ラジオタンゴで聞くタンゴの名曲・名演

06年10月29日

(注) 決してActiveXを有効にしないでください。すさまじい量の音楽が流れてくるかもしれません。まだリンクの仕方が良く分かりません。それに違法の可能性があります。音が欲しい人はメールしてください。添付ファイルで送ります。

(注2) この文章は書きかけです。普通は書きかけのままでは載せないのですが、考えてみると、ずっとこのまま書きかけに終わる可能性があるので載せます。年表と同じで、かっこよく言えば「開かれたファイル」ということになるのでしょうね。このあと、書き換えたときは更新記録のほうにその旨を記載していきます。(07.8.16)

 

ラジオタンゴの「傾向」、その1

最近の更新記録で、ラジオ・タンゴが面白いと書きましたが、せっせこダウンロードしているあいだに、すごい数がたまってきました。ハードディスクの容量が10ギガバイトです。曲数は4632曲、ただし多少のダブりがありです。これをCDにしたら一枚20曲として200枚ということになるでしょう。これだけのCDを買おうと思ったら、一枚で3000円として60万円。破産してしまいます。といいつつ手持ちのタンゴのCDを数えたら50枚くらいはありました。

クラシックやジャズほどではないにしても、タンゴについても音楽評論家という人たちがいます。かなりの人たちはもう世を去っていると思いますが。昭和20年代後半から30年代前半にかけて、タンゴを踊る人たちがいて、それとつかず離れずの関係で、タンゴのレコードを収集するコレクターたちがいました。今で言えばかなりオタクっぽい人たちで、しかも相当のお金持ちでした。

日本のクラシック音楽は相当偏っていて、圧倒的に管弦楽が花形です。歌曲といえばせいぜいシューベルトの三大歌曲集くらいです。この傾向はタンゴでも同じで、オルケスタ・ティピカと呼ばれるオーケストラ編成の曲が興味の中心だったようです。

ただしこの傾向はアメリカでも同じだったようです。ラジオ・タンゴの演奏者名にはオルケスタの名前は出ても歌手の名前は出てきません。要するに「その楽団の専属歌手が歌っているぞ」ということで済まされているようです。

もうひとつは、同じタンゴでも器楽演奏版と歌入りの曲ではかなり雰囲気が違うことです。器楽バージョンの多くは4分の2拍子の行進曲風なのに対し、歌入り曲の多くがワルツを思わせる8分の6拍子です。

ラジオタンゴの「傾向」、その2

4600曲となると、統計的に見ても面白くなります。だいたい演奏者別にフォルダーに分けられているので、まずそれから見てみましょう。三曲以上入っている演奏者はフォルダーを作りました。フォルダーの数は200近くになりました。

1位と2位は日本とまったく変わりません。Juan D'Arienzoが227曲、Francisco Canaroが161曲ですが、Quinteto Pirinchoの72曲、Canaro & Lomutoの13曲をあわせると246曲となります。これを追うのがOsvaldo Puglieseの210曲、Anibal Troiloの188曲、ついでAlfredo De Angelisの167曲、Astor Piazzollaの147曲、そしてCarlos Di Sarliの144曲という順になります。

この7人で約1329曲、全体の3割を占めることになります。デ・アンヘリスが5位に入るのが意外です。

これにだいぶ遅れて続く一群があります。ここの顔ぶれはちょっと日本とは違うかもしれません。Rodolfo Biagiが105曲、Ricardo Tanturiが110曲、Osvaldo Fresedoが92曲、Angel D'Agostinoが84曲、Roberto Firpoが83曲という具合です。

この後は、Miguel Caloが68曲、Pedro Laurenzが65曲、Julio De Caroが64曲、Enrique Rodriguezが50曲、Francini-Pontierが49曲、Color Tangoが47曲、Sexteto Mayorが40曲、Carlos Gardelが39曲、Alberto Castilloが38曲、Edgardo Donatoが36曲、Francisco Lomutoが34曲、Alfredo Gobbiが34曲、という風に続いていきます。このあたりはせいぜいCDの2,3枚分ですから今後順序が変わってくる可能性があります。

フォルクローレのAlfredo Zitarrosaが32曲も入っているのはちょっとした驚きです。

ラジオタンゴの「傾向」、その3

ラジオ・タンゴから録音した4千曲の中から、演奏頻度の多いものを並べてみると、次のようになります。

Corazon De Oro  4曲

Yira Yira 11曲

Balada Para Un Loco 3曲

Tres Esquinas  2曲

El Marne 7曲

 

石川浩司さんの選んだタンゴ名曲百選

私はタンゴについては詳しくないので、石川浩司さんのホームページhttp://www009.upp.so-net.ne.jp/humbertango/ を読ませてもらいました。そこにはタンゴ名曲百選というページがあり、いわゆるスタンダード・ナンバーとされる100曲が紹介されています。このページは親切なことに、曲名ばかりではなく、その由来、そして代表的名演とされる演奏が紹介されています。

昔なら数千円で買わなければならない本の中身がただで手に入るというのも、インターネットのおかげです。さらにそこで紹介された演奏の半数以上がラジオ・タンゴを通じて実際に聞くことが出来るのも、インターネットのおかげです。

最初は、録音した曲をすべて実際に聞いて、自分なりにランク付けしていたのですが、それではとっても間尺に会いません。それでまず名曲百選にあげられた演奏を聴いてみて、それから同曲の異なる演奏に幅を広げる順番をとりました。

石川浩司さんとの世代の違い

そうしているうちに、ひとつは演奏の中でも、百選にあげられた演奏よりはるかに良いものがあることが分かりました。百選で取り上げた演奏はいずれも古典的演奏と呼ばれるもので、多くは演奏としても優れたものですが、中には印象の薄いもの、録音状態があまりよくないものも混じっています。とくに45年から55年ころまでのLP初期の録音は高音がつぶれて、強音ではざらざらと砂混じりでいただけません。それ以前のSP盤のほうがはるかに気持ちよく聞けます。

ところが、この時期がまさにタンゴの黄金時代となっているのです。実際のブエノスアイレスでの黄金時代はもう少し前のようですが、レコード録音上ではフアン・ダリエンソやアニバル・トロイロ、オズワルド・プグリエセらが、この時期に相次いで膨大なレコードを残しています。

そして日本においても、終戦後のこの時期にタンゴの黄金時代を迎えています。年代からすると、おそらく石川さんはこの時期に青春時代を送り、全身全霊をタンゴの世界に没入させたのだろうと想像されます。

もうひとつ感じたのは、名曲百選に選ばれた曲の中にも「ウーム」と首をひねってしまうような曲が数曲はあるということです。おそらくこれらの100曲は当時耳にする機会の多かった曲ではあったのでしょう。しかし今私が聞いてみると、少なくともこれよりは良い曲が10曲くらいはありそうです。

日本で好まれるタンゴは踊ることが前提になっているせいか、わりに歌抜きの曲が多く、もっぱら聞くだけの私としては、ちょっと違和感を感じます。

カフェ・ドミンゲスさんの演奏者紹介

同じくアルゼンチンタンゴを紹介するページに、カフェ・ドミンゲスさんのものがあります。この方もさすがにタンゴをよく聞きこんでいらっしゃる方です。http://www2s.biglobe.ne.jp/~cama/tango/

いろいろ勉強になります。

と、ここまでが前置きです。


私家版タンゴ名曲・名演奏百選

というわけで、石川さんの百選をもとに私なりに新百選を選んでみました。条件はラジオ・タンゴからリッピングしたソースを中心にするということがひとつ、由来のはっきりしたアルゼンチン・タンゴの古典曲に限るというものです。ゲテモノだがなかなか面白いとか、この演奏というわけには行かないが、捨てるには忍びないという演奏は、後で「番外編」としてまとめたいと思います。

 

(01)黄金の心 アダ・ファルコン (Ada Falcon - Corazon De Oro)

オーケストラの演奏が普通で、楽団員が「ラーラーラー」と胴間声を張り上げるのが通例となっていますが、アダ・ファルコンの歌のほうが迫力があります。SP後期のはずですが、曲の終盤にかけてかなりスクラッチ・ノイズはうるさいです。

(02)ジーラ、ジーラ アダ・ファルコン (Ada Falcon - Yira! Yira!)

続けてアダ・ファルコンの演奏です。普通は男性の歌う曲で、ガルデルやフリオ・ソーサなど有名歌手の多くが歌っています。ガルデルでも良かったのですが、アダ・ファルコンの声が良く、録音もSP盤としては特上なのでこちらを採りました。

(03)三つ角 アンヘル・ダゴスティーニョ楽団 (Angel D'Agostino - Tres Esquinas)

曲のクレジットには歌手の名前が入ってこないので困るのですが、アンヘル・ダゴスティーニョ楽団といえばアンヘル・バルガスが歌うものということになっているので、この演奏でも多分アンヘル・バルガスが歌っているものと思います。小粋な演奏ではありますが、これが名曲・名演かといわれるとちょっと首をひねります。

(04)踊り子 アニバル・トロイロ楽団 (Anibal Troilo - Danzarin)

歌はないけど咽ぶようなメロディーがタンゴの真髄を満喫させてくれます。アニバル・トロイロの分厚い弦の響きがこれほど生かされた演奏も、そうないでしょう。もう少し録音がよければと、残念に思いますが、トロイロの録音としては最上級の部類に入るものです。

カナロとデ・カーロに始まった,音楽としてのアルゼンチンタンゴを古典タンゴの第一期とし,ダリエンソやディ・サルリによって,さらにリズムと音楽性に磨きがかけられる時期を古典タンゴの第二期とするなら,このトロイロと後述するプグリエーセは,その後を継いで,音楽としてのタンゴを最高潮まで高めた第三期の古典タンゴ,いうならば「ネオ・クラシック」とでもいうべき音楽家であるといえる(「カフェ・ドミンゲス」さんの解説より)

(05)動機 アニバル・トロイロ楽団 (Anibal Troilo - El Motivo)

前の曲と同じような演奏で、ゴジェネチェの歌が入ります。プグリエセ楽団に比べると目立たないけど、ピアノがなかなか良い音です。高音ちょん切れがかわいそうですが。

(06)アディオス・ノニーノ アストル・ピアソラ (Astor Piazzolla - Adios Nonino)

全体で9分、ピアノの前奏だけで3分近くというタンゴの常識を破る長時間ですが、拍手の音に気づいた時は、あっという間に終わってしまったような印象を受けます。実演のせいか緊張度も高く、聴くものに息継ぎすら許さないほどに感じます。

(07)大きな人形 カルロス・ディサルリ楽団 (Carlos Di Sarli - A La Gran Muneca)

ディサルリというのは「泣かせ」の芸を会得した手練れという感じです。弦を叩くようなスタッカートと、思いっきりレガートを利かせたポルタメントを交互に繰り返し、たたみ掛けていきます。あざといといえばあざといのですが、それだけではない何かプラスアルファがあるのでしょう。

(08)バイア・ブランカ カルロス・ディサルリ楽団 (Carlos Di Sarli - Bahia Blanca)

おそらく誰がタンゴの名曲を選んでも5本の指に入る名曲です。曲の構成は実に単純で、一応変奏曲形式ではあるのでしょうが、実のところは寄せては返す波のように同じ旋律の繰り返しに過ぎません。対旋律は主旋律を逆さまにしただけです。

(09)夜明け カルロシ・ディサルリ楽団 (Carlos Di Sarli - El Amanecer)

アマネセ−ルをどうしてロベルト・フィルポの自演盤にしないか、それはこのディサルリ盤を聞いてもらえば分かってもらえるでしょう。まったく別の曲のようにも聞こえます。タンゴはこうでなくっちゃというディサルリの強情さが伝わってきます。

ディ・サルリのタンゴには独特のグルーヴがある。人は彼のタンゴを聴くと「まるで,波のうねりに包まれているよう」に感じる。彼の持ち味を生かした「アマネセール」がそうだ(「カフェ・ドミンゲス」さんの解説より)。

(10)君を待つあいだ カルロス・ディサルリ楽団 (Carlos Di Sarli - Fumando Espero)

この曲は実はスペイン生まれの歌なんだそうです。訳には入っていませんが、“Fumando”という言葉がだいじです。ただ待っているのではなく、タバコを吸いながら待っていることがこの情景には必須なのです。デアンヘリスの演奏もなかなか良いのですが…

(11)黄昏のオルガニート カルロス・ディサルリ楽団 (Carlos Di Sarli - Organito De La Tarde)

これもディサルリ楽団の十八番です。ディサルリでなければならないわけではないが、たしかにほかにこれといった演奏があるわけではありません。このマロ〜ンとした雰囲気は(歌詞の中身は結構切羽詰っているが)、次の世代が受け継ぎにくいものなのでしょう。

(12)カミニート ホルヘ・マシェル (Jorge Maciel - Caminito)

むしろフォルクローレ畑の歌手のほうが雰囲気が出るかもしれません。ホルヘ・マシェルは声の良さからすればタンゴ界最高ですが、その下品さには「どうして?」と戸惑います。おそらく彼にも言い分があるのでしょうが。

(13)下り坂 カルロス・ガルデル (Carlos Gardel - Cuesta Abajo)

私の記憶では、「下り坂」はスサーナ・リナルディのほうが良いのですが、とりあえずそれがラジオタンゴでとった音源の中にはないので、ガルデルにしておきます。

(14)我がなつかしのブエノスアイレス カルロス・ガルデル (Carlos Gardel - Mi Buenos Aires Querida)

まさに名曲・名演。極めつけというのはこういうのを指して言うのでしょう。この歌を歌うのに、ガルデル以外の余人をもっては代えがたいという実感がつくづくします。「余人」が手を出さないという事情もたしかにありますが。

(15)我々が悲しみの夜 カルロス・ガルデル (Carlos Gardel - Mi noche triste)

ガルデルが世に出た出世作です。ガルデルは男っぽい歌い手ですが、それはマッチョとしての男らしさではなく、もっと素直に自然ににじみ出た人間臭さだと思います。だから女性が歌っても全然違和感がないし、外国人が歌っても素直に曲の良さがしみじみと伝わってくるのです。

(16)帰郷 カルロス・ガルデル (Carlos Gardel - Volver)

もうひとつガルデルの歌です。短いけどとても印象的な曲です。ちょっとハリウッド的な匂いがしますが、考えてみると、この時期ハリウッドはとても良かったのです。1930年代の後半に「ハリウッド的だ」というのは、ある意味で最高のほめ言葉かもしれません。

(17)我が悩み カルロス・マルッチ (Carlos Marcucci - Mi Dolor)

この歌は石川さんに教えられるまでその存在も知りませんでした。いかにも都会的で小粋な歌です。古典百選というと、「ちょっと待って」という感じもしますが…

(18)我が愛へのミロンガ コロール・タンゴ (Color Tango - Milonga de mis amores)

まさしくコロールタンゴの快演です。録音もすばらしい。今までは、あまり面白い曲だとは思いませんでしたが、コロール・タンゴの演奏で一気に評価が上がりました。

(19)思い出 コロール・タンゴ (Color Tango - Recuerdo)

この曲は、演奏によって好きか嫌いかがかなりはっきり分かれる曲です。オラシオ・サルガンで聞いたとき、「えっ」とびっくりしたことを覚えています。名前とは裏腹に、きわめてモダンな曲なんだということなのでしょう。

(20)フェリシア クイダダノス・デル・タンゴ (Cuidadanos Del Tango - Felicia)

フェリシアというのはカッタルイ曲だと思っていましたが、この演奏で聞くともっと軽やかで生き生きとしています。どちらが良いかと一概には言えませんが、演奏次第でさまざまな顔を見せてくれる可能性があるという意味では、ニュアンスに富んだ曲といえるでしょう。

(21)台風 エドガルド・ドナート楽団 (Edgardo Donato - El Huracan)

エドガルト・ドナートは何回かこの曲を録音しているようですが、中でも一番わざとらしい演奏です。擬音から歌まで入っています。この曲にはそのほうがあっているようです。

(22)リベルタンゴ フォアレバー・タンゴ (Forever Tango - Libertango)

テレビ・コマーシャルではヨーヨー・マの演奏が流れ、人気を博しました。この曲の良さは「疾走感」につきます。多くの演奏がピアノのリズム、弦のメロディーと仕事分けするのに対し、フォアレバー・タンゴは逆を行って「疾走感」を表すのに成功しました。

(23)軍靴の響き フランチーニ=ポンティエルリ楽団 (Francini - Pontier - Taquito Milita)

最悪の録音で、音はひしゃげて高音部はまったく聞こえません。それでも打楽器のリズムには度肝を抜かれます。ペレス・プラードがこのようにコンガを叩いても、別になんとも思いませんが、タンゴのレコードからこのような音が飛び出してくることにはびっくりするしかありません。

(24)さらば草原よ フランシスコ・カナロ楽団 (Francisco Canaro - Adios Pampa Mia)

大草原を渡るそよ風を感じさせる、なんとも気分の良い曲です。

カナロは,「オルケスタ(オーケストラ)」という10人程度の楽団によって演奏させることで,タンゴの楽曲としての厚みを増すことに成功した。これをよりシンフォニックかつ大編成にしたものは,後に「コンチネンタル・タンゴ」として分かれていくことになるが,あくまでもカナロの音楽は,歯切れの良い鋭さを失わなかった(石川さんの解説より)。

(25)肘鉄砲 フランシスコ・カナロ楽団 (Francisco Canaro - El Esquinazo)

カナロらしい単純明快でユーモラスな演奏。メロディーラインはバンドネオンが最初から最後まで担当します。合間に入るせりふが面白い。

(26)泣き虫 フランシスコ・カナロ楽団 (Francisco Canaro - El Lloron)

あえて定番といわれるダリエンソでなく、カナロの方をとりました。メロディーが分かりやすくとっつきやすいです。アルベルト・アレナスの歌も良いです。ただし歌の意味は「泣き」で女をだますのが得意のスケコマシの歌で、ほめられたものではありません。

(27)バンドネオンの嘆き フランシスコ・カナロ楽団 (Francisco Canaro - Quejas De Bandoneon)

アルゼンチン・タンゴ屈指の名曲です。これもカナロが一番とはいえない曲ですが、トロイロ楽団風の演奏に飽きたということですか。あぁ、元はこういう曲だったのか、と納得する演奏です。

(28)ロドリゲス・ペーニャ オルケスタ・ティピカ・ビクトル (Orquesta Tipica Victor - Rodriguez Pena)

オルケスタ・ティピカ・ビクトルは1920年代に大量の録音を残した、ビクター・レコード社の専属バンドです。最新の技術によって素晴らしい音となってよみがえりました。バイオリンの音もバイオリンらしく聞こえます。ピアノは割れず、低音楽器さえそこはかとなく聞こえてきます。

(29)ガウチョの嘆き フランシスコ・カナロ楽団 (Francisco Canaro - Sentimiento Gaucho)

いろいろな楽団が演奏していますが、遅めのテンポでリズムをしっかり踏んでいくカナロの演奏が一番納得させられます。録音もSPとしては良好で、バイオリンの「さび」が効いています。

(30)ブエノスアイレスの冬 ギドン・クレーメル (Gidon Kremer - Invierno porteno)

ピアソラにはクラシックの演奏家が多くチャレンジしていますが、その中ではクレーメルが出色です。これはクラシックのアンコール曲といわれてもまったく分かりません。ビバルディ「四季・冬」の一節が織り交ぜられるのは、好みが分かれるでしょう。少し音量を上げて聞いたほうが良いです。

(31)パリのカナロ グラン・キンテート・レアル (Gran Quinteto Real - Canaro En Paris)

名曲・名演・名録音の極致です。わたしはこの曲がアルゼンチンタンゴのベストワンだと思っていますが、それだけに良い演奏もたくさんあって選択に迷います。その中で今はこの演奏がベストだと思っています。SP盤もなかなか風情はあるのでしょうが、こういう録音を聞いてしまうと…

(32)ラ・モローチャ エクトル・バレーラ楽団 (Hector Varela - La Morocha)

歌入りの演奏もあって、捨てがたいのですが、エクトル・バレーラのバランスのとれた品の良い演奏が光ります。

(33)エル・チョクロ ホルヘ・ソブラール (Jorge Sobral - El Choclo)

もちろんラ・クンパルシータと並ぶ超有名曲で、演奏もピンからキリまでごまんとあります。私はソブラールという人の歌を初めて聞いたのですが、余りにもうまいので、ついほかの定番演奏を全部捨ててこちらにしてしまいました。

(34)淡き光に ホセ・バッソ楽団 (Jose Basso - A Media Luz)

ちょっとタンゴをかじった人なら、ラ・クンパルシータよりこちらのほうが人気が高いでしょう。「こりえんてー、れくぁとろおーちょ」と聞くと、それだけでゾクッとくるほどです。ホセ・バッソが一番とは思えませんが、とりあえずラジオ・タンゴの録音ではこれくらいしかないので。

(35)ナイフで一突き ホセシート・パセ (Josecito Pace - La Punalada)

ダリエンソ楽団の定番曲だが、どうも私はダリエンソとウマが合わない。この演奏はホセシート・パセという名前がクレジットされている演奏。ピアノ・バイオリン・バンドネオンの三重奏。ピアノがなかなか良い音を出している。ステレオ初期の録音か、意外に音が悪い。リマスターして欲しい演奏。

(36)狂った女 フアン・ダリエンソ楽団 (Juan D'Arienzo - Loca)

ダリエンソはよほど録音に恵まれませんでした。ステレオ初期の録音ですら、間の抜けた干からびた音しかとれていません。ところがどういうわけか、この録音だけがダイナミックレンジもしっかりとれたハイファイ録音です。モノーラルですが、ダリエンソただひとつのお勧め曲です

(37)ホテル・ビクトリア ロス・インディオス・タクナウ (Los Indios Tacunau - Hotel Victoria)

演奏はタンゴというより、もはや完全にフォルクローレの世界。もちろんオルケスタ・ティピカやキンテートによる演奏もあるが、聞き流す分にはこれが一番気分が良いかなというだけの話です。タクナウの演奏なら他にもっと良いものがたくさんありますが、あくまでタンゴということで…

(38)人は マリア・グラーナ (Maria Grana - Uno)

良い曲で好きな曲でもありますが、大声張り上げて朗々とやられると、結構うっとうしい曲でもあります。マリア・グラーナも声は張り上げていますが、あと一歩で下品になる寸前のところで立ち止まっています。伴奏もなかなか良いです。

(39)タンゲーラ マリアーノ・モレス (Mariano Mores - Tanguera)

日本語題の「タンゴの好きなお嬢さん」は間違いで、「タンゴ的なもの」という抽象名詞なんだそうです。そのように石川さんがモレスの意向を伝えています。コンチネンタル・タンゴのような曲です。作曲者による演奏ですが、もっと良い演奏・録音があるかもしれません。

(40)ブエノスアイレスの喫茶店 ( Mariano Mores, El Discepolo - Cafetin De Buenos Aires)

音源のクレジットにはこうなっていますが、1948年に出来たこの曲は、作詞がディセポロで作曲者がマリアーノ・モレスです。録音はかなり最近のもののようですから、演奏者は別でしょう。良い演奏であることは間違いありませんが。

(41)ラ・クンパルシータ ミゲル・モンテーロ (Miguel Montero - La Cumparsita)

ラジオ・タンゴにはこの曲だけで40種類ほどの演奏があります。しかし同工異曲の感を免れません。この曲は率直に言ってそれほどの曲ではないのではと思えます。何かひとつ足りない、そこをミゲル・モンテーロは懸命に模索しています。そこに共感しました。

(42)郷愁 オスバルド・フレセド楽団 (Osvaldo Fresedo - Nostalgias)

もう10年も前にキューバのエレーナ・ブルケという歌手が来ました。出不精の私が滝川まで車を飛ばし「追っかけ」をやりました。その数年前、ハバナで買ったCDで、「ノスタルヒア」を聞いたのが忘れられなかったのです。これがフィーリンでなくタンゴだと知ったときは驚きました。

(43)口笛を吹きながら オスバルド・フレセド楽団 (Osvaldo Fresedo - Silbando)

これも石川さんの紹介で初めて知った曲。「夏の夜、空は青くイタリア船から流れて来る旋律は甘い。野良犬の遠吠え、通り過ぎるヤクザものの吹く口笛・・・」といった歌詞だそうです。少なくとも女に振られた愚痴話などよりはるかによい。

(44)チケ オルケスタ・ティピカ・T (Orquesta Typica T - Chique)

本来ならプグリエセのガチガチの定番演奏をとるところだが、この無名の楽団の演奏はもっと色気があって上手いと思います。

(45)別れ オスバルド・プグリエセ楽団 (Osvaldo Pugliese - El Adios)

低音が聞こえないのが残念だが、当時としては最良の録音。アルベルト・モラン(と思うが)の歌も良い。プグリエセはダリエンソやトロイロと違い、録音には恵まれている。

プグリエーセはデカロを基盤に、ピアノの左手で叩き出す強烈豪快なリズムと哀愁にあふれる弦のソロ、合奏を巧みに組み合わせ、自分のスタイルを創造した(「カフェ・ドミンゲス」さんの解説より)

(46)メクラの雄鶏 オスバルド・プグリエセ楽団 (Osvaldo Pugliese - Gallo Ciego)

石川さんの曲目紹介から引用すると、「昔の子供の遊びの名前らしい。なんでも生きた鶏を首だけ出して地面に埋め、目隠しをしてそれを棒で叩くスイカ割りのようなものだという」というコワい遊びです。

(47)ラ・カチーラ オスバルド・プグリエセ楽団 (Osvaldo Pugliese - La Cachila)

石川さんによると「題意は不明だが女性のあだ名だとされている」そうです。

(48)ラ・ジュンバ オスバルド・プグリエセ楽団 (Osvaldo Pugliese - La Yumba)

石川さんによると、ラ・ジュンバとは「タンゴのリズムの擬声語」のことだそうです。これだけバイオリンを打楽器扱いされると、バイオリニストは腹が立ってくるのではないでしょうか。レコードで聞くのと実際に生で聞く印象は相当違うかも知れません。

(49)何某 オスバルド・プグリエセ楽団 (Osvaldo Pugliese - N.N)

これもタンゴの最高傑作のひとつ。プグリエセの演奏も定番だが、音が悪いです。他に良い演奏がないか探しているところです。

(50)我が愛へのミロンガ ペドロ・ラウレンス楽団 (Pedro Laurenz - Milonga De Mis Amores)

ペドロ・ラウレンスなりのミロンガの乗りが快い。

(51)エントレリオスの人 ピリンチョ五重奏団 (Quinteto Pirincho - El Entrerriano)

エントレリアーノといえばアニバル・トロイロが定番だが、ピリンチョの演奏は、さまざまな旋律をくっきりと浮かび上がらせ、この曲の隠れた良さを引き出していると思います。トロイロの演奏ももう少し録音が良いと対旋律や低音部の流れが分かるのでしょうが。

(52)酒宴の一夜 ピリンチョ五重奏団 (Quinteto Pirincho - Una Nocha De Garufa)

知らない曲だったのですが、録音が余りにも良いのでつい聞いてしまいます。

(53)ミロンガのすすり泣くとき ロドルフォ・ビアジ楽団 (Rodolfo Biagi - Cuando Llora La Milonga)

この演奏は、まさに掘り出し物です。「すすり泣き」といっても日本人の泣き方とはぜんぜん違います。この演奏については、石川さんの紹介にも載っていないし、「めったに歌われないが歌詞もある」というその歌がついているのも価値があります。

(54)降る星のごとく セステート・マヨール (Sexteto Mayor - Lluvia De Estrellas)

アルフレッド・ハウゼの演奏かと聞きまごう曲です。ただしセステート・マヨールの演奏は比較的アルゼンチンタンゴのニュアンスを織り込もうとしているようです。

(55)来るべきもの セステート・マヨール (Sexteto Mayor - Lo que vendra)

セステート・マヨールのライブ録音です。その割には気迫とかひらめきがあまり伝わって来ません。アルゼンチン・タンゴの伝統を守るという方向でしょうが、最近のピアソラ・ブームでずいぶんいろいろな演奏スタイルが出てきているので、やや古臭い感じを受けてしまいます。

(56)白い小鳩 セステート・マヨール (Sexteto Mayor - Palomita blanca)

出だしはなんということのないポルカ調のバンドネオン演奏ですが、中間部から突如として乗りの良いワルツに代わっていって、最後には結構盛り上がるという演奏です。

(57)ブエノスアイレスの夏 セステート・マヨール (Sexteto Mayor - Verano porteno)

「夏」はさまざまな演奏が流布し、あたかもピアソラの代表曲かのように取り上げられています。セステート・マヨールは、最近の流行からするとやや遅めのテンポで、じっくりと内声部も聞かせています。派手ではありませんが、飽きの来ない演奏といえるでしょう。

(58)古道具屋 スサーナ・リナルディ (Susana Rinaldi - Cambalache)

石川さんから引用します。「この世の中は豚小屋さ。20世紀は悪がのさばる時代。誰も彼もが泥棒なのさ」という出だしで、怪しげな骨董品を売りつけようとする古道具屋のせりふが続きます。フリオ・ソーサの演奏もありますが、私としてはスサーナが好みです。

(59)思いの届く日 タニア・リベルタード (Tania Libertad - El Dia Que Me Quieras)

タニアで何が悪いか、ということです、ハイ。でも、仕方ないことですが、タニアを初めて聞いた20年前と比べれば、高い声は出なくなって、透明感はなくなって、歌に贅肉がついて来た感じは否めません。この歌にはもう少し寂しさと懐かしさが必要ですかねぇ。

(60)さらば友よ 演奏者不明 (Unknown - Adios Muchachos)

この曲は、やはりイグナシオ・コルシーニで聞きたいところですが、残念ながらラジオ・タンゴの音源にはありません。この演奏はかなりもたれる感じがしますが、とりあえず雰囲気は出ています。

(61)花火 アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Alfredo De Angelis - Fuegos Artificiales)

ステレオ初期の録音らしく、音が右と左から飛び出してきます。しかし音質は悪くありません。曲も演奏もあまり面白いものではありません。

ここまでが石川さんの百選を参考にしながら私の選んだものです。45曲も捨ててしまったのですね。ここからは石川さんに反旗を翻した選択です。

 

(62)カスカベリート アダ・ファルコン (Ada Falcon - Cascabelito)

(63)素敵なくちづけ アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Alfredo De Angelis - Besos Brujos)

この楽団には珍しく、女性歌手の登場です。シックな演奏です。デアンヘリスのディスクでは他にCalvario、Campanita、Cuando Te Fuiste、Del Pasado、En Tus Brazos、Esta Noche、La Piel de Buenos Aires、Made In、Mi Carinitoなども捨てがたいのですが、全部入れると百には収まりきれないので、いずれデアンヘリス30選とか組みたいです。

(64)物売り アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Alfredo De Angelis - Pregonera)

これも男声の二重唱です。愛らしい旋律で、どこかで聴いたことのあるような節でもあります。この楽団の演奏では「フローレス・デ・アルマ」という曲がよいのですが、別録音でもっと良いものがあるのであとで紹介します。

(65)南 エドムンド・リベロ (Edmundo Rivero - Sur)

この曲に関しては、伴奏が良いだけガルデルよりリベロのほうが良いと思います。もう少し伸びやかに歌ってくれればと思うのですが。

(66)ブエノスアイレスのお嬢さん エクトル・マウレ (Hector Maure - Muchachita Portena)

こんな歌があるとは知りませんでした。あえて百選に入れるほどのものではありませんが、一聴の価値はあると思います。モノーラルですが録音は悪くありません。

(67)リノの花 エクトル・スタンポーニ (Hector Stamponi - Flor de Lino)

エクトル・スタンポーニのピアノ独奏です。シンプルなワルツですが美しいです。タンゴというより上流階級のサロンの音楽のように聞こえます。当然ブエノスアイレスにもそういうサロンはあったのでしょう。

(68)ラ・ウルティマ・クルダ イスマエル・スピタルニク楽団 (Ismael Spitalnik - La Ultima Curda)

前からとても名前が気になる楽団ですが、どんな人なのでしょう。この曲はいわゆる古典ではないのでしょうが良い曲です。スピタルニクの演奏も格調が高いものです。録音は最近のものですが、モノーラルのようにも聞こえます。

(69)名付親 ハイメ・ウィレンスキー (Jaime Wilensky - Compadre)

打ち込みとシンセつきですが、やはりタンゴというべきでしょう。多分バンドネオンが一人で演奏しているのだろうと思います。それがそこそこ良いのだから、オルケスタとかキンテートとはいったい何なのだろうと考え込んでしまいます。

(70)女道化師 ホセ・コランヘロ楽団 (Jose Colangelo - Payadora)

ホセ・コランヘロの最大の特徴は疾走感にあります。とにかくピアノが良い音が出て、かっこいいのです。聞いていて気分がよいのです。

(71)インターン生 フアン・ポリート楽団 (Juan Polito And His Orchestra - El Internado)

インテルナードといえばふつうはカナロ楽団ですが、この名も知らぬ楽団が結構インテルナードしているのがすごいです。さすがに黄金期のタンゴ楽団は層が厚いですね。

(72)忘却 ルイス・マリアーノ (Luis Mariano - Olvidame)

ポルテーニョは執念深い人種らしく、「忘却」という題の歌はあまりはやらなかったようです。

(73)バタカソ マヌエル・ピサロ (Manuel Pizarro - Batacazo)

その割にはポルテーニョは忘れっぽく、こんな歌があったことなんてトンとご存じないようです。まぁたいした曲ではないのですが、古典百選と比べてそれほど劣っているわけでもなさそうです。

(74)二月 マルセロ・ライガル (Marcelo Raigal - Febril)

ピアノ独奏によるタンゴです。たしかにリズムはタンゴですが、タンゴ独特の「臭み」は感じられません。二月というと南半球では真夏です。なかなか情熱的な曲です。

(75)イ・ソイ・コモ・ソイ マリオ・ブストス (Mario Bustos - Y Soy Como Soy)

これほどのアップテンポではなく、もう少しじっくりと歌いこんでも良いと思うのですが、曲はいろんな可能性をはらんで良い曲だと思います。誰か現代タンゴの演奏家がもう一度うまくアレンジしてくれたら、と思います。

(76)歌いながら メルセデス・シモーネ (Mercedes Simone - Cantando)

石川さんの百選にはどういうわけかメルセデス・シモーネが出てきません。ガルデルほどではないけど、やはり男がガルデルなら女はメルセデス・シモーネと来ないと面白くありません。ただしメルセデス・シモーネの中からこれぞ名曲と選ぶとなると、それはそれで大変です。

(77)もうひとつの月 ナルコタンゴ (Narcotango - Otra Luna)

あなたが誰かさんの膝枕で月を眺めていて、そのそばでバンドネオンやバイオリンが何か奏でていたとしたらどんな気分でしょうか。それはどんな音で聞こえるでしょうか。そんな夢をナルコタンゴはかなえてくれます。耳元気分はもうナルコ…「おいおい、そこまでしてくれなくてもいいよ」と、ぞくぞくするほど最高です。

(78)デスデ・エル・アルマ ネリ・オマール (Nelly Omar - Desde El Alma)

針の音までふくめて、これぞタンゴです。颯爽とした気分とちょっとしたセンチメンタリズム。欲をいえばきりがないけど、何十回聞いても、この乗りはサルサでもカリプソでも味わえません。

(79)あなたの愛なしで ノルマ・マリン (Norma Marin - Sin Tu Amor)

たしか藤沢蘭子の十八番の曲でした。シンセサイザーの伴奏がなんとなく安っぽくていただけませんが、歌はなかなかのものだと思います。

(80)ロス・アンヘリートスのカフェ ティビダボ八重奏団 (Octeto Tibidabo - Cafe De Los Angelitos)

聞いたこともない楽団の聞いたこともない曲ですが、どことなく聞いたような曲です。比較的大編成の演奏なので、音量を少し上げて聞くと、俄然良さが光ってきます。

(81)Dicen Que Asi Soy オルケスタ・ティピカ・ビクトル (Orquesta Tipica Victor - Dicen Que Asi Soy)

すみませんが、どんな題名なのか分かりません。曲も演奏もとてもよく、どうして石川さんの百選に入らないのか不思議です。

(82)木曜日 オルケスタ・ティピカ・ビクトル (Orquesta Tipica Victor - Jueves)

それにしても、ダリエンソやトロイロより、ビクトルのほうが音が良いというのはどうしたことなのでしょう。SP初期の録音ですらこれだけの音で再生できるのなら、LP初期の録音ももう一度カットしなおしてくれればもっと良い音で聞けるのでしょうか。

(83)狂った運命 レイナルド・マルティン (Reynaldo Martin - Suerte Loca)

いかにもタンゴらしい美声の歌手。比較的単純な曲だが、歌唱力で聞かせます。

(84)私はマリア ミルバ (Tangoseis & Milva - Yo Soy Maria)

わざわざリサイタルまで見に行った私としては、どうしても百選に入れなければならないものです。とはいうものの、さすがに何回も繰り返して聞く気にはなりません。

(85)私のパティオ アイダ・ルス (Aida Luz - Patio Mio)

曲名も演奏者名もまったく知りませんが、泣き節が不思議にここち良い演奏です。デジャビューなのでしょうね。

(86)Madre Hay Una Sola アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Madre Hay Una Sola)

日本語ではなんというのでしょう。「母は我が太陽」というのでしょうか。教えてください。たぶん定番曲だと思うのですが。

(87)ミロンガよ永遠に アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Alfredo De Angelis - Siempre Milonga)

これぞミロンガというリズムを刻みながら、ギターと低音楽器のピツィカートが雰囲気を駆り立てます。歌も歌曲の旋律とは程遠い不安な気分をあおります。録音も秀逸です。

(88)心の花 ルセーロとガルシア・フェラーリ、ラレンサ (A. Lucero & M. Garcia Ferrari & J Larenza - Flores del Alma)

ピアノの伴奏で男女のデュエットです。最初はスペインの古い民謡かと思いましたが、れっきとしたタンゴでした。元歌を歌っているのは、デ・アンヘリス楽団の男性歌手二人で、こちらも大変良い演奏です。

(89)エルナンドの隠れ家 アルフレード・デ・アンヘリス楽団 (Alfredo De Angelis - El Escondite De Hernando )

マンボで「エルナンドス・ファーラウェイ.オーレ!」とやるやつです。どちらが元歌かは知りません。

(90)一人ぼっち アルフレド・ゴビ楽団 (Alfredo Gobbi - El Solitario )

ティト・ランドとアルフレド・デル・リオ(Canta Tito Lando Y Alfredo Del Rio)の男性二重唱です。雰囲気はタンゴというよりシャンソンです。

(91)第五番 アルフレド・ゴビ楽団 (Alfredo Gobbi - La Numero Cinco)

 アルフレド・ゴビ楽団の歌入り演奏ですが、歌手の名前は不明です。おそらく同じコンビだと思いますが、La Vieja Serenataという曲もなかなかよいです。

(92)場末の月 アルベルト・カスティージョ (Alberto Castillo - Luna De Arrabal.)

アラバルとを辞書で引くと郊外とか場末と出てきますが、タンゴなんだから場末がそれらしいですね。出来ればカスティージョ以外の歌手で聞いてみたいところです。

(93) オブリビオン アルフレド・マルクッチ&バルタサル・ベニテス (Alfredo Marucucci & Baltazar Benitez - Oblivion)

この曲は、結局番外にまわしてしまったのですが、アル・ディ・メオラのジャズっぽい演奏のほうが好きです。作曲者ピアソラの自演も、ちょっとバンドネオンがでしゃばりすぎる編曲ですが、悪くはありません。ただこちらのほうが曲そのものの良さが素直に引き出されています。この曲がタンゴを代表する名曲であることに変わりはありません。

(94) フーガとミステリオ アルフレド・マルクッチ&バルタサル・ベニテス (Alfredo Marucucci & Baltazar Benitez - Fuga Y Misterio)

この団体は現代タンゴ最高のグループではないかという気がします。このピアソラもすごいですが、CDに入っている演奏がすべて良い。とくにイ短調のメロディーというのは素晴らしく、古典タンゴではないので番外に入れておきたいと思います。

(95)ロンダンド・トゥ・エスキーニャ アンヘル・ダゴスティーニョ楽団 (Angel D'Agostino - Rondando Tu Esquina)

例によってアンヘル・バルガスの歌が入ります。曲はスタンダード・ナンバーですが、題名は良く分かりません。「街角で勝負」というのでしょうか?

(96)彼の名はエドゥアルド・アローラ アンヘル・ダゴスティーニョ楽団 (Se Llamaba Eduardo Arola)

かの伝説のバンドネオン奏者アローラスに愛するオマアジュでしょうか。マスプロ演奏家ダゴスティーニョ&バルガスにしては珍しく、力の入った演奏です。

(97)パトリシオ公園の男 アンヘル・ダゴスティーニョ楽団 (Angel D'Agostino - Yo Soy De Parque Patricios)

ダゴスティーニョとアンヘル・バルガスのコンビでもっとも有名な曲です。この組み合わせではほかにCafe Dominguez、Caricias、Cascabelito、Destellos、Mi Chiquita、Muchacho、Ninguna、Yo Tengo Una Novia、などが良いです。ただし連中はあまりにも書き飛ばし歌い飛ばしています。

 

 

(番外1)パリのカナロ ホセ・コランヘロ楽団 (Jose Colangelo - Canaro en Paris)

番外編を作りたかった最大の理由は、この演奏を捨てられなかったからです。このグルーヴ感はすごいです。何種類もの優れた演奏が成り立ちうるというのは、「Canaro en Paris」という曲が奥行きの深い名曲であることの表れだろうと思います。

(番外2)エル・セゴン フアン・カルロス・カセーレス (Juan Carlos Caceres - El Segon)

どう考えてもタンゴではありません。強いて言えばジャイブです。しかし熱気があります。南米の対岸はアフリカですからアンゴラあたりの音楽が入ってきても何の不思議もありません。

(番外3)ラ・クンパルシータ ロス・ソリスタス (Los Solistas - La Cumparsita)

ラ・クンパルシータをあれこれ聞かされると、結局歌入りをとるか、歌なしをとるかの選択になります。この曲には歌は必須ではないと思いますが、一曲を選べということになれば、結局歌入りを選ぶことになります。ということで歌なしの演奏はどうしても番外に入ることになります。

(番外4)炎のくちづけ ルイス・アームストロング (Louis Armstrong - Kiss of Fire)

ただのゲテモノ(エル・チョクロ)で、それほど入れたいわけではありませんが、強いて言えばアメリカのタンゴの受け入れ方を知る上での一種の情報提供です。

(番外5)カミニート マルチェロ・マストロヤンニ (Marcelo Mastroianni - Caminito)

これもどちらかといえばゲテモノに属する「演奏」です。マストロヤンニがカミニートの詩を演奏しているのですが、歌うというのか朗読するというのか、変な演奏です。それなのになんとなく味があります。日本でいうと森繁の歌のようなものでしょうか。

(番外6)月の子供 モンセラ・カバリエ (Montserrat Caballe - Hijo de la Luna)

とてもよい曲ですが、タンゴではありません。世界を代表するディーバ、モンセラ・カバリエは、バルセロナの生まれですからカタロニアあたりの民謡でしょうか。もっともカバリエは何でも歌いますが。

(番外7)アディオス・ノニーノ ニコラス・レデスマ四重奏団 (Nicolas Ledesma Cuarteto - Adios Nonino)

泣きの番外です。本当を言えばピアソラ本家よリこちらのほうが好きな演奏です。録音もすごいです。ただ、本家は作曲家の思いもふくめて、エトスが感じられます。

(番外8)君を待つあいだ オルケスタ・ティピカ・ビクトル (Orquesta Tipica Victor - Fumando Espero) 

 百選のほうにはディサルリを入れました。そちらには歌が入って、こちらにはないということが理由です。しかしビクトル盤も演奏・録音ともに素晴らしいもので、捨てるに忍びないため、ここに入れました。

(番外9)ドンナ・バトラ オットー・ドブリント楽団 (Otto Dobrindt - Donna Vatra)

 コンチネンタル・タンゴというのでしょうか。エセタンゴというほうがぴったりするような、いかにも怪しい雰囲気の演奏です。ベルリンかどこかのカフェでこんな演奏が行われていたのでしょうね。

(番外10)Ceasar der Hund タンゴ・トロイ (Tango Troi - Ceasar der Hund)

題名不明ですが、どうもドイツ語のようです。実況録音らしく拍手が入っています。ピアノ、バイオリン、チェロからなる完全なピアノトリオで、曲もタンゴというよりクラシックです。

(番外11)ホテルの朝 Zbigniew Preisner (Zbigniew Preisner - Morning at Hotel)

完全な弦楽合奏で、タンゴといえるのか。楽団の名前も、読めないのですが、オランダあたりのものでしょうか。しかし曲は良いです。ラジオタンゴの主催者はどうもクラシックの延長としてタンゴを聞いているようです。後で知ったのですが、ポーランドの人でズビグニフ・プレイスネルと読むそうです。

(番外12)オブリビオン アル・ディ・メオラ (Al Di Meola - Oblivion)

 オブリビオンといえば、ピアソラの定番曲ですが、この演奏では原曲は影をとどめず、とてもタンゴとは思えません。しかしムード音楽としてはモダンで悪くないと思います。後で知ったのですがアル・ディ・メオラはリック・コリアのReturn to Foreverのギタリストで、パキパキのジャズ・ギタリストです。

(番外13)恋の街サッポロ (Juanjo Dominguez - Koinomachi Sapporo)

ゲテモノですが、いかにもパンパの雰囲気が出ていてユパンキ風です。ファンホ・ドミンゲスはものすごいテクニシャンで、二人分の音をひとりで弾いてしまう人です。何度も日本に来ているあいだに憶えたのでしょうが、割とあっさり弾いています。

 (番外14)チャロル アルベルト・カスティージョ (Alberto Castillo - Charol)

カスティージョはカンドンブレをたくさん歌っています。カンドンブレはウルグアイで働かされた黒人が持ち込んだ太鼓歌です。ミロンガよりもっと黒っぽい感じです。

(番外15)ブエノスアイレスで アルベルト・カスティージョ (Alberto Castillo - En Buenos Aires)

これもタンゴとは縁もゆかりもなく、スペイン語の歌詞さえなければ、ハリウッドのミュージカル映画の主題曲と考えてもおかしくありません。しかしそれなりに楽しい歌です。

(番外16) イ短調のメロディー アルフレド・マルクッチ&バルタサル・ベニテス (Alfredo Marcucci & Baltazar Benitez - Melodia En La Menor)

本編の中でも取り上げられていたグループですが、この曲がとりわけ良いです。ただしアルゼンチンタンゴの古典100曲といわれると、番外に来ざるを得ないでしょう。このCDの中ではほかにChiquilin De Bachin、Tristeza De Un Doble Aも良いです。

(番外17) ベチョのバイオリン (Alfredo Zitarrosa - El Violin De Becho)

どういうわけか、ラジオ・タンゴの担当者はシタローサが好きで、タンゴとは縁のないまったくのフォルクロリスタなのに20数曲を繰り返し放送しています。私もお付き合いして1曲だけ入れておきます。この曲はスーニー・パスがカバーした演奏のほうがずっと良いのですが。