血が、滴り落ちていた。
赤という色は、生き物を興奮させる色だと言われている。
まさしくその通りだと思う。
ねとり、と。
指に纏わりつく感触は、慣れてしまえば不快でもなんとも無い。
自分の体にも同じ物が流れているのかと思うと、不思議な気分になる。
「日野先輩?」
視界がクリアになって、一気に現実に引き戻される。
目の前には、後輩の坂上修一。
自分になついていて、好感が持てる。
好感…というか、ペットのような感覚が一番近いのかもしれないが。
(こいつの血も、ぶちまけてみれば同じようにどろりとした血が流れているのだろうか。)
皮一枚を切ってしまえば、血なんていくらでも出る。
しかしそれだけでは物足りない。
肉を切り裂き、筋の間に見える鈍い赤の色の中に隠れる暗い白色の骨に絡む血の赤を。
(見てみたい)
人体の構造になど、そんなに興味が無い。
人体模型なぞに、欲情はしない。
中身を見たり、切り裂くだけならば医者になる事が一番平和的だろう。
しかし、其れは違う。
追い詰められれば、こいつはどういう行動に出るだろうか。
助けを乞うだろうか。それでも否定するだろうか。
精神が崩壊するのならば、それでもいい。
坂上をゲームの生贄にする事の理由付けなんて何でもいい。
俺が気になるのは、その結果だ。
坂上が出す答えを俺が、見届けられるか。
それだけで、充分だ。
殺人クラブ日野部長、の話。
ただ単に血を見たいのか、それまでの行程を楽しみたいのか、その後の反応を見たいのか。
一番残酷なのは、どれなんだろう…。
(2006/10/12 UP)
<モドル