街中に、二人。 イルミネーションの柔らかい光に包まれて、貴方の表情は一層柔らかい。 今日はクリスマス。 「サンタクロース、いつまで信じてました?」 目の前の彼が、そんな質問を私に投げかけてきた。 この時期になると一回は出る話題だと思う。 そんな事を知って、一体何になるのか。 反対に問いたいけれど。 ため息とともに、目の前の彼を見る。 「物心ついた時には、もう知ってたわ。」 彼の質問が、くだらないとは思わないけれども。 そんなに有益な話題だとも思わない。 「へぇ、岩下さんらしいですね。」 坂上君は、いつものように人当たりのいい笑顔で私にそう言った。 自分らしいとは、どういうことなのか。 周りからどう思われているかは、どうでもいいけど。 貴方から、どう思われているのかはすごく気になる。 それでも、それを素直に聞くことが出来なくてさっきの質問をただ返した。 「そう?……坂上君はずっと信じてた方でしょう?」 (多分貴方は、信じていたんでしょうね。) 何の気なしに、そう答えを予想付ける。 素直で純粋。そう言う印象をもつ彼だから。 でも、予想に反して。 彼は少してれたように笑って。 「気付いてたけど…気付いてないフリしてました。 だって、気付いたってばれたらプレゼントもらえなくなるの知ってたから。」 ……少しだけ、意外だと思った。 なにか、彼のイメージとは違うと思った。 決して「幻滅」したわけじゃ無い。 むしろ「共感した」に近い気がする。 彼に自分にも近い部分があるのだと、少し嬉しくなっただけ。 それはただ単に、子供の「欲求を満たす為の行為」なのだけど。 親に偽り、善意で欲求を満たす為の。 「自分ながらにズルイとは思ってたんですけどね。」 私の反応が気になったのか、伺うような目つきで私を見る。 視線が、あう。 「いいんじゃないかしら。子供だって、有益な方法をとりたがるのは当たり前の事だと思うもの。」 私がそう言うと、安心したように笑う。 (いいと、思うわ。) それに それを否定したら 今私がやっている事も、滑稽な事に思えてしまうでしょう? 知りながら、知らないフリをして。 貴方が、私以外の「あの人」を見ているのを知っていて。 それでも、それを知らないフリをしている。 貴方の視線が、「あの人」を追うのを知っていて。 貴方の自覚が無いのをいい事に、気付かせないように。 貴方が、私のもとを離れないよう。 きつくきつく、言葉で絡めとる。 言葉なんて要らない。 曖昧に消えてしまう、音なんて要らない。 それでも、貴方の脳を言葉で操るのは簡単だから。 ---------それは、手段。 貴方を自覚させてしまったら。 貴方は、私のもとから離れてしまうから。 ずっと知らないフリをして、貴方を引き止めたいのは…私。 知らないフリをして「サンタクロースからのプレゼント」を、欲しがる子供と変わらない。 それとも、サンタクロースにお願いすれば 貴方の心も、手に入るのかしら? 「岩下さん…」 彼が私の名前を呼ぶのと、同時に。 距離を縮めて、その口を塞いだ。 「ふふふ…メリー・クリスマス。」 貴方も誓ってくれるんでしょう? 聖なる夜に、この愛を 岩坂…です。でした。 岩坂でクリスマスデート話。無謀かしら…大丈夫かしら。 意外と、岩下さんにしたらまともっぽい感じしますが…どうなんでしょう…。(聞くな) この二人、付き合っててもずっと岩下さんの方は坂上君のことを信用しきれない感じがして。 坂上は岩下の事好きだけど、岩下は不安で不安で仕方ない…感じが。 …次こそは、岩下さんのラッキーアイテム★カッターを書きたいな…v(やめて下さい) (2002/12/25 UP) <モドル |