闇の者は、闇を好む。

だから、僕は彼にひかれたのか。

だから、僕は彼のことを思い出すのか。







僕が今泣いている理由も、彼ならわかるのだろうか。














 「又、来たのかい。」
言葉は冷たかったが、それでも彼は穏やかに笑っていた。
「何でだろうねぇ〜。来たくなっちゃうんだヨ〜。」
僕がそう言って笑うと、彼も「仕方ないな」と言う感じの表情で僕を迎え入れた。

 そこは、暗くて小さな地下室。
まるで、人間から遠ざかるように隠れ住んでいる彼。
何故だろう、初めて彼を見たときから何か自分に近いものを感じていた。
闇の中でしか生きられない、かわいそうな化け物。
今は、ユーリと出会って歌を歌って人に「認められている」
けれど。いつも何か不安で、何か物足りないと思っている。
異質であるが故の、葛藤なのだろうか。
「どうしたんだい?」
「ジズ…。」
何故。
「ジズは…、寂しくない?ずっと、こんな小さな部屋に閉じこもって…。人と離れて生きてきて…寂しくないの?」
僕は、駄目だった。
人とは違う、皆とは違う、この異質を抱え込んで平気なわけが無かった。
狂いそうだった。
狂っていたのかもしれなかった。
「スマイル、わたしはもう生きてはいない。」
冷たい、声だった。その声からはまるで感情と言うものが読み取れないくらいの。
「……ごめん、ジズ…。」
「何故、謝るんだい?」
彼に、表情は無い。もし、彼に表情があったなら今どんな顔をしているのだろう。
何故か、初めて逢ったときを思い出した。




 彼は言った。


「わたしは、人を操ることが出来る。わたしは、わたし以外の人間にだってなることが出来る。」
その言葉を聞いた時自然と涙が出た。
この人は、「僕と一緒なのだ、」と。
気がついたら、彼に抱きついていた。
「……?どうしたのだね?」
一旦溢れ出した涙は止まることを知らず、次の言葉が出てくるまでずっと彼に抱きついていた。
ジズは、突き放すでもなく僕をなだめてくれた。
「僕と、一緒だ。ジズ…。」
やっと言えた言葉は、それだけだった。
ジズは、僕の言葉を否定するでもなく、ただただ聞いてくれていた。
「ジズ以外の誰かになれるのは…自分と言うものを持っていないからでショ?
『私以外の人間にだって』じゃない。ジズ以外の人間にしかなれないんでショ?」
ジズの体が少し震えたような気がした。
確信をついたのだろうか。
「何故…、そう思うんだい?」
「言ったでショ。…僕も同じだから。僕も…自分を持っていないからサ。」
こんな、異形の体で。
透明になるのは、体だけじゃ無い。最近はまとっている服ですら、見えなくなる。
(服の次は?)
(本当に透明になるだけ?)
(そしていずれは…。)
「…存在することすら出来なくなるんじゃないかって…。体も…心すら…、」
「スマイル。」
ぎゅっと、支えられている手に力が入った。
「…ジズ?」
ぽつり、と服にしみを作った。
ジズの表情の無い顔には涙が伝っていた。
「………生きているころに、君に出会えていたらどんなに幸せだっただろう。」
ぽつりと、それだけを言った。
それ以上僕も何も言えずに、ただ彼の冷たい体に抱きついていた。




 闇の者は又、闇のものにひかれる。
都合がいいから。
不安だから。
寂しいから。



でも、それだけじゃない。



僕は、彼だからこそひかれるのだ。












「ジズ…。もし、僕が『消えてしまっても』忘れないでね。」
「忘れないさ。」


















あまりに、刹那的な『約束』。
今は、それだけで充分だから。















初めてのジズスマ。というか、初めて書いたジズとスマ。
小説としては、スマイル書くのがこれで初めてで…口調とかも四苦八苦した覚えが…。
あと、ジズ…ですが。ロケテ段階で「好きだー!」と感じて、勢いでジズ本出した時の作品なので。
設定が、面白い。(微妙で)←エ?
今考えれば自分の中の設定としていろいろ変更したい部分もあるのですが。
これはこれで、また書いてみたくもあり…。…地下室…ってのもまた、オツですよね…。(何が)
…ジズスマ…好きだなぁ…(しんみり)





(2002/12/28 UP)(2006/9/7 改)

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