ユーチューブで聞くタンゴ名曲百選
ブログに連載していたが、さすがに見にくい。ひとつのファイルにまとめることにしました。
最初に取り上げた曲を表示します。曲順がばらばらで見にくいのですが、ダウンロードしてからエクセル等に突っ込んでやれば、ソートできると思います。
と、思ったが、やはり曲名のアルファベット順で表示することにします。正確には100曲をすこし超えています。
黄金の心 |
Corazon de Oro |
F. Canaro |
7月9日 |
9
de Julio |
José Luis Padula |
大きな人形 |
A
La Gran Muneca |
J. Ventura |
淡き光に |
A
Media Luz |
E. Donato |
さらば友よ |
Adios
Muchachos |
J. C. Sanders |
アディオス・ノニーノ |
Adios
Nonino |
A. Piazzolla |
さらば草原よ |
Adios
Pampa Mia |
M. Mores |
バイア・ブランカ |
Bahia
Blanca |
Carlos Di Sarli |
タンゴの町 |
Barrio
de tango |
A. Troilo |
妖しいくちづけ |
Besos
Brujos |
A. Malerba |
ブエノスアイレス |
Buenos
Aires |
M. Joves |
タンゴの歴史 カフェ1930 |
Cafe
1930 |
A. Piazzolla |
天使たちのカフェ |
Cafe
De Los Angelitos |
Catulo Castillo |
カフェ・ドミンゲス |
Cafe
Dominguez |
A. D'Agostino |
ブエノスアイレスの安カフェ |
Cafetin
De Buenos Aires |
M. Mores |
古道具屋 |
Cambalache |
E.S.Dicepolo |
カミニート |
Caminito |
J. de D. Filliberto |
パリのカナロ |
Canaro
En Paris |
A. Scarpino |
歌いながら |
Cantando |
M. Simone |
小鈴を持つ娘 |
Cascabelito |
J. Bohr |
バンドネオンよ |
Che
Bandoneon! |
A. Troilo |
チケ (ごまかし) |
Chique |
R. L. Brignolo |
魂と命を込めて |
Con
Alma Y Vida |
C. DiSarli |
告白 |
Confesion |
E.S.Dicepolo |
ミロンガのすすり泣くとき |
Cuando
Llora La Milonga |
J. de D. Filliberto |
下り坂 |
Cuesta
Abajo |
C. Gardel |
踊り子 |
Danzarin |
J. Plaza |
心の底から |
Desde
El Alma |
R. Melo |
別れ |
El
Adios |
M. P. Huergo |
夜明け |
El
Amanecer |
R. Firpo |
エル・チョクロ |
El
Choclo |
A. Villoldo |
思いの届く日 |
El
Dia Que Me Quieras |
C. Gardel |
エントレリオスの人 |
El
Entrerriano |
A. Troilo |
台風 |
El
Huracan |
E. Donato |
インターン生 |
El
Internado |
F. Camaro |
エル・マルネ |
El
Marne |
E. Arolas |
動機 |
El
Motivo |
J. C. Cobian |
最後のコーヒー |
El
Ultimo Cafe |
H. Stamponi |
アコーデオンのお爺さん |
El
Viejito Del Acordeon |
C. Aiello |
古きワルツ |
El
viejo vals |
Charlo |
灰色の昼下がり |
En
esta tarde gris |
M. Mores |
今宵われ酔いしれて |
Esta
Noche Me Emborracho |
E.S.Dicepolo |
フェリシア |
Felicia |
E. Saborido |
リノ(亜麻)の花 |
Flor
de Lino |
H. Stamponi |
心の花 |
Flores
del Alma |
J. Larenza |
フーガとミステリオ |
Fuga
Y Misterio |
A. Piazzolla |
君を待つあいだ |
Fumando
Espero |
J. V. Masanas |
メクラの雄鶏 |
Gallo
Ciego |
O. Pugliese |
ホテル・ビクトリア |
Gran
Hotel Victoria |
C. Pesce |
独立 |
Independencia |
A. A. Bevilacqua |
霊感 |
Inspiracion |
P. Paulos |
ブエノスアイレスの冬 |
Invierno
porteno |
A. Piazzolla |
木曜日 |
Jueves |
Udelino Toranzo |
ラ・カチーラ |
La
Cachila |
Eduardo Arolas |
ラ・クンパルシータ |
La
Cumparsita |
G. H. M. Rodriguez |
ラ・モローチャ |
La
Morocha |
E. Saborido |
背番号5 |
La
Numero Cinco |
O. Cufaro |
ナイフで一突き |
La
Punalada |
P. Castellanos |
最後の杯 |
La
Ultima Copa |
F. Camaro |
最後の深酒 |
La
Ultima Curda |
A. Troilo |
ラ・ジュンバ |
La
Yumba |
O. Pugliese |
リベルタンゴ |
Libertango |
A. Piazzolla |
降る星のごとく |
Lluvia
De Estrellas |
Jose Libertella |
来るべきもの |
Lo
que vendra |
A. Piazzolla |
狂った女 |
Loca |
M. Joves |
酔っ払いたち |
Los
Mareados |
J. C. Cobian |
場末の月 |
Luna
De Arrabal |
J. C. Sanders |
母はただひとり |
Madre
hay una sola |
A. Bardi |
マレーナ |
Malena |
L. Damare |
イ短調のメロディ |
Melodia
En La Menor |
A. Piazzolla |
我がなつかしのブエノスアイレス |
Mi
Buenos Aires Querido |
C. Gardel |
我が悩み |
Mi
Dolor |
C. Marcucci |
我々が悲しみの夜 |
Mi
noche triste |
.S Castriota. |
我が愛へのミロンガ |
Milonga
de mis amores |
P. Laurenz |
郷愁 |
Nostalgias |
J. C. Cobian |
忘却 |
Oblivion |
A. Piazzolla |
黄昏のオルガニート |
Organito
De La Tarde |
C. Castillo |
もうひとつの月 |
Otra
Luna |
Narcotango |
白い小鳩 |
Palomita
blanca |
A. Aieta |
銀狐のコート |
Zorro
Gris |
|
私のパティオ |
Patio
Mio |
A. Troilo |
女旅芸人 |
Payadora |
J. Plaza |
首の差で |
Por
una cabeza |
C. Gardel |
花売り娘 |
Pregonera |
A. de Angelis |
プレパレンセ |
Preparense |
A. Piazzolla |
バンドネオンの嘆き |
Quejas
De Bandoneon |
Juan de Dios Filiberto |
レ・ファ・シ |
Re
Fa Si |
E. Delfino |
思い出 |
Recuerdo |
O.Pugliese |
鎮魂 |
Responso |
A. Troilo |
ロドリゲス・ペーニャ |
Rodriguez
Pena |
V. Greco |
君住む街角に |
Rondando
Tu Esquina |
Charlo |
ガウチョの嘆き |
Sentimiento
Gaucho |
F. Camaro |
お前の愛なしで |
Sin
Tu Amor |
L. A. Spinetta |
すごい幸運 |
Suerte
Loca |
A. Aieta |
南 |
Sur |
A. Troilo |
タンゲーラ |
Tanguera |
A. Piazzolla |
軍靴の響き |
Taquito
Militar |
M. Mores |
三つ角 |
Tres
Esquinas |
A. D'Agostino |
酒宴の一夜 |
Una
Noche De Garufa |
E. Arolas |
人は |
Uno |
M. Mores |
ブエノスアイレスの夏 |
Verano
porteno |
A. Piazzolla |
帰郷 |
Volver |
C. Gardel |
ジーラ、ジーラ |
Yira!
Yira! |
E.S.Dicepolo |
君が瞳に魅せられて |
Yo
No Se Que Me Han Hecho Tus Ojos |
F. Camaro |
私はパルケ・パトリシオ出身 |
Yo
Soy De Parque Patricios |
Víctor Felice |
私はマリア |
Yo
Soy Maria |
A. Piazzolla |
タンゴ名曲百選 その1
01 Corazon de Oro (黄金の心)
この曲はホームページではアダ・ファルコンの演奏を推しています。しかしYOUTUBEでは次のような演奏が聴けます。
Cecilia Rossetto - Corazón de oro
これは掘り出し物です。ただし音は最初のほうがつぶれています。コメントには以下のように紹介されています。今年60歳にしては色っぽい。ほかにもいくつか演奏がありますが、曲によっては少々鼻につくところもあります。
Cecilia Rossetto (16 de julio de 1950, Nueve de Julio, provincia de
Buenos Aires, Argentina) es una cantante, y actriz argentina de teatro,
cine y televisión
(02)ジーラ、ジーラ (Yira! Yira!)
これも私の推薦はアダ・ファルコンです。この演奏は山ほどあって、一番有名なのはガルデル、次いでゴジネチェといったところでしょうか。
Carlos Gardel - Yira Yira -Tango
これが極めつけの定番です。YOUTUBEには別に映画のサウンドトラックからの音源もありますが、音質は最低です。
Hugo del Carril - Yira Yira
ウーゴ・デ・カリルという歌手が良い。二種類アップされているが、こちらが文句なしに良い。
Rudy Alagna - Yira yira
シーラ、シーラとしか聞こえない。ルディ・アラーニャという名前は初耳だが元ヤサグレという感じがあって、雰囲気は出ている。
Típica Víctor - Alberto Gómez /Alberto Vila - Don Juan/Yira Yira
オルケスタ・ティピカ・ビクトルの音はどうしてこんなに鮮明なのだろう。1930年にこんなにきれいの音がとれて、どうしてダリエンソの音があんなに惨めなのだろう。
Orquesta Carlos VG Flores - Yira Yira - Tango
とは言え歌抜き演奏ではこれが群を抜いてすごい。こんな楽団があったんだと感心する。
Toquinho y Maria Creuza en Buenos Aires, 2010
ジーラジーラで検索していたら、この画像を掘り当てた。マリア・クレウーザが生きていて現役で歌ってるというだけでうれしくなってしまう。ブエノスアイレスでの公演の隠しどり動画で、音質も何もあったものではないが…
そ
もそもクレウーザはブエノスアイレスでの大ヒットがスタートだ。もう40年も前の話。この二人にビニシウス・ジ・モラエスが組んで、次々にヒットを飛ばし
た。でも最初はトッキーニョじゃなくてバーデン・パウエルだったかな。それでモラエスにかなわぬ恋をして、モラエスが死んでからはすっかり落ち目だと聞い
ていたが、なかなかどっこい、体はぶくぶくに太ったが、奇跡ののどは健在のようだ。
タンゴ名曲百選 その2
(03)三つ角(Tres Esquinas)
ホームページではアンヘル・ダゴスティーニョ楽団を推しています。
Tres esquinas (Tango)
ダゴスティーニョにはもうひとつあって、こちらはAlfredo Attadíaという人が歌っています。音盤のアップですから音は断然良いです。
Ariel Ardit - Tres esquinas (video oficial)
音質・画像ともに素晴らしい。正直、これを聞いて初めてこの曲が名曲だと分かりました。(04)踊り子(Danzarin)
ホームページではアニバル・トロイロ楽団を推しています。
Anibal Troilo "Danzarín"
歌はないけど咽ぶようなメロディーがタンゴの真髄を満喫させてくれます。アニバル・トロイロの分厚い弦の響きがこれほど生かされた演奏も、そうないでしょう。もう少し録音がよければと、残念に思いますが、トロイロの録音としては最上級の部類に入るものです。
これは実写版です。バイオリンだけで9人もいる超豪華な編成で、会場の興奮が伝わってきます。
みな遠慮しているのか、ほかに良い演奏がありません。これはピアノとギターの二重奏という超シンプルな演奏。
これはラジオタンゴ・ロサリオというところでアップロードしてくれた音源ですが、クレジット一切なしというもの。小規模演奏で内容はしっかりしています。…すみません。書いてありました。フリアン・プラサ楽団です。
タンゴ名曲百選 その3
(05)動機 (El Motivo)
この曲もHPではアニバル・トロイロを推しています。
という音源があって、バンドネオンのデュエット、1970年の録音だそうです。好事家にはたまらないでしょうが、私のごとき素人にはちょっと…
テレビからの録画で、「ゴジェネチェというのがこういう顔でこう歌っていたんだな」というのが分かります。
ゴジェネチェがorquesta de Raúl Garelloというバンドをバックにうたった録音。とりあえずYOUTUBE上の標準音源としておきます。このねっとり感はいささかもたれますが…
こんな音源があるとは知りませんでした。声は若々しいが荒削り、うまいとは言えない。
フィオレンティーノの歌にはインスピレーションがない。どうして有名なのか分からない。
レオポルド・フェデリコのバンドネオンにMario Abramovich、Nicolas Ledesmaというすごい顔ぶれのオルケスタ。歌手はお気に入りのスサナ・リナルディとくればさぞやと期待したが、見事にはずれ。トリオをバックの歌唱やエステバン・モルガド四重奏の伴奏もあるが、リズム感の欠如はいかんともしがたい。スサナは名を惜しむべきであった。(ちなみにスサナ・リナルディの最高の演奏はガルデルのカバーの「下り坂」)
以上の二つ、あえてお勧めはしない。好き嫌いはあるだろうが…
(06)アディオス・ノニーノ (Adios Nonino)
お勧めはピアソラの自演版。
これは74年のスタジオ録音。現在の演奏よりはだいぶシンプルでごつごつした感じ。
これが定番と呼ばれる9分にわたる演奏。Concert in Utrecht, Netherlands.1985.と書いてある。
実は私が好きなのはこちらの方。まずバンドネオンがはるかにうまい。ピアノが変にムード音楽っぽくない。というか、プグリエセっぽい。
クラシック畑の人がずいぶん手出しをしていて、もはやレパートリーの一つとさえなっているようだ。しかし私にはいまひとつピンと来ない。ピアソラはふつうのタンゴではないが、やはりタンゴなのであって、クラシックなのではない。
そこにはまなじりを決した「疾走感」が必要なのだ。
タンゴは港町の生まれ、貧民街の夜の喧騒から生まれた剣呑な音楽だ。その雰囲気がこの演奏には出ている。
この曲に必要なのはもうひとつ、パンパの草いきれだ。大都会のブエノスアイレスも、町を一歩出れば見渡す限りの大草原。その雰囲気がこの演奏には出ている。
ギター弾きにはリズム音痴が多くて好きになれないのだが、このトマティートの演奏は良い。トマティートはフラメンコ・ギターの名手で、本名をJosé Fernández Torres Tomatitoというらしい。
ほかにも良い演奏がたくさんある。
「1999年、フィンランドでタンゴを演奏するために創設された楽団。豊かなタンゴ文化を誇るアルゼンチンと、フィンランド国内のタンゴを融合させて、新しいタンゴを生み出そうと試みている」そうだ。
Esteban Morgado-Adiós nonino
最近売り出し中の4重奏団。モルガドのギターにバイオリン、バンドネオン、ベースの編成。小編成だけに曲により向き不向きがある。
リベルテラのバンドネオンとギターのデュオという簡素な組み合わせ。しかし色彩は豊かだ。
タンゴ名曲百選 その4
(07)大きな人形 (A La Gran Muneca)
ホームページではカルロス・ディサルリ楽団を推しています。以下はその説明。
ディ
サルリというのは「泣かせ」の芸を会得した手練れという感じです。弦を叩くようなスタッカートと、思いっきりレガートを利かせたポルタメントを交互に繰り
返し、たたみ掛けていきます。あざといといえばあざといのですが、それだけではない何かプラスアルファがあるのでしょう。
YOUTUBEでもディサルリ楽団の音源が手に入ります。
さすがダリエンソという感じ。しかし最初から勝負はあきらめた感じの演奏。
Orquesta JUAN D'ARIENZO . 78 Video CLUB - " A LA GRAN MUÑECA ...
と
思ったら、さにあらず。すごい演奏があった。テレビ放送のエアチェック。当然モノだが意外に音はよい。擬似ステ化しているのか? grabacion
del 17 de Diciembre de 1963 -とのコメントがある。全盛期は過ぎているのかもしれないが熱演だ。デ・アンヘリス楽団の演奏。これも音に厚みがあって、良い演奏だ。もうひとつこれは昔のラジオ番組のエアチェックらしい。これが意外に良い。ただしかなり音飛びしている。
この演奏は最近のもので、音は一番よい。弦を重視したコンチネンタル風に仕上げている。きれい過ぎるともいえる。しかし間違いなく一流だ。
あざとさが売りのエクトル・バレラ楽団の演奏。お勧めはしない。よくこんな音源を捜してきたね、というくらいひどい音だ。「耐えがたきを耐え…」レベルだ。
(08)バイア・ブランカ ( Bahia Blanca)
おそらく誰がタンゴの名曲を選んでも5本の指に入るディサルリの名曲です。
欲深ですが、この演奏のままで、もう少し良い録音で聴きたいものです。と書いたあと、これを見つけました。音源は同じはずですが、高音が補償され、ビビリが減少するなど音質が改善しています。ありがとうございます。
クレジットで見る限りはっきりしないのですが、ディサルリの新盤のようです。確かに音は良いのですが旧盤の下品なほどのすすり泣きはなくなっています。
それにしても、これほどの名曲、YOUTUBEでは誰もカバーしていない!
タンゴ名曲百選 その5
(09)夜明け(El Amanecer)
HPではディサルリを推した。
アマネセ-ルをどうしてロベルト・フィルポの自演盤にしないか、それはこのディサルリ盤を
聞いてもらえば分かってもらえるでしょう。まったく別の曲のようにも聞こえます。タンゴはこう
でなくっちゃというディサルリの強情さが伝わってきます。
と書いたが、YOUTUBEではディサルリ盤は聞けない。
これが針音もゆかしい、ロベルト・フィルポの正調盤。
セステート・ネオタンゴの颯爽とした演奏。おそらくもとの音質は素晴らしいのだろうが、Up時に音割れしてしまったのが残念。と思ったら、別の人が同じ音源をあげてくれていた。この曲の最上の演奏といえる。
大編成の豪華なサウンドだが、へたくそでいやみ。 Orquesta Típica "Nelson Alberti"a lo D'Arienzo.5 de Octubre de 2008 とのクレジットあり。
El Amanecer.wmv
プグリエセの演奏。初めて聞いた。基本的にはスカ。
Tango Grill Live - El Amanecer
Pablo Agri, violin; Nicolas Ledesma, pianoと書いてある。あのアグリの息子なのだろうか。乗りはよいとはいえない。
Florindo Sassone y su orquesta típica (El Amanecer)
テレビのエアチェック。バンドネオン3つに対しバイオリンが6丁もある。これがサッソーネ・サウンドなのだろう。
Vale Tango En El Palais Chaillot - (París) - El Amanecer
シャイヨー宮殿のライブ。ドラマチックな演奏で、迫力満点。ただし音質はいまいち。
Juan Sánchez Gorio - El Amanecer
いやみのない素直できれいな演奏。それ以上を求める人には不向き。
(10)君を待つあいだ (Fumando Espero)
この曲は実はスペイン生まれの歌なんだそうです。訳には入っていませんが、“Fumando”という言葉がだいじです。ただ待っているのではなく、タバコを吸いながら待っていることがこの情景には必須なのです。
HPではディサルリ楽団を選びました。デアンヘリスの演奏もなかなか良いのですが、はかなさの感じられるところが他にない魅力です。
あまり音質が良くなくて、この録音だったかな? と思ってしまいます。
CARLOS DANTE ''FUMANDO ESPERO''.wmv
これは次点にしたデ・アンヘリス楽団の演奏です。歌手がカルロス・ダンテという人のようです。これでも十分と思いますが。
エクトル・バレラの歌で、録音が新しい点では、こちらのほうが良いかもしれません。
ARGENTINO LEDEZMA - FUMANDO ESPERO
どんな人か分かりません。歌手の名前なのか楽団の名前なのかも分かりません。しかしなかなか良いです。
早目のテンポで颯爽と歌いきっています。
さすがにガルデルは品がありますが、そこまでドラマチックに歌う歌なのでしょうか。
ラマルケも歌っています。この人にしては珍しく素直に歌っていて、けっこう沁みてきます。
この人はアディオス・ムチャーチョスの人でしょう。
カナロはここでは女性を起用していますが、凡庸です。音もさすがに古過ぎます。
良い演奏ですが、歌なしです。やはりこの曲は歌が欲しい。
タンゴ名曲百選 その6
(11)黄昏のオルガニート (Organito De La Tarde)
HP: これもディサルリ楽団の十八番です。ディサルリでなければならないわけではないが、たしかにほかにこれといった演奏があるわけではありません。このマロ~ンとした雰囲気は(歌詞の中身は結構切羽詰っているが)、次の世代が受け継ぎにくいものなのでしょう。
他に対抗馬もなく、ガチガチの本命です。音もディサルリとしては最上の部類に入ります。
カナロとしてもかなり古い録音ですが、それだけにカナロのひなたい音楽が心を和ませます。
メロディーラインをいじることなく、見事にマンボの名演奏に仕立てています。むかしレクォーナ・キューバン・ボーイズがこの曲を編曲したときは相当いじられていました。
ガルデルの歌唱です。かなり古いものです。あえて聞くほどのものではありません。
名演奏といっていいのでしょうが、いまひとつ迫力がありません。
Mercedes Sosa - El día que me quieras
すみません。この曲は後で採りあげる予定ですが、上記の演奏があまりにすごかったので、予定外にあげておきます。(ただし音は最悪)
(12)カミニート (Caminito)
HPでは一応、ホルヘ・マシェルを推していますが、消去法です。民主党の党首選びと同じです。
ホルヘ・マシェルは声の良さからすればタンゴ界最高ですが、その下品さには「どうして?」と戸惑います。
普通に選ぶならこっちでしょうね。たぶんホルヘ・マシェルを選んだときは気が動転していたのでしょう。彼のカミニートはYOUTUBEにはアップされていないようです。
ミゲル・カロはいまどき一番の楽団だと思います。歌手はいまいちですが、この曲のトップといっても良さそうです。良い音で聞いてはいけないということもないでしょう。
混声合唱だが、残響が半端でない。どこかの教会で採ったのだろうか。複雑なことはせず、生地の良さで勝負している。
ついに見つけた、という感じ。HPで「むしろフォルクローレ畑の歌手のほうが雰囲気が出るかもしれません」と書いたが、なかなかそのような音源には出会えずに来た。
これがそれだ。
タンゴ名曲百選 その7
(13)下り坂 (Cuesta Abajo)
HP: 私の記憶では、「下り坂」はスサーナ・リナルディのほうが良いのですが、とりあえずそれがラジオタンゴでとった音源の中にはないので、ガルデルにしておきます。
YOUTUBEでも、やはりなかった。スサーナ・リナルディはすべてに贅肉がついて醜くなった。一番悪いのは前頭葉の贅肉だ。
こちらは映画からのアップ。画面にそこはかとなく色がついています。まさか1枚1枚色を塗ったわけではないのでしょうが、テクニカラーというんでしょうか。音も音盤と比べそん色ないものです。
こちらが音盤からのもの。
これは思わぬ拾い物。美声で声に色気があり、張上げず(多少は張上げていますが、まぁタンゴですから)、癖がなく、聞きやすい。聞いた範囲では最高だと思う。
テレビのチェックだが、最近のものでハイビジョン。音もハイファイだ。演奏はガルデル時代を踏襲してギター1本のシンプルなバックで、語りかけるように歌う。これは良い。表情がきめ細やかな分、流れにやや欠けるが、立派なもの。
カラーテレビの番組をビデオに落としたものだが、意外に音はよい。バックはピアノでもちろんモノ。ウーゴ・マルセルという人初耳だが、表情に過不足ない。
ちょっとオーバーだが、色気のある声だ。ギターがバック、音はよい。
Libertad Lamarque "Cuesta abajo"
こちらも映画から落としたもの。熱演ですが、もう少し淋しい歌なのでは?
「私にも歌えますよ」という程度。歌う必然性が感じられない。
ここまでやってきて思うのだが、良い女性歌手がいないですね。最近は…
(14)我がなつかしのブエノスアイレス (Mi Buenos Aires Querido)
HP: まさに名曲・名演。極めつけというのはこういうのを指して言うのでしょう。この歌を歌うのに、ガルデル以外の余人をもっては代えがたいという実感がつくづくします。「余人」が手を出さないという事情もたしかにありますが。
これが音盤からのアップです。映画からのものもありますが、リンクは省略します。
セステート・タンゴの演奏です。曲そのものを聴くにはこちらのほうが良いかもしれません。
これは掘り出し物の演奏です。歌なしですが、ホンワカとしていい雰囲気です。Omar Torres y su Gran Orquesta de Cuerdas.の1982年の録音ということですが、ずいぶん古臭い音です。
こちらはMIGUEL CALO楽団に、MARGA FONTANAという歌手。古い録音ですが、悪くありません。
新しい録音で、ということになると、このくらいしか見当たりません。SEXTETO TANGOの伴奏で RAUL FUNES という歌手が歌っています。可もなく不可もなし。
ルシア・ダゴスティーノという若手女性歌手が挑戦しています。結果は?
ゴジェネチェも当然カバーしていますが…
かえってシモーネのほうが良かったりして…
タンゴ名曲百選 その8
今回は二つともガルデルの十八番で、ほかに選択の余地はないから短く行きます
(15)我々が悲しみの夜 (Mi
noche triste)
ガルデルが世に出た出世作です。ガルデルは男っぽい歌い手ですが、それはマッチョとしての男らしさではなく、もっと素直に自然ににじみ出た人間臭さだと思います。だから女性が歌っても全然違和感がないし、外国人が歌っても素直に曲の良さがしみじみと伝わってくるのです。
初めて聞きましたが、旧盤です。すごい音です。
こちらが世間に流布する定番です。
フリオ・ソーサはポスト・ガルデル世代の代表の一人で。ほとんどの曲をカバーしています。決してたんなるコピーではなく、独自の世界を築き上げています。(エドムンド・リベロの歌もありましたが、ひどいのでリンクしません)
映画の演奏をアップロードしています。映像が見られることもさることながら、緊張感のある素晴らしい演奏です。トロイロ自身がバンドネオンの名手だということもわかるし、バンドマスターとしてはけっこう怖い人だということも感じられます。
こ
れはすごい演奏です。テレビの録画映像で、すでにカラーの時代です。年は50歳前後でしょうか、完全にはまっています。この人はおそらく人格乖離(ヒステ
リー)で歌うときにはヒョウエ(憑き物つき)しているようです。それが当たればすごいし、外れてもすごくなりそうです。
前項の記載がこの映像でも確認されます。音はひどいが迫力はあります。
まさかここにシタローサがあるとは思いませんでした。シタローサはウルグアイのフォルクローレ運動の旗頭で、軍事政権に国を追われ、メキシコで病死しました。この演奏けっこう味があります。
フィオレンティーノは好きではないが、ホセ・バッソ楽団に敬意をはらって記載。
そのほか、リストに載せるほどではないが、サビナ・オルモスという馬面の歌手がいて、この曲はひどいが、「三つの思い出」という曲はうまく歌っている。
(16)帰郷 (Volver)
もうひとつガルデルの歌です。短いけどとても印象的な曲です。ちょっとハリウッド的な匂いがしますが、考えてみると、この時期ハリウッドはとても良かったのです。1930年代の後半に「ハリウッド的だ」というのは、ある意味で最高のほめ言葉かもしれません。
これが標準の演奏です。
これが映画のほうのファイルです。
YOUTUBEで名演奏を探すのは大変です。聞き逃しはつきものです。この演奏も検索順位は100番以下でした。
現代的な演奏の代表です。これを聴くとあらためて、ガルデルを乗り越える難しさを感じずにはいられません。
なかには勇敢な人もいます。しかし…
これは「やったぜ」という感じ。見事にボレロに変身しました。冒涜ともいえますが。
これも見事にフラメンコに変身。
タンゴ名曲百選 その9
(17)我が悩み (Mi Dolor)
石川さんの解説に従い「我が悩み」としましたが、ドロールというのは医学用語では「痛み」を指します。名曲百選というと、「ちょっと待って」という感じもしますが、演奏が名演ぞろいで評価を押し上げています。
この曲のスタンダードとなっている演奏です。Orlando Verri という歌手が歌っています。
しかしこちらのほうが断然素敵です。やや速めのテンポでダリエンソ節炸裂です。
歌で採るならこちらです。港にかかる夜霧に街灯がかすむようにアンヘル・バルガスがさえています。
http://www.youtube.com/watch?v=GkvC0A63x10
アルフレド・デ・アンヘリスの演奏で、流れるような旋律が特徴です。歌抜きです。
Jorge Maciel con el Sexteto Mayor の演奏で、音質は最高ですが、ちょっと癖のある演奏です。
(18)我が愛へのミロンガ (Milonga
de mis amores)
HPではコロールタンゴを一推ししています。
まさしくコロールタンゴの快演です。録音もすばらしい。今までは、あまり面白い曲だとは思いませんでしたが、コロール・タンゴの演奏で一気に評価が上がりました。
これはダンスのほうでもステップの複雑さでかなり受ける曲らしく、動画は踊りばかりです。この絵もそういうひとつですが、たんなる踊りの伴奏の域を超えてうまい。
これが作曲者ペドロ・ラウレンスのオリジナル演奏。これも悪くはないが、やはりなんとなく物足りない感じはします。次々と素晴らしいカバーが出てくると影が薄い。もうちょっとあくが強く下品な感じがよいと思うのですが。
グラン・オルケスタではこの曲の魅力は出ないのかな。さすがのダリエンソもてこずっている感じです。
歌もあるんですね。初めて知りました。しかし歌はないほうが良い。我が愛へのミロンガ (Milonga De Mis Amores)
もうやめようと思った300番目にこんな演奏が出てくる。アラバルというのは場末のことですが、まさにそういう感じの後ろ乗り。
カナロの演奏。ミュートをつけたトランペット、クラリネットにアコーディオンまで登場する。しかしやはり語尾をはっきりさせるカナロ節で気持ちよい。
なんと古楽器による演奏。これがメリハリが利いて迫力ある。
Pablo Delvalle Milonga de mis amores
ギター伴奏つきのバンドネオン・ソロ。うまい。
Cuarteto NUEVO ENCUENTRO -- Milonga de mis Amores
小味な演奏だが悪くない。
Leo Sujatovich Trio の演奏。スハトビッチは現代版サルガンだろう。こういう曲ならそれなりに乗れる。
おなじみゴタン・プロジェクトの演奏。さすがに少々鼻につく。
なかなかいい演奏だと思うが、残念なことに誰の演奏なのかわからない。
すみません。全然関係ない曲なのですが、忘れると困るので、とりあえずここにおいておきます。
も
のすごい量の動画があり、探すだけで1時間かかりましたが、結局コロール・タンゴの演奏は見つかりませんでした。しかたなしにコロール・タンゴで検索をか
けたら、またいやなものを見てしまいました。金でバンドを買ってカラオケ代わりに唸って、それをYOUTUBEに載せる北島三郎風の日本人歌手、こちらは
男性です。
もう今日は止めて寝よう。
タンゴ名曲百選 その10
(19)思い出 (Recuerdo)
この曲は、演奏によって好きか嫌いかがかなりはっきり分かれる曲です。オラシオ・サルガン楽団で聞いたとき、あまりの素晴らしさに「えっ」とびっくりしたことを覚えています。
HPではオラシオ・サルガンがラジオタンゴになかったこともあってコロール・タンゴの演奏を選びました。
これはライブ版です。正直言って、音盤でコロール・タンゴを聴いたときの印象とはだいぶ違います。もちろんこれはこれで素晴らしいのですが。
苦労してこの演奏を突き止めました。素晴らしい演奏で、これで決まりといってよいでしょう。
Recuerdo - Tango
本家プグリエセの演奏で歌手はホルヘ・マシェルです。1968年の録音と記されています。これだけ音が良いとこちらを本命盤にしたくなります。
普通プグリエセのレクエルドというとこの録音が頭に浮かびます。この音だとやはり推薦しかねます。
Sexteto Mayor - Recuerdo
どういわけかレクエルドで検索して200番目を超えてからこの演奏が出てきます。演奏、音質ともに立派なものです。
編曲が異なるとまったく別の曲のように聞こえます。しかし男声のデュオはそれなりに心地よいものです。
フリオ・で・カロも録音しているんだ、という程度のものです。
同じ題名でまったく別の曲ですが、実にしみじみと来る素晴らしい曲です。イスマエル・セラーノという人、要注意です。
これも同じ題名の異曲です。タマラ・カストロという歌手、初めて聞きましたが、なかなかのものです。
Te Recuerdo Amanda
レクエルドで検索しているとこんな曲まで引っかかってきます。チリのビクトル・ハラの名曲です。
(20)フェリシア (Felicia)
フェリシアというのはカッタルイ曲だと思っていましたが、Cuidadanos Del Tango
の演奏で聞くともっと軽やかで生き生きとしています。どちらが良いかと一概には言えませんが、演奏次第でさまざまな顔を見せてくれる可能性があるという意味では、ニュアンスに富んだ曲といえるでしょう。
と書きましたが、Cuidadanos Del Tango
の演奏はYOUTUBEでは聴けません。ishizakiyoshifumi さんという方がうpしてくれた音源で、なんと「ピリンチョ五重奏団、フアン・ダリエンソ楽団、キンテート・レアルの3楽団の演奏を収録」というお徳版。
ピアノにバンドネオン2丁というまさにミニマルな編成だが、意外に面白い。
デ・アンヘリスの演奏はとてもフェリシアには聞こえない。
カラベリの演奏。かったるい演奏の代表である。
というわけで、いまは百選からはずしたいくらいの思いです。いつかは良い演奏が出てくれることを期待します。
タンゴ名曲百選 その11
そろそろ皆さん、「しつこい」とか「もううんざり」とか言われるかもしれません。堪忍してください。未だ1/5です。
(21)台風 (El
Huracan)
HP: エドガルト・ドナートは何回かこの曲を録音しているようですが、中でも一番わざとらしい演奏です。擬音から歌まで入っています。この曲にはそのほうがあっているようです。
というわけで、これがその音源です。
YOUTUBEには踊りの映像がたくさんありますが、意外と使われているのがこちらの音源。それほど良いとは思わないが、リズムの刻みがはっきりしていて踊るには良いのかもしれない。
これも悪くない。奇をてらわず、曲本来の良さを引き出している。…とも言えるかな。
そもそも、選んだ自分で言うのもなんだが、こんな曲、ベスト100に入るのかいな。
(22)リベルタンゴ (Libertango)
テレビ・コマーシャルではヨーヨー・マの演奏が流れ、人気を博しました。この曲の良さは「疾走感」につきます。多くの演奏がピアノのリズム、弦のメロディーと仕事分けするのに対し、フォアレバー・タンゴは逆を行って「疾走感」を表すのに成功しました。
しかしYOUTUBEにはこの演奏はない。(ひとつだけダンスの伴奏に使われていた)
セステート・マヨールのライブ録音はいくつかあるが、衰えを感じるのみである。
ピアソラ自身の演奏である。Álbum: Libertango (1974)とある。たぶんいくつも音源があると思うが、これはあまりさえない部類。こちらが初演時のヴァージョンで、こちらのほうが良い。
Astor Piazzolla - Libertango
なんだかんだといいつつ、ヨーヨーマの演奏はすごい。彼だけでなくほかのメンバーもいい音を出しているから、ハーモニーが分厚くて迫力がある。「葉加瀬太郎氏と小松亮太氏による共演」という演奏もアップロードされているが、小松はさすがと思うが、葉加瀬はもう少しタンゴの語法を勉強するべきだ。これではジプシーバイオリンだ。
と書いたらその下に小松のバンドによる演奏があって、こちらのバイオリン(女性)はめっぽううまい。この曲は名演奏が多いが、その中でも屈指の演奏だと思う。
これは良い。オルケスタという割りにバンドネオン、エレキギター、ピアノ、ウッドベースという地味な編成だが迫力はある。狭いスタジオでの録音で、ガラスの向こうの調整室では何と技師がタバコを吸っている。ふざけた野郎だが、録音の腕はさすが一流だ。
いまやタンゴ・バイオリンの第一人者スアレス・パスがオルケスタを編成したライブ録音。少々ゲテモノだが、歌まで飛び出すサプライズ。見ていた人には楽しかっただろう。
以下は番外という感じ
"Libertango", Las Rositas
きれいな姉ちゃん方のビジュアル系演奏と思ったら、なんのなんの。しっかり、ねっとり、タンゴの乗りだ。
なんか分からないが、めちゃくちゃ楽しい映像だ。
Bond というニューヨークのバンドだそうだが、なかなかいけてる。 Bond have continued to perfect their fusion of pop, worldbeat, and classical instrumentation と紹介されている。
スィングル・シンガーズが未だ健在とは知らなかった。相変わらずの腕前だが、アレンジはピントが狂っている。
タンゴ名曲百選 その12
(23)軍靴の響き (Taquito Militar)
HP: 最悪の録音で、音はひしゃげて高音部はまったく聞こえません。それでも打楽器のリズムには度肝を抜かれます。ペレス・プラードがこのように
コンガを叩いても、別になんとも思いませんが、タンゴのレコードからこのような音が飛び出してくることにはびっくりするしかありません。
これはフランチーニ・ポンティエルリ楽団の演奏を指しています。要するに推薦に値するほどの音源がなかったということです。
これが大変な名演です。ルジェロ兄弟というのでしょうか、初耳ですが、とにかくピアノがうまい、バイオリンも良い、とにかく素晴らしい。ブラーヴォ!です。ポルテーニョはこの曲が大好き、ということが良く分かります。これがマリアーノ・モレスのオリジナル盤です。正直、どうっていうことはない演奏です。モレスは演奏者というより作曲家なのでしょう。
後は番外シリーズ
映画の一場面ですが、大変素晴らしいものです。音質がどうこう、演奏がどうこうというものではなく、ただ映像として素晴らしい。マリアノ・モレス楽団はよほどの役者ぞろいです。
これは番外。アンコールピースだったのか、短くて曲の形になっていない。しかしオラシオ・サルガンというのが、ジャズの語法をとり入れた感性の高いピアノ弾きだということが分かる。
こ
れも摩訶不思議な映像。太目のおばさんがいかにも素人っぽく体をくねらしながら歌う。しかも盗み撮りでカメラが揺れる。見ているほうが恥ずかしくなるぐら
い下品だが、歌は半端でなくうまい。Victoriangeles canta y baila "Taquito militar" en el
Teatro Lope de Vega de Pilar, Prov. de
Buenos Aires とクレジットがあるがそれ以上は不明。謎のおばさんである。
こ
れも謎の演奏。乗りが何なのか、居心地が悪いが乗りはよい。裏打ちなのか表打ちなのか、ボサノバにもサルサにも聞こえるが、何かといわれるとミロンガだ。
映像はセクシーだ。このコンビの演奏は他にもあるが、ほぼ同じ趣向。なかでもはPor Una
Cabeza(首の差)というガルデルの曲が良い。(後で出てきます)
クラシック畑のピアニストがコンサートをやって、おそらくはアンコールでこの曲を弾いているようだ。講釈が長い。チョッとルバートをかけるだけで、ミロンガがアバネーラに早代わり、アルベニスの一曲を聞いたような気分。
(24)さらば草原よ (Adios Pampa Mia)
HPより: 大草原を渡るそよ風を感じさせる、なんとも気分の良い曲です。
カナロは,「オルケスタ(オーケストラ)」という10人程度の楽団によって演奏させることで,タンゴの楽曲としての
厚みを増すことに成功した。これをよりシンフォニックかつ大編成にしたものは,後に「コンチネンタル・タンゴ」として分かれていくことになるが,あくまで
もカナロの音楽は,歯切れの良い鋭さを失わなかった(石川さんの解説より)。
これがその演奏です。歌はアルベルト・アレナス。45年の録音といいますが、すばらしい音です。この頃は日本の数歩先を行っています。
同じカナロですが、こちらはネリ・オマールが歌っています。録音はちょっと古いかもしれませんが、演奏は甲乙つけがたいものがあります。
Libertad Lamarque "Adiós pampa mía"
これは名唱です。その声の伸びはパンパをわたる風のようです。映画のサウンドトラックからのものですが、音質も良好です。
年取ってからの歌もウpされていますが、「風とともに去りぬ」です。同じような映像で、アルベルト・カスティージョのものもありますが、絶対に見ないように。耳が腐ります。
ADIOS PAMPA MIA VIRGINIA LUQUE
歌のタンゴですから、いろんな歌手が取り上げています。中では音が良い分、この演奏でしょうか。しかし少々味付け過剰でもたれます。日本人向けではないでしょう
YOUTUBEの怖いのは、上から300番目くらいの順番でとんでもない演奏が出てくることです。これもそのひとつ。GRACIELA REYという歌手がピアノの伴奏で歌っていますが、美声です。最後にチョッと乱れますが、ライブ録音のようです。
Carlos Di Sarli & Mercedes Simone INÉDITO Adiós Pampa Mía
これも顔ぶれからいえば外せません。ただメルセデス・シモーネの声は朗々とした歌唱には向いていないようです。
この曲はヨーロッパ系の楽団がずいぶん取り上げています。アルフレッド・ハウゼ、スタンリー・ブラック、マランドなどいずれも水準以上のものですが、違う曲のようです。
タンゴ名曲百選 その13
(25)バンドネオンの嘆き (Quejas De Bandoneon)
アルゼンチン・タンゴ屈指の名曲です。これもカナロが一番とはいえない曲ですが、トロイロ楽団風の演奏に飽きたということですか。あぁ、元はこういう曲だったのか、と納得する演奏です。
YOUTUBEにはトロイロの演奏が2バージョンありますが、音質は似たり寄ったりで、ひどいものです。カナロの演奏はありません。
と、書いたら、カナロがありました。
Quejas de bandoneon - Forever Tango - Yanina y Eric 2009
フォーレバー・タンゴの良い演奏がありました。
これも良い演奏ですが、コンサートの非公式録画のようで、残念ながら音質はかなり悪いです。
これも掘り出し物のひとつ。「バンドネオンの嘆き」をテーマにジャムセッションを展開している風ですが、大筋は踏み外しません。アコースティック・ギターがロス・プリモス張りの演歌を織り込むのが新鮮です。
これも掘り出し物。sexteto juan carlos sabatino の演奏で、バイオリンが弱いですが、全体としては十分水準を行っています。
フリオ・デ・カロの演奏もありました。エル・アマネセルを聞いているような雰囲気です。
全編見事にディサルリ節。こうまでして聞きたくはない。
ORQUESTA de A. Piazzolla 1946/48 Quejas de Bandoneón
こういう演奏もあるよ、ということであげただけ。オルケスタ時代のピアソラは面白くもなんともない演奏で、採りあげる価値なし。
(26) ガウチョの嘆き (Sentimiento Gaucho)
いろいろな楽団が演奏していますが、遅めのテンポでリズムをしっかり踏んでいくカナロの演奏が一番納得させられます。録音もSPとしては良好で、バイオリンの「さび」が効いています。
これがその演奏ですが、ウP主は手持ちのLPをそのまま再生していて、ディスクの状態がかなり悪い。ほかに誰かウPしてくれていないか探してみます。
この演奏を聴いたら、カナロなどどうでもよくなりました。オスバルド・ラモスの美声も冴えています。ただ冒頭のピアノの乱れはどうしてそのままなのか?
これを聞いたら、上記の感想はそのまま取り下げです。カナロがステレオで聴けるというだけでも夢のようなのに、61年の録音というのに音質がすごい。あの当時の日本の録音技術は決してほめられたものではないはず。奇跡としか言いようがない。 ishizakiyoshifumi
のお宝音源でしょうか。感謝
SENTIMIENTO GAUCHO
ガルデルの初期の録音のようです。抑えた表現が哀切を浮かび上がらせる名演です。
こちらが新しいほうの録音です。歌い方の基本は同じですが、音質の違いなのか、前者のほうがしっとりした感じです。
あまり聞いたことのない歌手だが、過不足なく歌い上げていて、安心して聞ける。
LIBERTAD LAMARQUE "SENTIMIENTO GAUCHO"
うまいが品がない、美空ひばりと同じです。曲によっては名唱となるが、これはどちらかと言えばスカ。
ステレオ録音だが、エコーかかりすぎ。ALBERO BIANCO という歌手が自分のオルケスタ・ティピカを編成して、それをバックにして歌っている。悪くはないが、多少うっとうしい。
sentimiento gaucho
Orquesta
Típica Rodolfo Biagi
の1942年の録音とあります。歌なしで、編曲勝負。かなりの説得力ですが、ご本家を上回っているとまでは言いがたい。ほかにフロリンド・サッソーネの演
奏もあったが、これはひどい。エクトル・バレーラの演奏も「これがステレオだ!」みたいな音でいかにもだ。
Sentimiento gaucho VIRGINIA LUQUE
こういうのを名唱というのでしょうか、どうも私にはやりすぎのようにしか思えませんが。
たまたまぶつかったページで、「ガウチョの嘆き」とはまったく関係のない動画だが、「えぇどぉー!」
フフイのフィエスタで地元の人がハンカチを振りながら踊る。タンゴではなくクエンカだ。私たちには耐えられない単調なリフレインが果てしなく続くが、人々は飽きない。その表情には喜びというよりは「苦痛」とも呼ぶべき無表情が見てとれる。
体を動かすことから来る愉悦感ではなく、それは、ゴルゴダの丘にむけ十字架を負い歩むキリストに倣ぶ法悦感にも思える。
バンドネオンとギター二丁、ボンボを叩く若者の取り澄ました表情が「超カワイー」のだ。
それが神聖な任務でもあるかのように、音楽も踊りも完全に無視して、マテ茶を沸かしている女の子も、後姿だけだが、かわいい。
それが年頃になるとぶくぶくとしてくる。せめて結婚するまではスマートでいろよな!と思うが、どうもデブは、牝牛が発情して肥えるのと同様、女性が適齢期に達した証のようだ。
タンゴ名曲百選 その14
(27)ブエノスアイレスの冬 (Invierno porteno)
HP:
ピアソラにはクラシックの演奏家が多くチャレンジしていますが、その中ではクレーメルが出色です。これはクラシックのアンコール曲といわれてもまったく分
かりません。ビバルディ「四季・冬」の一節が織り交ぜられるのは、好みが分かれるでしょう。少し音量を上げて聞いたほうが良いです。
とにかくピアソラはやたらに多いのです。世界中でせっせと演奏してはうpしまくっています。
ピアソラの自演だけでもいくつかのバージョンがあるようですが、これが一番聴きやすいです。少し編成が大きいようです。
こ
れはライブ録音でLP盤を再生したファイルです。ジーグラーのピアノに、スアレス・パスのバイオリンですから、比較的最近のものでしょう。演奏は最高、プ
チ・ノイズはあるものの音質も最高です。(オリジナルのCD版は意外に冴えません。演奏を重ねるうちにだんだんこなれていったのでしょう)
Gidon Kremer - Piazzolla Seasons (Winter)
これがクレーメルの演奏です。ほかに日本でのコンサートをビデオでエアチェックしたものもありますが、音質の劣化がかなり激しい。
掘り出し物。横綱審議会ではないが技量・品格ともに素晴らしい。音質も最高だ。
これも名演奏。ピアソラの角を取って、とげを抜いて、丸くして、徹底的にカンタービレ。イタリア名画のテーマ曲のように聞こえる。しかしピアソラが聞いたら、これは俺の曲ではないというかもしれない。
これも絶品。トレントというおそらくは田舎町の室内コンサート。ギターがめちゃうまい。第一バイオリンのパートに美人がいて、バンドネオンのあんちゃんが流し目を送ったりするシーンが良い。せっかくの名演奏なのに女の子は父さんの肩に寄りかかって爆睡。
Invierno Porteno
こ
れも掘り出し物。Trio Siciliano al Teatro Coccia Novara
と書いてある。ブエノスアイレスという町はシシリアの先にあるのだなと実感させる。たしかにセステート・マヨールの演奏はまるで曲にあっていない(音があ
まりにひどいのでリンクはせず)。
これも掘り出し物。ただしピアノ独奏で独自の編曲、だいぶ短縮されている。英語の解説がついていて、アルゼンチンの田舎で活動するピアニストらしい。いい雰囲気だ。
これも良い。フルートがバイオリンのパートを吹いているのだが、徹底的に低音勝負で、尺八を聴いている気分だ。
若手の腕っこきを集めたのだろうが、スアレスがわがままに弾いてアンザンブルを台無しにしている。
(28)パリのカナロ ( Canaro En Paris)
HP: 名曲・名演・名録音の極致です。わたしはこの曲がアルゼンチンタンゴのベストワンだと思っていますが、それだけに良い演奏もたくさんあって選択に迷います。その中で Gran Quinteto
Real の演奏がベストだと思っています。SP盤もなかなか風情はあるのでしょうが、こういう録音を聞いてしまうと…
その演奏がアップされているが、音がひどすぎる。もうひとつの音源もあるが、こちらはピアノが完全にいかれている。
とりあえずお勧めとしてはこんなところか、オルケスタ・ミロンガの演奏。胸のすく怪演とは行かないが…
JUAN D ARIENZO CANARO EN PARIS TANGOS EN BS AS
ダリエンソの演奏。標準的なものですが… なお日本でのコンサートのビデオがアップされているが、残念ながら音はお勧めできない。。
と、いささか萎えた気分で聴いてきたら、これにあたりました。4分41秒の熱演。これはとりあえず一番のお勧めです。
といっているうちに本命盤が出てきた。これで決まり。それにしてもYOUTUBEはデフォルトの「関連度」で検索しているとダメだということが分かってきた。
Grupo El Caburé という若手グループのデモテープみたいなものだが、なかなかうまい。
これは番外。見て楽しむタンゴ。
ギターのデュオでかなり曲がカットされているが、颯爽とした演奏。
それにしても、キンテート・レアルは抜群です。そのうちホームページのほうにアップしますので乞うご期待。
タンゴ名曲百選 その15
(29)ラ・モローチャ (La
Morocha)
HP: 歌入りの演奏もあって、捨てがたいのですが、エクトル・バレーラのバランスのとれた品の良い演奏が光ります。モローチャは褐色の肌の女性のことで、ムラータという表現と近いのかもしれません。
エクトル・バレーラの演奏はなさそうです。代わりにこんな音源がありました。日本でのコンサートの録画のようです。この曲は歌なしのほうが良さそうな気がします。
映画の音しかありませんが、一応これが定番です。
Tango Uruguayan "La Morocha" - Francisco Canaro
カナロ楽団をバックにアダ・ファルコンが歌っています。SP盤をそのまま再生した音源です。
ビルヒニア・ルケ若かりし頃の映画のシーンです。むかしは美人で、歌にもそれほど癖がなかったようです。彼女はこの歌を十八番にしているようで、ほかにもいくつか音源がありますが、いずれも腐臭が漂い聞くに耐えません。なれ鮨がお好きな人にはお勧めです。
これは案外雰囲気が出ていて良いです。中間のミロンガ調のところがいまひとつ乗りが悪いのが惜しまれます。
Carlos Di Sarli-La Morocha
良くも悪しくもディサルリのラ・モローチャです。
ロリータ・トレスの歌もアップされていますが、それくらいならこちらのほうがまだ綺麗で良い。
番外ですが、変な一人踊りの伴奏にレコードをかけているのですが、この演奏が良い。誰の演奏でしょうか? ダリエンソっぽいのですが…
番外の番外。これは肩の力が抜けて、惚れ惚れするほどうまい(トランペット以外)。ギターの沢田駿吾は、30年前六本木のジャズ酒場で聴いて、あまりのうまさに感動して、楽屋までサインをもらいに行った記憶があります。
(30)淡き光に (A Media Luz)
HP: ちょっとタンゴをかじった人なら、ラ・クンパルシータよりこちらのほうが人気が高いでしょう。「こりえんてー、れくぁとろおーちょ」と聞く
と、それだけでゾクッとくるほどです。ホセ・バッソが一番とは思えませんが、とりあえずラジオ・タンゴの録音ではこれくらいしかないので。
このリベルタ・ラマルケは絶品です。地でやってるみたいな雰囲気を漂わせています。
不思議な演奏です。クレジットにはガルデルの歌と書いてあって、たしかにガルデルっぽいのですが、ステレオです。おそらく合成したものと思われます。ラテンアメリカではよくある手法です。
160番目に登場するファイルですが、演奏、音質ともにトップレベルです。歌詞が出てくるので、カラオケ代わりにもなります。
この音源はなんと240番目に出てきました。歌なしですが、よい演奏です。
なんでこれが280番目なんだ? ええかげんにせぇ!
Héctor Varela - Lesica - Ledesma - A Media luz
エクトル・バレラ楽団の演奏で歌手はロドルフォ・レシカ。地味だが飽きの来ない標準的な演奏。
ラシアッティ楽団の演奏で歌がニニャ・ミランダ。恐ろしく速いテンポだが、さすがに歌い切っている。
これもクラシック音楽を聞く気分の演奏。しかしもうちょっと艶があってもよいのではと思う。
相当物好きの類になるが、この歌手はうまい。さすがにこの録音はひどいが、フマンド・エスペロは聞く価値がある。トド・タンゴによれば、1893年ハバナの生まれでマドリドの音楽院を卒業した後ニューヨークで活躍。フレセド楽団をバックにタンゴも歌った。
「Chanté
par César Alberu Orchestre Argentin Bianco-Bachicha
品川さんのレコード棚より」 というクレジットがついています。そうとう崩した歌い方ですが、崩し方がポルテーニョっぽい。品川さん、ビクトローラで再生
しているところがにくい。音質もよくおすすめです。
A MEDIA LUZ
Anna Maria Castelli という歌手が歌っています、シャンソンの語法です。ルイス・バカロフというピアノ弾きの爺さんが良い。
これは同名異曲です。しかしものすごくイイ! リズム的には昔で言うファンキーになるのでしょうか。しかし演奏はクールです。
タンゴ名曲百選 その16
(31)エル・チョクロ (El Choclo)
HP: もちろんラ・クンパルシータと並ぶ超有名曲で、演奏もピンからキリまでごまんとあります。私はソブラール(Jorge Sobral)という人の歌を初めて聞いたのですが、余りにもうまいので、ついほかの定番演奏を全部捨ててこちらにしてしまいました。
Jorge Sobralで検索をかけたら、それはない。その代わり下り坂(Cuesta Abajo)が大変良い。曲名検索でどうしてこの演奏が引っかからなかったのでしょう?
TITA MERELLO - EL CHOCLO
おなじ顔ぶれで、テレビ番組の録画音源のようです。あばずれ女の雰囲気が出ています。
EL CHOCLO
これはピアノ独奏で、MITI DEL TANGOというグループのピアニストが演奏している。クラシック風で気持ちのよい演奏だ。
Carlos Di Sarli - El Choclo
ディサルリも悪くありません。しかしどうしてみんなバイア・ブランカに聞こえてしまうのでしょうか。
Angel Vargas - Angel D'agostino - El Choclo
チョッと冴えない演奏です。アンヘル・バルガスはちょっと都会的な歌のほうが良いみたいです。自分の楽団をバックにした演奏もありますが、こちらはスカ。
EL CHOCLO - VIRGINIA LUQUE
クサい曲ならあうかと思ったが、だめでした。スサナ・リナルディもこの歌にはあいません。
El Choclo
エルチョクロをテーマにしたデスカルガといったところですが、なかなか面白い。ただし音は貧しい。ほかにエル・アランケの演奏もあって期待してみたのですが、会場での盗み撮りで音質は評価以前のものです。
素晴らしい歌手を見つけました。Graciela Figari という名です。今や日本でも珍しいほどの反っ歯。エルチョクロも良いが、音は最悪。名前で検索してひとつだけまともな音源を見つけました。Una làgrima - Graciela Figari ぜひ聞いてやってください。
(32)ナイフで一突き (La Punalada)
HP:
もっとも危険な題名のミロンガ。トロイロ楽団のオリジナルだが、どういうわけかダリエンソの十八番。この演奏はホセシート・パセという名前がクレジット
されている。ピアノ・バイオリン・バンドネオンの三重奏。ピアノがなかなか良い音を出している。ステレオ初期の録音か、意外に音が悪い。リマスターして欲
しい演奏。
セステート・マヨール会心の演奏ではないか。オーソドックスではないが、重くならず、臭くならず、この曲の良さを見事に引き出している。
これも甲乙つけがたい。
Bandoneon Tango "La puñalada" version Uruguaya
ヨウツベではお馴染みのorquesta Matos Rodriguezの演奏。さほど迫力があるわけではないが安心して聞ける。音も良い。
ダリエンソ楽団の演奏。この曲の演奏のスタンダードといえる。
これはダリエンソを聞くというよりはEMGグラモフォンを聞く音源。高音の伸びには舌を巻く。アナログ録音は無限の可能性を秘めているということがわかる。
こいつはすごい。Gustavo Beytelmann : Piano César Angeleri : Guitarra Studio de l´Ermitage, Paris 2010 という説明が着いている。ジャズのインプロヴィゼーションだ。
La Trampera ( Anibal Troilo) - La Puñalada
Tangos Montevideoというトリオの演奏。音は良いがそれなりの演奏。バンドネオンとギターにウッドベースの組み合わせではこんなものでしょう。
ギタートリオの演奏。それなりに面白い。
タンゴ名曲百選 その17
(33)狂った女 (Loca)
HP: ダリエンソはよほど録音に恵まれませんでした。ステレオ初期の録音ですら、間
の抜けた干からびた音しかとれていません。ところがどういうわけか、この録音だけがダイナミックレンジもしっかりとれたハイファイ録音です。モノーラルで
すが、ダリエンソただひとつのお勧め曲です
"Loca" par "Ojos de Tango de Analía Goldberg
ダリエンソの音源もあるのだが、音がひどく悪い。これは若手グループのライブ録音。さほどのものではないが、ほかにめぼしいものもないので。
ドン・パンチョはカナロの編成した五重奏団。ピリンチョの前の名前のようだ。この演奏とガルデルの歌がセットで聞けるファイルだ。どちらも悪くはないが、ちょっと物足りない。。
Bandoneon Tango "Loca" Libertad Lamarque
ラマルケのロカならそのまんまだろうと思ったが、意外と上品で迫力に乏しい。
Bandoneon Tango Loca - Juancito Diaz piano.avi
番外という扱いになるが、映画の一こまで、いかにもという雰囲気は出ている。
これはまったく別の曲。歌がうまいから載せておくだけ。どうでも良いが、この人、ルックスはいただけない。
(34)人は (Uno)
HP: 良い曲で好きな曲でもありますが、大声張り上げて朗々とやられると、結構うっとうしい曲でもあります。マリア・グラーナも声は張り上げていますが、あと一歩で下品になる寸前のところで立ち止まっています。伴奏もなかなか良いです。
一
瞬ファドを聞いている気分です。まったく異端の演奏ですが、あまりにも素晴らしいのでトップにあげます。写真を見ると盲目の歌手のようですが、一つ一つの
音をいとおしみながら紡ぎ出しています。それにギターがすごい。絶頂期のバーデン・パウエルの泣き節です。así como la guitarra
de Raúl Rodriguez どこかにsu hijoと書いてあった気がしましたが、いまは見当たりません。
一応これが定番でしょう。バックもトロイロ楽団です。なお同じトロイロ楽団でゴジェネチェの音源もありますが、相当うっとうしいです。
Tangos Argentinos Famosos : "UNO" canta JULIO SOSA
こちらのほうが上品ですが、好みの分かれるところでしょう。
女声の定番ならこちら。実にうまい。品も良い。しかしこの演奏が240番目に出てくるとは、いったいどうなっているのでしょう。
UNO-CALLEJERA -TANGO-ABEL CORDOBA-OSVALDO PUGLIESE
これはアベル・コルドバというよりプグリエセの名演を聞く演奏でしょう。なんとステレオです。
Sara Montiel - Mi último tango - Uno
映画の一こまで短いショットですが、“タンタ・トライシオン”あたりいい雰囲気です。この歌手良いですね。ふと「黄色いリボン」のモーリン・オハラを思い出します。
なんともシンプルな歌いっぷりだが、それなりの味はある。
チェロ(ミゲル・アンヘル・ナバロ)とピアノのデュオ。シンプルだがなかなか良い。この曲は意外とシンプルに行くのがよいのかもしれない。
タンゴ名曲百選 その18
(35)タンゲーラ (Tanguera)
HP: 日本語題の「タンゴの好きなお嬢さん」は間違いで、「タンゴ的なもの」という抽象名詞なんだそうです。そのように石川さんがモレスの意向を伝えています。コンチネンタル・タンゴのような曲です。作曲者による演奏ですが、もっと良い演奏・録音があるかもしれません。
TANGUERA-Sexteto Mayor
なんだかんだと言いつつも、やはりセステート・マヨールはタンゴのひとつの規範です。本物の音を聞かせてくれます。
これが作者自身の演奏です。57年の録音というとこんなものでしょうか。リマスターすればもう少し良くなるかもしれません。
若手の演奏だ。ものすごい迫力だが抵抗感も強い。とにかく録音は抜群だ。標準的な演奏ですが、うp主のかなり使い込んだLP盤を再生した音源なのかノイズは相当気になりますムード音楽風に聞くなら、こちらのほうが音が良いだけましでしょう。バンドネオンがないのが寂しい感じですが。
フォーレバータンゴの演奏は少し期待はずれでした。
Apología Tanguera - Edmundo Rivero
タンゲーラとはまったく関係ない曲だが、たまたまひっかかって、すごくいい。タンゴではなくミロンガ風のフォルクローレという感じ。昔の録音だが音質は信じられないほど良い。
(36)ブエノスアイレスの喫茶店 (Cafetin De Buenos Aires)
カフェティンというと小さな喫茶店だが、歌詞を見ると、どうも喫茶店というよりは酒場です。そこが青春のたまり場で、昔の仲間の名前が思い出されて… これは男にしか歌えない歌のようです。
これが歌の演奏としては定番。ただしこの曲はみんな歌っている。
ゴジェネチェも良い。ただしもうひとつの音源は音割れがひどい。
お気に入りのサリータ・モンティエルも不発だ。どうも女性に向いてない曲のようだ。ネリ・オマールの歌は盛りを過ぎている。スサナ・リナルディの音源は二種類あるが、いずれも臭い。ビルヒニア・ルケは論外、ということで女声はみんなペケ。
これが思わぬ拾いもの。フォルクローレのようだ。シタローサに似ている。
コロール・タンゴの演奏にアベル・コルドバの歌ということだが、期待はずれ。音も割れている。いっそ歌などないほうが良かった。
タンゴ名曲百選 その19
(37)ラ・クンパルシータ (La Cumparsita)
HP: ラジオ・タンゴにはこの曲だけで40種類ほどの演奏があります。しかし同工異曲の感を免れません。この曲は率直に言ってそれほどの曲ではないのではと思えます。何かひとつ足りない、そこをミゲル・モンテーロは懸命に模索しています。そこに共感しました。
…と書きましたが、ミゲル・モンテロは歌手で、楽団のリーダーではありません。クンパルシータをどこの楽団と歌ったのかは不明です。ずいぶん人気があったようで、プグリエセ、ホセ・バッソなど一流どころを網羅しています。
これは素晴らしいクンパルシータです。モンテビデオでのライブの録音でやや音質は悪いのですが演奏には熱気があります。こんな立派な演奏でいいのかなと、恐れ入ってしまいます。
これも良い演奏です。遅いテンポで一つ一つの音に陰影をつけながらロマンチックなクンパルシータに仕上げています。どうもこの曲、ウルグアイ人には特別な思いがあるようです。
これも演奏、音質とも良い。タンゴ舞踊団のツァーに随行した5重奏団です。臨時編成のようでグループ名はないようですが、かなりの腕っこきです。チューリッヒでのスタジオライブで、ライセンスをとったきちっとした映像です。
それにしても、前でうろちょろする連中、うざったいですね。
普通は日本人の演奏というとそれだけで敬遠するのですが、どうもこの人のコンフントはケタが違うようで、間違いなく世界一流です。バイオリンの出来にはムラがあるようですが。
これがクンパルシータの定番でしょう。歌つきもありますが、この曲には歌はいらないような気がします。
ホセ・バッソの上品でちょっとセンチメンタルな演奏。ダリエンソよりお勧め。なおこのファイルにはトロイロのケハス・デ・バンドネオンがカプリングされており、非常に高音質。この曲のトップに薦めたい。
歌入り演奏としては定番です。
ダ
ゴスティーニョ楽団の演奏、アンヘル・バルガスの歌ということで、ごく普通なのだが、うp主のコメント(英語)が面白い。We should be
just and fair
という書き出しで、実はこれがウルグアイ・タンゴなのだということを力説している。そしてここで歌っているのが最初のクンパルシータにつけられた歌詞なの
だと説明し、これはウルグアイ・タンゴのハイムンなのだと結んで居る。
何とすべて語り、一節も歌わないという“演奏”。さすがにうっとうしい。
これもフリオ・ソーサと五十歩百歩。プグリエセの演奏は良いのだが。
大楽団による演奏ですが、どことなく緊張が感じられません。現役引退組の同窓会のようです。
オ
ラシオ・サルガンのお宝映像。相当大がかりなオルケスタだが、サルガンは楽団員には目もくれずひたすらピアノに没頭している。しかもモダンジャズでも演奏
しているようにリズムは崩すはアドリブは入れるはで大変。団員はしらけて見るからにおざなりの演奏。かわいそうなのがダンサーで、まったくのれないままに
「あんたがた何してるの」といわんばかりの視線を浴びてカーテンの奥にひっこむというしだい。
これではいかに才能あるピアニストといっても持ちませんね。
ベ
チョというバイオリン弾きが実在していたとは知らなかった。これはベチョの演奏したクンパルシータ。腕のほうは、まぁこんなものでしょう。Carlos
Julio Eizmendi, conocido como "Becho", eximio violinista uruguayo
で、 Alfredo Zitarrosa の canción "El violín de Becho" のモデルだ。
El violín de Becho は Mercedes Sosa - El violín de becho でお聞きください。
(38)郷愁 (Nostalgias)
HP:
もう10年も前にキューバのエレーナ・ブルケという歌手が来ました。出不精の私が滝川まで車を飛ばし「追っかけ」をやりました。その数年前、ハバナで
買ったCDで、「ノスタルヒア」を聞いたのが忘れられなかったのです。これがフィーリンでなくタンゴだと知ったときは驚きました。
これがそのエレーナ・ブルケの歌。
聞き終わって、思わず拍手してしまいました。たぶん会場の雰囲気が良かったんでしょうね。ノスタルヒアスは郷愁と訳すのはピンと来ません。メランコリアというか、Blue_s に近いと思います。ビケリアはそういう感じで歌っています。
女声ではこれも良い。というよりこちらが楷書の正統派だろう。マリア・グラーニャは期待はずれ。
激しく胃もたれのする歌唱。たしかに歌詞からするとこれもありだが、浪華ド演歌の世界だ。
演奏も良いし音も良い。この歌で大事なのは、タンゴはみなそうなのかもしれないが、凛とした雰囲気だ。
…といったら、凛としたところなどひとつもない、小粋なだけがとりえの演奏で、これがまた、案外良い。前言は撤回せねばなるまい。まぁいろいろあらぁな。
ピアノ独奏でいい感じだが、演奏者の名がない。前後の関係から言うとリチャード・クレイダーマンかも知れない。
これもお宝映像だろう。グラシエラ・スサーナが姉のクリスティーナとデュエットしている。グラシエラがギターを弾きながらメロディーラインを、クリスティーナがなんと三度下で合わしている。ただし録音はひどい。
タンゴ名曲百選 その20
(39)チケ (Chique)
実
はここまで、ホームページのタンゴ百選に載せながらジャンプした曲がいくつかある。つまりはyoutubeにまともな音源がないからだ。チケも跳ばそうと
思ったが辛うじてこの音源が聞ける。プグリエセの音源は音が聞くに堪えないのと、85年のライブということで、衰えがひどいので、とても採用できない。
ちなみにチケはフランス語のシック(上品)のスペイン語読み。“お高くとまったやつ”みたいにも使われるよう。
(40)別れ (El Adios)
Ivana Fortunati という女性歌手、情感をこめて、しかし過剰にならず歌いこんでいる。絵は見ないほうが良い。
くどいのは嫌いだが、このくらいは味付けしないとタンゴ・カンシオンにはならない。
きわめておとなしい演奏で、味も素っ気もない。ドナートには新録音もあって、そちらはもっと情感があるはずだが、どうしてこれをアップしたのかわからない。ほかにイグナシオ・コルシーニの歌もあるが、どうしてレコーディングしたのかわからない。
ダゴスティーニョ=バルガスのおしゃれな演奏。しかしあまり迫力はない。
これはカナロの演奏。
それにしても、チケといい、エル・アディオスといい、youtubeではプグリエセは不遇だ。ピアソラばかりがなぜもてる。
タンゴ名曲集 その21
(41)メクラの雄鶏 (Gallo Ciego)
HP: 石川さんの曲目紹介から引用すると、「昔の子供の遊びの名前らしい。なんでも生きた鶏を首だけ出して地面に埋め、目隠しをしてそれを棒で叩くスイカ割りのようなものだという」というコワい遊びです。
さすがフォアレバータンゴ、youtubeでは最良の演奏と思います。
ところがご本尊のコロ-ルタンゴまでお出ましです。
実はこの演奏に意外に感動したのです。真昼間、野外、観衆は数千というタンゴに最も似つかわしくない環境で、バイオリン・バンドネオンなど十数人の演奏です。にもかかわらず演奏は、間違いなくタンゴしています。
好きな演奏ではないが、変に納得させられる。アコースティックギター2本に電気ギターのバス。なのにシルベイラのバンドネオンが他を圧倒する音量で、いかにも作り物の印象。名のに変に納得させられる。そういう迫力のある演奏。
(47)ラ・カチーラ (La Cachila)
石川さんによると「題意は不明だが女性のあだ名だとされている」そうです。
ディサルリの演奏。これがカチーラなんです。最近の演奏は、聞いていてこれって何の曲? と思ってしまいます。セステートがキンテートになりカルテートになりトリオになりデュオになりと減らして行くたびに指の間から抜けていくものがあるっていうことに気づいてくださいよ。
12 Tangos - La Cachila performed by Libertella, Borda, Giunta, Schissi
ホセ・リベルテーラらのキンテートによる演奏です。たしかに名演なのでしょうが、正直あまり面白くありません。
これも水準の高い演奏です。しかしクラシック音楽みたいで、ディサルリの「泣き」が入りません。
これはフランスのグル-プでしょうか。上と同じ感想です。
絵は素人のタンゴで、クレジットには誰の演奏かも示されませんが、良い演奏です。プグリエセでしょうか。かなり盛大な針音です。
タンゴ名曲百選 その22
(43)ラ・ジュンバ (La Yumba)
石川さんによると、ラ・ジュンバとは「タンゴのリズムの擬声語」のことだそうです。これだけバイオリンを打楽器扱いされると、バイオリニストは腹が立ってくるのではないでしょうか。レコードで聞くのと実際に生で聞く印象は相当違うかも知れません。
Osvaldo Pugliese - La Yumba
120番目でようやく見つけました。プグリエセのLP版の音源です。他のプグリエセはひどい録音か、“らくだのかんかんのう”で聞くに堪えません。コロール・タンゴの盗み撮りもありますが、手抜き演奏です。パリでのライブ演奏です。大規模な編成ですが、プグリエセ張りのスタッカートが効いています。
これはしっとりとした演奏で意外と掘り出し物です。Denis Plante plays Pugliese's Yumba with a string quartet というクレジットが入っています。
これも掘り出し物、といっては天下のバッファに対して失礼か。古きよき時代のタンゴのにおいがする。プグリエセやピアソラなんてタンゴじゃないよ、とつぶやいているのが聞こえるようだ。
バンドネオン、バイオリン、コントラバスにギター二挺という変わった編成のグループだ。ピアノは無しで、ちょっと古風な響きがする。腕は一流だ。コントラバス叩きの名人技もしっかりとやっている。
(44)エントレリオスの人 (El Entrerriano)
HP: エントレリアーノといえばアニバル・トロイロが定番だが、ピリンチョの演奏は、さまざまな旋律をくっきりと浮かび上がらせ、この曲の隠れた良さを引き出していると思います。トロイロの演奏ももう少し録音が良いと対旋律や低音部の流れが分かるのでしょうが。
これがカナロのキンテート・ピリンチョによる演奏。トロイロ楽団の演奏はアップロードされていない。
カルロス・ブオノの演奏だが、えらく端折った演奏だ。
悪くはないが、なにせ1927年の録音で標準的音源とはいえない。
タンゴ名曲百選 その23
(45)酒宴の一夜 (Una
Noche De Garufa)
HPでは「知らない曲だったのですが、録音が余りにも良いのでつい聞いてしまいます」と書いています。これはキンテート・ピリンチョの演奏のことです。こちらはサッソーネ楽団の演奏。親父ギャクではないが颯爽としています。
una noche de garufa-carlos di sarli
録音が悪いせいもあって、ちょっと冴えませんね。
youtubeにはこれしかありません。ピリンチョもありません。さびしい限りです。
(46)ミロンガのすすり泣くとき (Cuando Llora La Milonga)
HP: この演奏(ロドルフォ・ビアジ楽団)は、まさに掘り出し物です。「すすり泣き」といっても日本人の泣き方とはぜんぜん違います。この演奏に
ついては、石川さんの紹介にも載っていないし、「めったに歌われないが歌詞もある」というその歌がついているのも価値があります。
ビアジ楽団の演奏はありませんが、代わりにこれがよい演奏です。楽団名は良くわかりません。
サッソーネ楽団の演奏で、無難な演奏で音もそれなりに良くて、一応お勧め版です。
CUANDO LLORA LA MILONGA
と言いつつ、ガルデルも歌っています。
Bandoneon Tango "Cuando LLora la Milonga" Hugo del Carril
くせがあってあまり好きになれない演奏です。
古い録音で、あえて取り上げるほどの演奏ではなさそうです。
タンゴ名曲百選 その24
次の「その24」は消えてしまったようです。別のファイルと衝き合わせると以下の二つです。
(47)降る星のごとく (Lluvia
De Estrellas)
アルフレッド・ハウゼの演奏かと聞きまごう曲です。ただしセステート・マヨールの演奏は比較的アルゼンチンタンゴのニュアンスを織り込もうとしているようです。
(48)来るべきもの (Lo que
vendra)
セステート・マヨールのライブ録音です。その割には気迫とかひらめきがあまり伝わって来ません。アルゼンチン・タンゴの伝統を守るという方向でしょうが、最近のピアソラ・ブームでずいぶんいろいろな演奏スタイルが出てきているので、やや古臭い感じを受けてしまいます。
タンゴ名曲百選 その25
(49)白い小鳩 (Palomita
blanca)
HP: 出だしはなんということのないポルカ調のバンドネオン演奏ですが、中間部から突如として乗りの良いワルツに代わっていって、最後には結構盛り上がるという演奏です。
"Palomita blanca" Alberto Marino y Floreal Ruìz (imàgenes)
トロイロ楽団の演奏で、男性歌手二人の重唱です。とりあえず定番です。HPのお勧めのセステート・マヨールはありません。
イグナシオ・コルシーニの歌はたいてい駄作ですが、時々特大のホームランをかっ飛ばします。これがそのひとつです。
とても定番とはいえませんが、サルガンはいつもスリリングです。
いつもはギター独奏というとそれだけでパスするのですが、これは良いです。リズムの崩れがない。音がしっかり出ている。ファンホ・ドミンゲスだけがギターではないということがわかります。
ガルデルの歌です。それなりの水準でしょうが、セステート・マヨールの演奏を聞いた後ではつまらない曲に聞こえてしまいます。
なにやら良くわからない演奏ですが、不思議に説得力があります。Maria Estela Monti という歌手のようです。
同名異曲です。フアン・ルイス・ゲーラがバチャータのリズムに乗せて歌います。雰囲気は出ていますが、名曲かと言われると…
(50)ブエノスアイレスの夏 (Verano porteno)
ついに半分まで来ました。
「夏」はさまざまな演奏が流布し、あたかもピアソラの代表曲かのように取り上げられています。セステート・マヨールは、最近の流行からするとやや遅めのテンポで、じっくりと内声部も聞かせています。派手ではありませんが、飽きの来ない演奏といえるでしょう。
これはクラシック風ですがすごい迫力です。音が厚いし録音もそれを捕まえています。
これもすごい演奏です。ラウル・フアレーナというバンドネオン奏者を中心とするカルテートですが、9分30秒という長さを感じさせません。バンドネオンからこれだけ表現力を引き出した演奏はそうはないでしょう。音も盗み撮りライブにしては上等です。
72年、ピアソラのイタリアでのライブ録音版です。ライブと言っても隠し撮りではなくしっかりとした音源です。しかしながら、まだ磨かれた演奏とはいえません。
これはすごい演奏です。Grabado en vivo el 11 de junio de 1983. とありますから、軍政末期のライブ録音です。まるで弾圧犠牲者への鎮魂歌のようです。
東京でのライブです。どうもタンゴバンドは日本にくると俄然張り切るようです。スアレス・パスのバイオリンにパブロ・シーグレルのピアノですから、組み合わせも最高です。
いっちゃぁ悪いんでしょうけど、これでバンドネオンがピアソラでなければもっと良かったな。
Baires Quinteto というグループの演奏ですが、これがうまい。すでにピアソラを古典として受け入れた世代の演奏でしょう。
これも名演でしょうね。しかしやはりピアニストの衣装にどうしても目が行ってしまいます。
これは明らかにやりすぎです。とくにバイオリンの姉さん、はしゃぎすぎ。これはロックの世界です。
御大プグリエセがどうこの曲を料理するか見ものでしたが、案の定もてあましているようです。
タンゴ名曲百選 その26
(51)古道具屋 (Cambalache)
HP: 石川さんから引用します。「この世の中は豚小屋さ。20世紀は悪がのさばる時代。誰も彼もが泥棒なのさ」という出だしで、怪しげな骨董品を
売りつけようとする古道具屋のせりふが続きます。フリオ・ソーサの演奏もありますが、私としてはスサーナ・リナルディが好みです。
「ここまでやるか?」とまでに、どぎつく歌っている。これはこれでよい、“エル・ロコ”の大仰さとは違う。胃もたれはしない。
この曲を“歌”として歌っているという点で好感が持てる。伴奏も熱演である。ただあまりにも熱演である。
el cambalache
こちらがフリオ・ソーサの歌。絵はガルデルだが歌っているのはフリオ・ソーサ。フリオ・ソーサにはもうひとつ音源があるが、映画からの採録で音は悪い。
「なつかしのメロディ」から選ぶなら、フリオ・ソーサよりはこっちのほうが良いかもしれない。
アドリアナ・バレラという歌手は知らないが、間違いなく男だと思う。これは一級の演奏だろう。
Jorge Saldañaという歌手が歌っているらしい。一種アナーキーな陽気さがとりえである。
フアン・マヌエル・セラートも歌っている。正統とはいえないが、説得力はある。当然ながら音は一番良い。この曲には「20世紀」という副題があるが、そちらに重きを置いて、文明論的に語るとこういう演奏になる。
盗み撮りライブだが、音さえ気にしなければ最高の演奏だ。
ロック版のカンバラーチェだが、意外と良い。この曲は本来はロックなのかもしれない。ただ、どうせロックならもう少しハードにやってほしい。
ピアソラは自作自演以外はペケである。これはゴジェネチェとの共演だが、それは同じだ。
Domingo Cambalache
関係ない曲だが、度肝を抜かれるサウンドだ。このバンド(Emir Kusturica & The No Smoking Orchestra)は絶対ヒットすると思う。
(52)思いの届く日 (El
Dia Que Me Quieras)
HP: タニア(リベルター)で何が悪いか、ということです、ハイ。でも、仕方ないことですが、タニアを初めて聞いた20年前と比べれば、高い声は
出なくなって、透明感はなくなって、歌に贅肉がついて来た感じは否めません。この歌にはもう少し寂しさと懐かしさが必要ですかねぇ。
これで決して悪いというわけではありません。むしろこれで決まりといってもいいくらいです。なにせ本家です。
ミーハー的に言わせてもらえば、あのロベカルがこの歌を歌ってるなんて、という感じ。恥ずかしながらロベカル・フアンなんです。これは絶品です。どうも彼にとってもこれは“持ち歌”のようです。
歌抜き演奏もある。これは弦の美しさで際立っている。スタンポーネは「まだ生きてたの?」という感じ。
Luis Miguel - El Dia Que Me Quieras
とにかくうまい。説得力もある。「この歌はこんな歌なのだ」と思わせてしまう。この人はメキシコのボレロうたいの中でも出色だと思う。
うっとりするような美声だ。伴奏はジャズのトリオ。バルセロナでのライブ録音というが相当近接マイクで鼻息まで聞こえるのがときにわずらわしい。しかし秀逸な一品だ。サリタ・モンティエルの下品の一歩手前というか、半歩手前の間合いが良い。この曲のベストとはとてもいえないが…
El día que me quieras - Andrés Calamaro
決して美声でもないし、相当崩した歌い方だが、変に味があって捨てがたい。伴奏が秀逸だし録音も素晴らしい。一度聞く価値はある。何度も聞きたいとは思わないが…
この手の音源は掃いて捨てるほどある。みんなこの歌を歌いたくてたまらないようだ。
プ
ラシド・ドミンゴの歌にバレンボイムがピアノ伴奏となれば、相当胃もたれしそうな予感がしたが、案の定だった。昔のテレビのエアチェックで画質・音質とも
にお勧めできるものではない。バレンボイムはこの曲が好きなようでベルリンフィルの野外コンサートでもピアノ・コンチェルトスタイルで演奏している。
フラメンコ好きにはコタえられないだろうが…
タンゴ名曲百選 その27
(53)さらば友よ (Adios Muchachos)
文字通り絶唱。大地の歌(ワルター=VPO)のユリウス・パツァークと同じ。この明るさと寂しさの同居というのは天賦の才能と一種の出会いだろう。出て来た頃のミルトン・ナシメントもそうだ。
まずは定番、ガルデルのアディオス・ムチャーチョス。
カナロ楽団のSP盤。このころの常として歌手の名前はクレジットされない。調べればわかるのだろうが…
これは掘り出し物。音もいいので聞き流しには最適。
コンチネンタルは普通は捨てるのだが、これはコンチネンタルというよりはドイツ、ドイツというよりはナチの来る前のベルリンのにおいがする。
原曲以上におなじみなのがこの演奏。最初はこの曲はボレロだと思っていた。ライバルのロス・トレス・アセスも歌っているが、こちらはスカ。
これがオリジナル。ただしその半年後にコルシーニが歌い、1年後にはガルデルが歌った。これでは到底かなわない。
リベルタ・ラマルケはこの曲に対して確固としたポジションがあるようだ。youtubeだけで三種類の音源がある。中では一番新しい(一番年取ってから)の演奏が説得力がある。
す
みません。さらば友よとは関係のないつけたしです。実は石川さんの百選のうち半分くらいは落としてしまったのです。理由は面白くないからです。主だったと
ころでいうと、インスピラシオン、レスポンソ、恋人もなく…などです。ただし、レスポンソはひとつ良い音がありました。Performed by
Pangea String Quartet at University of Alaska Fairbanks New
Music Festival. Noh, Holmes-Hicks, violins; Kuefler, viola; Chung,
cello.
となっていますからほとんどアマチュアのお姉さん方でしょう。しかし良いのです。パフォーマーには申し訳ないけどアレンジが良いのでしょう。(…と思った
ら、他の曲もいいですね。このSQ、第一バイオリンが図抜けてよい。Noh
さんというようです。東洋系の顔ですが、最近はみな化粧がうまくなったから、日本人か韓国か中国かは顔見てもわからない)
ここからは、石川さんの百選とは別に私が選んだ曲です。石川さんはそのころの人ですからオルケスタ・ティピカが基本だと考えていたのでしょうが、私の好みとしては相対的に歌のタンゴが多いので覚悟してください。
(54) 素敵なくちづけ (Besos Brujos)
HP: この楽団には珍しく、女性歌手の登場です。シックな演奏です。デアンヘリスのディスクでは他にCalvario、Campanita、Cuando
Te Fuiste、Del Pasado、En Tus Brazos、Esta Noche、La Piel de Buenos Aires、Made
In、Mi Carinitoなども捨てがたいのですが、全部入れると百には収まりきれないので、いずれデアンヘリス30選とか組みたいです。
アルフレド・デ・アンヘリス楽団の演奏がしゃれていて良かったのですが。うpされていません。この楽団はほとんどyoutubeにはないようです。ラマルケの歌はこの曲にはあっていないと思いますが、他にないので…ありました! Ricardo Tanturi y su orquesta tipica, cancionista Elsa Rivas という演奏で、これがこの曲のオリジナルのようです。おっとりと上品で、こういうタンゴもあるのです。
この曲からタンゴっぽさを引いて蒸留した感じの演奏。悪くはありませんが…
これはサルサ・バージョン。いいですねこの軽めの乗り。キューバのホテルのプールサイドで、夕暮れのそよ風を受けながら、ロンのロックにミントを浮かべて… 「おいおい! しぶきがかかるじゃないか」、なんちゃってね あぁ行きてぇ!そんでもって、9時近くなるとプールサイドのステージにライトがついて、ガサゴソとやっていたかと思うと、突然すさまじい音で楽団の演奏が始まるから、うるさくってね。
10時くらいになるとトリの歌手がお出ましという寸法。何せ日本人は酒に弱いから、夕方からカクテル飲んでいると、もう辛いのだけど、「どうせ眠れるわけないのだから」と、外に出る。
見事なソン・モントゥーノだ。12時まで踊らされて、部屋に戻った記憶もないが、連中はこれから地下のKARAOKEに行ってまだ踊るようだ。
同じくサルサといっても、パナマの連中のやるのは半端じゃない。こいつらのリズムはラテンのバンドでもてこずる。ましてジャズメンにはてんで歯が立たない。これに勝てるのはハイチのBoukan Ginenくらいかな。彼らが生きているとしての話だけど。
"BESOS BRUJOS" - LUCIANO PEREYRA - MONTAJE: SOFIA SCHMID
エントレリオスあたりの、湿気をふくんだフォルクローレです。同名異曲だと思いますが… どことなく似ていなくもない… やはり同じ曲だ!
そういえばこのロックも…
そういえばこのランチェーロも…
タンゴ名曲百選 その28
(55)南 (Sur)
HP: この曲に関しては、伴奏が良いだけガルデルよりリベロのほうが良いと思います。もう少し伸びやかに歌ってくれればと思うのですが。
と書いてありますが、この曲ができたのは48年、すでにガルデルは生きていません。何を勘違いしたのか。
というわけで、この音源が標準版です。クレジットにはないが、オルケスタも上等です。リベロよりこちらのほうが良いです。
Valeria Lynch, Sur - Grandes Valores del Tango 1989 -初めて画像を見たのですが、若いんですね。ど派手な衣装ですが、歌はまともで、リズム感のよいのが好感が持てます。テレビのエアチェックで音程が少しずれますが、きちんと準備して吹き込んだら、もっと良いでしょう。
作曲者トロイロの自演版で、歌手はゴジェネチェ。ゴジェネチェが好きかどうかで決まるでしょう。
これで御三家そろい踏みです。リベロはテレビ出演時のエアチェックもうpされていますが、声の衰えがひどい。
英語で歌詞が出てくるのがありがたい。演奏は「老醜」というほかない。
(56)リノの花 (Flor
de Lino)
エクトル・スタンポーニのピアノ独奏です。シンプルなワルツですが美しいです。タンゴというより上流階級のサロンの音楽のように聞こえます。当然ブエノスアイレスにもそういうサロンはあったのでしょう。
これがスタンポーネの演奏。しかしこの音源だったかな? 彼の作曲だから他にもバージョンがあると思うが…
と思ったら、やっぱりありました。こちらが独奏です。しかしもう少しうまい人が弾いてくれないかな。
とおもったら、パブロ・ジーグラーの演奏があった。しかしこれはジャズっぽいムード音楽仕立てで、ワルツの香りは消し去られている。これはこれでいいのだろうが…
トロイロの演奏だが、音はかなり貧弱だ。
これも音は古いが、雰囲気は出ている。タンゴの楽団がワルツを演奏するのは結構難しいのだろうか。
こんなにドラマチックに歌わないでほしい。Esteban Morgadoのギターはさすがだ。
いろいろな人が歌っているが、どれも物足りない。これは素人の歌なのだろうか、意外にこれが一番良いみたいだ。
前にもあげたグラシェラ・フィガーリで、とても良い演奏だが、音がひどすぎる。この人日本で呼んでくれないだろうか。
タンゴ名曲百選 その29
(57)インターン生 (El Internado)
HP: インテルナードといえばふつうはカナロ楽団ですが、この名も知らぬ楽団(Juan Polito And His Orchestra)が結構インテルナードしているのがすごいです。さすがに黄金期のタンゴ楽団は層が厚いですね。
まさかヨウツベにはないだろうと思ったら、ちゃんとありました。やはり向こうでも良いものは良いのですね。
こちらはエルネスト・フランコ楽団の演奏で、音は申し分のないハイファイです。
しかし、ヨウツベではインテルナードはこれだけです。
(58)歌いながら (Cantando)
石川さんの百選にはどういうわけかメルセデス・シモーネが出てきません。ガルデルほどではないけど、やはり男がガルデルなら女はメルセデス・シモーネと来ないと面白くありません。ただしメルセデス・シモーネの中からこれぞ名曲と選ぶとなると、それはそれで大変です。
これが正規盤。まあ、これしかないでしょう。作詞作曲ともシモーネですから。
音質は、映画からのもので非常に悪い。From the film "Tango" (first sound movie produced in Argentina) とあります。
意外にこれがいいんですね。映画の音でこもっているけれど、聞くのに不自由はありません。後半の男性との二重唱はなかなか味があります。
以下は、話題提供という程度。
カラベリ楽団の演奏で、後半にワンコーラスだけシモーネが男性歌手と歌っています。
これはかなり後年の録音のようで、音だけは良いのだが、ひどく崩した歌になっている。バックは自分のオルケスタとなっているから、すっかり天狗になってしまったようだ。百年の恋が一度に醒めた気分になる。
タンゴ名曲百選 その30
(59)もうひとつの月 (Otra Luna)
HP: あなたが誰かさんの膝枕で月を眺めていて、そのそばでバンドネオンやバイオリンが何か奏でていたとしたらどんな気分でしょうか。それはどん
な音で聞こえるでしょうか。そんな夢をナルコタンゴはかなえてくれます。耳元気分はもうナルコ…「おいおい、そこまでしてくれなくてもいいよ」と、ぞくぞ
くするほど最高です。
と、書いたのですが、これはずいぶんと最近の曲で、ナルコタンゴというグループがこれで大当たりしてラテン・グラミー賞をとったという話のようです。
したがって、というか、カバーはありません。youtube にはたくさんの音源がうpされていますが、すべてナルコタンゴの演奏です。
これがオリジナルで、後はライブ演奏のエアチェック音源です。何回も演奏しているうちにだんだんカドがとれ、端正さが失われ、タンゴというよりムード音楽になっていきます。
タンゴの醍醐味というのは、女性のお化粧と似たところがあります。つまらない曲をみんなが寄ってたかってアレンジして、そうやって名曲に仕上げていくところにあります。つまり「化ける」んですね。
だから名曲の名曲たるゆえんは、素の美人ではなく化粧栄えのする顔なんです。ピアソラがその典型です。80年以前のピアソラを聴いたら、そのつまらなさに閉口するでしょう。
そして名アレンジャーが美しさを引き出して、それを腕っこきのプレーヤーが鳴かせるわけです。それで準備万端整ったところで、「さぁどうですか」とお披露目するのです。(関係ないけど、日本で最高のアレンジャーは荒谷俊治だと思います)
タンゴに「知的所有権」とか「著作権」は禁句です。
(60)心の底から (Desde
El Alma)
HP: 針の音までふくめて、これぞタンゴです(といってもワルツだが)。颯爽とした気分とちょっとしたセンチメンタリズム。欲をいえばきりがないけど、何十回聞いても、この乗りはサルサでもカリプソでも味わえません。
とにかく、なんと言ったって、これしかない。これ以外はいらない。特筆したいのはカナロの水際立った演奏だ。結局誰もカナロを超えていないのではないかと思わせる。
なおネリ・オマールの晩年のライブ音源があるが、聞かない方が良い。エビータのかつての盟友としていろいろ浮き沈みも会ったようで、同情はするが、歌はペケ。
カナロの歌なし演奏。これも雰囲気が出ていて良い。たぶんカナロはこの曲が好きだったのだろう。
かなりごつごつしたワルツというよりレントラーの趣。だから悪いということではなく、これも立派な演奏。
いろいろやっているが、必ずしも成功しているとは言いがたい。もちろん水準には達しているのだが…
これはサプライズ。まさかこういう風に「心の底から」が歌われるとは…
プ
グリエセの、おそらくは晩年の演奏。研ぎ澄まされたようなリズムは影を潜め、やさしさが漂う。一面では弛緩した雰囲気も否定できない。なおこれとは別にプ
グリエセのライブ演奏がうpされているが、他と同じくひどい。ほとんど右手はマヒ状態だ。よほど金に困っていたのか、認知が入っていたのか。晩節を汚した
としか言いようがない。
これもうpすべき音源ではなかった。セステート・マヨールの名がすたる。
キューバのボレロ仕立ての演奏。バックはソノーラ・マタンセラ。
タンゴ名曲 番外1 ビルヒニア・ルケ
タンゴ名曲百選をやっていると、思わぬ演奏に当たり、脱線したくなることがあります。それを番外編としてシリーズにしようと思います。
ビルヒニア・ルケの絶唱
「我が悲しみの夜」のところで、ビルヒニア・ルケを紹介しました。
これはすごい演奏です。テレビの録画映像で、すでにカラーの時代です。年は50歳前後でしょうか、完全にはまっています。この人はおそらく人格乖離(ヒステ
リー)で歌うときにはヒョウエ(憑き物つき)しているようです。それが当たればすごいし、外れてもすごくなりそうです。
ということだったのですが、実はこのテレビ番組で、ほかにも何曲か歌っているのですが、どれもすごい演奏なのです。これらの画像はいずれも ricardomorino さんのチャンネルに掲載されたものです。
1.ricardomorino さんのチャンネル
これを投稿した方のサイトからリストアップしておきます。これを聞くと、ビルヒニア・ルケはアルゼンチンの美空ひばりだなと感じます。なお音質や演奏、曲そのものがいまいちというものは、私の一存でカットしました。
VIRGINIA LUQUE - MENSAJE
タンゴの日記念コンサートの録画ということです。バックを Cátulo Castillo と Enrique Santos Discépolo がつとめています。安物のマシンでエコーをかけているのが、多少耳障りです。
VIRGINIA LUQUE - LA MARIPOSA
日本でのコンサートの直後なのでしょうか、トモダチ、トモダチと連呼しています。曲はたいしたものではありません。
VIRGINIA LUQUE - PADRENUESTRO
VIRGINIA LUQUE - EL PATIO DE LA MOROCHA
たいした曲とは思えませんが、ビルヒニアの歌唱力でもっていきます。
VIRGINIA LUQUE - NOSTALGIAS
ビルヒニアならこのくらいはやるだろうと思ったが、案の定だ。
VIRGINIA LUQUE - MARTIRIO
イントロがジャズピアノで、タンゴに転換していくという曲だ。なかなか良い曲だがあまり聞かない。youtubeで調べると女性歌手が歌いたい歌のようだが、よほど難しいらしく、聞いているとほとんど歌になっていない。
Soy un arlequín - VIRGINIA LUQUE
20年代の曲で、デ・アンヘリス楽団=ダンテの演奏が良い。「私は道化師」という歌だから、演技過剰になると、流れが悪くて歌にならない。ビルヒニアは意外に抑えて歌っている。
La cumparsita - VIRGINIA LUQUE
Sentimiento gaucho VIRGINIA LUQUE
EL CHOCLO - VIRGINIA LUQUE
ともに、ビルヒニアが歌えばこうなりますという通りの歌。
Rebeldía - VIRGINIA LUQUE
女が同棲中の男に「出て行って」と縁切りする歌。ビルヒニアの得意とするジャンルでしょう。
Che bandoneón - VIRGINIA LUQUE
百選に入る歌だが、まだ載せていない。ビルヒニアの演奏は本命盤に近いと思う。
La Morocha - VIRGINIA LUQUE
映画のシーンからの吸い取り。音はかなり悪いが、ビルヒニアにはぴったりの曲と思う。
ところでこの ricardomorino さんのチャンネルというのがすごい。500本近くのファイルがあるが、ビクトル・エレディアとかクアルテート・スーパイなどなかなか聞けない演奏がそろっている。しかも音が良い。このサイトをこなすだけで、2,3日はかかりそうだ。
そのうち番外の番外で紹介したい。
2.tangonostalgias さんのチャンネル
ビルヒニア・ルケの演奏をたくさんアップしているチャンネルがもうひとつありました。それがこの ricardomorino さんのチャンネルです。特徴的なのは、ricardomorino さんのチャンネルがテレビのエアチェック音源なのに対して、こちらはディスク音源の比重が高いということです。音質はともに良好です。
以下ビルヒニア・ルケの音源を拾っておきます。
MENSAJE VIRGINIA LUQUE
上のライブ音源と比べると、声はこちらのほうが若いだけ良い。歌はどちらもうまい。あくの強さも似たようなもの。
SIN PALABRAS - VIRGINIA LUQUE
これも百選に入る予定の曲だが、あくまでもタンゴであって、ビルヒニア節で歌う曲ではないと思う。
UNO - VIRGINIA LUQUE
これだけテンポをいじられると、さすがに聞いているほうもつらい。
SOY UN ARLEQUIN - VIRGINIA LUQUE
メンサヘと同じ感想。テンポはこちらのほうが揺れがひどい。
MARTIRIO - VIRGINIA LUQUE
もっとあっさりした歌だと思うが。
タンゴ名曲百選 その31
(61)最後の深酒 (La Ultima Curda)
こ
の曲はゴジェネチェの十八番らしい。にやけた馬面といい、しわがれ声といい。尾羽打ち枯らした遊び人の雰囲気を漂わせている。だいいち、名前からしていか
にも飲兵衛っぽいではないか。youtubeにはこの作曲者であるトロイロとの共演のほかに、Néstor
Marconiとの演奏やピアソラとのデュオなどがうpされている。このうちではやはりトロイロとの競演が出色である。
こちらはネストル・マルコーニのバンドネオンとの競演。映画「スール」の1シーンで、いかにもそれらしい雰囲気だ。
この歌手とバンド、すごいと思う。注目だ。すこし後であさってみよう。
いつもラジオ・タンゴ・ロサリオは本物をうpしてくれる。これも ROSANNA FALASCA という聞いたことのない歌手だが、実にうまい。TODOTANGO で調べたら83年に30歳でガンで死亡した人だそうだ。
今や、ほんとのタンゴを聞きたければウルグアイへ行けということだろう。ただしうp時の問題と思うが音割れがひどい。
フアン・カルロス・バグリエットという歌手らしい。顔に似合わぬ美声である。こういう風に歌うと、歌の雰囲気ががらりと変わる。ゴジェネチェと同じような趣向だが、録音は最新である。
69年録音のLPレコードから起こした音源だそうだ。歌手のクレジットはないがいい演奏である。
89年、マル・デ・プラタのコンサート・ライブのエアチェックらしいが、録音の状態はひどい。しかしまるでこの曲がソーサのために作られたフォルクローレの名曲のように聞こえる。
…と思ったら元気なときのCD音源もアップされていた。とりあえずそちらにリンクしておく。
ハーモニカとピアノのデュオで、普通だとこの組み合わせは取り上げないのだが、あまりにも録音がすばらしいのでつい聞いてしまう。
(62)女旅芸人 (Payadora)
HPでは女道化師と書いたが、旅芸人のほうがよさそう。ただイメージはわかない。「道」のジェルソミーナなのか、「離れゴゼおりん」なのか、「伊豆の踊り子」なのかでずいぶん話は変わってくる。
この曲はセステート・マヨールの第二バンドネオン奏者だったフリアン・プラサの作曲ということだから、ずいぶん新しい曲である。浅田真央がBGMに使ったと書いてある。
これがセステート・マヨールの演奏で、標準盤ということになる。ライブ版もあるが、こちらのほうが音が緻密である。
バイオリンだけで7人もいるグラン・オルケスタ。半分は女性だ。だから腕は良い。タンゴの社会的評価が上がったということだろう。
これはバンドネオンのソロ。そんなこと言わなくても分かる、といわれそう。手抜き傾向ですね。
タンゴ名曲百選 その32
(63)ロス・アンヘリートスのカフェ (Cafe De Los Angelitos)
なにかこのカフェは由緒あるところらしくて、観光名所になっているようです。ホームページではOcteto
Tibidabo の演奏を採ったのですが、そんなものはyoutubeにはないでしょうね
なんとも、絶唱とも言うべき演奏です。むんむんと迫ってきます。
Francisco Canaro - Carlos Roldán - Café de los ang
これも十分良いです。カナロらしく、過不足なく、ダンサブルに仕上げています。しかしラマルケの前には影が薄い。
ORQUESTA JOSÉ MARQUÉZ - BLANCA MOONEY - C
ムーニーは私のお気に入りの一人です。しかしラマルケの前には…
Chabela - Cafe de los Angelitos
なんでしょう?、やたらうまくて美声で、抑制が効いてて、チャーミングです。絵は見ないほうが良いかも…
(64)私のパティオ (Patio Mio)
PATIO MIO
アイーダ・ルスの一発ヒットです。オメナヘの番組がエアチェックされていますが、かなりがっかりします。
JACQUELINE SIGAUT - PATIO MIO - TANGO
これはお勧めです。シンプルに、しかし情感をこめて歌いこんでいます。グラナダでのライブ・ヴァージョンもありますが、こちらはだいぶ崩しています。
作曲者トロイロの自演で、さすがに迫力があります。
Yamila Asero Patio Mio Pal
若くてお色気があって、というのはうらやましい。素直に歌っても魅力的です
PATIO MIO-MERCEDES SIMONE.
メルセデス・シモーネも歌っていますが、かなり年取ってからの録音で、すでに魅力は失われています。Patio Mio Mercedes Simone.wmvのほうはさらにひどい。Patio mio Susana Rinaldi HQ M
というスサナ・リナルディの演奏もありますが、こちらもお勧めできません。
バレンティン・アルシナの歌で例によってうっとうしい歌い方ですが、バックのオルケスタが意外に良くてお勧めです。
タンゴ名曲百選 その33
(65)ミロンガよ永遠に (Siempre Milonga)
アルフレード・デ・アンヘリス楽団がよいです。これぞミロンガというリズムを刻みながら、ギターと低音楽器のピツィカートが雰囲気を駆り立てます。歌も歌曲の旋律とは程遠い不安な気分をあおります。録音も秀逸です。
youtubeにはこの1曲しかありません。上げるのはやめようと思いましたが、やはり好きな曲なので入れることにします。今後のアップに期待します。
シエンプレ・ミロンガで探していたらこんな曲に当たりました。プグリエセの自作自演、歌手はホルヘ・マシェルです。プグリエセは共産党員として有名で、バンドも共産主義的に運営していたと聞いたことがあります。
(66)心の花 (Flores del Alma)
ピアノの伴奏で男女のデュエットです。最初はスペインの古い民謡かと思いましたが、れっきとしたタンゴでした。元歌を歌っているのは、デ・アンヘリス楽団の男性歌手二人で、こちらも大変良い演奏です。
それにしても、この曲タンゴというよりは限りなくフォルクローレに近いですね。アンヘリートスとかクアルテート・スーパイあたりが歌いそうな感じです。
元は映画「タンゴ」のサウンドトラックからとったものです。私のホームページの「今月の名曲」にも取り上げました。A. Lucero y García Ferrari
のデュエットです。どうもアルゼンチンでは「銀・恋」みたいになっちゃってしまったようです。
こちらがオリジナル。悪くないでしょう? 実はダンテとマルテルのデュエットはたくさんあって、もっと良い曲もあります。これを機会にアルフレド・デ・アンヘリスがもっと聞かれると良いのですが(ラジオ・タンゴでは5位です。ピアソラやディサルリより上なのです)
アンヘリスがオリジナルと思ったら、さすがラジオタンゴ・ロサリオ、SP盤をアップしてきました。DOMINGO FEDERICO楽団にCARLOS VIDALと OSCAR LARROCAのドゥオという組み合わせです。
Bruna Pintus
という人が歌っています。いかにもそれっぽいですが、もうちょっとうまいといいのですが…
タンゴ名曲百選 その34
(67) ホテル・ビクトリア (Gran Hotel Victoria)
これは本当はフォルクローレのジャンルに入れたい曲だ。HPでもロス・インディオス・タクナウの演奏をトップに上げている。
Historia del tango y del Hotel Victoria
こちらはフランシスコ・カナロの演奏。晩年の演奏だろうか、モノだが音は良い。ゆったりとした演奏でカナロらしく奇をてらわず上品だ。
こちらは対照的に奇をてらいまくった演奏。これではとても安心して踊れない。しかしさすがにキンテート・レアル、水準は高い。盗み撮り音源のようだが音は悪くない。かなり年季の入った盗み撮りだ。
ダリエンソの演奏で、いちおう標準盤だろうが音質は相当悪い。不思議なことに(というよりよくあることだが)こちらのSP盤のほうがはるかに音が良い。
インスピレーションにあふれた名演。音も最高。タンゴかと言われると…
ishizakiさんのファイル。オルケスタ・ダリエンソという楽団の演奏らしい。音質は秀逸。
ティタ・メレージョの歌入り。どうって言うことない歌だがカルロス・フィガリ楽団の伴奏が小粋である。
(68) 7月9日 (9 de Julio)
7月9日はアルゼンチンの独立記念日。私の年表を参照していただきたい。
プグリエセの演奏で、この曲の標準とも言える演奏。非の打ち所のない堂々たる演奏だが、不思議に印象に残らない。
YouTubeで聞ける貴重なサルガン楽団の演奏。50年代はじめの演奏だが非常に響きが新しい。これを聞くと「7月9日は名曲だ」という感じがしてくる。サルガンはメロディーラインを弾いているわけではないのに、聞き終わるとピアノの音ばかりが印象に残る。
これでもかとばかりにダリエンソ節が炸裂する。“それほどの曲か”という感じもしないでもない。映像音源で音はひどい。