かけがえのない、音。

音楽。



かけがえのない、人。

僕の隣にいる君。









例えば。










(そう、他愛のないたとえ話さ。)


この世界に君がいなかったら、どうだろう。
君がいても、僕と出会えていなかったら。








僕は、本当に「ボク」だろうか。








ふと、そんな事を考えてみる。
君にそんな事を言ったら可笑しな顔をするだろうか。

(笑う?)

ソファに寝転がっている僕は、少し顔をあげて「相棒」の方を見た。
先程から、シャーペンを走らせては納得がいかないのか消しゴムを動かす。
それの繰り返し。
(ヘッドフォンから流れてんの、試作段階の曲かな?)
僕は、静かにソファから下りた。
ヘッドフォンから流れる音は、周りに漏れている音量を考えると相当大きいようで。
気を使う必要はないけれど、足音を立てないように近づいた。
気付かれないように、そうっと。

(!)

「なぁんだ、さっきから全然はかどってないじゃん!」
思わず大きな声を発して、しまったと思いつつ手で口をふさいだ。
気付いた時には、もう遅かったけど。

「レオ〜〜〜」

怒ったような低い、声。
こういう時の相棒は、逆らわないに限る。
「ごめん、ごめん!」
素直に謝る----それが一番だ。
(さっきスギが言った約束を、無視しちゃったのは僕だし。)

がしがし、とスギが頭をかいた音がした。
その音で謝る為に下げていた顔をあげる。
大きくため息。

「…………スギ、なんかムリしてない?」



余裕が、ない?

焦り?



作曲が上手くいかない事なんて結構あることなのに。
目の前のスギは、珍しく苛立った表情をしている。


「そんな事ないよ。」
スギの顔は、いつもの表情に戻ったけれども。
とってつけたような、笑顔。
(君は…………、)
思わず、さっき考えていた疑問を。
再び、思い浮かべた。






君は、僕と出会ってなかったら





君は、君だった?












そんなつもりはなかったのに、続いてしまいました…。
互いに違う方向を向いて、互いに違う事をしているのに
一緒に入れる二人っていいですよね…。
それが、私的スギレオイメージだったりするのですが…。
その空気まで表現する事は難しい…。うぅぅ。


(2003/2/8 UP)

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