それは期限付きの、ただの戯れ。


贅沢な、お遊び。











【バーチャル・チャイルド】



















「はい。」
渡されたケースに視線を落とした。
「え、っと?何かな…コレ」
突然渡された、内容に心当たりもないので目の前の人物に聞いてみる。
「興味があるって、言ってたじゃん。ボクの星がどこまで進歩してるのかって。」
そう言われれば、そんな会話を交わしたような気もする。
ローズは、目の前の少年を見下ろした。

いや、正確に言うならば。

背のあるローズが直視したのはプリンスMの頭に生えている(?)何だか素敵な触角であったが。
その点は、どうでもいい。
とりあえず、直視した。
「何、」
見下ろされて、少し不機嫌になりつつもローズを見上げる。
「いや、そんな会話覚えてたんだなぁ…って。嬉しいなぁ。」
素直に歓びを表現しようとして、相手に顔をしかめられた。
「いや、そんなに素直に喜ばれると……」
「何?何かあんの?」
少し、言いずらそうに言葉を繋げるプリンスMをローズは黙って見ていた。












いわくつきの、プログラム。










だと、言う。

暗い部屋で、コンピューターから発せられる光りを頼りにケースを開いた。
それは、地球にあるものと寸分変わらない外装で。
この、プログラムについて説明を受けた時に彼から聞いたのだけど
自分の星のものを彼自身が地球のコンピューターでも扱えるようにとカスタマイズしてくれた、との事で。
一見しただけでは、たった1枚のただのディスク。
帰宅してすぐに、部屋の電気をつけるのももどかしくてまず最初にパソコンの電源を入れた。
起動するまでの間に、ケースをもう一度まじまじと見る。






「『バーチャル・チャイルド』……って言うプログラムなんだけど。
まァ…言葉のまんま…架空の子供って言えば、分かる?」
「さっぱり。」
「あーもう!物分り悪いなぁ、アンタ。
んんー。こっちで言うなら、たま○っち?」

「…………………………また、随分古いネタを…仕入れてきたんだね、君は。」

「何??まァ、あながちはずれてないよ、多分。
とりあえず、それが進化した形っつーか。究極系?」
「究極…?」
「プログラムで、現実世界に実際に存在できるようになる。
触れるし、感情もある。情報収集をして、自分で物を考える。
まんま、人間みたいにさ。」
「そりゃ、スゴイ。」
「ただし、持続期間もまだ短くてさー。
一応、このディスクに入れたプログラムは、きっかし1週間。
それ以上も、それ以下もない。」



「へぇ、………それで?どこら辺が『いわくつき』?」





それまでは、少し自慢げに(自分の星の科学力がすごいのだと、認めさせたいのだろう)話していた彼は
ボクの言葉を聞いて、口を閉ざした。










「………発狂するんだってさ、プログラムを実行した人間が。
稀な、ケースらしいけど。」











ぼそりと、小さく。
その声、言葉だけが妙に頭に引っかかって離れない。
小さく連続した機会音が止まったので、ディスクをドライブに入れた。
機械が、プログラムを読み込んで画面が変わった。
いくつも項目があって、後は空白になっている。
設定画面のようだ。
「名前………か…、困ったな……」
衝動的に起動してしまったから、そこまで考えていなかった。
空白の隣に小さなボタンを発見して、それを押した。
空白だった、項目が自動的に埋まる。
ランダムに自動入力するのか…デフォルトの状態がそうなのか。
よくわからないままに、次のページに進んでみる。
それでもいいかな…と思えたのは、確かにプリMの言った言葉が頭に引っかかっていたから。




全てを決める事が出来る。
全部、自分好みに。
自分の考えるとおりに動く、自分の愛しい子供。

『発狂するんだってさ、』

愛を注いだ子供を、期限付きで失う-----決められた、プログラム。
「そりゃ、発狂もするだろうね……」
愛が強ければ強いほど、プログラム終了までの時間を数えてしまう。

変更は、ない。
それ以上も、それ以下もない。

期限が来たら、必ず。
目の前の、子供は消えてしまう。



利口なのは、愛さない事。
愛していると囁いて、ひとときの時間を楽しむ事。
愛着が湧かないように、勝手にコンピューターに打ち込まれた設定を決定事項にした。
タン、とキーボードのボタンの音が部屋に響いた。






















期間は、1週間。



















そして、続いてしまうわけです。
すみません、こんな話引き伸ばしてて。
……結局…なにがしたいのかわからないままプリMの出番が…(黙)






(2003/1/29 UP)

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