もう、何も見えない。
何も、聞こえない。
長い廊下に、自分の足音だけが静かに響いていた。
どうしていいかわからずに、スマイルを探す。
スマイルならば、自分の気持ちをわかってくれると-------勝手ながら思っていた。
しかし。
いると思っていた部屋を訪れても、スマイルは居なくて。
考えうる限りの場所を探してみたけど、彼の姿はどこにも見えなかった。
まるで、世界に自分ひとりだけしかいないような………錯覚。
無性に心細くなって、ムキになって城の中を少し速めの歩調で歩いた。
響く、音。
静かすぎる、城。
包む、闇。
何もかも異質。
その中でも、自分が一番異質。
いない、いるはずの人が。
いる………はずの、人。
何か、違和感を感じて慌てて顔をあげた。
目の前に、探していたはずの人物。
「スマイ……ル」
声も掠れる。
何か信じられない物を見るように、大きく瞳を開いた。
なんてことはない。
スマイルは、広間に居たのだ。
窓の桟に自分の体重を預けて、うつろな瞳で外を眺めていた。
うつろな、瞳で何も映さずに。
透き通る、硝子の硬い質感を持つ人形の目のような。
名を呼ばれて、やっと顔を向けたスマイルはいつものように笑いもしなかった。
「どうしたの、アッシュ。」
そう問われて、どうしていいのかわからずにアッシュはスマイルから目をそらした。
「ユーリ……が、」
「まァ、仕方ないよネ。」
スマイルから返って来た言葉は、無機質で何の感情も読み取れない。
「仕方ない……って…何っスか」
何故かスマイルを再び見ることが怖くて、視線を下に落とした。
自分の体を直視すれば、自分が震えていることに気付いた。
「所詮は中途半端なんだヨ、ボクも、ユーリも、アッシュも。
本当の意味で、傷つける事ができないなら」
言葉を区切る。
「いっそのこと殺してくれた方が、楽なのに。」
さらりとそんな事が言えるスマイルを半ば信じられないと思いつつも。
心のどこかでは、それを望んでいたかも知れない自分もいて。
相手を傷つける事を恐れて、自ら眠りにつく事を決めたユーリ。
自分は、ユーリのためなら血だって-----この命すらさし出したのに。
そうする事で、ユーリ自身が傷ついている事も知っているから。
結局、彼に何も言えなかった自分。
「………次起きるの、いつかな。ユーリ。」
ぼそりと、そんな事を言うスマイルを呆然と見た。
気付くと、先程もまで空いていた間が詰められていて。
掠め取られるように唇に、唇が押し当てられた。
「!」
唇が離れて、スマイルは自分の横をすり抜けるように歩いていった。
(え……?)
「スマ、イ……ル?」
恐る恐る、名前を呼んだ。
唇の、かさかさとした感触。鉄の匂い。
唇をなめれば、しっかりと
血の、味。
誰の、とは聞けなかった。
今はいつものように笑っていたスマイルを、追いかけて。
抱きしめて。
声を殺して、泣いた。
「それとも、もう起きないのカナ?」
スマイルの声が、静かに響いた。
スベテは、闇の中に。
end............................
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スマッシュ仕立て…?(自信ないですが)
同タイトルで、3つ話を書きましたが。一応これでこの、訳のわからないシリーズ(?)も終わりです。
3つの話…それぞれに孤立した話でも、同じ世界観に基づいた話でもいいな…とか。
もし、同じ世界観に基づいた話ならばきっと時間の流れ的には2>1>3の順番が自分的には正しいと勝手に思っているのですが。
その流れを自然にする為の中途のエピソードがあまりにも欠落しすぎてて話になってない…ですね。
……孤立…の話のほうがいいのかな…。
反転すれば見える文章は、読んでしまえば結論が出てしまうのでいろんな意味に捉えられるように反転。
スマ・ユーリ・アッスそれぞれの視点で話がかけて満足。
そして、スマユリ・ユリア・スマッシュのつもりではありましたが、微妙に違うように思える…うぅ…精進、精進。
(2003/1/21 UP)
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