だから、そういうの。
努力とか、忍耐とか、根性とか。

性に合わないんだよね。





(……んで?)
「んー、やっぱ外はいいねー! 空、青いし! 海、広いし!」
「……海、関係ないよ。」
僕が、そう言うとレオはいつものように笑う。
エヘヘ、と言いながら。

そもそも。

何で、曲の締め切り直前で。
何だか行き詰まってて、大変だってのに。
僕は、河原にいて。
レオに、ツッコミ(?)を入れているのか。




そう、さかのぼる事30分前。




レオはいつものように、勝手に部屋に入ってきて。
勝手に僕の買ってきた雑誌を、寝転がりながら熟読。
僕も、締め切り近いってのもあって。
それについては何も言わなかったけど。
(いつもの事だし。)
でも。
その雑誌の記事について感想を述べてきたレオに対しては、
一言やはり言わなくてはならなくて。
「レオ、今ね。締め切り近いから。
ちょっと静かにしてて。」
小さな子供に言い聞かせるように。
(確かに、ちょっと冷たい言い方だったかもだけど。)
今更ながらに、その言葉を思い出して少し反省。
「悪ィ、悪ィ。」
そう言いながら、笑ったレオの顔。
今思うと、アレはへこんだ時の顔だ。

でも、その時は何も考えずに。
作業に戻って、掴めそうで掴めないメロディを書いては消しての繰り返し。


「…………スギ、なんかムリしてない?」


レオの言葉。
そんな事ない、と即答できなかったのは、やはり自分でも自覚しているからで。
なにぶん今回はいつもより、締め切りが短いという事もあったし。
スランプと言う程でもないけど、
曲作りでちょっとした事で行き詰まってたりしたし。

努力とか、忍耐とか、根性とか。
まるでスポ根漫画みたいだけど。

僕は、何もかも出来るわけじゃ無いし。
作れっていわれても、いつでも曲作れるとは限らないし。
無理しなけりゃ、やってられないことも…あるし。

でも。
それを目の前の相方にだけは知られたくなくて。
無理して笑ったら、気分転換だと言わんばかりにここに連れてこられた。





冷たい風が、頬に触れた。
(風が、冷たくて気持ちいい。)
ぼうっと、目の前の川を見つめてたらレオがぺたりと草の上に座った。
「風が冷たくて気持ちいいなー。」
(……あぁ、同じこと思ってたんだ。)
そんな些細な事が何だか面白くて。
レオの背に背を向けて寄りかかった。
「スギー」
不意に呼ばれた名前に、何も考えないで曖昧な返事をする。
「僕と会ってなかったら、スギは『スギ』だった?」
「はぁ?」
思わず後を見たけど、レオも後ろを向いているから表情がわからない。

「………………。」

空青いし。海広いし。
無理しなくても、いい気がして。
「でも。今の僕には、レオは必要だよ?」
とだけ、言った。
レオは何も言わなかったけど。
嬉しそうに背中が揺れたのだけは、わかった。















風が、

ふいた。




「!」
「イテッ!」
スギが突然立ち上がったもんだから、
お互いに寄りかかっていたレオが後ろで転ぶのも当たり前で。
「何すんだよー!」
レオの抗議の声が走っていくスギの背中を追いかけた。
「思いついた!浮かんでこなかったメロディーが繋がった!」
嬉しそうに笑いながら、走っていくスギ。
多分、家で作業の続きをするのだろう。
そんなスギを見送ってレオも立ち上がって、泥を払った。


(けっきょく答えにはなってなかったけど。)
どうでもいいや、とか。
思い始めた。
今の僕は、スギに会えたし。

僕も、スギが必要だし。
なんか、嬉しかったし。


レオもまた、スギが走って行った方向へ足を向けた。






かけがえのない

僕の隣にいる君。
君の隣にいる僕。









スギ「&」レオです。
カプでなく。

はじめてスギレオ書いてみたのですが、
なんだか尊敬している某様の影響を受けているような、いないような。


(2003/2/8 UP)

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