鬼 さ ん こ ち ら







手 の な る 方 へ


赤い夕焼け。
色あせた記憶。
まるでセピア写真のように、所々ぼやけてて思い出せない。

それなのに、アイツだけはいつまでもはっきりと記憶に残ってて。
消えない。
忘れられない。







遠い、思い出。















なんで、そんな昔の事をを思い出したのか…わからなかった。
遠い記憶は、「イヤな思い出」に変えてしまったのに。




アイツは、人の道からも家族からも離れて行ってしまった。
当時、優等生であった兄。
ずっと、尊敬していた----兄。
何もかも、捨てて。
家族も。
妹の私も。
勘当同然に家を出て行った。




「姐さん…ちょっと飲みすぎだってば!」
「うるさいわねェ…私は少しも酔ってなんかないわよ!」
熱い身体が、発散を求めている感じ。
周りの空気が、心地よく冷たい。
ぐるぐるぐるぐる。
回る視界は、ゆらリゆらりと揺れて定まらない。
何だか、妙におもしろかった。
何もかもが、おかしかった。
アルコールだったはずの液体は、熱い身体にはもうなにも与えずに。
味覚さえも、麻痺してしまっているのかその液体の味すらも解らなかった。
ただ、どろりとしたような液体を喉に流し込む。
「ね、姐さん…何か…悪い事でもあった…?何でそんなに荒れてる…」
「何もないわよー?」

何も、無い。
偶然にも、ポップンパーティでもう会う事も無いと思っていた
自分の兄貴に会った以外は。
本当に、偶然。
今まで噂を聞くほどに近くにいたのに、会う事なんてなかったのに。

(----------…あー、ヤダヤダヤダ。自分らしくもない。)
酒に呑まれてしまえば、何も考えなくていい。
気を失うように眠りつけば、夢なんて見なくて済むかも知れない。
泥のように、地と平行にただ存在するだけ。
考えたくない。
思い出したくない。
何故、嫌な思い出すらも過去になってしまえばいいものに変わってしまうのか。
(---------許してしまいそうになる。)
自分を裏切った、兄を。
自分の手をひいた、大きな手を。
私の前から、いなくなってくれたままの方が良かった。
それなのに。


何故、再会してしまうの。


だらりと伸ばした手は、自分のものじゃ無いようで鬱陶しい。
頭が重くて、机に突っ伏すると後輩の声がどこか遠くに聞こえた。
(あ………意識が、落ち……る)
そう考えたのか、自分でさえも分からない程に。
前後不覚で、なんだかおもしろかった。











揺れる。
地面が?
地震じゃ有るまいし。
でも、揺れてる。
私が?
心地いい、揺れ。

まるで、ぬるま湯に浸かっているような。
暖かくて、安心できる。
心地いい、体温。



「-------気付いた?」
目の前に、背中。
綺麗な、金色。
(-----------…。)
何となく、おぶっている人間がわかってしまって。
「相変わらずねぇ?昔みたいに、無理してるみたいね『ムラサキ』。」
そう言われたけれども、聞かなかったフリをして。
また、眠りにつく。













会いたくなかった。
許してしまうから。
好きだったから。
今でも、

変わらず好きなのだと自覚してしまうから。


















遠くに、子供の声を聞いた気がした。
他愛も無い、お遊び。
昔、兄貴や近所の友達と散々遊んだ、目隠し鬼。

オニサンコチラ、テノナルホウヘ

目をつぶっても、多分私は兄貴の存在を感じてる。
手を鳴らさなくても。
遠くにいても。





この気持ちだけは、あせる事はないから。











(2003/2/28 UP)

<モドル



※過去に挑戦していた モノカキさんに30のお題「鬼」です。
只今お題の配布は終了されています。

ハニムラー!!!!(何の呪文だ…)
大好きです、この二人。
実は兄弟設定を知らなかった時すでにこの二人で妄想してました。
兄弟設定知って、尚更萌え。燃え。(スミマセン、兄弟愛好きなのです…)
それにしても、今回断片断片すぎるうえに説明不足箇所多く不親切ですね…。
ふ、雰囲気で読んで頂ければ…(ウワ…)