が銃撃され死亡.

2003年12月

12.13 フセイン大統領がイラク中部ダウル(Ad-Dawr)で拘束される.

12.14 ハリディアの警察署に自爆攻撃.17人以上が死亡.

12.25 CPA本部にロケット弾攻撃.

12.27 カルバラで同時多発攻撃.タイ・ブルガリア軍兵士など19人が死亡.

 2004年

04年1月

1.15 シーア派教徒がCPAと統治評議会が決めた主権委譲プロセスに反対する数万人のデモ.

1月 サンチェス司令官,陸軍憲兵隊のカーピンスキー准将を停職処分とし,タグパ少将に内部調査を委ねる.

1月 大量破壊兵器の調査責任者デビッド・ケイが米上院で証言。「9ヶ月の調査の結果、大量破壊兵器は存在しないとの結論に達した」と述べる。ケイは証言のあと辞任する。

04年2月

2.08 陸上自衛隊本隊がサマワ入り.

2.11 バグダッドの軍志願者の列へ自爆テロ.47人が死亡.

2.18 イラク中部ヒッラのポーランド軍基地前で自爆攻撃.住民11人が死亡,フィリピン軍兵士など64人が負傷.

2.23 アナン国連事務総長,イラクの主権委譲で報告書提出.

2.25 英政府、キャサリン・ガンに対する告訴をとり下げる。ゴールドスミス司法長官は、「国家公務員機密保護法違反の証明は出来るが、“違法な戦争で死ぬ人を助ける義務がある”と主張するガンが間違っていると証明することは出来ない」とする。

2月末 タグパ少将,内部報告書を提出.昨年10月から12月にかけて,アブグレイブ収容所で「サディスト的で露骨,過度の犯罪的虐待」があった事を認める.収監者の6割以上は危険人物ではなく,すぐに釈放すべき人々だったとされる.

2月 ニカラグア軍が撤退。4月にはドミニカ軍、5月にはホンジュラス軍が相次いで撤退。

04年3月

3.02 バグダッドとカルバラで,シーア派祭礼に向け同時テロ.180人以上が死亡,430人が負傷.

3.08 CPA主導のイラク暫定憲法となる基本法が成立.

3.11 マドリードで列車爆弾テロ.約200人が死亡.直後の総選挙でアスナル保守党政権が敗北。新政権は有志連合からの離脱とイラクからの撤兵を宣言。5月までに全軍が撤退する。

3.15 カミロ・メヒア軍曹、戦場に戻ることを拒否。平和集会でアピールを発表した後、憲兵隊に出頭する。禁固1年の刑を受けたあと「不名誉除隊」となる。

3.17 バグダッドのホテルが自動車爆弾で爆破.7人が死亡.

3.20 国際反戦共同行動.

3.31 米警備会社要員4人が,武装勢力に殺害され,遺体を損傷される.遺体の映像は全米に放映され,社会に衝撃を与える.

04年4月 ファルージャの戦闘と日本人人質事件

4.05 米軍,ファルージャ掃討作戦を開始.

4.07 高遠さん,今井君,郡山さんの3人がラマディ・ファルージャ間の道路で捕らえられ人質となる.

4.08 カタールのアル・ジャジーラTV,人質3人の映像を放送.犯行グループは「3日以内に自衛隊が撤退しなければ,3人を殺す」と要求.福田官房長官は要求を拒否する記者会見.

4.09 小泉首相,自衛隊撤退はありえないと強調.

4.11 アルジャジーラ,「24時間以内に3人を解放する」との犯行グループの声明を報道.

4.11 ファルージャで米民間人4人が殺され橋桁に吊るされる。米軍は報復作戦を展開。モスクに空爆して民間人に多数の死傷者が出る。

4.14 安田さん,渡辺さんの2人が拘束される.

4.15 高遠さん,今井君,郡山さんの3人が解放される.

4.28 CBSテレビ、アブグレイブ刑務所におけるイラク人囚人に対する虐待事件を報道。

4.28 アナン国連事務総長,「軍事行動は事態を悪化させるだけであり,イラク人の抵抗はますます強まる」と警告.

4.28 イラク・イスラム党首モハセン・アブドルハミドは「米軍は即時攻撃を中止し,ファルージャから撤退することを要求する.さもなければ我々が統治評議会から撤退する」と述べる.

4.29 ファルージャの米海兵隊,一部撤退を開始.イラク駐留米軍は撤退の意思のないことを強調.旧フセイン軍幹部を中心に「ファルージャ防衛隊」を組織し,管轄下に置く.

4.30 1ヶ月近い包囲攻撃で,市民約700人が死亡したとされる.米兵の死者は少なくとも130人に上る.イラク戦争開始以降の米兵の死者は740人を超える.

04年5月

5.01 ブッシュ、空母「リンカーン」にヘリで降り立ち、「イラクでの主たる戦闘作戦は終了した」と宣言する。

5.11 アルカイダ系ウエブサイト,米国人ニック・バーグしの首を切り落とす映像を公表.

5.27 バグダッド近郊で,フリー・ジャーナリストの橋田信介,小川功太郎両氏が銃撃・殺害される.

5.28 イラク統治評議会、アラウィを首班とする暫定政権を選出。

04年6月

6.19 米軍,ザルカウィ派幹部がファルージャ市内に潜伏しているとし,空爆を開始.

6.22 武装グループに誘拐されていた韓国人の金鮮一氏の遺体がファルージャ近郊で発見される.

6.28 CPAからイラク暫定政府に主権移譲。連合暫定当局が解散する。

04年7月

7.01 特別法廷でフセインらの訴追手続きが開始される。フセインは「ブッシュこそ有罪」と反論する。

7.04 サドル師、暫定政権への支持を撤回。占領が継続されるなら徹底抗戦するとの声明を発表する。

7.07 国家安全法が成立。令状なしの逮捕拘束や盗聴が法的に可能となる。

7.10 フィリピン人労働者の人質事件が発生。フィリピン政府は海外5百万人労働者の安全を最優先する立場から、米の駐留要請を拒否。武装勢力の要求を受けるかたちで、軍の撤退を早める。人質は無事に解放される。

7.12 ブッシュ、「WMDは未発見でもイラク攻撃で米国は安全になった」と演説する。アナン国連事務総長は、「世界は数年前より安全になったと言えない」と発言。イラク開戦の正当性を否定する。

7.14 英政府調査委員会、「政府の提出したWMD情報に深刻な欠陥がある」と指摘。

7.28 中部バクバの警察署前で自動車爆弾が爆発。警察官に応募して集まった68名が死亡する。

7.31 米軍、ファルージャ市内への侵攻を図るが武装勢力の抵抗により失敗。その後、空爆と砲撃を加える。

04年8月

8.02 米軍部隊はナジャフのサドル師宅を襲撃するが逮捕に失敗。サドル師は「米はイラク人民の敵だが、キリスト教会爆破や外国人人質は厳しく非難する」と声明。

8.04 サドルシティーのシーア派民兵団「マフディ軍」が多国籍軍との間で大規模な戦闘。民兵ら数十名が死亡。このほかナシリア、バスラでも戦闘。

8.07 イラク暫定政府、アルジャジーラのバグダッド支局を1カ月間にわたり強制閉鎖とする。

8.08 サドルシティーで米軍とイラク治安部隊が抵抗組織を包囲。サドル師は最後まで抵抗継続を訴える。

8.12 米軍、ナジャフへの全面攻撃を開始。

8.15 国民会議がバグダードで開催される。諮問評議会を選出。ナジャフ攻撃に抗議し100人が退席する。

8.20 国民会議、サドル派民兵に対し、政権や多国籍軍への反抗を止めるよう呼びかける。

8.22 武装勢力「アンサル・アルスンナ・イスラム軍」,ネパール人12人を誘拐.31日に殺害した遺体の写真をウェブサイトに掲載.

8.23 米軍、ナジャフのモスクに篭るマフディ軍団を攻撃。

8.27  サドルはシーア派指導者シスターニの停戦呼びかけに応じ、武装勢力に停戦を指示する。

8.28 武装勢力,フランス人記者2人を拉致,フランスの学校でのスカーフ着用禁止措置撤回を要求.

04年9月

9.07 人道援助団体のイタリア人女性2人,バグダッドの事務所から拉致.

9.08 米兵の死者が1001人に達する。米軍は、テロの根拠地となっている「スンニ派三角地帯」において武装勢力の掃討作戦を開始する。

9.16 ザルカウィの率いる「タウヒードとジハードの集団」,米国人2人と英国人1人を拉致,殺害.この集団はのちに「イラクの聖戦アルカイダ組織」に改称する.

9月 ニュージーランド軍、タイ軍が撤退。

04年10月

10.20 英国NGOが独自調査の結果を発表。開戦からの軍事行動、テロによるイラク人死者は1万5千人に上ると述べる。医学雑誌「ランセット」、開戦以降のイラク人推定死者数が10万人におよぶとの研究論文を発表。

10.26 「イラクの聖戦アルカイダ組織」,香田証生さんを拉致.香田さんは30日に首を切断された死体となって発見される.

10.15 暫定政府と交渉してきた住民代表が米軍に拘束される.18日に釈放.

10月 米調査団、「イラクに大量破壊兵器は存在しない」との最終報告。ただし、大量破壊兵器の製造計画はあったとする。

04年11月

11.03 ブッシュがアメリカ大統領に再選される。ブッシュは「イラクを自由な国にするためには、選挙を阻止しようとする連中をやっつける必要がある」と語る。

11.08 ファルージャ掃討作戦が開始。詳細は別の文書を参照のこと。

04年12月

12.01 米駐留軍、15万人体制に増強される。

12.14 国民議会選挙が告示される。選挙妨害を目指す大規模テロが相次ぐ。

12.22 モスルの米軍キャンプ食堂で自爆テロ。米兵19人とイラク人3人が死亡し、60名以上が負傷する。

12.29 米軍、バグダッド南部とバビロン州北部で、1ヶ月にわたる大規模掃討作戦を開始する。

 

2005年

1.30 国民議会選挙が実施される。各地で投票所が襲撃され、合計36人が死亡する。

05年2月

2.14 国民議会選挙の結果が発表される。投票率は58%。シーア派の「統一イラク連合」が48%を獲得し第一党となる。クルド同盟が26%、アラウィ首相のイラキヤ・リストが14%を占める。スンニ派の多くは選挙をボイコット。

2.19 バグダッド周辺で、シーア派の祝日アシュラを狙った8件のテロ。祭礼に参加していた市民55人が死亡する。

2.28 中部ヒッラで、治安部隊希望者の健康診断の列に自動車が突っ込み爆発。周囲の市場も巻き込まれ、市民115人が死亡、148人が負傷する。

2月 NATOがイラク軍・警察の訓練に参加する。

05年3月

3.03 米兵の死者が1502名となる。米国では入隊志願者が急減し、定員確保が困難になる。

3月 拉致から解放されたイタリア人ジャーナリストが米軍に誤射され、車に同乗していた諜報機関員が死亡する。

4.28 移行政府が発足。アラウィに代わりジャファリが首相に就任。

05年5月

5月1日 英紙サンデー・タイムス、ダウニング街メモを暴露。このメモは、02年7月に英首相官邸で開かれた会議の内容を補佐官がメモしたもの。英政府はこのメモが本物であると確認。

ダウニング街メモのさわり
ディアラブMI6長官: 軍事行動はもはや避けがたい。ブッシュはサダムを軍事行動によって排除したがっており、それはテロと大量破壊兵器の問題で正当化されている。しかし、政策によって情報や事実が仕組まれている。
ストロー外相: ブッシュが軍事行動を決意していることは明らかだ。しかし論拠は薄い。サダムは近隣諸国を脅かしておらず、大量破壊兵器の能力もリビアや北朝鮮、イランに劣る。
ゴールドスミス法務長官: 体制転換は軍事行動の法的理由にはならない。理由となるのは自衛、人道的介入、国連安保理による許可の三つだ。(ブレアが02年4月のブッシュ会談で「体制転換のための軍事行動を英国は支持する」と述べたことに関連する発言)

5月 「警備員」の日本人男性が銃撃戦の末、武装勢力に拉致される。数日後に遺体の映像が公開される。

6.16 米下院司法委員会、非公式の「ダウニング街議事録公聴会」を開催。コニャーズ議員の呼びかけで、120人を越える議員が、メモの内容確認をもとめる公開書簡を大統領あてに送付。

7月 バクダッド南方60キロのムサイブのシーア派モスク付近で、タンクローリーを利用した自爆テロ。およそ100人が死亡する。

05年8月

8月 新憲法草案、スンニ派の反対を押し切り議会で可決される。

8.17 バグダッド中心部のバスターミナルなど3ヶ所で、車爆弾による連続テロが発生。40人以上が死亡する。

8.31 シーア派の巡礼地が迫撃砲で攻撃される。パニックに陥った信者が将棋倒しになり、過去最悪の960名以上が死亡する。救出に向かったスンニ派の人々も巻き込まれ、多くが死亡。

05年9月

9.07 武装勢力に拉致された米国人男性が、10ヶ月ぶりに解放される。男性は公開ビデオで、ブッシュではなくカダフィ大佐に助けを求めた。

9.20 バスラ警察、英軍諜報要員を逮捕。英軍は装甲車で拘置所に突っ込み、地元警察と銃撃戦の末奪還する。

9.26 予備役兵リンディ・イングランド、捕虜虐待のかどで有罪の判決を受ける。

10.15 新憲法草案の是非を問う国民投票。78%の賛成で成立。スンニ派は賛否を巡って分裂する。

05年12月

12.14 ブッシュ米大統領、大量破壊兵器の情報に誤りがあったことを認める。

12.15 新憲法にもとづく国会議員選挙。シーア派勢力が圧勝する。

12.22 ブレア首相、英軍撤収を検討していることを明らかにする。

 

2006年

1.23 日米英豪4カ国の外務・防衛課長級会談。英軍は段階的撤退計画を明らかにする。

06年2月

2.12 英軍兵士が収容所でイラク人少年を殴る映像が放映される。撮影者の「笑い声」が波紋を呼ぶ。米兵による捕虜虐待の未公開写真も公開される。

2.22 シーア派の聖地サマーラのアスカリ廟に爆弾テロ。これに怒るシーア派武装勢力がスンニ派モスクなどを襲撃。200名以上が死亡する。シーア派指導者シスタニは「信者の自衛」を許可する。

2.24 スンニ派の報復でシーア派や警察特殊部隊ら30名以上が殺害される。移行政府はバグダッド周辺3州に昼間外出禁止令を出す。衝突は1週間にわたり、新政府の発足は見送られる。

06年3月

3.03 多国籍軍のケーシー司令官、宗派抗争が内戦に発展する可能性は低いとの認識を示す。

3.14 バグダッドで、抗争で処刑された87人の遺体が発見される。16日にも27人の遺体が発見される。

3.16 サマーラで「スウォーマー作戦」が実施される。米軍とイラク軍の連合部隊1500名が、車両200台、航空機50機とともに攻撃を開始。104名を拘束する。

3.19 アラウィ前首相が現状を「内戦状態」だと断言する。ブッシュはこの発言をただちに否定。

3.29 ブッシュ大統領、ハリルザド駐イラク米国大使を通じて、ジャファリ首相の退陣をもとめる「個人メッセージ」を伝える。

3.31 ライス国務長官、「我々は戦術的に多くの誤りをおかした」と表明。またジャファリについて「国民宥和政策が不十分」と批判。

06年4月

4.08 エジプトのムバラク大統領、サウジアラビアのサウド外相が相次いで、「イラク内戦が始まった」と発言。イランがシーア派に影響力を持つことに懸念を表明する。

4.22 統一イラク同盟(UIA)、首相にジャワド・マリキを擁立。スンニ派とクルド人もこれを容認する。

4.26 ラムズフェルド国防長官とライス国務長官が相次いでイラク入りし、マリキ氏と会談。新政府支持の立場を強調する。

06年5月

5.02 米軍がラマディで1週間にわたり武装勢力と交戦。100名以上を殺害したと発表する。

5.20 連邦議会がマリキ首相の閣僚名簿を承認。新政府が正式に発足。

6.08 潜伏中のザルカウィ、アジトを爆撃され死亡。

7.17 陸上自衛隊の撤退が完了する。航空自衛隊の支援活動は継続。

12.30 フセイン元大統領の死刑執行。シーア派住民148人殺害で人道の罪に問われる。

 

2007年

1.10 ブッシュ大統領、イラクへの2万人増派を発表。

2.14 アメリカ軍、「法の執行作戦」を開始。

3.16 米国防総省、5千人の増派を発表。

3.22 潘基文国際連合事務総長の一行がバクダットで迫撃砲により攻撃を受ける。「イラク・イスラム国家」を名乗る武装組織が犯行声明。

 

2008年

3.24 開戦以降のイラク駐留米軍の戦死者が4000人に達する。

11月 連邦議会、駐留米軍の地位協定を承認。

12月 国運安保理、駐留多国籍軍の任務終結を宣言する。

 

2009年

1月 イラク駐留米軍の地位協定発効

2月 オバマ米大統領、戦闘部隊の撤退計画を発表

6月 米軍戦闘部隊が都市部から撤退

2010年

3月 第2回めの連邦議会選挙が実施される。スンニ派も投票に参加。

8月 最後の戦闘旅団が撤退。オバマ大統領、戦闘任務の終結を宣言。

 

2011年

12.14 治安維持部隊支援が目的の米軍も撤退完了。