2010年7月

財政危機をどうとらえるか

志位講演(党創立88周年記念講演)の感想

 

1. 全般的な感想

選挙の敗因: 消費税問題を財政危機問題として捉え切れなかった弱さ。かつての自民党の論理は抑止力論と国際競争力論だった。

国際競争力論は、結局人的コスト削減論だったが、人的コストが切り下げられたにもかかわらず、国際競争力はますます弱体化したことから、事実によって破産した。それが自民党の歴史的敗退と結びついた。国際競争力はコストではなくコスト・ベネフィット比で考えなければならないこと、新たなベネフィットを生み出すのは国家の総合力しかないこと、とりわけ国民の文化的豊かさが基盤であることが明らかになりつつある。

破産した自民党・財界の政治に代わり登場した民主党にとって、財政問題が大きく立ちはだかった。そして民主党とそのマニフェストは挫折した。これは国民に深刻な疑問を投げかけた。

財政問題は古くからの問題ではあるが、今日の財政危機はまったく新たな質の問題として考えなければならない。それはまず量の問題として異常であるが、自民党政治にノーを突きつけた国民が、いやおうなしに向き合わなければならない、主体的課題でもあるからである。

 

2.国民生活・経済再建の視点から見た財政危機打開の道筋

財政危機は存在する(長期債務残高862兆円、対GDP比181%)。しかしこれは国内債務であり、対外債務ではない。「あと1,2年でギリシャのようになる」という危機あおりは間違い。

財政危機の根源は、大型公共事業のばら撒き(バブル前20兆円が最盛時年間50兆円に)と軍事費の膨張(年間5兆円)にある。社会保障は諸外国に比べても劣位にあり、財政危機の原因ではない。

累積債務の多くは90年の日米構造協議後に展開された公共投資基本計画(総額630兆円)などの過大投資で説明できる。しかもこの公共投資はGDPの伸びをまったくもたらさなかった(15年間でマイナス4.5%)。

財政再建の可能性を三つの失政がつぶした。したがって財政再建のためにはこの三つの誤りを是正すればよい。

第一の失政: 消費税と国民負担増による財政再建政策(橋本内閣) 増税したにもかかわらず、経済への負の効果により相殺され、税収は逆に減った。

第二の失政: 国民に痛みを強いる「構造改革」政策(小泉内閣) 労働者・国民に犠牲を押し付け、名目の経済成長を図るが、GDP成長は停滞、国民生活の悪化により税収はさらに減少。

第三の失政: 大企業・大金持ちに対する減税政策(歴代内閣すべて) 法人税の引き下げと研究開発減税、所得税・相続税の引下げ、証券優遇税制など

 

3. 財政再建にあたっての二つの視点

第一に、経済成長戦略の中で財政再建を位置づける。暮らし最優先の経済成長戦略。第二に、応能負担の原則に基づく聖域なき改革

抑えておかなければならないのは、経済再建をどうするかという課題に比べれば、経済再建に向けてどうやりくりするかという課題は派生的であり、本題の議論を忘れてはならないということである。

国民生活を犠牲にする財政再建では経済も財政も共倒れになり、財政危機をさらに深刻化させる。とりあえず、GDP増大に結びつく投資を行い、GDP比での債務を減らす。